会社売却を従業員・社員に公表する、ベストなタイミングとその方法とは?

2022年11月29日

M&Aの交渉は、基本的にオーナーや経営陣など限られた人によってのみ行われます。たとえ前向きな売却交渉だとしても、その背景を知らない社員や取引先がM&Aの事実を知ってトラブルとなり、M&A交渉自体が破談になる場合もあります。

しかし、M&Aにおけるゴールとは、M&Aの契約を締結することではなく、M&Aの後、会社や事業がより良い形で継続・発展することです。
よって、どこかの時点では従業員にはM&Aについて納得してもらう必要があります。

この記事では、中小企業がM&Aを行う際に起こる問題の一つである「売却後の従業員の離職」を防ぐための対策をお伝えします。

会社売却時に発生するリスク全般について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。

M&A・会社買収における注意点・リスクについ...

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M&A・会社売却で起こり得る従業員離職という課題

M&Aによる統合後も売却された企業が成長を続けていくには、働き続けてくれる従業員の存在が必要です。
しかし、中小企業のM&Aにおいては、売却後に従業員が辞めてしまう場合が多くあります。

ほとんどが友好的な買収である中小企業のM&Aにおいて、なぜこうした問題が起きてしまうのでしょうか。

中小企業のM&A・会社売却で公表後に従業員離職が発生する要因

まず、中小企業の風土について考えてみましょう。中小企業の場合、企業の価値観や文化が経営者によって形成されてきたのが一般的です。
そのため従業員の中には、売却によって「代表者が変わる」=「風土や文化が崩れる」と感じてしまう方もいます

また、買収されたことで、待遇や仕事内容が変わってしまうのではないか、と懸念する人も少なくありません。
たとえば、自社より規模も大きくブランド力も強い会社から買収された場合などに、自身の待遇が悪くなることを想像する可能性もあります。

M&A・会社売却の公表時に従業員離職を防ぐためのポイント

従業員はじめ、取引先やその他第三者にM&Aに関する情報を開示することを、一般的に「ディスクローズ」といいます。ディスクローズ時に、従業員の離職を防ぐために、重要なことが2つあります。

一つが、M&Aでの条件交渉です。
従業員雇用・処遇の保障や企業文化存続に向けて、細心の注意を払って諸条件設定を行えば、従業員納得の上での円滑な企業統合が進められます。

そして二つ目が、M&A情報のディスクローズ方法です。
告知の手順を誤ることにより、従業員の誤解を招き、信頼を大きく損なうことがあります。
そのため、M&Aで企業や事業を売却する売手企業オーナーが、自社の従業員たちに対して、M&Aの情報を開示するタイミングやプロセスは非常に重要です。

これらの方法をより詳しく説明していきたいと思います。

かんたん1分

従業員に対するM&A・会社売却の公表の方法

従業員を対象としたディスクローズの方法について注意すべきポイントを、大きく2つに絞ってお伝えします。

M&A・会社売却時の公表のプロセス

従業員への告知には、いくつかのステップを踏むことをお勧めします。ここでは、譲渡前と譲渡後に分けて考えてみます。

譲渡前の情報開示対象

譲渡前に告知すべき対象は、会社や事業全体の経営に深く関係している人物です。

例えば、会社全体の経営を左右する立場である、役員陣がこれに当たります。
元々大きな役割を担ってきた彼らとの間に軋轢が生じて離職されてしまうことは、何としても避けたいです。
この人たちの協力無くして、会社を更に発展させていくことは非常に難しいでしょう。
統合後も会社経営に深く関わり続けてもらいたいのであれば、早めの合意形成を行うことが重要です。

またその次に、対象事業の責任者や、現場でキーマンとなっている幹部クラス(通常は部長クラス)の従業員についても、早めの告知することをお勧めします。
その人がいないと事業運営が成立しない場合、譲渡後に告知し「そういうことなら、辞めます」となってしまうと、買手側は『買収してしまったものの事業運営ができない』という最悪の状況を迎えることになります。

譲渡前の告知は、基本合意後がよいでしょう
(基本合意について詳しく知りたい方は こちらを参考にしてみて下さい。)

この際、対象役員や従業員を集めて一度に説明するのではなく、一人ひとり丁寧に話をすることが大切です。
可能であれば、買手側の代表や経営幹部との直接面談や会食などを設定することも効果的です。
他の従業員より早い段階でじっくり説明をして、離職を防ぎましょう。

譲渡後の情報開示対象

上で挙げた以外の人達には、譲渡後の告知で問題ありません

譲渡後と記載しましたが、実際のタイミングとしては、最終契約直前もしくは直後の開示が一般的です。
例えば、最終契約前日の夕礼や契約当日の朝礼、もしくは契約翌日の朝礼などが良いでしょう。

可能な限り、買手側の経営者も同席の上、「なぜM&Aに至ったのか」「これからどのような経営が行われていくのか」などを丁寧に説明しましょう。
その時、将来的な目標について熱く語ることも大切ですが、まずは従業員の感じる不安を払拭してあげることが何よりも重要です。

従業員告知に段階設定が必要な理由

上のようなを段階設定を行うことを推奨する理由は、主に2つあります。

1つは、統合後の経営をスムーズに行うためです。
これは、上記のとおり説明をしたので、すでにご理解していただいていると思います。目標意識を統一させ、統合後の経営を成功させるには、会社上層部の納得を得ることが最優先です。

もう1つが、末端従業員を始め、中間層以下の従業員の離職を防ぐ効果があるためです。
より現場に近い従業員がM&A告知内容に納得がいかなかった場合、彼らの直接的な相談相手となるのは多くの場合、会社のトップではなく、彼らの上司にあたる従業員です。
そのため、立場の高い人ほど、M&Aについてより早い段階で納得してもらう必要があります。こうすることで、上の人間が部下や後輩の不満を聞き、納得のいく説明をする、という流れを作りあげることができます。

関連する用語として、M&A成立後、買収企業がシナジーを最大限発揮させるために行う経営統合プロセスを意味する”PMI”という言葉があります。
PMIについてもっと詳しく知りたい方はこちらからどうぞ。

M&A・会社売却の公表で従業員が知りたがることとは?

では、実際に従業員たちは、どのような情報を欲しているのでしょうか。
経営者側からすると、M&A後の株式(経営権)の移動や今後の経営指針などを優先的に話してしまいがちですが、従業員たちが一番に知りたい情報は、必ずしもこうした情報であるとは限りません。

多くの場合、従業員たちが真っ先に心配することは「仕事内容の変化」や「給与や地位への影響」などです。また、買手企業が自社と離れた場所に拠点を置く場合、「転勤の有無」なども不安要素の一つとなります。

そのため、従業員たちに大々的な告知を行う際には、以下の情報を正確に伝えることが必要です。(※もちろん、買手との交渉の中で事前に各種条件の確認を行っておく必要があります)

かんたん1分

公表時に従業員に伝えるべき情報

  • 当面の仕事内容や処遇、勤務地はそのままであること
  • 将来的に変更があるとしても、次の経営者と従業員自身が十分に話し合ったうえで決めることになる
  • 現職の社長自身も、ある一定の期間は会社に残り業務引継ぎと並行して会社経営の補助をするつもりであること
  • 自社や対象事業がより大きな企業グループの一員となれること
  • またそれにより、会社としても個人としても更なる飛躍を期待できること

これらのことをきちんと伝えたうえで、彼らの生活を脅かす変化は無く、期待を持てるM&Aであることを理解してもらいましょう

適切な公表方法とタイミングで、M&A・会社売却ディスクローズ時の従業員離職リスクを軽減

いかがだったでしょうか。
この記事では、以下の内容について触れてきました。

  • M&Aで起こるトラブルの一つである「M&A情報の開示前後における従業員離職」
  • 従業員離職リスクを軽減するには「交渉時の条件交渉」と「情報開示の方法」に注意が必要
  • 情報開示の方法ついて特に注意が必要な2つのポイントは「開示の対象とタイミング」と「開示する際に従業員に提供すべき情報」
  • 情報開示は一度に行うのではなく段階を踏んで行う
  • 従業員の目線に立ち、まずは彼らの不安を払拭するのが重要

ぜひM&Aのディスクローズ時の参考にしてください。

また、経営側の処遇に関して知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。

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またM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。

かんたん1分

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