【最新版】2024年の運送業界の市場とM&A動向について徹底解説!

2024年03月15日

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コロナ禍によって国内産業が大きな影響を受けていますが、運送業は生活に欠かせないあらゆるモノを運ぶ仕事であり、いまも昔も変わらず人々の生命線となっています。
人の流れはずいぶんと変わりましたが、運送・物流業界はEC市場の伸びなどによってさらなる需要増加が見込まれており、市場規模も拡大することが期待されています。

そんな運送業ですが、慢性的なトラックドライバー不足や競争激化によって、思うように事業を成長させることができない経営者が増えているのも事実です。

本記事では、運送業界の動向とM&A事例、さらには運送会社を売却する際に知っておきたいことについてまとめています。
運送業のM&A・事業承継を検討している経営者の方はぜひ、参考にしてください。

運送業界の動向

運送業界は、市場規模約39兆円の一大産業です。その内訳は「旅客運送14兆円」と「物流25兆円」であり、物流の比率が高くなっています。(※1)

物流は、トラックや船、航空機などのさまざまな交通手段を用いて、製品を生産者から消費者に引き渡すものです。

その中で、もっとも大きな割合を占めるのはトラック運送業の約60%であり、物流業界ひいては運送業界の動向に強い影響を及ぼしていることが分かります。

こちらでは、トラック運送業の動向を見ていくことで運送業界全体の動向を探っていきたいと思います。

市場動向

トラック運送業は、平成2年の物流二法の施行によって参入事業者数が爆発的に増えたことで知られていますが、昨今のECの進展によってさらに競争が激化してきています。

EC業者の販売戦略である「送料無料」や「全国一律料金」などが打ち立てられ、消費者にとっては気軽にオンラインで買い物ができる時代が訪れました。
そのことがトラック運送業の市場にも強く影響を及ぼし、営業収入15兆円前後で推移するようになりました。
(※2)ECの進展は、運送会社の送料負担という問題を抱えてはいますが、運送業界全体としては今後も高い水準で推移していくと見られています。

新規参入の多さ

トラック運送業の新規参入数は、物流二法の施行当時と比較すると落ち着きを見せています。しかし、昨今の競争激化においても毎年約1,000者が新規参入を果たしています。(※2)

その背景にあるのは、前述したECの進展や新規参入の敷居の低さです。
ECの進展によるトラック運送業の需要増加が見込まれている現状で、シェアを獲得しようと乗り出してきています。

また、事業に要する物が一定数の車両で良いという特徴から、比較的少ない資本で新規参入できる業界であることも強く影響していると考えられます。

トラックドライバー不足の深刻化

日本の少子高齢化に伴い、あらゆる業種において労働力の確保が課題になっています。
中でも、運送業のトラックドライバー不足は深刻です。一般的な業種と比較して低賃金・長時間労働という特徴から、若年層から敬遠されてしまっている問題があります。(※2)

これを受けて、平成30年12月には「貨物自動車運送事業法」が改正されました。規制の適正化や荷主対策の深度化などが盛り込まれた内容となっており、全日本トラック協会や各機関との連携により、トラックドライバーの労働条件の改善を目指していくとされています。

テクノロジーの進化

さまざまな業界でIoTやAIの導入が進んでいますが、運送業界も大きな影響を受けています。

トラック運送業でもっとも期待されているのは、トラックの自動運転化です。
米国では既に一部商業運用もされており、日本においても平成30年に北関東道でトラック隊列走行の実証がおこなわれました。(※3)
現段階のテクノロジーだと完全自動は難しく、トラックドライバーの搭乗が必須とされています。しかし、将来的には完全無人化を目指すとしており、実現すればトラックドライバー不足の解消と人件費の大幅な削減が叶います。

自動運転が確立されれば、トラック運送業だけでなく運送業界全体で技術革新が進むことが期待されています。
トヨタやホンダなどの大手の会社を始め、立ち上げて間もないスタートアップも積極的な取り組みを見せています。

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運送業界の近年のM&A事例

運送業界を取り巻く動向によってM&Aが活性化しています。こちらでは、運送業界のM&A事例を2つピックアップしました。

トナミによるケーワイケーの買収

2018年4月、トナミHDは株式会社ケーワイケー(千葉県柏市)の全株式を取得して完全子会社化することを発表しました。

トナミHDは、富山県高岡市に本社を置く運送会社です。
中期経営計画において進められていた労働力確保や既存事業規模の拡大を図るため、今回のM&Aへと至りました。
ケーワイケーは、トラック運送業を中心に、倉庫保管管理業や流通加工業、3PL事業など幅広い事業を手掛けています。

ケーワイケーの労働力や事業エリアを獲得することでトナミグループ全体の事業力の底上げを図るとしています。

ゼロによるHIZロジスティクスの買収

2017年10月、ゼロは株式会社ロジスティクス(青森県八戸市)の全株式を取得して完全子会社化することを発表しました。

ゼロは、グループ全体の運送業の再編を進めており、地域別の統括会社を次々に設立させています。今回のM&Aも再編の一環でおこなわれたものと見られています。
HIZロジスティクスは、自動車の車両輸送を手がける運送会社です。今回のM&Aで「株式会社ゼロ・プラス東日本」に変更し、北海道・東北を管轄する役割を担うことになります。

全国5ブロック制を実現させたゼログループは、今後も会社の価値の創造や運送業の新たなビジネスモデルの確立を図っていくとしています。

運送業界の平均利益率とキャッシュフロー

運送業界が抱える大きな問題に「利益率の低さ」と「資金繰りの難しさ」があります。
こちらでは、運送業界の利益率が低い理由やキャッシュフローについて見ていきましょう。

運送業界の平均利益率

全日本トラック協会のデータによると、運送業の平均利益率は-0.3%というデータが明らかになっています。(※4)営業赤字会社の割合は減少しましたが、業績改善は限定的な結果となりました。

EC市場の拡大や燃料価格の下落など、好材料が揃いつつあるにも関わらず、平均利益率が改善されない理由は「トラックドライバー不足」にあると考えられています。

人材不足による人件費アップや傭車利用費の拡大により、事業にかけるコストが大幅に増加している現実があります。

運送業界のキャッシュフロー

キャッシュフローとは、お金の流れを意味する言葉です。運送業界の特性からキャッシュフローに悩む経営者は少なくありません。

運送業界の資金繰りが厳しくなる原因は、主に以下のものが挙げられます。

  • 支払いサイトが長い
  • 突発的な事故・故障の対応
  • 基本的に費用が先払い
  • 繁忙期の支払いが追いつかない
  • 燃料費に大きく左右される

支払いサイトとは、代金の締日から支払日までの期間のことです。この期間中は売掛金を手にすることができないため、計画的に事業資金を運用しなければなりません。
問題は、運送業の支払いサイトが長いことです。一般的な業種は30日とすることが多い中、2ヶ月以上かかることも珍しくありません。この支払のズレが経営状態を悪化させていく原因となるケースが多く見受けられます。

また、繁忙期と閑散期の差が激しい問題もあります。特定期間にまとまった先出し費用を求められることで手元の事業資金が足りなくなる問題です。
業界全体が忙しくなるため、取引先からの突然の要請が頻発し、対応に追われてしまいます。

このような原因から運送業のキャッシュフローの悪化が進んでいます。経営者の努力で改善することが難しい問題も多く、経営者の悩みの種であると言えます。

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運送業界におけるコロナ後のM&A動向

M&Aマーケットの総論として、コロナ前と比べると買手の意向はややシビアになってきています。M&Aナビを利用している買手のみなさまにおいても、以前よりは財務状態や経営計画の見通しについて厳しく判断される方が増えています。

それでは、コロナ禍における運送業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか?

事業の基礎がしっかりできている運送会社は高い評価を受けている

ドライバー、トラック、顧客、そして拠点(センター)など、事業を継続的に運営していくにあたって必要となる資産をしっかり確保している運送会社は、コロナ禍においても非常に高く評価されており、すぐに高い価格で売れています。

運送会社を同業が買収する最も多い理由の一つが規模の拡大ですので、買収してすぐに事業の拡大が見込める会社は人気がでるのも頷けます。

赤字や借入がある運送会社でも評価される可能性は大いにあり

コロナ禍でも業績好調な運送会社は比較的多く、それらの会社は事業拡大のためにM&Aを積極的に検討しています。

M&Aで買収価格を決める際、一般的には純資産や利益を元に評価することが多く、赤字の会社や借入が多い会社は敬遠されがちです。
ところが運送会社の場合は、たとえ借入があってもドライバーやトラックをしっかり自社で保有していれば高く評価される一因となります。

それは、買手が既にもっている仕事や拠点を活用することで、早期に収益構造を改善しやすいことが理由です。

赤字企業を買収することのメリットについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。

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財務体質もさることながら「まっとうな会社」であることが最重要

M&Aマーケットにおいて、黒字であることや純資産が多いことが好まれることは言うまでもありません。しかしながら、高収益体質の会社を作り上げられる会社は一握りです。
しかし、まっとうな会社は経営者が努力すれば作ることが可能です。

たとえば、法令を遵守し適切な運航管理をしたり、ドライバーを正規待遇で雇用したりすることができていない運送会社は意外と多いものです。
今すぐ売却する気はなくても、外部の人に見られても恥ずかしくない内部管理体制を整えている会社にしておくことは、いざ売却するなり事業拡大するなりしたときに、間違いなくプラスに働きます。

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まとめ

運送業界の動向や近年のM&A事例について見てきましたが、いかがでしょうか。

運送業界は市場規模が拡大する一方で、トラックドライバー不足や競争激化など、さまざまな問題を抱えているのも事実です。
その際の解決策としてM&Aを活用する経営者の方が増えています。現在、同じよう悩みを持たれている経営者の方はぜひ、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料のM&Aナビをご利用ください。

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また、他の業種の動向について気になる方は、こちらの記事を参考にしてみてください。

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(※1)国土交通省「物流を取り巻く現状について」
(※2)全日本トラック協会「日本のトラック 輸送産業 現状と課題」
(※3)国土交通省「トラック隊列走行の状況と課題」
(※4)全日本トラック協会「経営分析報告書」

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