後継者のいない会社を買うには?探し方・価格相場・個人と法人それぞれの進め方を解説

後継者のいない会社を買うことは、個人・法人のどちらでも可能です。帝国データバンクの2025年調査では、後継者が「いない」または「未定」の企業は全国13.8万社。探し方は公的機関・マッチングサイト・仲介会社の3系統があり、小規模な会社なら数百万円台から譲渡案件が出ています。
この記事では、後継者不在企業の現状データ、案件の探し方、価格相場の考え方、個人と法人それぞれの進め方、買収時の注意点を解説します。
▶ いま売りに出ている後継者不在のM&A案件一覧は登録なしで閲覧できます。
後継者のいない会社はどうなるのか|データで見る現状
▶ 後継者不足の解決策を3つの選択肢で整理した無料ガイドを無料でダウンロードできます。
後継者不在率は50.1%、対象は13.8万社
帝国データバンクの全国「後継者不在率」動向調査(2025年)によると、日本企業の後継者不在率は50.1%です。7年連続で改善しているものの、いまだに2社に1社は後継者が決まっていません。後継者が「いない」または「未定」の企業は約13.8万社にのぼります。
業種別では建設業の57.3%が最も高く、社長が30代以下の企業では83.2%に達します。若い経営者の会社は「まだ考えていない」だけのケースが多い一方、社長が70代・80代で後継者未定の会社は、承継の相手を第三者に求めるしかない段階に入っています。
年間6.7万社が休廃業、半数超は黒字のまま消えている
東京商工リサーチの調査では、2025年に休廃業・解散した企業は67,210件と3年連続で過去最多を更新しました。代表者の年齢は60代以上が90.6%を占めます。
注目すべきは中身です。休廃業した企業のうち赤字企業は47.2%にとどまり、黒字を保ったまま市場から消える会社も相当数にのぼります。事業として成立しているのに、引き継ぐ人がいないという理由で廃業する会社が毎年数万社規模で存在する。これが、後継者のいない会社を「買う」という選択肢が成立する背景です。
承継の形は「脱ファミリー」へ
同じ帝国データバンクの調査では、後継者の属性として「非同族」が41.0%と初めて4割を超え、最多になりました。子どもや親族が継ぐ時代から、役員・従業員・社外の第三者が継ぐ時代への移行が数字に表れています。M&Aによる第三者承継は、その受け皿の一つとして定着してきました。
後継者のいない会社の探し方|3つのチャネルを比較
後継者不在の会社は、街を歩いていても見つかりません。売り手側が情報を公開する場所は限られており、探すチャネルは大きく3系統に分かれます。
| チャネル | 代表例 | 費用 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| 公的機関 | 事業承継・引継ぎ支援センター(全国47都道府県)・後継者人材バンク | 相談無料 | 地元の小規模案件を探したい個人 |
| M&Aマッチングサイト | M&Aナビなどのオンラインプラットフォーム | 無料で使えるものが多い(サイトにより成約時手数料あり) | 自分のペースで案件を比較したい個人・法人 |
| 仲介会社・金融機関 | M&A仲介会社・地方銀行・信用金庫 | 着手金や成功報酬が発生する場合が多い | 数千万円以上の案件を検討する法人 |
公的機関:事業承継・引継ぎ支援センター
国が47都道府県に設置している無料の相談窓口です。後継者を探す売り手と、会社を引き継ぎたい買い手をつなぐ「後継者人材バンク」も運営しています。費用がかからない一方、担当者経由の紹介が基本のため、案件を自分で検索して比較する使い方には向きません。
M&Aマッチングサイト:案件を自分で検索できる
売り手が登録した案件情報を、業種・地域・価格帯で検索できるのがマッチングサイトです。後継者不在を理由とする譲渡案件は常に一定数掲載されており、M&Aナビでも「後継者不在」の案件だけを絞り込んで一覧できます。まず相場観をつかむ入口としても使えます。
仲介会社・金融機関:非公開案件にアクセスできる
仲介会社や地域金融機関は、Web上に公開されない案件情報を持っています。譲渡対価が数千万円から数億円の案件を本気で検討する法人にとっては有力なルートです。ただし着手金・中間金・成功報酬といった手数料体系は会社ごとに大きく異なるため、契約前の確認が欠かせません。
後継者のいない会社の価格相場
スモール案件は数百万円台からある
「会社を買う」と聞くと数億円の話を想像しがちですが、後継者不在を理由とする譲渡案件の多くは中小・小規模企業です。マッチングサイトに掲載される案件では、希望譲渡価格が数百万円台のものも珍しくありません。一方で、収益力のある会社や許認可・設備を持つ会社は数千万円から数億円になります。
価格の目安は「時価純資産+営業利益の2〜5年分」
中小企業のM&Aで実務上よく使われる目安が年買法(年倍法)です。
- 譲渡価格の目安 = 時価純資産 + 営業利益の2〜5年分
貸借対照表の純資産を時価で評価し直した金額に、営業利益の数年分を「のれん」として上乗せする考え方です。帳簿上の純資産をそのまま使わない点がポイントで、土地の含み損益や回収できない売掛金を反映すると、見た目の純資産と大きくずれることがあります。
業種別に「いくらで買えるか」の実データは業種別の価格相場の解説記事にまとめています。
DCF法・類似会社比較法など、より厳密な評価手法はこちらの記事で解説しています。

M&Aの売却価格算定方法~3つの手法をわかりや...
「会社を売りたい!」「会社を買いたい!」と思った場合、「対象となる事業はいくらの価値がつくのか?」という疑問が浮かびます。 「〇億円で売りたい!」という希望があったとしても、価格の算定方法が論理的に説明できなければ買い手…
業種によって価格の付き方は変わる
製造業や建設業は設備・許認可・有資格者の価値が乗るぶん高くなりやすく、サービス業は人材への依存度が高いぶん、キーマンの残留条件次第で評価が変わります。同じ売上規模でも業種で価格の付き方が異なるため、検討中の業種の案件をいくつか見て相場観を持つことが実務的な近道です。
個人でも後継者のいない会社は買えるのか
買えます。経営経験のない個人が後継者不在の会社を引き継ぐ事例は、小規模案件を中心に増えています。ただし、個人ならではの条件と限界を知っておく必要があります。
個人が現実的に狙える価格帯
個人の場合、自己資金に融資を組み合わせても、調達できる金額には上限があります。現実的な検討対象は数百万円から数千万円前半の案件です。「サラリーマンが300万円で会社を買う」という言葉が広まりましたが、300万円で買える会社には300万円である理由(設備の老朽化・売上の減少・簿外の問題など)があるのが通常です。価格の安さだけで選ぶと、引き継いだ後に苦しみます。
個人が使える資金調達手段
個人の買収資金は、自己資金に加えて日本政策金融公庫の融資が柱になります。公庫には事業承継を対象とした融資制度(事業承継・集約・活性化支援資金)があり、個人による小規模事業の承継にも利用できる制度です。金融機関は一般に「事業計画の実現性」や「本人の経験・適性」を重視するとされ、買収対象の業界での職務経験が評価につながるケースもあります。
個人買収のデメリット
- 金融機関からの借入に個人保証(経営者保証)を求められる場合があり、失敗時のリスクが会社員時代と桁違いになる
- 法人の買い手と競合すると、売り手や取引先からの信用面で不利になりやすい
- 前オーナーの人脈・技能・取引関係を、経営経験のない状態で受け止めることになる
こうしたリスクは、規模の小さい案件から始める・前オーナーの引き継ぎ期間を長めに設定する・専門家の支援を受ける、といった設計で下げられます。
法人が後継者不在の会社を買う場合
法人にとって後継者不在企業の買収は、時間を買う成長戦略です。新規参入や採用に何年もかけるかわりに、出来上がった事業をそのまま取り込みます。
法人買収の主な狙い
- 採用難の職種(施工管理・ドライバー・技術者など)を、チームごと迎え入れられる
- 建設業許可や運送業許可、営業エリアの拠点を新規取得より速く手に入れられる
- 仕入先や顧客基盤を取り込み、既存事業との相乗効果を狙える
スキームは株式譲渡か事業譲渡かを最初に決める
会社ごと引き継ぐ株式譲渡は、許認可や契約関係をそのまま維持できる一方、簿外債務も引き継ぎます。必要な事業だけを選んで買う事業譲渡は、リスクを切り分けられる一方、許認可の再取得や契約の巻き直しが必要です。後継者不在案件では売り手が「会社ごと引き継いでほしい」と希望するケースが多く、スキームの希望条件は、交渉の早い段階で確認しておきたいポイントです。
後継者のいない会社を買う6つのステップ
ステップ1: 買収目的と条件を明確にする
事業を継続して経営者になりたいのか、既存事業とのシナジーを狙うのか。目的によって、見るべき案件も評価の基準も変わります。業種・地域・価格帯・希望するスキームを先に書き出しておくと、案件探しで迷いません。
ステップ2: 案件を探し、候補を絞る
前述の3チャネル(公的機関・マッチングサイト・仲介会社)で案件を探します。気になる案件が見つかったら、秘密保持契約(NDA)を結んだうえで、企業概要書などの詳細情報を開示してもらいます。
ステップ3: トップ面談と条件交渉
売り手経営者との面談では、数字に表れない情報(従業員の状況・取引先との関係・売却の本当の理由)を確認します。後継者不在案件の売り手は「会社と従業員を託せる相手か」を見ています。価格の話だけを先行させると交渉が壊れやすいのが、この類型の特徴です。
ステップ4: 基本合意と意向表明
条件が概ね固まったら、意向表明書や基本合意書で価格・スキーム・スケジュールを文書にします。この段階までに資金調達の目処(融資の事前相談など)を付けておくと、その後の手続きが滞りません。
ステップ5: デューデリジェンス(買収監査)の実施
財務・税務・法務の実態を調査します。中小企業の買収では、簿外債務・未払い残業代・名義株(株主名簿と実態のずれ)が典型的な発見事項です。調査範囲は案件規模に応じて絞り込み、専門家(公認会計士・弁護士など)に依頼するのが実務です。
ステップ6: 最終契約の締結と引き継ぎ
デューデリジェンスの結果を価格や契約条件に反映し、株式譲渡契約または事業譲渡契約を締結します。成約後は、従業員への説明、取引先への挨拶、前オーナーからの引き継ぎ期間の設計と、経営統合の実務が始まります。
後継者のいない会社を買う3つのメリット
立ち上げ済みの事業をそのまま引き継げる
売上・利益を生む仕組みがすでに回っています。ゼロから起業した場合に数年かかる「事業を軌道に乗せる」工程を省略でき、初日から売上が立つ状態で経営を始められます。
経験のある従業員と一緒に始められる
長年その事業を支えてきた従業員・職人・技術者ごと引き継げます。採用市場で人を集めることが年々難しくなるなか、稼働しているチームを引き継げることは、買収価格に表れない大きな価値です。
顧客基盤・取引実績を継承できる
既存の顧客・取引先・地域での信用は、新規参入者が最も手に入れにくい資産です。とくに許認可業種や地域密着型の事業では、この継承価値が買収の決め手になります。
後継者のいない会社を買う際の注意点
デューデリジェンスを省略しない
後継者不在案件は売り手も高齢で、経理や契約書の管理が属人的になっていることが多くあります。財務諸表に表れない債務や、口約束で続いてきた取引条件は、買収後に発覚すると打つ手が限られます。小規模案件でも、範囲を絞った調査を行うことを強くおすすめします。
例えば、小売企業の買収・事業承継を検討する際、その店舗の「キャッシュフローの健全性」や「過剰在庫の有無」は企業価値を大きく左右します。譲渡価格を適正に評価するため、また引き継ぎ後の収益を改善するために不可欠な店舗の在庫調整のメリットや管理手法については、こちらの解説が参考になります。
前オーナーへの依存度を見極める
売上の大半が前オーナー個人の人脈や技能に依存している会社は、オーナー交代と同時に顧客が離れるリスクを抱えています。引き継ぎ期間を長めに設定する、一定期間の顧問契約を結ぶなど、依存を引き剥がす期間を契約に織り込むことが対策になります。
契約書でリスクの分担を明確にする
譲渡契約には、表明保証(売り手が開示した情報が正しいことの保証)と、違反時の補償条項を入れます。デューデリジェンスで拾いきれないリスクを契約でカバーする二段構えが、中小企業M&Aの実務です。契約書の作成・確認は弁護士への相談が賢明です。
よくある質問
後継者がいない場合、会社はどうなりますか?
選択肢は親族・従業員への承継、M&Aによる第三者承継、廃業の3つです。承継先が見つからないまま経営者が引退年齢を迎えると廃業に至ります。2025年には67,210件の企業が休廃業・解散しており、赤字企業は47.2%にとどまります。黒字のまま廃業する会社も相当数にのぼります。
個人が後継者のいない会社を買うことはできますか?
できます。数百万円から数千万円前半の小規模案件を中心に、個人が引き継ぐ事例は増えています。資金は自己資金と日本政策金融公庫などの融資を組み合わせるのが一般的です。ただし経営者保証のリスクや引き継ぎの負荷があるため、対象業界での経験がある分野から検討することをおすすめします。
後継者のいない会社はどこで探せますか?
公的機関(事業承継・引継ぎ支援センター、後継者人材バンク)、M&Aマッチングサイト、仲介会社・金融機関の3系統です。案件を自分で検索して比較したい場合はマッチングサイト、非公開の大型案件を探す場合は仲介会社・金融機関が向いています。
後継者のいない会社を買うデメリットはありますか?
簿外債務や未払い残業代などの隠れたリスク、前オーナー個人への売上依存、金融機関借入の経営者保証が代表的です。デューデリジェンスの実施、引き継ぎ期間の設計、契約書での表明保証条項によってリスクを下げられます。
後継者のいない会社を継いで起業することはできますか?
できます。ゼロからの起業と比べ、既存の事業基盤・従業員・顧客を引き継いだ状態で始められる点が利点です。国も事業承継・引継ぎ支援センターや公庫融資などで第三者承継による起業を支援しています。
まとめ
後継者のいない会社は全国に13.8万社あり、毎年数万社が黒字のまま廃業しています。買い手にとっては、立ち上げ済みの事業・従業員・顧客基盤を引き継げる機会であり、個人でも法人でも参入できます。
探し方は公的機関・マッチングサイト・仲介会社の3系統。まずは実際の案件を見て、価格帯と業種の相場観をつかむところから始めてください。
M&Aナビでは、会員登録と案件閲覧を無料で利用できます。売り手のプラットフォーム利用料は無料ですが、買い手には成約時に買収対価に応じた成約手数料がかかります。詳しくはM&Aナビの成約手数料をご確認ください。

株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
関連記事
M&Aは個人でもできる?個人が中小企業をM&Aで買収する方法とは
個人M&Aが書籍やTVなどのメディアで大きく取り上げられ、「自分もできる!」「個人でM&Aして社長になりたい!」といった意欲のある方が増えて
M&A(エムアンドエー)とは?意味・仕組み・手法を初心者向けにわかりやすく解説
M&A(エムアンドエー)とは、”Mergers and Acquisitions”の頭文字を取った略語であり日本語に直すと合併と買収です。 本記事では
M&Aはどこに相談するのが良い?相談先の選び方や、選ぶときの3つの注意点を徹底解説!
M&Aを検討しているが、どこに相談すればいいかわからない…。そんな悩みを抱えるは当然です。 家族や従業員に気軽に相談できる内容ではないですし、銀行や税
【2026年最新】M&A業界の特徴と今後の動向!業界に将来性はあるのか徹底解説
日本では後継者不在による黒字廃業が社会問題のひとつになっていることを背景にM&A業界の今後に注目が集まっています。 中小企業庁の試算では、2025年ま






メールで受けとる
