M&Aにおける事業譲渡とは?誰でもわかるようイチから徹底解説します!

2020年01月11日

M&Aにおいてはいくつか売却手法があり、代表的なものの一つとして事業譲渡という選択肢があります。

未上場の中小企業がM&Aを行う場合、売却価格をいくらにするか、どういう手法で売却するか、売却の際に締結する契約書に盛り込む条件をどうするか、など多くのことを決める必要があります。

そこでこの記事では、中小企業のM&Aでも多く用いられる売却手法「事業譲渡」に関する概要やメリット・デメリットなどについて解説いたします。

事業譲渡とは

事業譲渡はM&Aにおける手法の一つである

まず、M&Aとは「Merger and Acquisition」の略であり、そのまま日本語に訳すと「買収と合併」という意味です。

そして実際にM&Aをおこなう際には、買収の目的や会社の状態などによってさまざまな手法が用いられます。

代表的な手法としては、

  • 株式譲渡
  • 事業譲渡
  • 会社分割
  • 合併
  • 株式分割

といったものが挙げられますが、中小企業のM&Aに限っていえば、ほとんどが株式譲渡と事業譲渡のいずれかでしょう。

事業譲渡とはなにか?

事業譲渡とは、会社の中にある事業の一部を第三者に譲渡することです。

しっかりと単体で収益化されている事業を対象とすることはもちろん、WEBサイトや店舗だけを対象とすることもできます。

たとえば、飲食事業とアパレル事業をおこなっている会社が、アパレル事業に専念するため飲食事業のみを売却したい、といったケースの場合などに事業譲渡を利用します。

また、いくつかWEBサイトを立ち上げて、アフィリエイトや広告などで収益をあげていたものの、運営に手が回らなくなっていつの間にか放置しているサイトについて、そのソースコードとドメイン、中に含まれるすべての記事一式を譲渡したい、という売却も事業譲渡と呼びます。

つまり、会社というハコではなく、その中にあるいずれかの事業を売却することを指すため、非常にバリエーションは多く、譲渡する対象によって交渉実務も変わってきます。(飲食事業を丸ごと売却する場合と、WEBサイトだけ売却する場合ですと、手続きの進め方や価値算定の仕方などが全然違うという想像はできますよね)

事業譲渡をする理由

事業譲渡は、M&Aの手法の一つであることはわかりました。それでは次に、売手・買手双方がなぜ事業譲渡という手法を選択するのかについてご紹介します。

売手が事業譲渡をする理由

それでは、いくつかM&Aの手法がある中で、売手が事業譲渡を選択する理由はどういったものがあるのでしょうか。

事業の選択と集中をしたい

会社の拡大期にいろいろと新規事業をおこなったものの、思うように伸びなかった事業がいずれ負担になってしまい、売却を決断するといったことは珍しくありません。

経営者であれば、限られたヒトやカネを成長しそうな事業に集中投下したいと思うことは当然であり、その際に不要となった事業を売却する際には事業譲渡が選択されます。

法人格を残したい

これまでにあげた例と違って、たとえば一つの事業しかおこなっていない会社でも、その事業だけを丸ごと譲渡することも可能です。その場合、まったく事業実態がない会社=法人格だけが残る形になりますが、法的には何の問題もありません。このように、何らかの事情によって法人格だけは残しておきたいという場合には、事業譲渡を選択することになります。

後継者やスタッフ不足で先行きが不安である

複数の事業をおこなっている会社の場合、それぞれの事業で活躍できる人材もそれぞれ必要となるため、後継者として事業を運営してくれる人やコアとなるスタッフの確保は非常に難しいものです。今は事業が回っていてもゆくゆく人不足の問題に直面することが目に見えている場合などは、早めに手を打って事業譲渡してしまうケースも少なくありません。

買手が事業譲渡を受ける理由

一方で、買手にとっては事業譲渡を受け入れる理由はあるのでしょうか。

買収する対象を選択できる

極端なことを言えば、事業譲渡は売手の会社が販売する商品を買うのと同じ原理です。つまり、事業を買うと言っても細かなモノの集合体を買うことになりますので、仮に不要なものがあれば買い取ることを拒否することもできるのです。(それを売手が納得するかどうかは別の問題ですが)

たとえば、デリバリーもやっている飲食店を譲渡してもらう機会があったとして、売手としては丸ごと売りたい一方で、自社も宅配事業をやっているのでバイクとドライバーは不要だという場合、必要なものだけを選択して買収することができる、ということです。

この点は、株式譲渡と大きく異なるため、買手はもちろんのこと売手もしっかり頭に入れておく必要があるでしょう。

債務や負債を引き継がなくてよい

上で述べたとおり、事業譲渡は必要なものだけを買収するスキームですので、売手の会社がもっている債務や負債を引き継ぐ必要はありません。

たとえば、銀行からの借金は、その事業ではなく会社(売手)自身が背負っているものですので、自動的に事業に付いていくことはないのです。もちろん、両社合意のもとで意図的に債務を引き継がせるケースもありますが、通常は売手がそのまま負担することになります。

簿外債務などのリスクを引き継がなくてよい

事業譲渡は、目に見えている債務や負債を引き継がなくてよいのですが、それと同様に目に見えない債務(簿外債務)などのリスクについても引き継がないことも特徴です。

M&Aでは、意図的ではなく売手自身も気づかないリスクを抱えている可能性があります。事業譲渡であれば、債務自体を引き継ぐことがないため、あとからリスクが表面化してもその責任を回避することが可能です。

なお、簿外債務について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

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事業譲渡のメリット

次に、事業譲渡のメリットについて解説します。

売手にとっての事業譲渡のメリット

売りたい事業だけを選択して譲渡できる

事業譲渡は、株式譲渡と違って何を譲渡するか自由に選択することができるメリットがあります。事業譲渡をするということは、逆に会社はそのまま残るということです。事業譲渡後も必要なものは残せるようにして、本業に集中することが可能です。

法人格を残すことができる

事業譲渡をしても会社というハコは残ります。父親から承継したので法人格は残したい場合や、新たに法人を作るより既存の会社で事業を再興したい場合など、有効に活用することができます。

残ってほしい従業員を確保できる

中小企業が複数の事業をおこなっている場合、同じ社員が兼務していることは多いでしょう。事業譲渡であれば、社員を新会社に引き継いでもらうかどうかを自由に決めることができるため、譲渡後も残って欲しい社員を確保することが可能です。

買手にとっての事業譲渡のメリット

買いたい事業だけを選択して買収できる

売手が自由に譲渡対象を選択できるのと同様に、買手も必要なものだけを選択して買収することが可能です。

自社にとって必要な事業を取り込むことができる

新規事業を立ち上げる代わりに必要な事業を買収することで、自社にとって必要な事業を早く効率よく作り上げることができます。

事業譲渡にまつわるお金の話

これまで、事業譲渡は「会社の一部の事業を自由に選択して売却することができる」と説明してきました。

それでは、事業譲渡に伴うお金の話について知っておきたい点をご紹介します。

事業譲渡の対価は会社に入る

事業譲渡は、会社の事業を売ることであり、会社の商品を売ることと同じだとイメージしてください。

その場合、売却で得たお金はどこに入るでしょうか?

当然、会社ですね。

M&Aによって自社もしくは事業を売却しようと考える経営者であれば、必ず一度は自分の手元にどの程度お金が入るのかを考えたことがあるでしょう。

事業譲渡の場合は、会社のモノを会社が売るため、その対価は会社に入ります。つまり、オーナー経営者(株主)には1円たりともお金が入らない点はよく理解しておく必要があります。

売却で得たお金には法人税がかかる

会社が事業年度中に得たお金には原則として税金がかかります。事業譲渡によって入ってきた売却金額も同様です。

事業譲渡によって得たお金は、その事業年度の益金として参入され、譲渡対象物よりも高い場合は譲渡益として法人税の課税対象となります。

買収側は消費税がかかる

何度もご説明しているとおり、事業譲渡は会社のモノを売却する行為ですので、買収側には消費税が発生します。(土地や有価証券などの非課税資産にはかかりません)

中小企業のM&A実務においては意外と見落とされていて、詳しく知らない当事者同士が事業譲渡をおこなって、後から消費税を請求していなかったために揉めてしまうといったことが少なくありません。

取引においては専門家のアドバイスを仰ぐことをおすすめしますが、特にお金に関する点は難しい部分が多いため、早い段階で確認しておくことが肝要です。

さいごに

数多くの選択肢の中で、事業譲渡を選択すべき理由はご理解いただけましたでしょうか。

事業譲渡は比較的自由度が高い売却手法ですが、譲渡完了までの手続きが煩雑になったり時間がかかったりすることがあります。

よって、急いで決断するのではなく、まだ譲渡を決断していない早いタイミングから専門家の方にご相談することをおすすめします。

準備期間が長ければ長いほど、確実に売却成功の可能性は高まります。

M&Aナビでは、弊社アドバイザーがオンラインで無料相談を受け付けています。

売却価格の算定や売却手法の相談など、ささいなことでも受け付けておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

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