事業譲渡とは?M&Aの手法を誰でもわかるように徹底解説!

2024年10月17日

事業譲渡とは

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M&Aにおける代表的な手法の一つとして事業譲渡という選択肢があります。
事業譲渡とは、会社の中にある事業の一部を第三者に譲渡することを指します。

事業譲渡では、債務を引き継がないことや対象資産を選べるといったメリットがあります。

そこで本記事では、M&Aの手法の一つとして事業譲渡の基本的な概念やメリット・デメリットについて徹底解説します。

この記事を読むことで、事業譲渡に関する知識が深まり、不安や疑問を解消することができるでしょう。

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事業譲渡とは

事業譲渡はM&Aにおける手法の一つである

まず、M&Aとは「Merger and Acquisition」の略であり、そのまま日本語に訳すと「買収と合併」という意味です。
そして実際にM&Aをおこなう際には、買収の目的や会社の状態などによってさまざまな手法が用いられます。
代表的な手法としては、

といったものが挙げられますが、中小企業のM&Aに限っていえば、ほとんどが株式譲渡と事業譲渡のいずれかでしょう。

中小企業庁による中小企業白書によると、事業譲渡が41.0%、株式譲渡が40.8%となっています。
中小企業のM&Aにおいては、事業譲渡ないしは株式譲渡が用いられることがほとんどであることがわかります。

参考:M&Aを中心とする事業再編・統合を通じた労働生産性の向上

事業譲渡とはなにか?

事業譲渡とは、会社の中にある事業の一部を第三者に譲渡することです。
しっかりと単体で収益化されている事業を対象とすることはもちろん、WEBサイトや店舗だけを対象とすることもできます。

たとえば、飲食事業とアパレル事業をおこなっている会社が、アパレル事業に専念するため飲食事業のみを売却したい、といったケースの場合などに事業譲渡を利用します。
また、いくつかWEBサイトを立ち上げて、アフィリエイトや広告などで収益をあげていたものの、運営に手が回らなくなっていつの間にか放置しているサイトについて、そのソースコードとドメイン、中に含まれるすべての記事一式を譲渡したい、という売却も事業譲渡と呼びます。

つまり、会社というハコではなく、その中にあるいずれかの事業を売却することを指すため、非常にバリエーションは多く、譲渡する対象によって交渉実務も変わってきます。
(飲食事業を丸ごと売却する場合と、WEBサイトだけ売却する場合ですと、手続きの進め方や価値算定の仕方などが全然違うという想像はできますよね)

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事業譲渡をする理由

事業譲渡は、M&Aの手法の一つであることはわかりました。
それでは次に、売手・買手双方がなぜ事業譲渡という手法を選択するのかについてご紹介します。

売手が事業譲渡をする理由

それでは、いくつかM&Aの手法がある中で、売手が事業譲渡を選択する理由はどういったものがあるのでしょうか。

事業の選択と集中をしたい

    

会社の拡大期にいろいろと新規事業をおこなったものの、思うように伸びなかった事業がいずれ負担になってしまい、売却を決断するといったことは珍しくありません。
経営者であれば、限られたヒトやカネを成長しそうな事業に集中投下したいと思うことは当然であり、その際に不要となった事業を売却する際には事業譲渡が選択されます。

法人格を残したい

これまでにあげた例と違って、たとえば一つの事業しかおこなっていない会社でも、その事業だけを丸ごと譲渡することも可能です。
その場合、まったく事業実態がない会社=法人格だけが残る形になりますが、法的には何の問題もありません。
このように、何らかの事情によって法人格だけは残しておきたいという場合には、事業譲渡を選択することになります。

後継者やスタッフ不足で先行きが不安である

複数の事業をおこなっている会社の場合、それぞれの事業で活躍できる人材もそれぞれ必要となるため、後継者として事業を運営してくれる人やコアとなるスタッフの確保は非常に難しいものです。
今は事業が回っていてもゆくゆく人不足の問題に直面することが目に見えている場合などは、早めに手を打って事業譲渡してしまうケースも少なくありません。

買手が事業譲渡を受ける理由

一方で、買手にとっては事業譲渡を受け入れる理由はあるのでしょうか。

買収する対象を選択できる

極端なことを言えば、事業譲渡は売手の会社が販売する商品を買うのと同じ原理です。
つまり、事業を買うと言っても細かなモノの集合体を買うことになりますので、仮に不要なものがあれば買い取ることを拒否することもできるのです。
(それを売手が納得するかどうかは別の問題ですが)

たとえば、デリバリーもやっている飲食店を譲渡してもらう機会があったとして、売手としては丸ごと売りたい一方で、自社も宅配事業をやっているのでバイクとドライバーは不要だという場合、必要なものだけを選択して買収することができる、ということです。
この点は、株式譲渡と大きく異なるため、買手はもちろんのこと売手もしっかり頭に入れておく必要があるでしょう。

債務や負債を引き継がなくてよい

上で述べたとおり、事業譲渡は必要なものだけを買収するスキームですので、売手の会社がもっている債務や負債を引き継ぐ必要はありません。

たとえば、銀行からの借金は、その事業ではなく会社(売手)自身が背負っているものですので、自動的に事業に付いていくことはないのです。
もちろん、両社合意のもとで意図的に債務を引き継がせるケースもありますが、通常は売手がそのまま負担することになります。

簿外債務などのリスクを引き継がなくてよい

事業譲渡は、目に見えている債務や負債を引き継がなくてよいのですが、それと同様に目に見えない債務(簿外債務)などのリスクについても引き継がないことも特徴です。
M&Aでは、意図的ではなく売手自身も気づかないリスクを抱えている可能性があります。
事業譲渡であれば、債務自体を引き継ぐことがないため、あとからリスクが表面化してもその責任を回避することが可能です。

なお、簿外債務について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

簿外債務とは?M&Aにおける問題点や対応策を...

会社を売却する際に問題となることがある簿外債務ということばを聞いたことはありますか? 簿外債務とは、貸借対照表に計上されない負債のことをいいます。 簿外債務の影響で、買手と問題になり、最悪の場合は訴訟に繋がる恐れもありま…

事業譲渡のメリット

次に、事業譲渡のメリットについて解説します。

売手にとっての事業譲渡のメリット

売りたい事業だけを選択して譲渡できる

事業譲渡は、株式譲渡と違って何を譲渡するか自由に選択することができるメリットがあります。
事業譲渡をするということは、逆に会社はそのまま残るということです。
事業譲渡後も必要なものは残せるようにして、本業に集中することが可能です。

法人格を残すことができる

事業譲渡をしても会社というハコは残ります。
父親から承継したので法人格は残したい場合や、新たに法人を作るより既存の会社で事業を再興したい場合など、有効に活用することができます。

残ってほしい従業員を確保できる

中小企業が複数の事業をおこなっている場合、同じ社員が兼務していることは多いでしょう。
事業譲渡であれば、社員を新会社に引き継いでもらうかどうかを自由に決めることができるため、譲渡後も残って欲しい社員を確保することが可能です。

買手にとっての事業譲渡のメリット

買いたい事業だけを選択して買収できる

売手が自由に譲渡対象を選択できるのと同様に、買手も必要なものだけを選択して買収することが可能です。

自社にとって必要な事業を取り込むことができる

新規事業を立ち上げる代わりに必要な事業を買収することで、自社にとって必要な事業を早く効率よく作り上げることができます

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事業譲渡のデメリット

次に、事業譲渡におけるデメリットについてみていきましょう。

売手にとっての事業譲渡のデメリット

まずは売手側のデメリットについて見ていきましょう。
主なデメリットは以下のようなものがあります。

  • 競業避止義務を負う
  • 譲渡益に法人税がかかる
  • 手続きが煩雑

以下で解説していきます。

競業避止義務を負う

事業譲渡後、売手はしばしば競業避止義務を負うことになります。これは、売手が特定の期間内に同じ業界で同様の事業を行うことを制限されるということを意味します。この義務により、売手は新たな事業機会を失うリスクがあります。

譲渡益に法人税がかかる

事業譲渡によって生じる譲渡益には法人税が課税されます。この税金の負担は、譲渡益が大きいほど重くなり、企業の財務に影響を与える可能性があります。

会社売却全般にかかる税金については、以下の記事を参考にしてみてください。

会社売却の際に発生する税金とは?計算方法や節税...

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手続きが煩雑

事業譲渡には多くの手続きが必要であり、これには法的書類の準備、契約の交渉、税務処理などが含まれます。これらのプロセスは時間がかかるだけでなく、専門的な知識を要するため、煩雑であると感じることが一般的です。

買手にとっての事業譲渡のデメリット

次に買手にとってのデメリットについて見ていきましょう。
主なデメリットは以下のようなものがあります。

  • 譲受までに手間がかかる
  • 譲渡対価に消費税がかかる

それぞれ解説してきます。

譲受までに手間がかかる

買手にとっても、事業譲渡は複雑な手続きを伴います。デューデリジェンス(買収前調査)を始めとする評価プロセスや契約の交渉など、譲受までには多大な労力と時間が必要です。

譲渡対価に消費税がかかる

事業譲渡の際には、譲渡対価に消費税が課せられることがあります。この追加のコストは買手の負担となり、全体的な取引コストを増加させる要因となります。

事業譲渡に関する費用や税金について

これまで、事業譲渡は「会社の一部の事業を自由に選択して売却することができる」と説明してきました。
それでは、事業譲渡に伴う費用や税金の話について知っておきたい点をご紹介します。

事業譲渡の対価は会社に入る

事業譲渡は、会社の事業を売ることであり、会社の商品を売ることと同じだとイメージしてください。
その場合、売却で得たお金はどこに入るでしょうか?
当然、会社ですね。
M&Aによって自社もしくは事業を売却しようと考える経営者であれば、必ず一度は自分の手元にどの程度お金が入るのかを考えたことがあるでしょう。

事業譲渡の場合は、会社のモノを会社が売るため、その対価は会社に入ります。
つまり、オーナー経営者(株主)には1円たりともお金が入らない点はよく理解しておく必要があります。

事業譲渡で得たお金には法人税がかかる

会社が事業年度中に得たお金には原則として税金がかかります。
事業譲渡によって入ってきた売却金額も同様です。
事業譲渡によって得たお金は、その事業年度の益金として参入され、譲渡対象物よりも高い場合は譲渡益として法人税の課税対象となります。

事業譲渡の買収側は消費税がかかる

何度もご説明しているとおり、事業譲渡は会社のモノを売却する行為ですので、買収側には消費税が発生します。
(土地や有価証券などの非課税資産にはかかりません)
中小企業のM&A実務においては意外と見落とされていて、詳しく知らない当事者同士が事業譲渡をおこなって、後から消費税を請求していなかったために揉めてしまうといったことが少なくありません。

取引においては専門家のアドバイスを仰ぐことをおすすめしますが、特にお金に関する点は難しい部分が多いため、早い段階で確認しておくことが肝要です。

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事業譲渡が最適なケース

不採算事業の切り離しを行いたいケース

企業が複数の事業部門を持つ場合、特定の部門が継続的に損失を出している場合があります。このような不採算事業を事業譲渡により切り離すことで、残りの事業が健全な運営を続けられるようになります。事業譲渡は、企業全体のパフォーマンス改善にも寄与するため、戦略的なリストラクチャリングに役立ちます。

譲渡する事業とは別に残したい資産があるケース

企業が保有する資産の中には、特定の事業と直接関連しないものや、将来的に戦略的価値が見込まれるものが存在することがあります。事業譲渡を選択することで、これらの貴重な資産を保持しつつ、特定の事業部門だけを売却することが可能です。これにより、資産の最適な活用と事業の効率化が図られます。

買い手が特定の資産のみを求めているケース

買い手が企業全体ではなく、特定の技術、特許、顧客ベースなど特定の資産を求めている場合、事業譲渡は理想的な解決策です。このアプローチにより、買い手は不要な資産や責任を引き受けることなく、必要な資源を獲得することができます。また、売り手は他の事業部門に影響を与えることなく、目的の資産を効率的に処分することが可能です。

複数の事業から一部のみを譲渡するケース

企業が同一法人の中で複数の事業を運営している場合において、ある一部の事業のみを譲渡する際は事業譲渡が適しています。
特に、運営する事業同士の関連性や類似性が低い場合は、評価が難しくなることから買収の意思決定がしずらくなります。

売り手の視点に立った場合でも、対象となる事業の評価が下がることは良いことではありませんので、注意が必要です。
過度な事業の多角化により全社の企業価値が逆下がってしまうことを「コングロマリットディスカウント」と呼ぶことがあります。

>>事業譲渡のM&A案件一覧をみてみる

事業譲渡が行われた最新事例

ここからは、事業譲渡のスキームを活用してM&Aが行われた最新の事例について紹介します。

株式会社花王による株式会社フライフィッシュが運営するスーパー8店舗の事業譲受

2024年6月、株式会社JMホールディングスは、連結子会社である株式会社花王が、株式会社フライフィッシュが運営するスーパーマーケット8店舗の譲受を発表しました。
株式会社花王は、業務用食品スーパーである「肉のハナマサ」などのブランドを運営している会社です。

本件M&Aにより、花王は関西エリアへのスピーディーな新規出店を進めることが可能となります。
株式会社JMホールディングスは、本件M&Aにより譲受した8店舗は、2024年秋から冬頃に「肉のハナマサ」にリニューアルして店舗を運営するとしています。

参考:当社連結子会社における事業譲受に関するお知らせ

株式会社クスリのアオキホールディングスによる株式会社ムーミーが運営するスーパー7店舗の事業譲受

2024年7月、株式会社クスリのアオキホールディングスは、株式会社ムーミーが運営するスーパーマーケット7店舗の譲受を発表しました。
株式会社クスリのアオキホールディングスは、幅広い地域でドラッグストア・調剤薬局を運営している会社です。

本件M&Aにより、株式会社クスリのアオキホールディングスは香川県に進出することなり、四国エリアでのドミナントを強化するとしています。

参考:株式会社ムーミーの事業譲受に関するお知らせ

調剤薬局に関するM&Aにご興味がある方は以下の記事を参考にしてみてください。

調剤薬局のM&Aを徹底解説!業界再編の状況や...

調剤薬局業界は、ここ数年もっとも活発にM&Aが行われ再編や統合が進んだ業界の一つだったといえるでしょう。 社会保障制度の見直しに伴う調剤費用の削減や薬剤師の不足、ドラッグストア業からの参入などにより、調剤薬局経…

M&Aナビでご支援した事例:都内パーソナルジムのM&A

東京と沖縄の2拠点でパーソナルジム事業を展開する相原様は、沖縄での事業拡大に集中するためにM&Aによる譲渡を検討。
同じくパーソナルトレーニングジムを運営する株式会社GASYに事業譲渡の形で新宿店を譲渡されました。

本件の売り手である相原様は個人事業主として事業を運営してきたため、事業譲渡としてM&Aを実行されました。

詳しくは以下の記事をご覧ください。

パーソナルジムのM&A!更なる事業の成長へ売...

東京と沖縄の2拠点でパーソナルジム事業を展開する相原様は、沖縄での事業拡大に集中するためにM&Aによる譲渡を検討。同じくパーソナルトレーニングジムを運営する株式会社GASYに事業譲渡の形で新宿店を譲渡されました…

M&Aの事業譲渡 まとめ

数多くの選択肢の中で、事業譲渡を選択すべき理由はご理解いただけましたでしょうか。
事業譲渡は比較的自由度が高い売却手法ですが、譲渡完了までの手続きが煩雑になったり時間がかかったりすることがあります。

よって、急いで決断するのではなく、まだ譲渡を決断していない早いタイミングから専門家の方にご相談することをおすすめします。
準備期間が長ければ長いほど、確実に売却成功の可能性は高まるでしょう。

>>事業譲渡のM&A案件一覧をみてみる

またM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。

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