M&Aの注意点・リスクを売り手側の視点で徹底解説!確認事項が丸わかり!
この記事では、会社売却を検討する売手側の視点から、M&Aの注意点とリスクを徹底解説します。
M&Aのプロセスは複雑で、多くのリスクが伴います。会社を売却したいけれど、どのような注意点やリスクがあるのか不安…。そんな悩みを抱える経営者の方も多いでしょう。
この記事を読めば、売り手側としての注意点とリスクを把握し、適切な対策を講じることで、M&Aプロセスをスムーズに進めることができます。安心して会社売却に臨むための知識を身につけ、成功への道筋を描きましょう。
記事だけでは解決できない不安や疑問は、経験豊富なアドバイザーがご相談を承っております。
目次
M&Aにおける売り手の注意点:検討編
まずは、M&Aを検討するフェースから、売り手視点の注意点を見ていきましょう。
主観的・情緒的にならないようにすること
M&Aを実行する際、自身の判断や考え方が理にかなっているかという点には、注意が必要です。
どれだけ優れた経営者も一人の人間です。
M&Aにおいて、売却先や譲渡スキームなどを決定する際、自分ではそれが理にかなった判断であると思っていても、感情が先走り過ぎ、実は間違った判断となっていることも少なくはありません。
例えば、売却先選定において、「付き合いが長いから」といった感情的な理由で、既存の取引先や優良顧客を選んでしまう経営者もいます。
自社や自社事業を譲渡するにあたって本当に適した買手であるならまだしも、感情的な考えのみに頼り安易に判断を下すことは好ましくありません。
また、大手企業のブランド力のみを判断基準としている場合も、リスクがあります。
買手企業を選ぶ際は、「統合後のシナジー効果が期待できるか」、「理念や企業文化があうか」、「財務状況はどうか」など、様々な判断軸に基いて、総合的に判断することが大切です。
業績悪化や取引中止につながる情報漏洩に気を付けること
M&Aを実行する上で、最も注意しなければいけないことが「情報の機密性」です。
売手企業にとって、自社がM&Aによる売却を考えているという情報が流出することは、様々な問題に繋がります。
1つが、社外との問題です。
意図せぬタイミングで情報漏洩が起きれば、取引先や顧客を始め、数多くの人に不安を感じさせてしまいます。
最悪の場合、取引縮小や取引停止などに繋がります。
もう1つが、社内の問題です。
本来充分な準備を経て、計画的に実行されるべき従業員たちへの情報公開が不適切な順序やタイミングで行われると、従業員全体の士気低下や離職者の発生などに繋がり、会社にとっては大きな痛手となるかもしれません。
もちろん、M&Aの交渉内では機密保持契約が締結されますが、それだけで安心することなく、情報の取り扱いには細心の注意を心掛けましょう。
従業員や社外への告知時期などは、知識のあるM&Aアドバイザーに相談して決めるのが賢明です。
株主・役員・従業員の意見に配慮して検討を進めること
M&A交渉にとって大きな障害となる株主や役員との摩擦
全ての従業員に対して、いきなりM&Aについて話すのは、安全とは言えません。
一方で、株主や役員、経営陣の間で、M&Aという重要な事業戦略についての意思疎通が取れていないのも大きな問題です。
社内において重要な役割を持った人たちとの間に意見の不一致があると、スムーズな交渉ができなくなってしまいます。
また、もしその問題が買手との交渉の中で明るみに出てしまった場合、M&A交渉をストップされてしまう可能性もあります。
人材流出が起きないように気を付けること
従業員に対しても、将来的な不安を感じさせることのないよう、環境や雇用条件、待遇などを保証することが必要です。
M&Aの発表後に反発を受けることの無いよう、十分に注意しましょう。
M&Aの専門家に支援を求めること
一般的ではありませんが、一部、アドバイザーに相談することなくM&Aを行ってしまう企業や経営者が存在します。
不可能ではないのですが、それには、様々なデメリットやリスクが伴います。
M&Aの業務は煩雑で必要な知識量も膨大
M&Aは、ときに「ビジネスの総合格闘技」と呼ばれることがあります。
これは、M&Aの諸業務がただ大変なだけでなく、会計・経理・法務・税務、人事・労務など、実行に必要な知識量が非常に多岐に渡るということが理由です。
そもそも、M&Aの手続きは、一般的に短くても数か月かかると言われています。
また、M&A交渉期間中は、経営戦略や財務状況を始めとした沢山の情報について、相手と相互確認・検討することが必要です。
各ステップを正確に進めるためにも、M&Aのプロセスを熟知しているM&Aアドバイザーのサポートを受けながら、リスクの少ないM&A実行を目指しましょう。
経験の差による不利な契約発生のリスクがある
相手企業とのM&A経験の差が大きいと、知識量の差を利用され、自社に不利な条件で契約を結んでしまう可能性があります。
特に、買手企業がM&A経験の多い大手企業であり、反対に売手企業がM&A経験に乏しい場合は注意が必要です。
大手企業では、社内にM&Aの専門チームを設けていることがあります。
こうした企業を相手に、単独で話を進めるのは賢明とは言えません。
単独でM&Aを進めるのではなく、できる限りM&A経験の豊富なアドバイザーに相談するようにしましょう。
M&Aにおける売り手の注意点:交渉編
次に、実際にM&Aの交渉に入った際の売り手視点の注意点を見ていきましょう。
相手企業への尊重の姿勢を忘れないこと
M&Aにおける交渉において、最も大切なことの一つに、お互いを大切にし、認め合う姿勢があります。
統合後のイメージや希望する条件についてのすり合わせの中で、お互いに譲れない条件や思いがあるのは当たり前です。
しかしながら、会社の将来を共に考えるパートナーに対し、誠実に向き合い、尊重する姿勢を捨ててしまえば、相手の信頼を一気に失うことになります。
統合後の事業成長どころか、M&A実行すらできずに終わってしまうかもしれません。
相手の思いや意見を真摯に聞き入れる姿勢を大切にしましょう。
買手企業や仲介会社の意見を鵜吞みにしないこと
相手を尊重するのはもちろん大切です。
しかし、相手の提示する条件に言いなりになってばかりいては、不利な条件ばかりになってしまうかもしれません。
実際の企業価値と比べ著しく低い買収金額や、理不尽な譲渡条件などを提示されるケースがこれに当たります。
たとえ、できる限り早くM&Aを実行したいと思っていても、交渉は焦らず、明確な判断基準とロジックを持って冷静に交渉を進行しましょう。
嘘や誤りを隠さないこと
M&Aにおいて、買手から売手に対して行われる業務の中で、最も重要なのがデューデリジェンス(買収監査、DD:Due Diligence)です。
デューデリジェンスは、売手が提示した情報に事実との相違がないか、また、売手企業にM&A検討を中止せざるを得ないような要因がないかといったことを調査・確認する作業です。
(※デューデリジェンスについての詳しい情報はこちらの記事をご参照ください)
この過程で簿外債務や粉飾決済が明らかになったり、都合の悪い情報を意図的に隠していたことが発覚したりすると、買手企業からの信頼を大きく損なってしまいます。
たとえ売手側に悪意が無かったとしても、売手側から予想外のマイナス要素が見つかること自体、買手が売手に対して大きな不信感を抱くきっかけになってしまいます。
些細なことでも気になる点は全て調査し、買手に対し正確な情報提供をしましょう。
簿外債務とは何か、については以下の記事で確認してみてください。
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条件面で不誠実な対応を取らないこと
複数の買手から同時に買収オファーを受け取ることがあります。
そうした時、売手側が急に強気になって買収額の引き上げや譲渡条件の変更などを申し出る場合があります。
交渉ごとにおいて、相手に臆せずに駆け引きすることはもちろん大切です。
しかし、上の例のように余りに不誠実な対応を取ってしまえば、互いの信頼関係が大きく崩れてしまいます。
交渉をスムーズに円満に進行するためには、互いを尊重し、信頼関係を構築することが欠かせません。
条件変更が必要なときや、交渉相手に対して不満があるときは、必ずM&Aアドバイザーに相談することを心掛けましょう。
M&Aの進行中に本業をおろそかにしないこと
上でも述べましたが、M&Aの手続きは、期間も長く負担の大きいものです。
手続や交渉を行っている最中、業績が大きく悪化してしまうなどすれば、買手側からM&A契約破棄の申し出が出されるかもしれません。
納得のいく買手に巡り合い、交渉のゴールが目前に来たとしても、引継ぎまでの間、より一層気を引き締めて会社経営に取組みましょう。
特に、季節や流行、市場のトレンドなどから影響を受けやすい業種は尚更注意が必要です。
会社経営とM&A手続きの双方を並行してこなしていくためにも、アドバイザーに相談しながら二人三脚でM&Aに取り組むことが賢明です。
M&Aにおける売り手の注意点:売却完了後編
最後に、M&Aをにより売却が完了した後の売り手視点の注意点を見ていきましょう。
守秘義務を遵守すること
M&Aによって売却が完了した後も、売り手には一定期間の守秘義務が課されることが一般的です。
自身が経営から退いた後であっても、会社の機密情報を漏らさないように細心の注意を払う必要があります。
特に、M&Aの手段が一般化してきたことによって、売却を経験したオーナーに注目が集まることが増えてきました。
様々な方面から自身のM&Aの経験について話す場があるかもしれませんが、言っていいことと悪いことの線引きには注意が必要です。
競業避止義務を守ること
M&Aを行った後、同じ業界・同じ地域内での事業立ち上げや就職が制限される場合があります。
買い手企業のM&Aの成果を最大化するためにも、競業避止義務を守ることが求められます。
競業避止義務には、同業への助言なども含まれる可能性があるため注意が必要です。
経営に口出しをしすぎないようにすること
これまで育てた事業であっても、売却が完了した後は経営に関する過度な関与は行わないようにしましょう。
買い手企業は、M&Aを経て業績や企業価値を高める努力をしていきます。
旧体制のオーナーが経営に関与しすぎることで、かえって現場の混乱を招く恐れがあります。
一方で、買い手企業から継続した事業への関与を求められる場合もあります。
その場合は、自身に求められている役割や価値を理解したうえで、最大限の成果を発揮できるように尽力する必要があります。
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M&Aにおいて売手が注意すべき4つの条件
上で述べたように、M&Aにおいて気を付けるべきことは数多くあります。
これに加え、買手との交渉の中で注意すべき諸条件について、ご紹介します。
自社の売却価格に関する条件
非上場中小企業におけるM&Aでは、会社の売却価格が明確に定められていないことがほとんどです。
売手側は、自社の価値や可能性を信じているため、高い金額を提示することが多く、逆に買手側は、いかにお得にその会社や事業を手に入れるかを考え、低い金額を要求することがほとんどです。
そのため、売手企業は、自社の価値を買手に最大限伝える努力が必要です。
株価額算定の一般的な手法については、以下記事をご参照ください。
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また、売却価格は、会社の業績や市場動向など、その時の状況に大きく左右されることがあります。
売却を思い立った際にポイントとなるのは、タイミングです。
承継の方法として、M&Aを少しでも視野に入れている場合、できるだけ早く、プロのアドバイザーに相談しましょう。
譲渡スキームに関する条件
M&Aといっても、売手と買手双方の希望により、適した手法(スキーム)は様々です。
各手法のメリットとデメリットを比較・検討しながら、会社全体の譲渡がしたい場合は「株式譲渡」「合併」「株式交換」「株式移転」、一部のみの譲渡がしたい場合「事業譲渡」「会社分割」などから自社に適した手法を選択しましょう。
中小企業のM&Aにおいては、株式譲渡による会社全体の売却か、事業譲渡による特定事業の売却が多く用いられます。
*各手法のメリットについては、以下の記事で説明しています。
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譲渡後の社長・役員の処遇や役割に関する条件
株式譲渡などにより会社全体を譲渡するということは、経営権を引き渡すことを意味しています。
一般的には、買手企業側の意向により、新たな代表が選任され、役員にも新たな人材が加えられます。
しかしながら、条件の定め方によっては、売手企業のオーナーが顧問や相談役などといった特殊な役割を持ち会社に一定期間留まるケースもあります。
また、中小企業の場合は特に、オーナーが社債に対し、個人保証を行ったり、個人資産を担保としたりということもあり、そうした諸条件の今後の扱いや引き継ぎ方についても、売手と買手の間でしっかり話し合う必要があるでしょう。
会社売却後の引き継ぎ期間と給料はどうなる?M...
会社の売却を考えている方であれば、引継ぎ期間や給与などの売却した後の自らの処遇についても気になることでしょう。 「会社を売った日から出社しなくてもよいのか?」 「引き継ぎは必要なのか?その場合の役職と報酬はどうなるのか?…
譲渡後の従業員の雇用や処遇に関する条件
この点は、経営者である皆さまの多くが気にされていることだと思います。
自分の勤める会社が別の会社に買収されてしまうと知ったら、従業員のほとんどが今後の雇用や給与などに不安を感じます。
こうした不安を解消するためにも、従業員の今後の待遇については、交渉段階から注意して買手側と話しあいましょう。
M&Aにおいては、契約の締結は通過点でしかありません。
くれぐれも、本来の目標が統合後の会社や事業の成長であることを忘れず、従業員の士気を落とさない形での会社の引継ぎを考えることが大切です。
会社売却後の従業員・社員・役員への影響は?買収...
M&Aで会社売却をした後、いままで働いてくれていた従業員・社員にはどのような影響があるか不安に感じる経営者は多いのではないでしょうか。 従業員と長年の間に築き上げた信頼関係を壊すことなく売却を完了させたいと考え…
M&Aでの会社売却時の注意点とリスク まとめ
M&Aにおいて会社や事業を売却するにあたってどのようなことに注意すればよいのか、イメージできたでしょうか?
M&Aには、適切な準備が必要です。
細かい資料作成から、M&A全体の戦略策定まであらゆる項目について、できるだけ早く準備を始め、丁寧に正確にM&Aを実行していきましょう。
なおM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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