M&Aの注意点・リスクを買収する買い手側の視点で徹底解説!確認事項が丸わかり!
M&Aを検討する際、買い手側の視点で注意点やリスクを把握することが重要です。特に、慎重な計画と実行が求められる場面では、不安を感じる方も多いでしょう。
M&Aで会社や事業を買収するときの煩雑な業務は、買手にとって非常に大きな負担です。
長い手続きの中では、買収検討時には思いもしなかった課題が見つかることもありますし、M&Aによる買収成功が目の前にありながら破談となってしまうこともあります。
また、買収が成功しても、統合後に発覚した新たな問題に悩まされることもあります。
今回は買手側の視点から、M&Aにおいて起こり得る問題とそれを避けるために気を付ける注意点について、確認してみましょう。
この記事を読むことで、M&Aに関する注意点やリスクを具体的に理解し、買収をスムーズに進めるための自信がつきます。これにより、M&Aプロジェクトの成功確率が高まり、企業の成長と発展に寄与することでしょう。
M&Aナビには、様々な企業規模や業種の売り手・買い手の方にご登録をいただいており、様々な出会いのお手伝いをしています。充実した管理機能や困ったときのサポート体制を整えておりますので安心してご利用いただけます。
目次
M&Aでの買手側の注意点
企業や事業の買収を行う際、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。
以下に買手側が実際に起こしてしまいがちな失敗をいくつかご紹介します。
M&Aの目的が明確化できていない状態でのM&Aを実行しない
対象となる売手企業や事業を手に入れることによって何を実現するのか。
そのビジョンを明確にせず、M&Aを実行することだけにフォーカスしているケースがあります。
M&Aはあくまで経営戦略の一部であり、目的ではなく手段です。
この捉え方を間違え、ビジョンがあやふやなまま手続きを進めても、統合後の経営は上手く進められません。
「本来の目的は何であったのか」
この点をしっかりと確認した上で、必要なプロセスや適したM&Aの手法を逆算して考えましょう。
譲渡企業を慎重に選定する
お店で何か商品を選ぶ自分の姿を想像してみてください。
例えば、家具を一つ買うとしましょう。
あなたは、「机が欲しいな」とぼんやりと思いながら立ち寄ったとある家具店で、デザインが自分好みのものを見つけ、そのまま勢いよく購入してしまいます。
お気に入りの家具が手に入ったことを喜び、勇み足で家に帰り、実際に机を置こうとした時にはじめて、
「この机、書斎用かリビング用、どっちがいいだろう…」
「寸法が合わなくて置けるところがない…」
「思っていたより他の家具と色調が合わない…」
などといった根本的な問題を考えていなかったことにようやく気付くのです。
これは、M&Aの企業買収においても言えることです。
まずは目的を明確にし、自分にはどのような会社や事業が必要なのかを考える、
そしてそれに基づいて、実際に自社と統合したときに、その企業や事業が自社とどのようなシナジー効果を生み出すかを、具体的な数値や市場動向などを踏まえ、深く考えてみるのです。
交渉の段階では気付かないところに、大きなミスマッチのリスクが眠っていることもあります。
M&Aによる買収を考えているのであれば、様々な成功・失敗事例を知っているプロのアドバイザーに相談することが、成功への近道であると言えます。
買収先の選定をM&A業界ではソーシングと呼ぶことがあります。
ソーシングに関する具体的な進め方や注意点は以下の記事を参考にしてみてください。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2020/12/AdobeStock_368901514-340x230.jpeg)
M&Aにおけるソーシングとは?戦略や成功のた...
M&Aソーシングは、企業の成長戦略としてますます重要性が高まる中、多くの企業が取り組む課題です。 この記事では、M&A ソーシングの基本概念から戦略立案、タイミング、リソース活用、業界特性、仲介会社の…
デューデリジェンス(買収監査)が不十分なままM&Aを実行しない
買手側が行う業務として最も大変かつ重要なのが「デューデリジェンス(DD:Due Diligence)」です。
これは「買収監査」とも呼ばれ、買手側が売手企業に対して行う調査のことを指します。
買手企業はデューデリジェンスを通して、売手企業のあらゆる情報を詳細に調査し、売手側が提供する情報に嘘の記載や間違いがないかを確認できます。
本来この業務は、専門家の力を借りてより厳格に執り行われます。
しかし、外部委託費用を惜しんだ買手が、自社内にあるリソースのみで実行してしまったばかりに、財務、法務、税務情報などに潜在するリスクを見落としてしまい、後に大きな訴訟問題や経営失敗に繋がるというケースがあります。
実際のM&A経験があり、よほど自信があったとしても、このデューデリジェンスだけは極力専門家に依頼するようにしましょう。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2020/04/business-dd_eye.jpg)
ビジネスデューデリジェンスとは?実施するタイミ...
本記事では、M&Aにおけるビジネスデューデリジェンスについて解説します。 M&Aにおいて、買手が売手の正しい価値を査定することをデューデリジェンス(以下DDと表記)と呼びます。 交渉が進んでくると、D…
M&Aによる統合後のプロセス(PMI)を大事にする
これまで何度かお伝えしてきましたが、M&Aにおいて大切なのは、交渉が成約に繋がることではなく、M&Aによる統合後、事業成長できること、規模拡大できることです。
そして、この統合プロセスを総称して「PMI(Post Merger Integration)」と呼びます。
PMIでは、組織文化や価値観、ルールなど全てが異なる2社のシナジー効果発揮のため、慎重に進めることが求められます。
買手側がずさんなPMIを行ってしまい、その結果、社内での対立や顧客離れが起きてしまうなど、企業価値の棄損が起きてしまうことがあります。
買収が成功したからといって気を抜くことなく、慎重で丁寧なPMI進行を心掛けましょう。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2019/12/AdobeStock_275903017-1-1-340x230.jpeg)
M&Aの流れを徹底解説~会社を売却するための...
会社を売却する際、どのような流れで進めればいいのか不安に感じている方も多いでしょう。M&Aの手続きは複雑で、初めての方にはハードルが高く感じられるものです。 この記事では、会社売却の流れを準備段階、交渉段階、最…
従業員離職や業績悪化を起こさない
中小企業やベンチャー企業などの小規模案件の場合は特に、売手企業側の従業員一人ひとりが大きな役割を持つケースが多くあります。
そうした時、買手側にとって売手企業の従業員が離職してしまうのはどうしても避けたい事態です。
実際、中小企業の買収後に、中核を担っていた優秀な人材が離職してしまい、当初想定していたシナジーが発揮できずに終わるM&A事例もあります。
こうしたことを防ぐためにも、M&Aの交渉においては、売手側との相談をきちんと行い、M&A成約後の従業員の処遇についてきちんと取り決めをしておきましょう。
また従業員雇用の継続を考える際に、組織文化や価値観の理解を深めることも大変重要です。
従業員の離職を避けるためには、M&Aの情報をどのタイミングで公表するかを慎重に考える必要があります。
従業員にM&Aのことを公表するタイミングに関しては、以下の記事を参考にしてください。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2019/12/AdobeStock_103219181-2-340x230.jpeg)
会社売却を従業員・社員に公表する、ベストなタイ...
M&Aによる会社売却を公表するタイミングを間違えると、従業員・社員から不信感を持たれ、M&A交渉が破談になる可能性があります。 しかし、M&Aにおけるゴールとは、M&Aの契約を締結…
M&Aにおいて買手が注意すべき条件
M&Aでは、買収条件交渉が必要となります。
それまでの交渉内容と一転して、売手側に対して具体的な要求を行うため、「買手の態度が急に冷たくなった」と感じさせてしまったり「こんな条件を突きつけられるはずではなかった」という不満を抱かせるかもしれません。
しかし、統合後の経営を成功に導くためには非常に重要な段階です。
注意して条件設定を行いましょう。
M&Aの実行方法に関する条件
既にご存知かもしれませんが、M&Aにはいくつか手法があります。
そして用いる手法により、売手買手双方にもたらされるメリット・デメリットも様々です。
中小企業のM&Aによく用いられるものとして、株式譲渡、事業譲渡などがあります。
例えば、会社全体の義務権利を一切引き受けたい場合には、株式の100%買収、つまり株式譲渡によるM&Aが適しているといえます。
また、ある特定の事業とそれに係る義務権利のみを当事者間で範囲指定しながら交渉したい場合には、事業譲渡によるM&Aが適しています。
買収目的や買収対象などに合わせて、適切な手法を選択し、売手側に提案しましょう。
各手法について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2019/01/597_ec.jpg)
M&Aスキームを徹底解説:各種手法をわかりや...
本記事では、M&Aのスキームについて解説します。 M&Aについてネットで調べたり専門家に相談したりすると、「スキーム」という言葉を目にしたり聞いたりすることがあります。 パッと聞いてもよく意味がわかり…
買収価格に関する条件
中小企業が売手となるM&Aでは、売却対象が未上場企業である場合がほとんどです。
そのため、上場企業のように株価が公開されているわけでもありませんし、もちろん日常的な株価算出が行われているわけでもありません。
明確に定める基準もないので、極論を言うと「お互いが納得できる価格こそが最も適正な買収価格である」ともとれるのですが、さすがにそれではどれだけ経っても議論が前進しないでしょう。
よって、合理的で公平な価格設定のもとスムーズな交渉を行うために、主に3つの算定方法(コストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチ)が用いられています。
これらの中から当該案件に最適な手法を選択し、売手と買収価格の交渉をしていきましょう。
各算定方法については、以下をご参照ください。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2020/01/ma-kaisya-baikyaku-kakaku-340x230.jpeg)
会社売却・事業売却の価格に相場はある?M&A...
あなたが「会社を売りたい」と考えたとき、一体いくらで売るのが最適だと思いますか? あなたの会社が5億円の買収予算を持っているとして、どれくらいの規模の会社を買収できると思いますか? M&Aにおいて「会社の価値(…
社員・社長の処遇に関する条件
事業譲渡を用いたM&Aの場合は、100%の株式譲渡のようにリソースや義務権利の一切が引き継がれるというわけではありません。
人材資源についても例外ではありません。
M&Aによる統合後、役員や社員の雇用条件はどうなるのか、またそれにあたって各業務がどう引継がれるのかなど、細かい点までしっかりと注意を払い、条件提示をしましょう。
また、社長の処遇についても注意が必要です。
特に中小企業M&Aでは、M&Aの成立後に売手側の社長が退任することがほとんどです。
しかしながら、売手企業の元社長に対し「顧問」「会長」などといった新たな肩書きを与え、経営の引継ぎのために数か月から約1年間会社に残ってもらうこともあります。
買収後の元社長の処遇に関しては、以下の記事で詳細に解説しているので確認してみてください。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2020/10/ma-kikann-340x230.jpg)
会社売却後の引き継ぎ期間と給料はどうなる?M...
会社の売却を考えている方であれば、引継ぎ期間や給与などの売却した後の自らの処遇についても気になることでしょう。 「会社を売った日から出社しなくてもよいのか?」 「引き継ぎは必要なのか?その場合の役職と報酬はどうなるのか?…
契約時期に関する条件
契約締結後、引継ぎ業務にかかる時間が長ければ長いほど、かかる労力は多くなります。
売手との交渉の中で、引き渡し時期をできるだけ明確に定め、計画的な業務引継ぎを実現させましょう。
引継ぎ期間を業界ではロックアップと呼ぶことがあります。
ロックアップに関しては、「ロックアップ とは – 事業承継・M&A用語集」を確認してください。
M&Aによる中小企業や事業の買収をスムーズに実行するために
この記事を通して、M&Aで買収を行う際の注意点が理解できたでしょうか。
この記事内で紹介した例は起きうる失敗例のうちのごく一部です。
実際にM&Aを実行するとなると、更に多くの課題に直面する可能性や思わぬリスクにさらされる可能性があります。
各手法・各段階に合わせて、スムーズに効率よくM&Aを進行するためには、注意しましょう。
またM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2024/07/AKR50532-2.jpg)
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
関連記事
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2020/05/kyou-6-e1652929186828-340x230.jpg)
M&Aとは?目的や手法・メリットなど基本を簡単に解説!!【事例あり】
M&A(エムアンドエー)とは、”Mergers and Acquisitions”の頭文字を取った略語であり日本語に直すと合併と買収です。 本記事では
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2022/07/s-340x230.jpg)
【2024年版】M&A・事業承継のおすすめマッチングサイト20選を徹底比較!
今回はM&A・事業承継マッチングサイトの中から、弊社社員が本気でおすすめできるマッチングサイト20選をご紹介いたします! 「どのマッチングサイトを選べ
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2020/05/kyou-7-e1652929305208-340x230.jpg)
【2024年最新版】M&A業界の特徴と今後の動向!業界に将来性はあるのか
日本では後継者不在による黒字廃業が社会問題のひとつになっていることを背景にM&A業界の今後に注目が集まっています。 2025年までに70歳を超える中小
![](https://ma-navigator.com/columns/wp-content/uploads/2022/07/2588355_s-e1657525923998-340x230.jpg)
M&A仲介会社の選び方や費用について解説!2つのポイントと3つの注意点が丸わかり
以前と比較してM&Aが選択しやすい事業環境になるにあたり、M&A仲介会社の選び方がポイントとなっています。 M&Aは以前に比べると
新着買収案件の情報を受けとる
M&Aナビによる厳選された買収案件をいち早くお届けいたします。