M&Aに必要な手数料は?種類や相場、手数料を抑える方法解説!
M&A(合併と買収)に取り組んでみたいという意欲はあるものの、「手数料が高額と聞いて不安」という声が増えてきています。
近年のM&A市場の盛り上がりにより、M&Aが企業戦略の一環として広く行われるようになりましたが、そのプロセスには様々な手数料が伴います。
そこで本記事では、M&Aにかかる手数料の種類や相場、手数料が高い理由、仲介会社の役割、手数料を抑える方法について詳しく解説します。
目次
M&Aにかかる手数料の種類と相場
早速、M&Aにかかる手数料の種類や相場について見ていきましょう。
分かりやすく表で整理すると以下の通りです。
種別 | 相場 | タイミング | 概要 |
---|---|---|---|
相談料 | 数万~数十万円 | 初期相談 | 初期的な相談を実施するタイミングでかかる費用 |
着手金 | 数十万~数百万円 | プロジェクト開始時 仲介会社との契約締結 など | M&A仲介会社に頭金として支払う費用 |
中間金 | 成功報酬の10~30% | 意向表明 独占交渉開始 など | M&Aが中間地点に達した際にかかる費用 |
DD費用 | 数十万~数百万円 | デューデリジェンス実施 | デューデリジェンス実施に必要な費用 |
成功報酬 | 譲渡金額の1~5% レーマン方式による | M&A成約時 | M&A取引が成立した際に支払う費用 |
リテーナーフィー | 数十万/月 | 毎月・もしくは定期的に | 定期的に支払われる費用 |
それぞれ解説していきます。
相談料
相談料は、M&Aの初期段階での相談やアドバイスを受けるために支払われる費用です。この料金は一般的に固定額で設定されており、数万円から十数万円程度が相場です。相談料は、初めてM&Aを検討する企業が、全体の流れや基本的な戦略を理解するために重要な役割を果たします。
着手金
着手金は、M&Aプロジェクトが正式に開始される際に支払われる費用です。着手金は、数十万円から数百万円程度が一般的で、プロジェクトの規模や複雑さによって異なります。この費用は、具体的なM&A計画の策定や、初期段階のデューデリジェンス(DD)作業のために使用されます。
中間金(中間手数料)
中間金は、M&Aプロジェクトが中間段階に達した際に支払われる費用です。例えば、基本合意書の締結や主要な条件が合意された段階で請求されることが多いです。中間金の相場は、着手金と同程度か、それ以上となることがあります。
デューデリジェンス費用
デューデリジェンス(DD)は、買収対象企業の詳細な調査を行うプロセスで、この費用は非常に重要です。DD費用は、会計、法務、税務、ビジネスの各分野にわたる専門家の調査費用を含みます。費用は数百万円から数千万円に及ぶことがあり、企業の規模や複雑さによって大きく変動します。
成功報酬
成功報酬は、M&A取引が無事に完了した場合に支払われる費用です。これは最も一般的な手数料の一つで、取引金額の一定割合(通常は5%前後)が相場です。成功報酬は、M&A仲介会社の最終的な報酬となるため、取引の成否が直接影響します。
リテイナーフィー
リテイナーフィーは、M&Aプロジェクトが長期間にわたる場合に、月々または定期的に支払われる費用です。これにより、仲介会社やアドバイザーが継続的に関与し、サポートを提供することができます。リテイナーフィーの相場は月数十万円から数百万円程度です。
レーマン方式とは
レーマン方式は、M&A手数料を計算するための一般的な方法で、取引金額に応じて段階的に手数料率が設定される方式です。
例えば、取引金額が大きくなるほど手数料率が低くなるという特徴があります。
この方式は、多くのM&A仲介会社で採用されており、透明性と公正性が高いとされています。
レーマン方式の計算方法
レーマン方式の計算方法は、取引金額に対して段階的に手数料率を適用します。
例えば、取引金額が5億円以下の場合は5%、5億円を超える部分については4%などといった具合です。
具体的な手数料率は会社ごとに異なるため、事前に確認することが重要です。
レーマン方式の具体例
具体例を挙げると、取引金額が10億円の場合、最初の5億円に対しては5%(2,500万円)、次の5億円に対しては4%(2,000万円)の手数料が適用されます。
合計で4,500万円の成功報酬が発生することになります。
M&Aにかかる手数料が高い理由
会社によって異なりますが、M&A仲介会社の手数料は非常に高額になることが多いです。
では、なぜM&A仲介会社の手数料は高くなる傾向にあるのでしょうか。
3つの観点から深堀していきます。
人件費が高いため
M&Aにかかる手数料が高い理由の一つとして、人件費の高さが挙げられます。
M&Aプロジェクトには、多くの専門家が関与します。
これには、財務アナリスト、弁護士、会計士、税理士、そしてM&Aコンサルタントなどが含まれます。
これらの専門家は、それぞれ高度な知識とスキルを持っており、そのための報酬も高額になります。
特に、M&Aのような複雑でリスクの高いプロジェクトでは、各専門家の役割が重要であり、その分のコストが手数料に反映されます。
実際、大手M&A仲介会社は日本の平均年収ランキングに複数社ランクインしています。
長期プロジェクトになるため
M&Aプロジェクトは、多くの場合、数か月から数年にわたる長期間にわたります。
企業の買収や統合には、詳細な調査や交渉、契約の締結など、さまざまなステップが必要です。
この長期的な取り組みには、継続的なサポートとコンサルティングが不可欠であり、そのための費用がかかります。
また、長期プロジェクトになることで、途中で新たな課題やリスクが発生することもあり、その対応にもコストがかかります。
幅広い専門知識が必要になるため
M&Aには、企業の価値評価、法務問題、税務戦略、財務分析など、幅広い専門知識が求められます。
これらの知識を持つ専門家のチームが協力してプロジェクトを進める必要があります。
そのため、各分野の専門家を雇用する費用が手数料に含まれることになります。
また、特に複雑なM&A取引では、国際的な法規制や市場の違いなど、追加の専門知識が必要となり、さらにコストが増加することがあります。
M&A仲介会社の役割
M&A仲介会社の役割がわからなければ、高額な手数料を支払ってまで依頼することを決められないのではないでしょうか。
そこで本章では、M&A仲介会社の役割について見ていきます。
計画の作成
M&A仲介会社は、企業の合併や買収における計画の作成をサポートします。
これには、企業の現状分析、目標の設定、戦略の立案が含まれます。
仲介会社は、クライアント企業の強みや弱み、市場の動向を踏まえた上で、最適なM&A戦略を提案します。
計画の作成は、M&Aプロジェクトの成功に直結する重要なステップであり、慎重かつ詳細に行われます。
マッチング業務の実施
M&A仲介会社は、売り手企業と買い手企業のマッチングを行います。
これは、適切なパートナーを見つけるための重要なプロセスです。
仲介会社は、広範なネットワークとデータベースを活用して、クライアント企業の条件に合った相手を見つけ出します。
また、初期の交渉や条件の調整もサポートし、スムーズなマッチングを実現します。
条件の交渉支援
M&Aの成功には、双方が納得する条件の交渉が不可欠です。
仲介会社は、専門知識と経験を活かして、クライアント企業の利益を最大化するための交渉支援を行います。
価格の交渉だけでなく、契約条件や支払い条件など、さまざまな要素を調整しながら、最適な合意を目指します。
交渉は、M&Aプロジェクトの中でも特に複雑で重要な部分であり、プロのサポートが非常に有効です。
デューデリジェンスの立ち合い
デューデリジェンス(DD)は、買収対象企業の詳細な調査を行うプロセスです。
仲介会社は、DDの各段階でクライアントをサポートし、必要な情報を収集・分析します。
これには、財務状況、法務問題、税務リスク、ビジネスの持続可能性などが含まれます。
仲介会社の立ち合いにより、DDプロセスが効率的かつ効果的に進行し、リスクの低減と正確な情報提供が確保されます。
M&A仲介会社に依頼する以外の選択肢
M&A仲介会社に依頼せずにM&Aを進める方法もあります。
例えば、企業内部のM&Aチームを編成し、自社で全てのプロセスを管理する方法です。
また、専門のアドバイザーやコンサルタントを個別に雇用し、必要なサポートを得ることも可能です。
これらの方法は、手数料を抑えることができる反面、専門知識やネットワークの不足がリスクとなる可能性があります。
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M&A仲介会社を利用するメリット・デメリット
本章ではM&A仲介会社を利用することのメリットとデメリットについて解説していきます。
M&A仲介会社を利用するメリット
まずはM&A仲介会社を利用するメリットからです。
売却金額や条件の妥当性を確認できる
M&A仲介会社を利用する大きなメリットの一つは、売却金額や条件の妥当性を確認できることです。
仲介会社は豊富な経験と市場知識を持っており、適正な評価を行うためのデータやノウハウを有しています。
これにより、クライアント企業が市場価値に見合った適正な価格で取引を進めることが可能になります。
また、条件交渉の際にも、専門家のサポートを受けることで、より有利な条件を引き出すことができます。
M&Aにかかる作業の負担を削減できる
M&Aは多くのステップと作業が伴う複雑なプロセスです。
仲介会社を利用することで、これらの作業をプロフェッショナルに任せることができ、クライアント企業の負担を大幅に軽減できます。
例えば、売り手企業の発掘、初期交渉、デューデリジェンスのサポートなど、多岐にわたる業務を代行してくれるため、クライアント企業は本業に専念することができます。
M&Aに関するトラブルのリスクを軽減できる
M&Aプロセスには多くのリスクが伴います。
契約の細部や法的な問題、財務上の不確実性など、さまざまなトラブルが発生する可能性があります。
仲介会社はこれらのリスクを管理し、トラブルを未然に防ぐための対策を講じます。
専門家のアドバイスを受けることで、クライアント企業は安心して取引を進めることができます。
M&A仲介会社を利用するデメリット
手取り額が減る
M&A仲介会社を利用する際のデメリットの一つは、手数料の支払いにより手取り額が減ることです。
仲介会社に支払う手数料は、成功報酬として取引金額の一定割合が設定されていることが一般的です。
このため、売却金額が高額になるほど、支払う手数料も増加し、最終的な手取り額が減少します。
利益相反のリスクがある
仲介会社が複数のクライアントを持つ場合、利益相反のリスクが生じることがあります。
例えば、同じ市場内で複数の売り手企業や買い手企業を担当している場合、それぞれのクライアントの利益が対立する可能性があります。
このような状況では、仲介会社がどのクライアントの利益を優先するかが問題となり、透明性と公正性が求められます。
M&Aに必要な手数料に関するまとめ
M&Aに必要な手数料には相談料、着手金、中間金、デューデリジェンス費用、成功報酬、リテイナーフィーなどがあります。
手数料が高い理由としては、人件費の高さ、長期プロジェクトになること、幅広い専門知識が必要であることなどが挙げられます。ただし、M&Aという高度な経営戦略を実行していくうえで必要な投資の一つだといえるでしょう。
また、M&A仲介会社を利用することには、売却金額や条件の妥当性を確認できる、M&Aにかかる作業の負担を削減できる、トラブルのリスクを軽減できるといったメリットがあります。
M&Aの手数料について理解し、必要以上の支払をしないように注意しましょう。
M&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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