M&A・会社買収における注意点・リスクについて徹底解説

2024年03月13日

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M&Aで会社や事業を買収するときの煩雑な業務は、買手にとって非常に大きな負担です。
長い手続きの中では、買収検討時には思いもしなかった課題が見つかることもありますし、M&Aによる買収成功が目の前にありながら破談となってしまうこともあります。
また、買収が成功しても、統合後に発覚した新たな問題に悩まされることもあります。

今回は買手側の視点から、M&Aにおいて起こり得る問題とそれを避けるために気を付ける注意点について、確認してみましょう

M&Aでの買手側の注意点

企業や事業の買収を行う際、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。
以下に買手側が実際に起こしてしまいがちな失敗をいくつかご紹介します。

M&Aの目的が明確化できていない状態でのM&Aを実行しない

対象となる売手企業や事業を手に入れることによって何を実現するのか。
そのビジョンを明確にせず、M&Aを実行することだけにフォーカスしているケースがあります。

M&Aはあくまで経営戦略の一部であり、目的ではなく手段です。
この捉え方を間違え、ビジョンがあやふやなまま手続きを進めても、統合後の経営は上手く進められません。

「本来の目的は何であったのか」
この点をしっかりと確認した上で、必要なプロセスや適したM&Aの手法を逆算して考えましょう。

譲渡企業を慎重に選定する

お店で何か商品を選ぶ自分の姿を想像してみてください。
例えば、家具を一つ買うとしましょう。
あなたは、「机が欲しいな」とぼんやりと思いながら立ち寄ったとある家具店で、デザインが自分好みのものを見つけ、そのまま勢いよく購入してしまいます。
お気に入りの家具が手に入ったことを喜び、勇み足で家に帰り、実際に机を置こうとした時にはじめて、
「この机、書斎用かリビング用、どっちがいいだろう…」
「寸法が合わなくて置けるところがない…」
「思っていたより他の家具と色調が合わない…」
などといった根本的な問題を考えていなかったことにようやく気付くのです。

これは、M&Aの企業買収においても言えることです。
まずは目的を明確にし、自分にはどのような会社や事業が必要なのかを考える
そしてそれに基づいて、実際に自社と統合したときに、その企業や事業が自社とどのようなシナジー効果を生み出すかを、具体的な数値や市場動向などを踏まえ、深く考えてみるのです。

交渉の段階では気付かないところに、大きなミスマッチのリスクが眠っていることもあります。
M&Aによる買収を考えているのであれば、様々な成功・失敗事例を知っているプロのアドバイザーに相談することが、成功への近道であると言えます。

かんたん1分

デューデリジェンス(買収監査)が不十分なままM&Aを実行しない

買手側が行う業務として最も大変かつ重要なのが「デューデリジェンス(DD:Due Diligence)」です。
これは「買収監査」とも呼ばれ、買手側が売手企業に対して行う調査のことを指します。
買手企業はデューデリジェンスを通して、売手企業のあらゆる情報を詳細に調査し、売手側が提供する情報に嘘の記載や間違いがないかを確認できます。

本来この業務は、専門家の力を借りてより厳格に執り行われます。
しかし、外部委託費用を惜しんだ買手が、自社内にあるリソースのみで実行してしまったばかりに、財務、法務、税務情報などに潜在するリスクを見落としてしまい、後に大きな訴訟問題や経営失敗に繋がるというケースがあります。

実際のM&A経験があり、よほど自信があったとしても、このデューデリジェンスだけは極力専門家に依頼するようにしましょう

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M&Aによる統合後のプロセス(PMI)を大事にする

これまで何度かお伝えしてきましたが、M&Aにおいて大切なのは、交渉が成約に繋がることではなく、M&Aによる統合後、事業成長できること、規模拡大できることです。
そして、この統合プロセスを総称して「PMI(Post Merger Integration)」と呼びます。

PMIでは、組織文化や価値観、ルールなど全てが異なる2社のシナジー効果発揮のため、慎重に進めることが求められます。
買手側がずさんなPMIを行ってしまい、その結果、社内での対立や顧客離れが起きてしまうなど、企業価値の棄損が起きてしまうことがあります。
買収が成功したからといって気を抜くことなく、慎重で丁寧なPMI進行を心掛けましょう

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従業員離職や業績悪化を起こさない

中小企業やベンチャー企業などの小規模案件の場合は特に、売手企業側の従業員一人ひとりが大きな役割を持つケースが多くあります。
そうした時、買手側にとって売手企業の従業員が離職してしまうのはどうしても避けたい事態です。

実際、中小企業の買収後に、中核を担っていた優秀な人材が離職してしまい、当初想定していたシナジーが発揮できずに終わるM&A事例もあります。
こうしたことを防ぐためにも、M&Aの交渉においては、売手側との相談をきちんと行い、M&A成約後の従業員の処遇についてきちんと取り決めをしておきましょう
また従業員雇用の継続を考える際に、組織文化や価値観の理解を深めることも大変重要です。

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M&Aにおいて買手が注意すべき条件

M&Aでは、買収条件交渉が必要となります。
それまでの交渉内容と一転して、売手側に対して具体的な要求を行うため、「買手の態度が急に冷たくなった」と感じさせてしまったり「こんな条件を突きつけられるはずではなかった」という不満を抱かせるかもしれません。
しかし、統合後の経営を成功に導くためには非常に重要な段階です。
注意して条件設定を行いましょう。

M&Aの実行方法に関する条件

既にご存知かもしれませんが、M&Aにはいくつか手法があります。
そして用いる手法により、売手買手双方にもたらされるメリット・デメリットも様々です。

中小企業のM&Aによく用いられるものとして、株式譲渡、事業譲渡などがあります。
例えば、会社全体の義務権利を一切引き受けたい場合には、株式の100%買収、つまり株式譲渡によるM&Aが適しているといえます。
また、ある特定の事業とそれに係る義務権利のみを当事者間で範囲指定しながら交渉したい場合には、事業譲渡によるM&Aが適しています。

買収目的や買収対象などに合わせて、適切な手法を選択し、売手側に提案しましょう。

各手法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。

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買収価格に関する条件

中小企業が売手となるM&Aでは、売却対象が未上場企業である場合がほとんどです。
そのため、上場企業のように株価が公開されているわけでもありませんし、もちろん日常的な株価算出が行われているわけでもありません。
明確に定める基準もないので、極論を言うと「お互いが納得できる価格こそが最も適正な買収価格である」ともとれるのですが、さすがにそれではどれだけ経っても議論が前進しないでしょう。

よって、合理的で公平な価格設定のもとスムーズな交渉を行うために、主に3つの算定方法(コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチ)が用いられています。
これらの中から当該案件に最適な手法を選択し、売手と買収価格の交渉をしていきましょう。

各算定方法については、以下をご参照ください。

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社員・社長の処遇に関する条件

事業譲渡を用いたM&Aの場合は、100%の株式譲渡のようにリソースや義務権利の一切が引き継がれるというわけではありません。
人材資源についても例外ではありません
M&Aによる統合後、役員や社員の雇用条件はどうなるのか、またそれにあたって各業務がどう引継がれるのかなど、細かい点までしっかりと注意を払い、条件提示をしましょう。

また、社長の処遇についても注意が必要です。
特に中小企業M&Aでは、M&Aの成立後に売手側の社長が退任することがほとんどです。
しかしながら、売手企業の元社長に対し「顧問」「会長」などといった新たな肩書きを与え、経営の引継ぎのために数か月から約1年間会社に残ってもらうこともあります。

契約時期に関する条件

契約締結後、引継ぎ業務にかかる時間が長ければ長いほど、かかる労力は多くなります。
売手との交渉の中で、引き渡し時期をできるだけ明確に定め、計画的な業務引継ぎを実現させましょう

M&Aによる中小企業や事業の買収をスムーズに実行するために

この記事を通して、M&Aで買収を行う際の注意点が理解できたでしょうか。

この記事内で紹介した例は起きうる失敗例のうちのごく一部です。
実際にM&Aを実行するとなると、更に多くの課題に直面する可能性や思わぬリスクにさらされる可能性があります。
各手法・各段階に合わせて、スムーズに効率よくM&Aを進行するためには、注意しましょう。

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