M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?デューデリジェンスの基礎と注意点を解説!

2024年03月13日

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M&Aを実施する買手にとっては、買収の対象となる企業がどのような状態にあるかを把握するのは非常に重要です。
たとえば、経営は健全で将来性があるか、訴訟やトラブルに巻き込まれていないか、税金をきちんと納付しているかなどがその典型です。
M&Aを完了させる前に、これらの情報を調査する方法が「デューデリジェンス(DD)」です。

デューデリジェンスが成功すれば、買手は安心してM&Aを実施することができるので、売手にとって会社の売却を成功させる大きなチャンスになります
そこで今回は、デューデリジェンスについての基本的な知識や、実施する場合の注意点などを解説します。

デューデリジェンスの目的や期間

M&Aを実施する中で、なぜデューデリジェンスを行うべきなのでしょうか。また、デューデリジェンスを実施するには、どれくらいの期間が必要なのでしょうか。

デューデリジェンスの目的

M&Aにおいてデューデリジェンスをおこなう主な目的は、以下のとおりです。

  • M&Aを実施するにあたって、どのようなリスクがあるかを確認
  • 買収価格が適切かどうかを確認
  • 買収後の成長の可能性やシナジー効果など、企業価値の確認

この中でも特に重要なのが、M&Aにあたってどのようなリスクがあるかを確認することです。

もしデューデリジェンスを行わずにM&Aを実施すると、当初は把握していなかった問題点が後になって明らかになり、事業に多大な損失を与える可能性があります。
しかし、適切なデューデリジェンスによってあらかじめリスクを把握しておけば、適切な改善策を早い段階で検討できます。
それによって、M&Aに伴って発生するリスクを最小限に抑えられるのです

デューデリジェンスの期間

デューデリジェンスを実施する期間に明確な定めはありませんが、目安としては、中小企業はスムーズに行けば1〜2週間程度で終わらせることができる場合があります
企業の規模が大きくなるほど調査する項目が増えるので、デューデリジェンスにも時間がかかります。
大企業の場合は1〜2か月程度かかることもあるでしょう。

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デューデリジェンスの種類

デューデリジェンスの方法は1つではなく、目的によってさまざまな種類があるのが特徴です。デューデリジェンスの主な種類を解説します。

事業(ビジネス)デューデリジェンス

対象企業が実施する事業を調査します。
事業の将来性があるか、経営計画を実現できる可能性がどのくらいか、対象企業の事業がやM&Aの目的と適合しているかなどを確認します。

事業デューデリジェンスを実施すると、買収後の収益力やシナジー効果などを把握しやすくなります。
また、対象企業自体を調査するだけでなく、市場における企業の立ち位置や、市場全体の評価をおこなう場合もあります。

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税務デューデリジェンス

対象企業が納税などの税務処理をきちんと行っているかを調査します。
申告漏れがあると財務に影響があるだけでなく、脱税が発覚すれば大きなリスクになるからです。

法人税や事業税などの各種課税について適切な申告・納税を行っているか、組織再編に伴う税務の取り扱いに問題がないか、繰越欠損金をきちんと処理しているかなどを調査します。

法務デューデリジェンス

対象企業が法的な問題を抱えていないかを調査します。
法的な問題がある場合、訴訟や和解などに費用や時間が消費され、経営に悪影響を及ぼすからです。
特に、契約違反や権利侵害などによって多額の損害賠償を請求されていないかや、特許権侵害などを理由に訴訟を抱えていないかなどが重要です。

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財務デューデリジェンス

対象企業の財政について調査します。
主な調査目的は2種類あり、将来的にどの程度の収益が見込めるかというプラス面と、不正な経理や取引をしていないかのマイナス面があります。
主な調査項目は不動産や株式などの資産や、借り入れや保証などの債務です。
企業が保有する貸借対照表や損益計算書などが主な手がかりになります。

人事デューデリジェンス

対象企業の人事やマネジメントについて調査します。
主な調査項目は従業員数、労働条件、人事制度、人件費、人事システム、労使関係などです。
人事デューデリジェンスを実施することで、M&Aの後の組織再編をスムーズに行いやすくなります。
また、M&Aにともなう社員のモチベーション低下や、異なる企業間の摩擦などのリスクに備えることができます。

ITデューデリジェンス

対象企業のITシステムの調査を行います。
調査対象となるシステムは財務会計、人事労務、顧客管理、販売管理などです。
データ移行にどの程度の工程やコストがかかるか、ライセンス費用が発生するか、システムの統合が可能かなどを検討します。

ITデューデリジェンスによって買手と売手の既存のシステムを効率よく統合できれば、システム構築にかかるコストを最小限に抑えることにつながります。

デューデリジェンスの流れ

デューデリジェンスを実施する場合、一般的な流れは以下のようになります。

  • 1.デューデリジェンスの担当の決定
  • 2.調査範囲を確定する
  • 3.資料の入手と分析
  • 4.調査・インタビューと報告書の作成

それぞれの項目ごとに解説していきます。

デューデリジェンスの担当の決定

デューデリジェンスを実施する担当を決定するフェーズです。
社内の人間だけで実施する場合は、専門部署の担当者などに業務を命じます。

弁護士や税理士など、日頃から顧問契約を締結している専門家にデューデリジェンスの実施を依頼する場合もあります。
デューデリジェンスやM&Aに精通したM&Aアドバイザーに依頼する場合も、この段階で行います。

調査範囲を確定する

デューデリジェンスの基本的な方針や、調査対象となる項目を特定すフェーズです。
対象となる企業の特性・業種、買収にあたって買手が重要視するポイント、予算やスケジュールなどの要素が影響します。

資料の入手と分析

買手が売手に対して、デューデリジェンスに必要な資料の開示を要請するフェーズです。
質問状を作成して回答を求めることもあります。
資料や回答を入手した後は、それらの情報をもとに専門家やM&Aエージェントなどの担当者が分析を行います。

調査・インタビューと報告書の作成

デューデリジェンスの対象企業に対して調査やインタビューを実施するフェーズです。
実際に会社に行って調査をしたり、経営陣にインタビューをしたりすることで、資料だけでは把握できない情報を把握します。
インタビューでは、経営に対する考え方や企業理念などを把握します。
書類だけではわかりにくい事項について直接確認することができるので、疑問点の解消やリスクの可視化などに効果的です。
最後に、資料の分析結果や調査・インタビューから得られた情報をもとに、デューデリジェンスの報告書を作成します。

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デューデリジェンスの注意点

デューデリジェンスを成功させるには、実施するタイミングをきちんと把握することが大切です。
また、デューデリジェンスをする前に必要な準備を済ませておくことも重要です。それぞれ解説していきましょう。

デューデリジェンスを実施するタイミング

M&Aにおいてデューデリジェンスを実施すべきタイミングは、基本合意契約を締結した後で、かつ最終合意契約をするまでの間です。
基本合意契約の締結から1か月程度が目安になります。
デューデリジェンスにはまとまった費用や時間がかかるため、なるべく早く済ませたいと考えがちです。
しかし、実施するタイミングが早すぎると、会社が潰れるのではないかなどとあらぬ噂が流れて、社員や取引先に動揺が広がるおそれがあります。
かといって、実施するタイミングが遅すぎると、せっかく見つけた相手が別の買手によって買収されてしまう可能性があります。
デューデリジェンスを成功させるには、早すぎず遅すぎずのタイミングを見極めることが重要です。

そのためにはM&A全体を視野に入れて適切なタイミングを図ることができる、M&Aアドバイザーに任せるのがおすすめです。

デューデリジェンス前にどんな準備をしておくといいのか?

デューデリジェンスを成功させるには、良い情報だけでなく悪い情報も含めて、売手が正確な情報を伝えることが重要です。
そのためには、買手に伝えるべき情報をリスクも含めてリストアップしておくのが大切です。
売却を成功させたいあまりに、つい良い情報だけを提供したくなるかもしれません。
しかし、事前に伝えておかなかった悪い情報が現地調査などの段階で発覚すると、買手が不信感を抱いて交渉に悪影響を及ぼす可能性があります。
売手としてデューデリジェンスに携わる場合、リスクも含めてきちんと情報を提供することが大切です

適切なデューデリジェンスにはアドバイザリーの存在が欠かせない

デューデリジェンスとは、対象企業の経営状態や抱えているリスクなどについて調査する手続です。
デューデリジェンスを実施すると、どのようなリスクがあるかを把握したうえでM&Aを実行できるようになります。

またデューデリジェンスには複数の種類があります。財務状態を把握するための財務デューデリジェンスや、訴訟などの法的なトラブルの有無を調査する法務デューデリジェンスなどです。
適切なデューデリジェンスによって、M&Aが成功することを願います。

またM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。

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