事業承継型M&Aとは?仕組みやメリット、進め方を解説
昨今の日本では、後継者不在問題が社会問題として取り上げられるようになりました。
そこで注目を浴びているのが事業承継型M&Aです。
この記事では、事業承継型M&Aについて、仕組みやそのメリット、進め方について解説をしていきます。
後継者不在問題の解決策として事業承継型M&Aの選択を検討されている方は必見です。
目次
事業承継型M&Aとは?
事業承継型M&Aは、主に中小企業や家族経営の企業が直面する後継者問題を解決する方法の一つです。
このアプローチでは、他の企業による買収や合併を通じて、企業の継続的な運営と成長を図ります。
通常のM&A(合併および買収)は、企業の成長戦略や競争力強化を目的としていますが、事業承継型M&Aは、経営者の高齢化や後継者不在といった問題を解決するために行われることが特徴です。
事業承継とM&Aの違い
一般的な事業承継は、経営者が家族や内部の信頼できる人物に経営を引き継ぐことを指します。
これに対して、事業承継型M&Aでは、外部の企業が関与します。
このプロセスにより、経営の継続性が保たれると同時に、新たな経営資源や戦略の導入が可能となります。
事業承継におけるM&Aの現状
現代のビジネス環境では、事業承継の問題は特に中小企業において深刻化しています。
多くの企業では後継者が不在で、その結果事業承継型M&Aが重要な選択肢として注目されています。
このようなM&Aを通じて、企業は後継者問題を解決し、事業の安定した継続を目指すことができます。
事業承継型M&Aの進め方
この章では、事業承継型M&Aの進め方について解説をしていきます。
①目的を明確に設定する
成功するM&Aには、明確な目的設定が不可欠です。
事業承継を目的とする場合、具体的な目標(後継者の確保、事業継続、新たな経営資源の獲得など)を設定し、その目的に沿った戦略を立てることが重要です。
例えば、事業継続が主目的の場合、買収後の経営計画や、従業員のキャリアパスの検討も必要になります。
②M&Aの専門家に相談する
M&Aは複雑で専門的な知識が必要です。
適切なアドバイスを得るために、M&Aの専門家やアドバイザーに相談することが推奨されます。
彼らは市場の状況を把握し、最適な戦略を提案することができます。
また、法律や税務に関する助言も提供できるため、M&Aのリスクを最小限に抑えることが可能です。
③市場の調査
適切な買収対象を見つけるためには、市場調査が欠かせません。
対象企業の業種、規模、地域などを考慮し、最適な候補を選定します。
この段階では、対象企業の財務状態や業界内の立ち位置、成長潜在力などを詳細に分析することが重要です。
④マッチング
市場調査に基づき、買収対象企業とのマッチングを行います。
この段階では、双方の企業の文化や価値観の適合性も重要な要素となります。
例えば、従業員の福利厚生の理念、企業のビジョンの一致などが、長期的な統合成功の鍵となります。
⑤交渉
買収対象となる企業が見つかったら、交渉を開始します。
価格、条件、将来の経営方針など、さまざまな点について話し合います。
この段階では、公平な価格評価と、双方にとっての利益を最大化するための交渉スキルが必要となります。
⑥デューデリジェンス
交渉が進むと、デューデリジェンス(企業調査)が行われます。
これは、買収対象企業の財務状況、法的問題、経営状況などを詳細に調査する過程です。
このプロセスでは、特に財務面、法務面、ビジネスオペレーションの評価が重要になります。
⑦契約
デューデリジェンスを経て、両者が合意に達したら、契約書に署名します。
この契約には、買収の条件、タイムライン、保証などが含まれます。
契約の詳細には、買収後のリスク分配や管理の仕方なども明記されることがあります。
⑧クロージング
契約が締結された後は、クロージング(取引の完了)に移ります。
ここで、買収対象企業の所有権が正式に移転されます。
クロージングは通常、契約書の条件が全て満たされた後に行われます。
⑨統合プロセス
最後に、統合プロセスが行われます。
これは、買収後の両企業をスムーズに統合するための過程であり、従業員の統合、文化の融合、経営方針の統一などが含まれます。
統合プロセスには、従業員のモチベーションを維持し、組織全体のパフォーマンスを最大化するための施策も重要です。
事業承継型M&Aの5つのメリット
事業承継型M&Aは中小企業の後継者不在問題の解決につながる他にも複数のメリットが存在します。
この章では、事業承継型M&Aのメリットについて5つ解説していきます。
後継者不在問題の解決
事業承継型M&Aの最大のメリットは、後継者不在の問題を解決できる点です。
特に中小企業では後継者を見つけることが困難な場合が多く、M&Aにより事業の継続が可能となります。
従業員の雇用継続
M&Aにより、従業員の雇用が継続される可能性が高まります。
新しい経営体が事業を引き継ぐことで、従業員の解雇やリストラを避けることができます。
取引先との関係継続
事業の継続は、取引先との関係を保つ上でも重要です。
M&Aを通じて事業が安定していれば、取引先との信頼関係も維持されます。
個人保証の解除
多くの中小企業経営者は、事業資金のために個人保証をしています。
M&Aにより、これらの個人保証から解放されることがあります。
企業の永続的な発展につながる
事業承継型M&Aは、単に経営者が変わるだけでなく、新しい経営資源、アイデア、戦略がもたらされ、企業の長期的な成長と発展に寄与します。
事業承継型M&Aの5つのデメリット
事業承継型M&Aでは、メリットだけでなくデメリットも存在します。
この章では事業承継型M&Aにおけるデメリットについて解説をしていきます。
文化の異なる企業との統合
企業文化の違いは、M&Aの大きな障害となり得ます。
異なる企業文化を持つ組織を統合する際には、従業員間の摩擦や組織の非効率化が発生するリスクがあります。
相場よりも安い価格での売却
事業承継型M&Aでは、市場価値より低い価格で事業を売却することがあります。
特に、急いで売却する必要がある場合、価格が押し下げられる可能性が高まります。
情報漏洩のリスクを負う
M&Aの過程では、企業の機密情報が漏洩するリスクが伴います。
特にデューデリジェンスの段階では、多くの機密情報が共有されるため、情報管理には細心の注意が必要です。
買い手が見つからない可能性
事業承継型M&Aを考える企業は多いものの、適切な買い手を見つけるのは容易ではありません。
特に特定の業界や地域では、買い手が限られている場合があります。
時間と費用がかかる
M&Aは、交渉や契約、統合プロセスに多くの時間と労力が必要です。
また、専門家への報酬や関連する諸費用も発生し、全体的なコストが高くなることがあります。
事業承継型M&Aを成功させるための5つのポイント
次に、事業承継型M&Aを成功させるポイントについて解説をしていきます。
次の5つのポイントを重視して進めることで事業承継型M&Aを成功に導くことができます。
適切なタイミングで実施する
成功への鍵はタイミングです。
市場の状況、企業の成熟度、経営者の年齢などを考慮し、最適な時期を見極めることが重要です。
例えば、市場が拡大している時期や、業界内で合併・買収が活発な時期は、より良い条件でのM&Aが期待できます。
株主の理解を得る
株主や関係者の理解と支持は、スムーズなM&Aの実施には欠かせません。
計画の早い段階で株主に情報を提供し、理解を求めることが大切です。
これには、計画の詳細や期待される利益、リスクについての透明なコミュニケーションが含まれます。
公的な支援を活用する
多くの国や地域では、事業承継をサポートするための公的支援制度が存在します。
これらの支援を活用することで、財政的な負担を軽減し、成功の可能性を高めることができます。
公的な支援には、税制優遇措置や資金調達のサポートなどが含まれることが多いです。
M&Aの専門家に相談する
専門家の知見は非常に重要です。
経験豊富なアドバイザーは、プロセスの各段階での戦略策定や問題解決に大きな助けとなります。
また、適切な専門家を選ぶことで、特定の業界や地域の市場動向に対する深い理解を得ることも可能です。
企業価値の向上に取り組む
M&Aを成功させるためには、事業承継前に企業価値を最大化することが重要です。
効率的な経営、イノベーションの推進、ブランド価値の向上などを通じて、魅力的な買収対象となるよう努めることが求められます。
これには、製品やサービスの改善、市場での競争力強化、顧客満足度の向上などが含まれます。
事業承継型M&Aについてのまとめ
事業承継型M&Aは、特に中小企業や家族経営の企業にとって、後継者問題の解決策として有効な手段です。
適切な計画と実行により、企業は安定した事業継続と発展を目指すことができます。
しかし、企業文化の違いや価格交渉、情報漏洩のリスクなど、多くの課題も伴います。
成功するためには、適切なタイミングでの実施、株主や関係者の理解と支持の獲得、公的支援の活用、専門家の助言の活用、そして企業価値の最大化が重要です。
最終的には、これらのポイントを踏まえた上で、丁寧なプロセス管理と適切な戦略が、事業承継型M&Aの成功へと導く鍵となります。
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