赤字企業の買収にメリットはある?節税効果と「赤字の質」の見極め方を解説

2026年08月20日



赤字企業を買収するメリット|M&Aで赤字企業を買収するメリットとは?節税効果や注意点を解説!のアイキャッチ

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赤字企業の買収にメリットはあるかと聞かれれば、答えは「見極め方次第でメリットになる」です。東京商工リサーチの調査では、2025年に休廃業・解散した企業は67,210件で、3年連続で過去最多を更新しました。このうち赤字企業は47.2%にとどまり、黒字を保ったまま市場から消える会社も相当数にのぼります。

赤字企業のすべてが経営破綻状態にあるわけではありません。役員報酬の設定や一時的な特別損失など、決算書の赤字と経営の実態が一致しないケースは珍しくないためです。買収する側が見るべきは赤字の額そのものではなく、その赤字がどんな要因で生まれているかという「質」です。

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赤字企業の買収で得られる節税効果としくみ

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赤字企業には、過去の赤字が積み上がった繰越欠損金が計上されているケースが多くあります。繰越欠損金は、青色申告の承認など一定の要件を満たす場合に、買収後の利益と相殺して法人税の負担を軽減できる可能性があります。一方で、株式買収によって支配関係が大きく変わった場合には、利用が制限されることがあります。ただし、経営の実態がない会社を買収して欠損金だけを利用するような行為には、法人税法57条の2などの「欠損等法人」規制がかかり、繰越欠損金の利用が制限される場合があります。適用の可否は個社の状況によって変わるため、税理士など専門家への確認が欠かせません。

繰越欠損金を活用する場面は、大きく2パターンに分かれます。

赤字企業を存続させ、黒字転換させていく場合

買収した赤字企業をそのまま別法人として存続させ、資金を補填しながら黒字化していくケースです。黒字化した後の利益に繰越欠損金を充当できれば、その分だけ法人税の課税所得を圧縮できます。ここでも前提になるのが、租税回避目的と判断されない実態のある事業運営です。買収後に事業内容を大きく変えたり、欠損金の利用だけを目的とした取引と見なされたりすると、規制の対象になり得ます。

赤字企業を吸収合併する場合

会社を吸収合併する形で買収した場合、吸収される側の繰越欠損金を、買収する側の繰越欠損金として引き継げる可能性があります。ただし、この引き継ぎには「みなし共同事業要件」と呼ばれる条件があります。主な要件は次のとおりです(このほか特定役員の引き継ぎなどの代替要件もあります)。

  • 売却する会社が買収する会社と同業種であること
  • 両社の事業規模が著しく異ならないこと(目安として5倍以内)
  • 買収後も、双方の事業を継続すること

これらの要件を満たさない場合、引き継げる繰越欠損金の額に制限がかかります。適用の判断には専門的な検討が必要になるため、顧問税理士やM&Aアドバイザーへの早めの相談をおすすめします。

M&Aにおける税理士の役割は、以下の記事で詳しく解説しています。

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かんたん1分

赤字企業は買収価格を抑えやすい理由

会社の買収価格は、一般に対象会社が将来生み出すキャッシュフローをもとに算定します。利益を生んでいない赤字企業は、この将来キャッシュフローの見積もりが低くなるため、黒字企業に比べて買収価格を抑えやすいという特徴があります。

赤字企業の市場価格が下がりやすい理由

赤字・黒字にかかわらず適正に評価した場合でも、赤字企業は黒字企業より評価額が下がります。加えて、赤字企業のオーナーは資金繰りの悪化を背景に、早期の譲渡を望むケースが少なくありません。売り急ぐ売り手と交渉できれば、本来の事業価値より抑えた価格で買収できる可能性が高まります。

「早く現金化したい」という売り手心理

不動産の売買を思い浮かべるとイメージしやすいでしょう。不動産は現金化に時間がかかる資産のため、適正価格での売却を待つより、多少価格が下がっても「すぐに現金で買う」相手を選ぶ売り手がいます。資金繰りに窮した赤字企業の経営者にも、同じ判断が働くことがあります。

資金繰りが厳しい赤字企業では、後継者も決まっていないケースが重なることがあります。帝国データバンクの2025年調査(全国企業対象)では、後継者が「いない」または「未定」の企業の割合は50.1%にのぼります。赤字と後継者不在が重なると、経営者は一段と早期の譲渡を望む傾向があります。

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赤字企業買収で期待できるシナジー効果

会社を買収すれば、ゼロから事業を立ち上げるのではなく、すでに稼働している事業をそのまま自社に取り込めます。自社の既存事業に買収先の事業を組み合わせることで、相乗効果(シナジー効果)が期待できます。赤字企業であっても、収益が出ていないだけで、販路や許認可、技術、取引先といった経営資源そのものは価値を保っているケースが多くあります。

販路やブランド、許認可の引き継ぎ

具体的には、自社が開拓していなかった販路の活用や、買収先が持つブランド価値の引き継ぎが挙げられます。地域での知名度がある会社や、業界特有の許認可や資格を持つ会社であれば、収益が赤字であっても、その許認可や信用そのものに買収の価値があります。既存事業の規模拡大とシェア獲得を後押しする点は、赤字企業を買収するメリットの一つです。

人材の獲得というシナジー

赤字企業には、業績不振とは関係なく、経験のある技術者や営業担当者が在籍していることがあります。採用市場で人を集めることが年々難しくなるなか、稼働しているチームをそのまま引き継げることは、決算書には表れない買収の価値です。従業員の受け入れ体制や処遇をどう設計するかは、買収後のシナジーを実現できるかどうかを左右する要素になります。

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「赤字の質」の見極め方|買う価値がある赤字と危険な赤字の違い

赤字企業の買収を検討するうえで欠かせないのが、赤字の「質」を見極める視点です。同じ赤字でも、一時的な要因によるものと、事業構造そのものが縮小しているものとでは、買収後の立て直しやすさがまったく異なります。

赤字の要因 見極め方 買う価値の見立て
役員報酬の取りすぎ 決算書の役員報酬額を、業種や規模が近い会社の相場と比較する 一時的。買収後に報酬水準を適正化すれば黒字化しやすい
一過性の特別損失 特別損失の発生年度と内容(減損、訴訟和解金、災害損失など)を確認する 一時的。翌期以降の経常利益で実態を判断する
過大な減価償却 設備投資の時期と減価償却方法(定率法か定額法か)を確認する 一時的。キャッシュフローベースでは黒字の場合がある
市場縮小による構造赤字 業界全体の市場規模の推移と、対象会社の売上構成を突き合わせる 構造的。事業転換や統廃合を伴う立て直しが必要
キーマン離脱による売上減 離脱前後の売上や主要取引先の推移を確認する 構造的〜一時的。後継の人材配置次第で見立てが変わる

決算書だけを見ても、赤字の要因までは分かりません。役員報酬や減価償却、特別損失の内訳は、勘定科目内訳書や税務申告書の別表を確認して初めて判断できます。デューデリジェンスの段階で、この5つの要因のどれに当てはまるかを一つずつ潰していく作業が、赤字企業買収の成否を分けます。

赤字の質を確認する情報源

決算書の数字だけでは、赤字の背景までは読み取れません。実務では、次のような資料を組み合わせて確認します。

  • 勘定科目内訳書:役員報酬や貸付金、交際費など、決算書に表れない内訳を確認できる
  • 税務申告書の別表:減価償却の方法や償却限度額、繰越欠損金の残高が記載されている
  • 月次試算表:直近数か月の売上や利益の推移から、赤字が改善傾向にあるかを確認できる
  • 主要取引先との契約書:売上の依存度やキーマンとの結びつきの強さを確認できる

これらは仲介会社や売り手側の担当者を通じて開示を依頼する資料です。開示のタイミングは秘密保持契約(NDA)を締結した後になるのが一般的で、企業概要書の段階でおおよその見立てを付け、意向表明後のデューデリジェンスで裏付けを取る、という順序で進みます。

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赤字企業を買収する際の注意点

赤字の要因を把握しないまま買収を進めない

中小企業のM&Aでは、条件面より経営者同士の相性を優先して話が進むこともあります。それでも、多額のキャッシュが動く買収では、赤字の要因を把握しないまま進めることはリスクになります。対象会社の提案資料や決算書をもとに、アドバイザーとともに事業の価値を確認する必要があります。

買収前のデューデリジェンスでは、決算書の数字が実態と合っているかを、より細かい資料に基づいて確認します。ここで赤字の要因や問題点を洗い出し、買収する価値があるかを最終判断します。

赤字企業を買うデメリットも押さえる

赤字企業の買収には、価格の安さと引き換えに背負うリスクもあります。

  • 簿外債務や未払残業代など、決算書に表れない負債が見つかることがある
  • 資金繰りの悪化から、取引先や金融機関との関係が既に悪化している場合がある
  • 従業員のモチベーションが低下しており、買収後の立て直しに時間がかかることがある

デューデリジェンスの結果、買収する価値があると判断した後も、失敗するケースはあります。会社は人が動かしているものなので、自社の従業員と買収先の従業員の関係を円滑にする人材配置など、買収後の統合作業(PMI)を見据えた準備が必要です。専門知識が必要な領域なので、M&A仲介会社や弁護士の支援を受けることをおすすめします。

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M&Aの注意点とは?買い手が確認すべきリスク...

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買収された赤字企業とその社長はその後どうなるのか

赤字企業を買収して黒字化させた例としてよく挙げられるのが、日本電産(現ニデック)です。同社は創業以来、国内外の多数の企業を買収して事業を広げてきました。創業者の永守重信氏は、買収した会社を立て直して黒字化させてきた実績を、著書やインタビューで繰り返し語っています。

小型モーターが中心だった同社の事業構成は、買収を重ねた結果、車載・家電・産業用へと大きく広がりました。赤字企業の買収が、既存事業の延長では届かない事業領域への入口になった例です。

買収された会社の経営者はどうなるのか

永守氏は買収にあたり、元の経営者や従業員に買収後も経営へ参画してもらい、再建の道筋がつくまでは本社からも人員を送り込む進め方をとってきたと語っています。買収して終わりではなく、人を通じて経営の規律を持ち込むやり方です。

買収後に売り手経営者がどうなるかは、案件ごとの契約条件によって変わります。一定期間は代表取締役や顧問として残るケース、引き継ぎ期間だけ関与するケース、完全に退任するケースなど選択肢は複数あります。事業を知る経営者の力を引き継ぎに活用したい場合は、この処遇を交渉の初期段階で条件化しておくことが実務上のポイントです。

ずっと赤字のままの会社はどうなるのか

赤字の要因を放置したまま経営を続けた会社の行き着く先は、多くの場合、廃業です。東京商工リサーチの調査では、2025年に休廃業・解散した企業は67,210件にのぼり、赤字企業はそのうち47.2%を占めます。買い手が現れないまま赤字が続いた会社は、事業を畳むという選択に至る可能性が高くなります。赤字の要因が一時的なものであれば、早い段階で買い手を見つけることが、事業と雇用を存続させる現実的な手段になります。

よくある質問

赤字会社の買収にメリットはありますか?

あります。繰越欠損金を活用できる可能性がある節税効果、黒字企業より抑えやすい買収価格、既存事業とのシナジー効果の3つが主なメリットです。ただし赤字の要因によって買収後の立て直しやすさが大きく変わるため、赤字の「質」を見極めることが前提になります。

赤字企業の繰越欠損金の利用に制限はありますか?

あります。青色申告や支配関係の継続などの要件を満たす場合に引き継げる可能性がありますが、租税回避目的と判断される買収には法人税法57条の2などの「欠損等法人」規制がかかります。吸収合併の場合は、同業種であることなど「みなし共同事業要件」を満たす必要があります。適用の可否は税理士への確認が欠かせません。

赤字の会社を買うデメリットは何ですか?

決算書に表れない簿外債務や未払残業代、取引先や金融機関との関係悪化、従業員のモチベーション低下による立て直しの遅れが代表的です。デューデリジェンスで赤字の要因を事前に把握し、買収後の人材配置を含めた統合計画(PMI)を準備しておくことでリスクを抑えられます。

ずっと赤字の会社はどうなるのですか?

赤字の要因を放置すると、廃業に至るケースが多くなります。東京商工リサーチの調査では、2025年に休廃業・解散した企業は67,210件で3年連続の過去最多、そのうち赤字企業は47.2%です。赤字が一時的な要因によるものであれば、早期に買い手を見つけることで事業と雇用を存続できる可能性があります。

買収された企業はその後どうなるのですか?

買収後の扱いは案件ごとに異なります。買収する会社の事業に統合されるケース、別法人として存続しながら黒字化を目指すケース、ブランドや従業員体制を維持したまま経営だけ引き継ぐケースなどがあります。日本電産(現ニデック)は、買収した赤字企業を一定期間支援しながら自立させる方針を取ってきました。

買収された会社の社長はどうなるのですか?

契約条件によって異なります。一定期間は代表取締役や顧問として経営に関わり続けるケース、引き継ぎ期間だけ関与するケース、買収と同時に退任するケースがあります。事業を知る経営者の力を引き継ぎに活用したい場合は、処遇を交渉の初期段階で条件化しておくことが実務上のポイントです。

まとめ

赤字企業の買収には、繰越欠損金を活用できる可能性がある節税効果、抑えやすい買収価格、既存事業とのシナジー効果というメリットがあります。ただし繰越欠損金の利用には税務上の要件と規制があり、買収前には専門家への確認が欠かせません。

赤字という数字だけで判断せず、役員報酬や特別損失、市場環境、キーマンへの依存度といった「赤字の質」を見極めることが、買収を成功させる分かれ目になります。一見すると価値が感じにくい赤字企業でも、要因の切り分けができれば、大きなメリットにつながる可能性があります。

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