【2020年最新版】これさえ読めばわかる「事業承継支援パッケージ」のすべて

2020年04月01日

後継者がいないために、黒字であっても廃業する中小企業が増えています。そこで第三者とのM&Aによる事業承継を促進するために、国は「事業承継支援パッケージ」というものを策定しました。

この支援制度がどのようなものなのか、事業承継が難しいと思っている経営者の課題をどのように解決するものなのかを説明します。

経済産業省が策定した「第三者承継支援総合パッケージ 」とは

経済産業省が2019年12月に策定した、「第三者承継支援総合パッケージ」について説明します。

中小企業M&Aの課題と第三者承継支援総合パッケージを策定した目的

経済産業省は、後継者がいない中小企業は127万者にものぼる一方で、中小企業のM&Aが年間で4,000件弱にとどまっていることを課題視しています。
後継者が不在の企業の中には黒字のまま廃業する中小企業も多数含まれる見込みです。
もしこれだけの数の企業が廃業してしまうと、膨大な人数の失業者が発生し、日本経済は衰退していくことでしょう。国としては、少子高齢化によって労働人口が減り社会保障の問題も大きくのしかかる中、なんとしてでも廃業を食い止めたいという強い思いを抱いています。

そこでまず、中小企業M&Aが活性化しない3つの課題を定義し、それらの課題を解決するための対策をまとめたものが「第三者承継支援総合パッケージ」で、2019年の12月に経済産業省より発表されました。

「第三者承継支援総合パッケージ」で定義された中小企業M&Aにおける3つの課題とは、

  • 中小企業の売却案件が少ないこと
  • 売手と買手のマッチングが難しいこと
  • そしてM&Aによる事業承継後の経営統合が困難であること

です。

第三者承継支援総合パッケージが提起した3つの課題への具体的な取り組み

「第三者承継支援総合パッケージ」では、中小企業M&Aにおける3つの課題をどのように解決しようとしているのでしょうか。

まず最初の課題である中小企業の売却案件が少ないことへの取り組みです。
この課題の背景には、経営者が第三者へ事業承継することに抵抗感があること、またM&Aに関する情報が不十分であることを挙げています。

そこで、会社を円満に売却するためのルールを整備したり、従来より設置している事業引継ぎ支援センターと呼ばれる相談窓口の機能を強化したりすることで解決を図ろうとしています。
また従来より公開していた「事業引継ぎガイドライン」を改訂し、新たに「中小M&Aガイドライン」を策定し、M&A専門業者等が提供するサービスの妥当性や注意点などを経営者自身がわかる内容として2020年3月31日に公開しました。

次に、売手と買手のマッチングが難しいとされることへの取り組みです。
この課題は、いまの経営者が保証している会社の借金を後継者が引き継ぎたくないということが背景になっており、非常に難しい課題といえます。

中小企業が金融機関からお金を借りる際には、ほとんどの場合経営者に連帯保証が求められます。
国はその保証を国の政策によって解除するという極めて大胆な施策を検討しています。

最後にM&Aをしてもうまくいかない経営統合が存在するという課題については、補助金の交付や税の軽減などによって金銭的な負担を減らしたり、事業成長を支援する専門家を派遣したりあらかじめ後継者を教育するプログラムを作ったりすることで円滑に成長する支援策を整備する予定です。

中小企業の後継者不在率は55%以上

なぜこれほどまでに国がM&Aによる事業承継を支援するのか、その背景を説明します。

東京商工リサーチの調べによると、中小企業の後継者不在率は55.6%(2019年11月時点)にものぼります。

後継者がいない会社は、第三者に売却(承継)をしなければ廃業しなければなりません。
そうなると、それまで積み上げてきた技術やノウハウが失われることはもちろん、雇用していた従業員も職を失います。

同じく東京商工リサーチ調べによる「休廃業・解散、倒産件数」は以下のように推移しています。

【休廃業・解散】

2013年 34,800件
2016年 41,162件
2019年 43,348件

【倒産】

2013年 10,855件
2016年 8,446件
2019年 8,383件

中小企業の廃業は国にとっても大きな損失につながるので、M&Aという形での事業承継を推進しようとしているのです。

第三者承継支援総合パッケージの目標と具体的な施策

第三者承継支援総合パッケージの具体的な目標と施策について説明します。

目標は10年間で60万者の第三者承継

国が第三者承継支援総合パッケージで掲げている目標は、10年間で60万者の第三者承継を実現することです。

中小企業の休廃業・解散件数は増加傾向にあり、2025年までには70歳以上の後継者未定中小企業が127万者にもなると予測されています。
さらに中小企業の黒字廃業の比率は49.1%と推計されており、127万者のうち黒字廃業が想定される60万者については特に積極的に事業承継を促すことを目標に掲げています。

事業引継ぎガイドラインから中小M&Aガイドラインへ改定

中小企業庁が平成27年に策定した「事業引継ぎガイドライン」とは、M&Aによって事業承継をおこなうにあたって知っておくべきことをまとめた、いわば事業承継の教科書のようなものです。後継者のいない中小企業や小規模事業者が安心してM&Aできることを目的に作成されました。

具体的には、事業承継に向けた早期の取り組みや、法人に引継ぐ場合と個人に引継ぐ場合の違いや流れ、よくあるトラブルといった内容が含まれており、次の5つのステップを紹介しています。

  • 事業承継への準備の必要性認証
  • 経営状況などの把握
  • 経営改善
  • 事業承継計画の策定
  • マッチング実施
  • 事業承継の実施

近年、M&Aの実施件数は増加していますが、M&A専門業者や金融機関、あるいはM&AナビをはじめとしたM&Aプラットフォームを利用して成約することがほとんどです。

そして2020年3月31日、中小企業庁は新たに「中小M&Aガイドライン」を公開しました。

M&Aの細かな進め方や基本姿勢、専門業者に依頼した場合のサービスや契約内容、料金体系などの適正水準や留意点など、経営者が会社を売却する際に知っておきたい内容が網羅的に記載されています。
また、M&AナビのようなM&Aを支援する業者向けにも、支援内容のあり方や業務遂行の指針などが示されています。

民間プラットフォーマーとの連携

中小企業庁の事業引継ぎ支援センターと民間のプラットフォーマー(サービス提供事業者)が連携して、売手と買手のマッチングを行ったあとのフォローを双方が行うようにします。

たとえば事業引継ぎ支援センターが窓口となり、民間プラットフォーマーがマッチングを行ったあとにM&Aの手続きに関するフォローをするといった内容になります。民間プラットフォーマーにはそれぞれ得意とする顧客層や強みがあります。それらを踏まえて、事業引継ぎ支援センターが相談者を紹介することで、マッチングの機会を増やす計画です。

事業引継ぎ支援センターの体制強化

後継者がいない経営者の相談に対応するために、全国各地に設けられている国の機関が事業引継ぎ支援センターです。
今回のパッケージによってその体制を大幅に強化することが発表されました。具体的には、次の3つのポイントを強化するとのことです。

・データベースの抜本拡充

事業引継ぎ支援センターに登録している売却案件のデータベースを金融機関や民間業者などに開放することで、マッチングの可能性を高めます。

・後継者人材バンクの全国展開

後継者がいない小規模事業者(企業というよりは主に個人事業主を想定)と、新たに創業したいと思っている人をマッチングする仕組みを全国に展開します。

・地域金融機関との連携強化

地域の金融機関との人的交流や情報流通を活発化させることで、引継ぎ支援センターをパワーアップさせる取り組みを始めます。

できる限り後継者の個人保証を解除

事業承継時に後継者による個人保証(会社による借入の連帯保証)を可能な限り避けられるようにする内容です。
後継者がいない経営者はずっと何も対策をとってこなかったわけではなく、候補となる人材に声をかけたり優秀な社員に打診したりしています。
しかしながら、多くの場合、引継ぐと同時に借金を抱えることにより承継を拒否されているのです。

そこでまず、政府系金融機関による無保証融資の拡大を進めるとともに、新たに経営者保証を不要とする信用保証制度の創設を目指しています。

事業承継補助金の充実化

事業承継補助金制度とは、事業承継によってオーナーとなった経営者(の会社)が、成長のために行う新たな投資に対して補助金を給付するものです。
この補助金を2020年度から拡充し、事業を譲渡する者の廃業費用も補助対象となります。またベンチャー型事業承継枠も新設され、より幅広い事業承継のパターンに適用できる見込みです。

国と民間の力をうまく活用することで事業承継を成功させましょう

これまで紹介したとおり、国として後継者がいない中小企業への事業承継支援はさまざまな計画が立てられており、今後まさに実行されていくことでしょう。
一方で、第三者承継支援総合パッケージはまだこれから詳細を詰めていく段階ですので、当面具体的な施策は出てこないと思われます。

さらに、中小企業庁は2020年3月に「第三者承継推進徹底会議」という事業承継パッケージのキックオフとなる位置付けのイベントを開催する予定でしたが、新型コロナウィルスの影響により中止となりました。
ここでは経済産業省、金融庁、中小企業支援機関、金融機関、民間仲介会社などが集まって、第三者承継支援を全国で進めるための話し合いが行われるはずでした。

M&Aナビはこれまで数多くの事業承継に関わってきた経験があり、その立場から述べると、国でも民間でもいいのでとにかくM&Aの実績があり経験豊富な人に相談することが最も重要だと考えています。

中小企業M&Aはまだまだ数が少なく、こうして国が本腰を入れて対策を打ち出していることは日本経済にとっても素晴らしいことです。
しかしながら、あまりM&Aの経験がない人がアドバイザーと称して相談を受けているケースが増えていることも事実です。もちろんそういった方を通して成約に至るケースもあるので一概には言えませんが、M&Aや事業承継は経営戦略はもちろんのこと税務・法務・労務など数多くの観点から検討が必要です。

M&Aナビでは、経験豊富なアドバイザーが完全無料でご相談を承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

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