役員退職金の仕組みを活用して、会社の売却で得たお金の手取りを最大化する方法

2020年01月28日

経営者であれば誰しも、会社の売却によって得た対価の手取りを少しでも多くしたいと考えるでしょう。

実は、会社の譲渡金額をそのまま受け取ってしまうよりも、ご自身の代表退任に伴う退職金のルールを活用することで手取りが増えることがあります。

中小企業では代表取締役=株主であることが多いため、株式売却で得られる対価と役員退職による報酬を組み合わせて受け取れるのです。

M&A業界では役員退職金スキームとも呼ばれる手法について、しっかり解説いたします。

株式譲渡+退職金スキームとは?

冒頭でもお話をした通り、中小企業のM&Aにおいて、株式譲渡+退職金スキームは頻繁に活用されるスキームです。

中小企業の経営者が「M&Aによる会社売却・事業譲渡を選択する」ということは、何かしらの理由で経営の第一線から退く必要があると考えているからです。

そんな売手オーナーに対して、「会社を売却するタイミングで退職金を支払い、純資産を圧縮してから株式を譲渡する」というのが株式譲渡+退職金スキームです。

つまり、「売手オーナーの保有する株式を買手へ譲渡する株式譲渡」と「売手オーナーへの退職金支給」を組み合わせたスキームということになります。

買手側のメリットとしては、純資産を圧縮することで株式の購入額を抑えることができたり、節税対策も行うことができます。

売手オーナーのメリット

ここからは具体的なお話をしていきたいと思います。
こういった細かいところまで知識として覚えておくことももちろん大事ですが、もし理解することが難しい場合は、遠慮なくM&Aナビにご相談ください。

一番のメリットは本記事のタイトルにもある通り、売手オーナーの手取りを最大化できる可能性が高いということです。
なぜ最大化できるのか?というと、譲渡と退職金を組み合わせることで、税負担の軽減が可能になるからです。もう少し詳しく解説していきましょう。

株式譲渡の場合の税率

まず、株式譲渡の場合、株式譲渡益に対する税率は20.315%で固定です。そのため会社を売却した価格が高くなったとしても、約2割の税負担で株式譲渡益を受けとることが可能です。なお、株式の売却に要したM&A専門会社へ支払う報酬や、外部の専門的なアドバイザーに対する報酬は、株式譲渡益の計算から控除することができます。

退職金の場合の税率

続いて退職金の場合も、税率が所得税法上優遇されていて、最高税率で約25%程度。つまり、累進税率で課税されるので、この部分が株式譲渡の場合と異なり、うまく組み合わせることで税務メリットを享受することが可能になります。

なぜ、退職金と組み合わせることがよいのか?

退職所得(※1) × 税率(累進税率)
※1:「退職所得」 = (退職金 – 退職所得控除(※2)) × 1/2
※2:「退職所得控除」 = 40万円 × 勤続年数(20年以下) + 70万円 × (勤続年数 – 20年)

退職所得は、給与所得と同じく勤労性所得の一種です。なので過去の勤務に対する報酬の後払いという考え方および、退職後の生計維持の原資となるものであるため、税務上他の所得と比べて優遇されています。

優遇点としては、
・退職所得控除後の金額に2分の1を乗じたものに税率を乗じる(※1)の説明
・退職所得控除(※2)の説明
です。退職金に係る税は退職所得に累進税率を乗じたものになります。
これは言い換えると、他の所得に比べて税率が半分ということになります。

「退職所得 × 税率 = (退職金 – 退職所得控除) × 1/2 × 税率退職金」を最高税率が課せられる金額を支給したと仮定しましょう。仮に2億円、としたときでも、税率は約28%(55.945%(所得税+住民税)×1/2)にしかなりません。

これが、退職金は税務上優遇されていると言われている理由です。

売手オーナーの注意点

株式譲渡益からは株式売却のために外部アドバイザーへ支払った報酬の売却に要した費用を控除することができるため、株式の売買価額を低くしすぎると当該費用を控除できなくなるケースがでてくるため、そういったことも考えて売買価格を設定することが必要です。

また、退職金の額を増やせば増やしただけ、売手オーナーの税務メリットを享受できるわけでもない点は留意が必要です。株式の取得価額や上述の売却に要した費用等も含めて、手元にいくら現金が残るのかを検証する必要があります。

こういった細かい部分の調整については、専任のアドバイザーの力を借りて進めていくことが大事になってきます。

買手のメリット

役員退職金を支給した後の法人を買収するため、役員退職金分だけ損金が発生します。
ただし、この損金は退職金発生年度、もしくは翌事業年度以降に繰越欠損金として課税所得との相殺が可能なので節税のメリットがあります。

また、譲渡企業の法人格は残るため、許認可を改めて取得する必要は基本的にはないこともメリットといえます。

買手の注意点

売手企業が売手オーナーに対して、不相当高額な退職金を支払った場合は退職金のうち不相当に高額な部分の金額は損金不算入となります。
そういった事態が起こらないよう、以下の算式に基づいて退職金額を定めることが、中小企業のM&Aでは多く見受けられます。

退職金 = 最終月額報酬 × 役員在任年数 × 功績倍率

最終月額報酬は退任直前の役員報酬の月額、役員在任年数は役員に就任してからの年数です。

なお、前述の通り不相当に高額な部分については損金計上が認められないリスクもありますので、支給には十分な検討が必要になります。

このスキームを活用することで、売手オーナーや買手にとって税務メリットを享受することができます。ただし、役員退職金は支給額、支給方法、支給のタイミング等により一部または全額が役員退職金として認められないケースがあるので注意が必要です。

まとめ

さいごにまた同じことを言いますが、中小企業のM&Aで一番活用されているスキームは株式譲渡+退職金スキームです。
ただし、ここまで読んでいただきお分かりになったかもしれませんが、一番よく利用されるからと言って簡単な訳ではありません。

双方が損をしない、納得のいくM&Aを実現するには、M&Aを専門に行うアドバイザーの力がやはり必要になってくると思います。M&Aナビでも、売手オーナー・買手双方の間に立ち、公平で納得のいくM&Aの実現に日々努めています。ぜひ、この記事をお読みになり、会社を売却しよう・会社を買収してみようと思っていただけたら、ぜひ一度、M&Aナビに相談ください。

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