会社を売却したあとの従業員・社員・役員への影響と待遇についてのまとめ

2020年09月13日

M&Aで会社を売却・事業を譲渡した際に、引き継いだ先の会社で、今まで働いていた従業員・社員にどのような影響がでるのか心配になります。さらに、役員ならびに経営オーナー自身の影響についても気になるところです。

そこで、この記事では、買収された側の従業員・社員への影響・待遇についてまとめました。

納得のいくM&A・事業承継を実現したいと考えている中小企業の経営オーナーの皆さまは、ぜひ参考にしてください。

M&Aの主な売却手段について

中小企業のM&Aでは、主に「株式譲渡」と「事業譲渡」という2種類があります。

株式譲渡とは、会社の経営権と所有権をすべて移譲するために、売手オーナーが自社株式の100%、もしくは過半数を第三者に売却するものです。中小企業においては、社長がオーナー(100%株主)であることが多いため「社長が持っている株式を第三者にすべて売却する」と考えていただくとわかりやすいでしょう。

一方、事業譲渡とは、売手オーナー企業が事業の選択と集中を行うため、特定の事業を第三者企業に売却するものです。たとえば、ある会社がアパレルショップと飲食店の事業を営んでおり、アパレル事業に集中するために飲食店事業のみを手放す、といったケースが当てはまります。

それぞれの手法における、メリット・デメリットについては、ご興味があれば下記の記事をご覧ください。

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中小企業のM&Aでは、上述した「株式譲渡」による会社売却がほとんどです。なので、本記事では、株式譲渡を行うことによって、譲渡される企業の社内にもたらす影響についてご紹介したいと思います。

従業員・社員への影響について

従業員・社員のみなさんがまず気にするポイントは2点で、「今後も働き続けるけることができるのか?」、そして「労働条件の待遇が”良くなるのか?” or “悪くなるのか?” or “何も変わらないのか?”」です。労働条件が良くなる、ということは、わかりやすい例で言うと「給与が上がる」といったことなどです。逆に労働条件が悪くなるといった例だと、「勤務地が変更されて会社の往復時間が増えた」といったことなどがあげられます。

こういった従業員・社員の行く末は、最終的には買収先の意向で決まります。ただ、中小企業におけるM&Aの多くは、従業員・社員の雇用は維持されます。
さらに、給与が上がったり、譲受企業先でよりよい処遇を受けたりするケースも多々ございます。

M&A後の従業員・社員の待遇が良くなる理由

なぜ、維持されることが一般的なのか。その理由としては、主に2つあげられます。

1つ目は、買手企業は基本的に売手オーナーよりも会社の規模が大きいことによる要因です。規模の大きい会社のほうが、給与水準が高いことと、売手オーナー企業にいた従業員・社員の給与形態は、買手企業の給与形態に合わせることが多いため、結果給与が良くなるケースが中小企業のM&Aではとても多いです。

2つ目は、ノウハウ・スキルを持っている従業員・社員は、スペシャリストとして優遇されることが多いからです。これは買手企業の買収戦略に大きく左右されますが、買手企業が業務ノウハウやスキルを持った人材も同時に獲得することも目的にしていれば、即戦力として雇用が継続され、優遇されます。

そもそも、中小企業のM&Aが成約するケースで考えると、

  • 売手企業の従業員・社員が不利な状況になるM&Aを、売手オーナーが望まないため、M&A自体が成立しない
  • 買手が買収する「事業」や「会社」は、働く人に依存する確率が高く、従業員を失うと買収後の目的が達成されなくなる。
  • 買手側が売手側の従業員数に不満を感じても、日本の労働法から考えて解雇が難しい。トラブルを避けるためにも、リスクを避ける買手が多い。

こういった理由が考えられるため、買手企業側も売手企業の従業員・社員に対し、しっかりとした雇用を維持することが多いです。

M&A後の従業員・社員に対するリスク

次に考えなければいけないことは、たとえ買手側に従業員の雇用の確約を取り付けたとしても、従業員のモチベーションが損なわれてしまえば、意味がありません。従業員のモチベーションが下がってしまうと、それは「会社を去っていく」ことにもつながる可能性を秘めています。

そのような事態を避けるためにも、会社を売却することを従業員・社員に公開する前と後に分けて準備をすることが大切です。以下重要なポイントを整理してみます。

譲渡を公開する前

従業員に不安を感じさせることのないよう、

  • 機密保持の徹底
  • 適切な手順を踏んだ交渉
  • 譲渡することを共有するタイミングの精査
  • 最適な譲渡先の選定
  • 契約条件の詳しい確認

譲渡を公開した後

発表後に従業員がマイナスの印象を受けないよう、

  • 従業員を納得させられるだけの譲渡理由の説明
  • 譲渡後の指針や雇用状況の適切な説明
  • 新たなオーナーの元で働くことに関するメリットの明示

以上のような配慮が必要となります。

従業員・社員に公開するタイミングは以下にまとめているので、ご興味があればご覧ください。

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経営オーナーへの影響について

代表者の引き継ぎについて


一般的には、株式譲渡によって所有権および経営権が他者に移ると、買手企業から代表者(代表取締役)が選出されます。

ただ、代表者が変わっても、現実的にはすぐ新体制として動き出せるわけではありません。まずは、事業内容の理解や従業員のスキル把握など、現状を理解した上で、ようやく新たな事業計画の設計や戦略実行に移ることができます。

よって、売手企業の代表者が引継ぎや助言の役を務めるために、しばらくの間(1~2年ほど)会社に留まる例も多くあります。

なお、代表者を始めとした会社のキーマンの処遇については、M&Aの交渉過程で交わされる「基本合意契約書」や「譲渡契約書」等による書面合意をしておくことが大変重要です。この点は従業員に対する処遇の確約とも共通しています。

売却益について

その他に代表者に対して発生するものとして、株式譲渡時の「売却益」が挙げられます。

企業の買収価格算定にはいくつかありますが、算定方法についてはこちらの記事をご覧ください。

会社の売却価格はどうやって決まるのか?企業評価...

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こうして算定された価格によって株式の売買が行われ、代表者には利益が生じます。

この売却益から税金が引かれた金額が、最終的に手元に残るお金となります。

(株式譲渡の税率は、株式譲渡益に対して20.315%で一定です。なお、株式の売却に要したM&A専門会社や外部アドバイザーに対する報酬は株式譲渡益の計算から控除することができます。)

退職金について

M&Aで会社売却が行われた場合、売手オーナーへの退職金はどうなるのでしょうか。

売手オーナの退職金で注目すべきは、従業員の退職金と大きく異なる点が2点あるということです。

1. 売手オーナーの退職慰労金は契約上の絶対的な約束ではない
売手オーナーの退職慰労金は、雇用契約や任用契約上の会社との約束ではなく、株主総会で承認されて初めて支給が行われます。つまり、役員任用契約内に退職慰労金の記載があったとしても、株主総会次第では支給されない可能性も出てくるということです。

2. 退職慰労金を有効活用することで手元に残るキャッシュを最大化させることができる
会社が売手オーナーに対して退職慰労金を支給すれば、そのぶん会社に残る現金は減少します。
そうなると、会社の企業価値も減少するため、株式譲渡時の売却価額も減ることになります。
よって、「売手オーナが退職慰労金を得る」→「その分売却益が減少」となり、M&Aによって受け取る額面上の総額は大きく変わらないということになります。

ただし、金額にもよりますが退職金は株式譲渡益に比べて税務的に優遇されることがあります。
また、買手企業にとって、株式譲渡にかかるお金は「買手企業がキャッシュで用意する」必要がありますが、「役員退職慰労金 + 株式買収金」のうち役員退職金は売手企業のキャッシュから出すことができるため、買手企業のキャッシュアウトを抑えることができます。

つまり、役員退職慰労金をうまく活用することで、代表者にとっても買手企業にとってもメリットあるM&Aを行える可能性が出てきます。

企業の買収価格算定にはいくつかありますが、算定方法についてはこちらの記事をご覧ください。

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債務に対する個人保証について


オーナー経営の中小企業の場合、経営者が金融機関からの借り入れ等の債務に対して連帯保証や担保提供を行っていることが多く見受けられます。

M&Aによる会社の譲渡となると、借り入れによる債務も丸ごと買手側企業が引き継ぐ契約にすることが一般的です。

譲渡と同時に、正しく金融機関との手続きを行うことで、経営者は長年縛られてきた債務から解放されることができます。

役員への影響について

役員雇用はどうなるのか

「従業員・社員への影響について」でお伝えした通り、中小企業の経営を因数分解していくと、人材に依存する面は比較的大きくなります。

そのため、中小企業のM&Aを行う際は、役員についても一定期間の雇用継続が条件として盛り込まれたり、社名や勤務地についても一定期間はそのままにするというケースが多いです。

役員に関して問題になりやすいケース

中堅中小のオーナー企業で後継者不在を理由に会社売却を考えている場合、会社の役員も同じく引退の年齢に近づいているケースが通常です。

そこで問題となるのが、役員の「退職慰労金」です。

前述の通り、役員の退職慰労金は株主総会での決議事項となる点が、普通の従業員の退職金とは大きく異なります。

長い間ともに歩んできた役員との間の問題発生を未然に防ぐためにも事前に合意しておく必要があります。

まとめ

この記事では、株式譲渡が売手企業の内部へ与える影響について説明しました。
つまるところ、M&Aでは、従業員・社員・役員・売手オーナー等各方面への配慮が不可欠ということがこの記事で伝わったかと存じます。
M&Aに対する疑問が少しでも軽減されたら幸いです。

  • 社内への影響についてもっと詳しく聞いてみたい
  • 売却にあたって他にどんなことを考えるべきか知りたい

この記事を読み、上記のような思いを持った方はいませんか?

また、

  • M&Aを検討しているが、何から考えたらいいのかわからない
  • 会社の将来に漠然とした不安があるが、相談相手が見つからない

こうした不安を感じている経営者の方も少なくはないのではないでしょうか?

会社を売却するにあたって考えるべきことはたくさんありますが、数多くの先例や成功事例もあります。
わからないことやご質問などがあれば、いつでもお気軽にM&Aナビにご相談ください。
M&Aを数多く支援してきた経験豊富なアドバイザーが無料で何度でもご相談を承ります。

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