事業承継の5つの手法とは?メリット・デメリット比較と選び方

2026年07月14日

M&Aナビとは?

本記事では、事業承継の手法について、5つの具体的な選択肢を通して解説します。

現在、国内企業の約2社に1社は後継者がいないと言われています。
これが現在大きな社会問題となっている「事業承継問題」です。

多くの経営者にとって避けて通れないこの事業承継問題を解決するには、どんな手法があるのでしょうか?

本稿では、主な承継手法として挙げられる5つの手法をご紹介しつつ、その中でも特に中小企業に適した3つの手法について解説します。

事業承継には親族内承継・社内承継(従業員承継)・株式譲渡型M&A・事業譲渡型M&A・会社分割型M&Aの5つの主要手法があります。中小企業経営者にとって最適な手法は「後継者の有無」「資本を残したいか」「税務負担」「従業員雇用維持」の4つの軸で決まります。本記事では5手法のメリット・デメリットを比較表で整理し、自社の状況に応じた選び方までを解説します。

帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2025年)によれば、中小企業の後継者不在率は51.2%にのぼります。約2社に1社が後継者不在という現実の中で、承継手法の選択は経営者にとって最重要判断の一つです。

事業承継の5つの手法一覧(比較表付き)

売却・MBO・親族承継の3択を比較した無料ガイドを無料でダウンロードできます。

オーナー経営者の場合、5つの手法があるといわれています。

  1. 親族内で承継する
  2. 従業員に承継する
  3. 第三者に承継する
  4. IPOする
  5. 清算・廃業する

この中で、「IPO」は、2023年実績でも96社と非常に狭き門です。現実的な選択肢として非常に難しいといえるでしょう。

また、「清算・廃業」も事業を廃止することになり“承継”できるわけではありません。

以下の比較表で5つの手法の全体像を確認してください。

手法 適切なケース 準備期間の目安 費用目安 成立確率 主なリスク
親族内承継 後継者が決まっている 5〜10年 税理士・弁護士報酬(株価規模による) 中〜低(後継者不在増加) 後継者候補の離脱で計画破綻
役員・従業員承継(MBO) 優秀な後継者候補が社内にいる 3〜5年 株式買取資金+金融機関アレンジ費用 中(本人合意+資金確保次第) 株式買取資金の調達困難
M&A(第三者承継) 後継者不在・売却益を得たい 1〜3年 成功報酬500万〜3,000万円程度 中〜高(相手次第) 情報漏洩・シナジー不成立
IPO 急成長企業・上場余力がある 3〜5年以上 主幹事証券・監査費用等で数千万〜 極めて低(2023年実績96社) 上場基準未達・維持コスト増
清算・廃業 事業継続が困難な場合 1〜2年 清算費用・弁護士報酬等 ほぼ確実(ただし承継ではない) 従業員解雇・取引先失注

①親族内承継 — 子ども・親族への承継

子どもや親族に株式と経営を引き継ぐ手法です。関係者の理解を得やすく、贈与・相続の計画を長期で設計できるのが特徴で、要件を満たせば事業承継税制(贈与税・相続税の納税猶予)により株式移転の税負担を大幅に抑えられます。

主なメリット:従業員・取引先の心情的な受け入れが得やすい/株式移転を計画的に進められ、事業承継税制も活用できる
主なデメリット:承継意思のある親族がいる企業は半数程度にとどまる/後継者の経営能力が保証されない
適する企業:承継意思のある親族がいて、5〜10年の育成・移転期間を確保できる企業

②社内承継(従業員承継) — 役員・従業員への承継

会社を熟知した役員・従業員に承継する手法で、MBO(経営陣による買収)もここに含まれます。事業の継続性が高い一方、後継者個人が株式買取資金を用意できるか、現経営者の連帯保証(経営者保証)を引き継げるかが最大のネックになります。

主なメリット:事業内容を熟知した人材が継ぐため引き継ぎが円滑/他の従業員・取引先の理解を得やすい
主なデメリット:株式買取資金の調達が困難なことが多い/経営者保証の引き継ぎに金融機関の理解が必要
適する企業:信頼できる番頭・役員がおり、金融機関等の資金支援を組める見込みがある企業

③株式譲渡型M&A — 株式を第三者に売却する

オーナーが保有株式を第三者(買い手企業)に売却する手法で、中小企業M&Aの主流です。会社を丸ごと引き継ぐため許認可・契約・雇用が維持されやすく、オーナーは非上場株式の現金化により創業者利益を得られます。

主なメリット:手続きが比較的シンプルで従業員の雇用・取引関係を維持しやすい/売却益を引退後の資金や次の挑戦に充てられる
主なデメリット:簿外債務も含めて会社全体が引き継がれるため買い手の調査(DD)が厳格になる/希望条件に合う買い手探しに時間がかかることがある
適する企業:後継者不在で、会社全体を存続させながら売却益も得たい企業

④事業譲渡型M&A — 一部の事業だけを譲渡する

会社そのものではなく、特定の事業(店舗・部門・製品ライン等)だけを選んで譲渡する手法です。譲渡対象を契約で個別に定めるため、買い手は簿外債務を切り離して承継でき、売り手は残したい資産・事業を手元に残せます。

主なメリット:譲渡範囲を柔軟に設計できる/買い手が簿外債務リスクを遮断できるため小規模案件でも成約しやすい
主なデメリット:契約・許認可・従業員の転籍を個別に移す手間がかかる/譲渡益は法人課税となり税負担の設計が必要
適する企業:複数事業のうち一部だけ手放したい企業、会社(法人格)を残したい企業

⑤会社分割型M&A — 会社分割で事業を切り出して承継する

会社分割(組織再編)で事業を別会社に切り出し、その会社ごと承継させる手法です。要件を満たす適格分割であれば税務上の簿価引き継ぎ(課税繰り延べ)が可能で、複数事業を展開する会社の「一部は残す・一部は譲る」という設計に向きます。

主なメリット:事業譲渡より包括的に契約・雇用を移転できる/適格要件を満たせば税務中立で再編できる
主なデメリット:組織再編の法務・税務が複雑で専門家の関与が必須/債権者保護手続き等で時間がかかる
適する企業:複数事業を展開しており、事業ごとに承継の方向性を分けたい企業

M&Aによる第三者承継の詳細については、以下の記事も参考にしてください。

M&Aナビに登録して一歩踏み出しましょう

中小企業が現実的に選べる3つの手法:親族内・社内・M&Aの違い

したがって、事業を存続させることを前提にすると、「親族内」「従業員」「第三者」の3つの手法から選択することになります。

事業承継を検討
親族に後継者候補はいるか?
はい ▼
親族内承継
いいえ
役員・従業員に後継者候補はいるか?
はい ▼
社内承継(従業員承継)
いいえ
事業をどのように引き継ぐか?
会社全体を継続 ▼
株式譲渡型M&A
一部事業のみ譲渡 ▼
事業譲渡型M&A
複数事業を分けて承継 ▼
会社分割型M&A
事業承継5手法の決定フローチャート

これらは、それぞれにメリットもリスクもあるため、個別の事情や意思によって何が最適な手法なのか変わってきます。

親族内で承継する

いわゆる「子供に会社を継がせる」などのケースです。

従来、事業承継といえば親族内承継が一般的であり、多くの経営者が望んでいる選択肢といえるでしょう。

誰が後継者なのか決まっているため、株式や資産の移転を計画的に行うことができ、事業承継後も所有と経営が分離しないメリットがあります。

また、従業員承継や第三者承継に比べ、従業員や取引先などの利害関係者から心情的にも受け入れられやすいため、後継者や周囲の同意さえ得られれば比較的スムーズに事業承継を行うことができる方法といえます。

しかし、冒頭でも述べたとおり、現在の日本では2/3の企業に後継者がいません。

つまり、会社を継いでくれる子供や親族が身近にいないため、そもそもこの選択肢を取りたくても取れないというのが実情です。

実際、直近10年で親族内承継の割合は急減しており、今後も増える見込みはなさそうです。

メリット:株式・資産移転を計画的に行いやすい。利害関係者からの心情的な受け入れが得やすい。事業承継税制(贈与税・相続税の特例)を活用でき、税負担を大幅に軽減できる。

デメリット:後継者となる親族がいない企業が全体の約2/3を占める。後継者の経営能力が伴わない場合、従業員・取引先への悪影響が生じることがある。

向いているケース:後継者候補が明確で本人も承継の意思がある。事業承継税制を活用して株式移転コストを抑えたい。

 

従業員に承継する

親族内承継が急減している一方で、従業員への承継は増加傾向にあります。

(従業員承継には、親族以外の“役員”に対する承継や外部招聘者への承継も含まれます)

経営者の立場からすれば、社内のことを十分把握している者に対し、事業を承継できる安心感があり、適任者の見極めも実際の働きぶりを見ながら検討することが可能です。

また、社内で活躍している方が後継者になるといえば、ほかの従業員からの理解も得やすいでしょう。

ところが、この選択肢には大きな壁があります。それは、後継者となる従業員の資力です。

会社の「経営」だけでなく「所有」も引き継ぐ場合、会社の株式を買い取る必要があります。

しかし通常、それだけの資金を個人で準備できるケースは少ないでしょう。

また、現経営者個人の連帯保証や担保についても引き継ぐ必要がありますが、これらは「長年経営してきた現経営者個人の実績や人柄」によって信用を得てきたものもあります。

いくら後継者が優秀だったとしても、金融機関からの理解を得るには大きなハードルが待っています。

メリット:事業内容を熟知した人材が承継するため、事業継続性が高い。既存従業員・取引先からの理解が得やすい。

デメリット:後継者の資力が壁になることが多い。金融機関の理解を得るまでに時間がかかる。経営者保証の引き継ぎが困難なケースがある。

向いているケース:信頼できる番頭・役員がいる。MBO(経営陣による買収)向けの融資制度を活用できる目途がある。

 

M&Aによって第三者に承継する

そして、親族や従業員への承継という手法を選択することが難しい環境下で近年急増しているのが、第三者承継、いわゆる「M&A」です。

急増の理由としては、身近に適任者がいない場合であっても、社外から広く候補を募ることが可能であり、相乗効果のある企業とグループになることで自社の成長にもつながるなど、多くのメリットがあることが挙げられます。

また、中小企業のM&Aでは、株式譲渡役員退職金(代表者の交代)スキームを採ることが多く、売り手オーナーは保有する株式を第三者へ譲り渡すことで、非上場株式の現金化と売り手オーナーの退任が可能となり、相続問題の解決にも寄与します。

事業承継型M&Aについては、以下の記事で詳細に解説しています。参考にしてみてください。

事業承継型M&Aとは?メリット・デメリットや5...

中小企業の経営環境において、M&Aは後継者不在に直面したオーナー経営者の事業承継の有力な手法として認識され、活発に行われるようになりました。 特に、60歳を超える世代の経営者にとって事業承継は喫緊の課題であり、…

メリット:後継者不在でも事業を存続させられる。株式売却によりオーナーが現金を得られる。グループ参加によって事業成長が加速することがある。

デメリット:仲介手数料が発生する(成功報酬500万〜3,000万円程度)。交渉・手続きに一定の時間がかかる。企業文化・経営スタイルの変化を受け入れる必要がある。

向いているケース:後継者がいない。引退後の生活資金として売却益を得たい。事業をより大きなグループで成長させたい。

売却検討中の方の疑問をいますぐ解決!よくある質問と回答はこちら

M&Aでよくある質問〜売却検討中の方の不安・...

M&Aで会社や事業の売却を検討する中で、不安や疑問点は多くあるのではないでしょうか。 M&Aナビにおいても「いくらで売れるのか知りたい」「売却後の税金が不安」といったご質問をいただいております。 そこ…

 

事業承継の費用と税務の基礎知識

事業承継を検討する上で、費用や税負担の見通しを持っておくことは欠かせません。手法によって発生するコスト構造が大きく異なります。

親族内承継と事業承継税制

親族内承継で株式を後継者に贈与・相続させる場合、通常は贈与税または相続税が発生します。株式評価額が高額な場合、税負担が億単位になることもあります。この負担を軽減するのが「事業承継税制」(非上場株式等に係る贈与税・相続税の納税猶予制度)です。

要件を満たした場合、株式にかかる贈与税・相続税の納税が猶予(最終的に免除)されます。適用には事業承継計画の策定や都道府県への認定申請など手続きが必要なため、税理士への相談が不可欠です。

M&Aの費用相場

M&A(第三者承継)で仲介会社を利用する場合、成功報酬が発生します。中小企業のM&Aでは500万〜3,000万円程度が一般的ですが、M&Aナビのように売り手の仲介手数料が完全無料のサービスもあります。DDにかかる弁護士・会計士費用が別途発生するケースもあるため、事前に確認しておきましょう。

後継者不在に活用できる補助金・支援制度

国・都道府県は事業承継を支援する制度を設けています。「事業承継・引継ぎ補助金」は事業再編を伴う場合に費用の一部を補助します。また、中小企業庁が運営する「事業承継・引継ぎ支援センター」では、専門家への無料相談が可能です。費用面で不安がある場合は、まずこれらの公的支援の活用を検討することをお勧めします。

よくある質問

事業承継とM&Aの違いは?

事業承継は経営者の交代・事業の継続を指す広い概念で、M&A(第三者承継)はその手法の一つです。後継者がいない場合にM&Aを選択するケースが急増しており、オーナーが株式を第三者に売却することで売却益を得ながら事業を存続させられます。

後継者がいない中小企業の最善策は?

後継者不在の場合、最も現実的な選択肢はM&A(第三者承継)です。社外から広く候補を探すことができ、シナジーのある企業グループに参加することで事業の成長も期待できます。まず信頼できるM&A仲介会社に相談し、選択肢を広げることから始めることをお勧めします。

事業承継に必要な準備期間は?

手法によって異なりますが、親族内承継は5〜10年、M&Aは1〜3年が目安です。「早すぎることは絶対にない」と言われており、後継者問題が顕在化してから検討を始めると選択肢が限られるリスクがあります。

事業承継の費用はいくらかかりますか?

M&Aの場合、仲介手数料は成功報酬で中小企業では500万〜3,000万円程度が目安です。M&Aナビは売り手の仲介手数料が完全無料です。親族内承継の場合は税理士・弁護士費用と株式評価コストが主な費用です。

事業承継税制とは何ですか?

事業承継税制とは、後継者が非上場株式を贈与・相続により取得した場合に、贈与税・相続税の納税が猶予(要件充足で免除)される制度です。都道府県への申請と中小企業庁の認定が必要で、活用を検討する場合は税理士への相談が不可欠です。

第三者に承継するための第一歩

このように、自社の事業を承継させるにあたってはいくつかの手法があり、一概にベストといえる選択肢はありません。

しかし、間違いなく言えることは、「事業承継の検討に“早すぎる”ことは絶対にない」ということです。

親族・従業員承継の選択肢がなくなったからM&Aを検討する、という心構えでは、良いお相手に出会える時間・タイミングを逃していることになります。

幅広く、良い条件・良いお相手を見つけるためには、少しでも早くからM&Aについて検討することをお勧めします。

またM&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。

M&Aナビに登録して一歩踏み出しましょう

第三者へのM&A承継をご検討の場合は、まずはM&Aナビへ無料相談ください

売り手・買い手ともに完全無料。後継者問題を抱える経営者のご相談を承ります。

無料で相談する

関連記事

【保存版】M&Aは個人でもできる!?個人M&Aの流れとメリット・デメリットを徹底解説!
M&A・事業承継の基礎知識
2026年06月10日

M&Aは個人でもできる?個人が中小企業をM&Aで買収する方法とは

個人M&Aが書籍やTVなどのメディアで大きく取り上げられ、「自分もできる!」「個人でM&Aして社長になりたい!」といった意欲のある方が増えて

  • 個人
  • 個人M&A
  • M&A・事業承継の基礎知識
    2026年06月23日

    M&Aはどこに相談するのが良い?相談先の選び方や、選ぶときの3つの注意点を徹底解説!

    M&Aを検討しているが、どこに相談すればいいかわからない…。そんな悩みを抱えるは当然です。 家族や従業員に気軽に相談できる内容ではないですし、銀行や税

  • M&A
  • M&A相談
  • M&A相談先
  • 会計・税務・法務の知識
    2026年06月23日

    会社をたたむと借金はどうなる?返済できない場合の対処法をパターン別に解説

    会社の廃業を検討し始めたときに、「会社で借りている借金はどうなるのか?」と心配になるでしょう。 日本の中小企業のうち、どれくらいの企業が融資を受けているかご存知

  • 廃業
  • 負債
  • 資金調達
  • M&A・事業承継の基礎知識
    2026年06月23日

    会社売却後の従業員・社員・役員への影響は?買収されたら待遇はどうなる?

    M&Aで会社売却をした後、いままで働いてくれていた従業員・社員にはどのような影響があるか不安に感じる経営者は多いのではないでしょうか。 従業員と長年の

  • 事業譲渡
  • 従業員
  • 株式譲渡
  • 新着買収案件の情報を受けとる

    M&Aナビによる厳選された買収案件をいち早くお届けいたします。