【2024年版】医療法人・病院M&Aの完全ガイド:動向・戦略・メリットからデメリットまで徹底解説

2024年04月17日

医療法人(病院) m&a

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医療法人・病院おいて、医師の後継者不在を背景としてM&Aの件数が年々増加する傾向にあります。
この記事では、医療法人・病院におけるM&Aの動向やトレンドがどのようになっているか、また、事例を交えて具体的に取るべき戦略について解説します。

目次

2024年最新:医療法人・病院M&Aの市場動向と予測

医療法人(病院) m&a

医療法人・病院においては、医師の後継者不在や経営者の高齢化を背景としてM&Aにより事業承継を実現する件数が年々増加している傾向にあります。
一方で、医療法人・病院は営利目的として設置することができないため、他の業界と比較して利益を拡大することを目的としたM&Aは起こりにくい環境にあるといえます。

そこでこの章では、医療法人・病院のM&Aについて、最新の動向を深く掘り下げます。
また、今後の予測についても触れますので、チェックしてみてください。

医療法人・病院M&Aの動向

M&Aは、通常は株式会社や有限会社といった営利法人を対象として行われるケースが多いですが、医療法人や病院であってもM&Aの実施は可能です。
実際、昨今では医療法人・病院のM&Aは増加している傾向にあり、今後も経営戦略の一つとして注目されています。

医療法人・病院におけるM&Aの件数が増加している背景にはいくつかの理由があります。
代表的なものには医師の後継者不在や診療報酬の改定による経営環境の悪化があります。

医療法人・病院のM&Aが増回している背景について、詳しく見ていきましょう。

医師の後継者不在

昨今、中小企業全般で経営者が高齢化することによる後継者不在問題が叫ばれています。
特に、医療法人の理事長には、医師・歯科医師の資格を有していることが必要とされるため、一般の事業者と比較すると事業承継のハードルが高くなり後継者不在の問題がより深刻に発生しているといえます。

直近で公表された帝国データバンクによる2023年の後継者不在率の調査によると、医療業の後継者不在率は65.3%とされており、全産業の中でも2番目に高い数字となっています。

(参考:https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231108.pdf)

診療報酬の改定

医療法人・病院は提供したサービスの対価として診療報酬を受け取っており、診療報酬の点数は、1つひとつの医療行為ごとに厚生労働大臣によって細かく決められています。
近年では、少子高齢化によって増え続ける国民の社会保険料の負担を軽減するために、診療報酬の引き上げ幅は縮小傾向にあります。

直近で公表された2024年度の診療報酬改定では、-0.12%の改定が行われました。
医療機関の賃上げの原資となる本体の部分は+0.88%とされたものの、医薬品の公定価格である薬価は1%の引き下げがされました。

(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA194RG0Z11C23A2000000/)

医師・看護師の専門人材の不足

高齢化社会の進行に伴い需要が拡大していることから医療人材が不足しているといわれています。
コロナ禍の状況でさらに医療需要が高まったことで人材不足が加速する状況となりました。

医師・看護師といった医療人材の不足には、離職率が高いことも原因の一つとされています。
肉体的な負担に加え、人の生死にかかわる職業であることによる精神的な負担が大きいことが考えられます。
また、一部の医療機関においては、人手不足により過度な超過労働を強いられてしまうケースも出てきており対策が必要です。

医療法人・病院M&Aの今後の予測

ここまで、医療法人・病院のM&Aの動向について見てきました。
ここからは今後の見通しや予測について解説します。

医療法人の運営のヒントになりますのでチェックしてください。

事業承継の手段としてのM&A

医療法人・病院においても事業承継としてのM&Aが増えていくと予想されます。
先ほど見たように、医療業ではいまだ後継者不在率が高い水準で推移しており、事業承継の課題を持った方が多くいらっしゃることが考えられます。

特に医療法人・病院においては、後継者が医師・歯科医師の免許を持っている必要があるため、親族や身近な人間を後継者とすることができない場合があります。
そこで、M&Aによって医療法人・病院を引き継いでくれる第三者を広く募り、廃業を避けて運営をしていくという選択肢が有効であると考えられます。

人材獲得のためのM&A

人材の確保を目的としたM&Aも増えていくことが予想されます。
先ほど見たように、医療業では慢性的な専門人材の不足に陥っているため、求人を出しても優秀な人材を獲得することが難しいケースがあります。

M&Aによって医療法人・病院を買収することによって、売却側で勤務する医師や看護師といった専門人材を獲得することができます。

多角化を目的としたM&A

事業の多角化を目的としたM&Aも増えていくことが予想されます。
医療法人・病院のM&Aにおける多角化には、新規エリアへの参入や診療科目の追加が考えられます。

既に事業を運営している医療法人・病院をM&Aにより買収することによって、既存の設備や患者を引き継ぐことができ、新規エリアへの事業展開を素早く行うことができます。
また、既存の事業では行っていない診療科目を運営する医療法人・病院を買収することによって専門性を持った人材を確保でき、診療科目を増やすことができます。

M&Aの最新のトレンドについては以下の記事も参考にしてみてください。

【2024年最新版】M&A業界の今後の動向と展望...

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医療法人・病院M&Aの基本スキーム

医療法人(病院) m&a

ここまでは、医療法人におけるM&Aの動向と今後の予測について見てきました。
一方で、医療法人・病院のM&Aにおいては、その特性からスキームが限られています。

この章では、医療法人・病院のM&Aにおけるスキームについて解説をしていきます。

医療法人・病院M&Aの特徴とポイント

医療法人・病院のM&Aは、一般的なM&Aとは異なる部分があるため、ポイントを正しく押さえておく必要があります。
特に出資持分は重要なポイントではありますが、医院を開業している医師自身も正しく把握していないケースが多いため、M&Aを検討する際はあらためて知識を整理しておくとよいでしょう。

病院・医療法人の非営利性

病院を開設しようとする医師・歯科医個人および法人と、診療所を開設しようとする法人は、都道府県知事の許可が必要です。
このとき、営利目的による開設と判断されれば開設許可は下りません。

つまり、営利企業は開設者となることができないとされており、医療法人や公益法人、学校法人、厚生農業協同組合連合会など、非営利性が規定されている法人だけが病院・診療所を開設できることとなっています。

病院・医療法人の持分ありと持分なしとは

病院・医療法人は、出資持分ありの医療法人と出資持分なしの医療法人に分かれます。

出資持分ありとは、医療法人を設立する時にお金を出した人(出資者)が、その医療法人に対して財産権を持っていることです。これに対して、出資者が財産権を持たない場合は、出資持分なしとなります。

地域医療の安定化と医療法人の非営利性の徹底を図るため、2007年の医療法改正により持分あり医療法人の新規開設はできなくなりました。
現在、既存の持分あり医療法人は当面の間は存続可能とされていて、持分なし医療法人への移行は自主的な判断に任されています。

医療法人・病院M&Aの基本スキーム

医療法人・病院のM&Aでは主に以下の5つのスキームの中から最適な手法を選択する必要があります。

  • 持分譲渡
  • 出資の払い戻し(社員の入退社)
  • 合併
  • 分割
  • 事業譲渡
  • ここからそれぞれのスキームについて詳細に解説していきます。

    持分譲渡

    1つ目のスキームとして持分譲渡によるM&Aの方法について解説をしていきます。

    持分譲渡によるM&Aは、売り手の医療法人の社員の持分を買い手側が買い取るスキームです。
    持分を譲渡するスキームであるため、持分ありの医療法人の事業承継においてのみ用いることができる手法です。

    ここでいう社員とは、株式会社でいう株主のことを指しており、医療法人で働く職員ではないことに注意してください。

    出資持分は株式会社の株式と同等の意味を持つため、持分の過半数を占めることができれば経営権の取得ができます。

    出資の払戻し(社員の入退社)

    こちらのスキームは、持分譲渡とは逆で、持分なし医療法人のM&Aで用いられる手法です。
    売却側の社員にやめてもらい、代わりとして買収側の社員がその地位に就くことで過半数の議決権を得ます。

    売却側の社員に対しては、退職金という形で対価を支払うことになります。

    合併

    合併によるM&Aの手法は、出資持分のありなしにかかわらずに用いることができるスキームで、複数の医療法人を1つの法人に合併する手法です。
    新設合併と吸収合併の2つの方法があります。

    新設合併では、2つ以上の法人が合併することで新しい法人を設立します。
    一方で、吸収合併では、どちらか一方の法人が存続することとなり、もう一方の法人が解散手続きを経ることなる消滅することとなります。

    合併によるM&Aの場合は、医療審議会を経て各都道府県の許可を取得する必要があるため、ここまで見てきた出資持分の譲渡等のスキームと比較して時間がかかってしまう傾向があります。

    分割

    特定の事業のみを分割して、他の医療法人に引き継ぐ手法です。
    合併と違い、医療法人全体ではなく一部の事業・権利のみを譲渡することができるため柔軟な取引を行えます。

    分割においても新設分割と吸収分割の2つの方法があります。

    新設分割では、譲渡対象となる事業を新設の医療法人に引き継ぎます。
    一方で吸収分割では、譲渡の対象となる事業を既存の医療法人に引き継ぎます。

    事業譲渡

    医療法人の事業のうち、一部または全部の事業を譲渡するスキームです。
    事業譲渡は株式会社などの一般的な営利法人のM&Aでもよく見られるスキームであり、医療法人のM&Aにおいても用いることができる手法です。

    事業譲渡の場合は、特定の事業に関する権利義務などを個別に取り決めて譲渡することが可能です。
    医療法人においては、分院展開している場合によく用いられる手法です。

    事業譲渡の場合は、先に示した通り事業のどの範囲までを譲渡するのかやどのように権利義務等を移転するのかを個別に取り決めを行う必要があるため、十分な検討と期間を持って進めていく必要があります。

    M&Aの手法については以下の記事にもまとまっています。是非参考にしてみてください。

    M&Aスキームを徹底解説:各種手法をわかりや...

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    医療法人・病院M&Aにおける成功戦略

    医療法人(病院) m&a

    ここまで、医療法人・病院のM&Aの動向や今後の予測、具体的なスキームについて解説してきました。

    ここからは、実際に医療法人・病院のM&Aを実施するにあたっての成功戦略について解説をしてきます。

    売却側企業における成功戦略

    まずは売却側企業の成功戦略について解説していきます。

    早くから検討を始める

    医療法人・病院のM&Aを行うにあたっては、できるだけ早期に検討を開始することが非常に重要です。

    医療法人・病院のM&Aにおいては、先に示した通り、いくつかのスキームの中から最適なスキームを選択し進めていく必要があります。
    また、選択するスキームによっては、通常のM&Aと比較して進行に時間を要することを理解しておく必要があります。

    できるだけ早期に検討を開始することで、自らの条件にマッチするお相手と出会える確率が上がる可能性も高められることでしょう。

    経営状況を把握する

    M&Aを行う前に、譲渡の対象となる事業の状態をできるだけ正確に把握する必要があります。
    例えば、譲渡の対象となる事業の利益率や稼働率を詳細までしっかりと分析しておくとよいでしょう。

    早めに経営状態を把握することができれば、M&Aの交渉に入る前に対策を取ることができるため、結果的に希望に合った価格での売却が可能になります。

    専門家に相談する

    M&Aにより事業を売却するには、かなり多くの手続きが必要です。
    特に医療法人・病院のM&Aでは複数のスキームの中から最適な手法を選択して進めていく必要があります。
    また、多くの場合は医師が理事長となっていることから、通常業務をこなしながらM&Aを進めていくことはかなり難しいといえるでしょう。

    また、医療法人・病院の業界に精通する支援機関に相談することで、自らでは気づくことが難しい評価材料を見出すことや有益な情報を得ることが可能です。
    納得のいくM&Aを実現するには、早い段階で適切な支援機関に相談することが大切です。

    M&Aナビでは、医療業界のご支援の実績も豊富にございます。
    まずはご相談からでも構いませんので、お気軽にご連絡ください。

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    買収側企業における成功戦略

    次は、事業を譲受する側の成功戦略について見ていきましょう。

    今後、事業を拡大したい医療法人・病院関係者は必見です。

    目的を明確にする

    医療法人・病院のM&Aに限定したことではないですが、M&Aによる買収を成功させるには買収の目的を明確にしておく必要があります。

    特に、医療業界では活発にM&Aが行われている業界ですので、M&Aを検討するにあたっては常に素早い意思決定が求められます。
    素早い意思決定のためには、買収によってどのような価値を得たいかといった目的を明確にし、戦略に落とし込む必要があります。

    買収先の選定と交渉を慎重に行う

    目的が明確になったら、買収先の選定と交渉を行っていきますが、この点もかなり重要なポイントとなります。

    医療法人・病院のM&Aにおいては、様々なスキームを検討することができるため、自社の事業戦略にとって最も良い手法を選択する必要があります。

    素早く意思決定を行う

    医療業界では活発にM&Aが行われているため、素早い意思決定を行うことがM&Aの成功の重要な1つであることは言うまでもないでしょう。

    特に、持分ありの医療法人は新設ができない状態になっているため、譲受を希望する事業者が多く存在しています。
    そんな環境の中で買収目的に沿ったよい条件での譲受を成功させるには素早く意思決定を行うことが重要です。

    医療法人・病院M&Aのメリットとデメリット

    医療法人(病院) m&a

    ここからは、医療法人・病院がM&Aをする上でのメリットとデメリットを解説していきます。

    売却側と買収側のそれぞれで解説をしていきますのでチェックしてみてください。

    売却側:医療法人・病院M&Aにおける3つのメリット

    まずは売却側のメリットについて3つご紹介していきます。

    後継者不在問題の解決になる

    M&Aにより第三者に承継をすることで後継者不在問題の解決につながります。
    医療業界は他業界と比較しても高齢化が進んでいるため、M&Aが有効な手段と考えられます。

    職員の雇用継続が可能

    M&Aにより第三者に承継することで廃業を防ぐことができ、職員の雇用を継続することができます。
    廃業をしてしまうと、これまで長く働いてきたスタッフを解雇しなければならないため、雇用先の確保を目的としてM&Aを実施することは有効な手段です。

    持続可能な地域医療への貢献ができる

    医療法人・病院の廃業は地域医療の空白を生み出すことになり社会的な影響が大きく残ります。
    地域の病院やクリニックはその地域の住民にとって必要不可欠な存在であり、廃業によって医療の空白を生み出すことは避けなければなりません。

    特に医療は地域差が大きくあるといわれており、地方では病院・クリニックが不足している状況にあります。
    M&Aによって医療法人・病院を存続させることができれば、持続可能な地域医療への貢献となります。

    売却側:医療法人・病院M&Aにおけるの2つのデメリット

    ここまで売却側のメリットを見てきましたが、実際にはいくつかデメリットもあります。

    廃業と比較すると時間・負担がかかる

    M&Aは通常業務をこなしながら進めていくことになるため、負担がかかります。

    また、医療法人・病院のM&Aにおいては、選択するスキームによって時間を要する場合があります。

    専門家に対する手数料がかかる

    M&Aのプロである専門家にサポートを依頼する場合、専門家に支払う手数料が発生します。

    最近では医療業界に特化したM&A会社も増えてきていますが、手数料は高額になってしまうことが多いです。

    M&Aナビであれば手数料を含め無料で相談を受け付けていますのでお気軽に相談してください。

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    買収側:医療法人・病院M&Aにおけるの3つのメリット

    ここまでは、売却側のメリットとデメリットについて解説してきました。
    ここからは買収側のメリットとデメリットを見ていきます。

    まずはメリットから紹介します。

    医師・看護師などの専門人材の確保ができる

    売却側の職員をそのまま引き継ぐことができると、医師・看護師などの専門人材を手早く獲得することができます。

    医療業界は慢性的な人手不足に陥っているため、採用活動を行っても十分に人材を獲得できないこともある中、M&Aであれば優秀な人材を確保することができます。

    医療サービスの向上ができる

    買収によってグループを拡大することができるため、顧客に提供できる医療サービスの向上につながります。

    具体的には、病床数の増加や診療科目の拡大が期待できます。
    新規で医療法人・病院を立ち上げるよりも低コストで規模を拡大できるため有効な手段といえるでしょう。

    新規エリアへの事業展開ができる

    医療法人・病院を新規で解説する場合、該当する都道府県から許可を得る必要があり時間やコストがかかります。
    また、場合によっては、新規開設や増床が許可されないケースもあります。

    M&Aによって買収を行う場合、すで運営している事業を譲受するため新規エリアへの展開が比較的容易に低コストでできます。

    買収側:医療法人・病院M&Aにおけるの2つのデメリット

    ここからは、医療法人・病院のM&Aにおける買収側のデメリットについて解説します。

    統合がうまくいかないリスクがある

    M&Aでは、これまで全く異なる事業主体で運営していた事業を統合する必要があるため、統合がうまくいかないリスクがあります。
    統合がうまくいかないと、当初の目的としていた通りの期待効果が得られない可能性が高まります。

    医療法人・病院のM&Aにおいては、統合後の離職の増加などは大きな損失となるため注意して進める必要があります。

    持ち分ありの場合は多額の相続税がかかるリスクがある

    医療法人では、配当が禁止されていることから内部留保が形成され、出資持分の評価額が大きくなりやすい状況にあります。
    そのため、持分あり医療法人を承継した場合、相続税が多額になるリスクがあります。

    退職金の支給等の手段によって対策することが可能ですので、専門家への相談を行いましょう。

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    病院M&A成功のための重要ポイント4つ

    医療法人(病院) m&a

    ここからは病院M&Aを成功させるための重要なポイントを4つ解説してきます。

    医療法人・病院に特有のポイントがあるため正しく抑えておく必要があります。

    病院・医療法人の非営利性

    病院を開設しようとする場合、まず、都道府県による行政の許可が必要です。
    許可を受けるにあたっては営利目的であると判断された場合には、開設許可を受けることはできません。
    つまり、一般の営利企業は病院開設者にはなれないということがここからわかります。

    ただし、例外措置として企業が福利厚生の一環として従業員のために医療を提供する場合においては開設が認められます。

    持分あり医療法人と持分なし医療法人

    病院・医療法人は、出資持分ありの医療法人と出資持分なしの医療法人に分かれます。
    出資持分あり医療法人とは、医療法人を設立する時にお金を出した人が、その医療法人に対して財産権を持っていることです。

    これに対して、出資者が財産権を持たない場合は、出資持分なしとなります。

    2007年の法改正により、新規で出資持分あり医療法人の設立ができなくなりました。
    そのため、2007年の法改正以降に設立された医療法人はすべて出資持分なし医療法人となります。

    特定医療法人と社会医療法人

    医療法人には、持分あり持分なしのほかにも、特定医療法人と社会医療法人というという概念があります。

    特定医療法人は、国税庁長官の承認があればなれる医療法人です。
    法人税の軽減税率適用など、税制上の優遇措置が受けられる医療法人です。

    社会医療法人は、都道府県知事の認定を受けるとなれる医療法人です。
    社会医療法人は、継続して良質かつ適切な医療を 効率的に提供する体制の確保を図るために創設された制度であり、通常の医療以外に以下のような公的医療行為にも携わることになります。

  • 救急医療
  • 災害時の医療
  • 周産期医療
  • へき地医療
  • 社会医療法人は第一種社会福祉事業の運営を認められますし、医療法に定める収益業務を行うこともできます。
    一方で、認定要件は厳格であり、都道府県医療審議会の聴聞を経て都道府県知事によって認定されます。

    病院・医療法人のM&Aは開設主体によって手続きが異なる

    病院・医療法人は、その開設主体が多様である点も特徴です。
    開設主体は、公的部門と民間部門の2種類に大きく分けられ、公的部門は、国・都道府県・市町村といった公共団体が開設主体となる場合です。
    一方で、民間部門は医療法人・社会福祉法人・公益法人および企業・個人といった民間や個人が開設主体となる場合です。

    上記に挙げた開設主体の種類により許認可などの届出の提出先などが変わりますので、注意が必要です。

    医療・病院業界のM&A成功事例4選

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    ここまでは医療法人・病院のM&Aについて動向や今後の予測、ポイントについて見てきました。
    ここからは、医療法人・病院の実際のM&A事例を紹介していきます。

    ①沖縄徳洲会による木下会の吸収合併

    2019年12月、医療法人沖縄徳洲会は、社会医療法人社団木下会を吸収合併したことを公表しました。
    沖縄徳洲会は、経営の合理化やコンプライアンス・ガバナンスの強化を目的としたM&Aだとしています。

    ②日本赤十字社による兵庫県立柏原病院および柏原赤十字病院の統合再編

    2019年7月、日本赤十字社グループは兵庫県立柏原病院と柏原赤十字病院を統合再編することを公表しました。

    今回の再編は、地域で課題となっていた急性期から回復期までの幅広い医療の提供を実現することを目的としているとされています。
    統合後は新病院「兵庫県立丹波医療センター」が設立され、地域社会に対して更なる医療サービスの提供を推進していくこととされています。

    ③医療法人社団博洋会による事業再建中の藤井病院の事業を医療法人社団竜山会への譲渡

    2021年8月、医療法人博洋会が石川県金沢市の藤井病院を医療法人の竜山会に事業譲渡したことを公表しました。
    博洋会は、保健医療機関の取り消し処分を受けており、地域医療サービスとスタッフの雇用継続のため、藤井病院を竜山会に事業譲渡しました。

    ④JA埼玉県厚生連が2病院を北斗と巨樹の会へ譲渡

    2016年1月、JA埼玉県厚生連は熊谷総合病院と久喜総合病院の事業譲渡を公表しました。
    熊谷総合病院は北都が新設する医療法人に、久喜総合病院はカマチグループの一般社団法人巨樹の会にそれぞれ売却するとされました。

    北斗は、北海道の十勝を中心としてクリニックや介護施設などを運営している社会医療法人で、本M&Aまでは十勝以外の場所に進出したことはありませんでした。
    また、カマチグループは九州・山口を中心に病院等の運営を行う医療グループです。

    JA埼玉県厚生連が事業譲渡する背景には、医師不足による経営の悪化に加えて、設備投資の負担が重くのしかかったことにより経営が立ち行かなくなったことが原因と考えられています。

    M&Aの成功事例と失敗事例については、以下の記事にもまとまっています。こちらの記事も参考にしてみてください。

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    M&Aナビに掲載中の病院のM&A案件

    弊社が運営するM&Aナビには、医療法人・病院の事業者様から売却や買収のご相談をいただくことが増えてきました。
    そこでM&Aナビに掲載いただいている医療法人・病院のM&A案件をまとめた特集ページを用意いたしました。

    医療法人・病院のM&Aにご興味がある方はぜひのぞいてみてください。

    >>医療法人・病院のM&A案件特集を見る

    医療法人・病院M&Aのまとめ

    医療法人(病院) m&a

    本記事では、医療法人・病院のM&Aについて解説しました。
    医療業界では、後継者不在による売却や新規開設を目的とした買収など盛んにM&Aが行われています。

    医療法人・病院のM&Aでは、その特殊性から様々なスキームがあることやメリットデメリットがあることを見てきました。
    今後医療業界でM&Aを検討される際は是非参考にしてみてください。

    医療法人・病院のM&Aは専門家の支援を受けることでスムーズに成約を実現することができます。
    M&Aナビでは医療法人・病院のM&Aの支援実績も豊富にありますので、どんなことでも相談いただけます。

    またM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。

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