【2026年最新】SES企業のM&A・売却|評価される指標と相場の考え方、事例

SES会社のM&Aは、エンジニアを確保したいIT企業が、中小のSES会社やSES事業を買い取る形で行われています。売却価格は時価純資産と営業権で考えるのが基本で、稼働率、粗利、協力会社への依存、商流の深さ、技術者の定着によって評価が変わります。
SESに固有の論点は2つあります。1つは、準委任契約で受けた現場で顧客が技術者に直接、具体的な指揮命令をしていないか(偽装請負にあたらないか)を、買い手が確かめることです。もう1つは、株式譲渡か事業譲渡かで、顧客や技術者との契約の扱いが変わることです。
SES業界のM&Aの動向(2026年)
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IT技術者の不足は続いています。帝国データバンクの2026年7月の調査では、正社員が足りないと答えた「情報サービス」の企業は61.9%でした。2024年7月の71.9%からは下がったものの、業種別で5番目に高い水準です(出典:帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査(2026年7月)」)。経済産業省の委託調査は、2030年のIT人材の不足を、IT需要の伸び方によって約16万人から約79万人と試算しています(IT人材の生産性の上昇率を年0.7%とした場合。出典:経済産業省委託、みずほ情報総研「IT人材需給に関する調査」、2019年3月)。
こうした中で、上場しているIT企業が中小のSES会社の株式や、SES事業そのものを買い取る例が開示されています。2025年以降は、SES事業だけを数千万円で譲り受ける事業譲渡の開示も続いています(事例①〜③)。ソフトウェアやSaaSを含むIT業界全体の動きはIT企業のM&Aにまとめています。
売り手側:採用競争と多重下請けという壁
中小のSES会社は、大手と同じ市場で技術者を採用しなければならず、採用できなければ売上も伸びません。取引構造の問題もあります。公正取引委員会の2022年の調査は、ソフトウェア業の多重下請構造のもとで、代金に関する問題が下流の事業者にしわ寄せされていると報告しています。多くの事業者が、不必要な「中抜き」事業者の存在を感じていることも示されました。(出典:公正取引委員会「ソフトウェア業の下請取引等に関する実態調査報告書」、2022年6月)二次請け、三次請けの位置にいる会社ほど、単価を自力で上げる余地が小さくなります。
買い手側:技術者と取引関係をまとめて得たい
買い手が開示している目的は、技術者の確保です。fonfunは「優秀なエンジニア人材の採用や体制強化は最重要事項」として、SES事業を譲り受けることを決めました。約30名の稼働エンジニアを迎えると開示しています。ピアズは、Web開発型が中心だった既存のSES事業を補うため、関西で組込み型の技術者を中心とするSES事業を譲り受けることを決めました。アピリッツグループは、未経験者を技術者に育てる教育カリキュラムを持つ会社を子会社にしました。
採用では時間がかかる人数の技術者を、取引先との関係ごと得られる点が、SES会社やSES事業を買う理由になっています。

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SESとは:準委任契約と労働者派遣の違い
SES(システムエンジニアリングサービス)は、顧客のシステム開発や運用の業務に自社の技術者を参画させ、その業務の対価を受け取る取引です。契約は準委任契約(民法第656条)で結ぶことが多く、仕事の完成を約束する請負契約(民法第632条)とも、労働者派遣とも違います。
| 区分 | 契約で約束するもの | 技術者に指示を出す人 | 国の許可 |
|---|---|---|---|
| SES(準委任契約) | 業務を処理すること | SES会社(受注した側) | 不要 |
| 請負契約 | 仕事を完成させること | 請け負った企業 | 不要 |
| 労働者派遣 | 派遣先の指揮命令のもとで働かせること | 派遣先(顧客) | 労働者派遣事業の許可が必要(労働者派遣法第5条) |
どれにあたるかは契約の名前ではなく、実態で判断されます。厚生労働省は、準委任契約であっても、実態として顧客と受注側の技術者の間に指揮命令関係があれば、労働者派遣事業にあたり労働者派遣法が適用されるとしています。(出典:厚生労働省「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)に関する疑義応答集(第3集)」)
受託開発(請負)を主力にしている会社の売却は、論点が少し異なります。そちらはシステム開発会社のM&Aで解説しています。
偽装請負と判断されるリスク
契約は準委任や請負の形なのに、実際は顧客が受注側の技術者に直接、具体的な指示を出して作業させている状態を、いわゆる偽装請負といいます。偽装請負は労働者派遣法に違反します(同疑義応答集)。37号告示は、受注側が自ら業務の進め方の指示、労働時間や残業の管理、服務規律の管理、配置の決定を行うことを、派遣にあたらないための条件の一つとして挙げています。
影響は顧客の側にも及びます。法の適用を免れる目的で請負などの名目で契約し、実態として派遣を受けていた場合です。このとき、顧客がその技術者に労働契約を申し込んだものとみなされます(労働者派遣法第40条の6)。許可を受けずに労働者派遣事業を行った場合は、1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です(同法第59条)。
このため買い手は、買収前の調査(デューデリジェンス)で、契約書の種類と現場での働き方が合っているかを確かめます。顧客の社員が技術者に直接作業を割り振り、勤怠も管理している案件が多いとします。その場合は、契約の見直しや取引の継続が交渉の論点になります。
労働者派遣事業の許可の有無
SES会社の中には、準委任契約と並行して、労働者派遣で技術者を送り出している会社があります。派遣をするには厚生労働大臣の許可が要ります(労働者派遣法第5条)。有効期間は最初が3年、更新後は5年です(同法第10条)。買い手は、許可を持っているか、有効期間が切れていないかを確認します。派遣の契約と準委任の契約が区別して管理されているかも見られます。
株式譲渡なら許可は会社に残りますが、役員などが変わったときは届出が必要です(同法第11条)。労働者派遣法に、許可を事業と一緒に移す規定はありません。事業譲渡で派遣契約を引き継いで派遣を続けるなら、譲り受ける会社自身の許可が必要です(同法第5条)。
自社の契約や働き方が当てはまるかは、社会保険労務士や弁護士に確認してください。
SES企業の価値を左右する指標
SES会社の売上は、技術者の人数と稼働と単価の掛け算で決まります。買い手はこの掛け算の中身を、次の7つの指標で確かめます。どの指標も、売り手が月次の数字で示せるかどうかで、買い手の受け取り方が変わります。
稼働率
在籍する技術者のうち、案件に参画して売上を生んでいる人の割合です。待機中も給与は払うため、稼働率が下がった分だけ利益が減ります。買い手は直近1〜2年の月次の推移と、案件が終わってから次の案件に入るまでの期間を見ます。
単価と粗利
技術者1人あたりの月額単価と、そこから給与や社会保険料、協力会社への支払いを差し引いた粗利を見ます。単価を見直してきた履歴があれば、顧客との交渉力の裏付けになります。
自社社員と協力会社(BP)の比率
BP(ビジネスパートナー)は、自社で受けた案件の再委託先となる他社の技術者やフリーランスです。BPが入る案件は、顧客から受け取る代金とBPへの支払いの差額しか利益になりません。さらに、準委任契約で受けた業務を再委託するには、原則として顧客の許諾が必要です(民法第644条の2、第656条)。買い手は、再委託が契約上認められているかを確認します。BPの技術者がM&Aの後も参画を続けるかも確認の対象です。
商流の深さ(エンド直請けと上位SIerの比率)
システムを使う企業(エンドユーザー)と直接契約しているか、大手SIerの一次請けか、その下の二次請け、三次請けかを見ます。商流が浅いほど、途中の会社に差し引かれる分が少なく、単価を上げやすくなります。
特定顧客への依存
売上の大半が1社に集中していると、その取引が終われば会社の価値が大きく下がります。基本契約に、株主や経営者が変わったときの通知や承諾を求める条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)がないかも確認されます。
技術者の定着率、平均年齢、スキル構成
離職率、平均年齢、扱える言語や担当できる工程(要件定義などの上流か、開発やテストか)を一覧で示せるようにしておきます。そうすると買い手は、自社の不足分を埋められるかを判断しやすくなります。未経験者を育てる仕組みも評価の対象です。アピリッツグループの事例では、買収の理由に相手先の教育カリキュラムが挙げられています。
営業の属人性
案件を取ってくるのが社長1人という会社は、社長が引退すると新しい案件が入らなくなるおそれがあります。顧客ごとの窓口を社員に分け、案件情報や単価の交渉履歴を社内で共有しておくと、評価が下がりにくくなります。
7つのうち、稼働率や営業の属人性は、売却を決めてからでも改善に手をつけられます。
SES企業の売却価格の考え方
SES会社の売却価格に、公表された相場表はありません。中小企業のM&Aでは、時価純資産に営業権(のれん)を加える方法がよく使われます。営業権は営業利益の数年分で見積もります(年買法)。何年分で見るかは、前の章の指標で変わります。
将来の利益の見込みから事業の価値を出すDCF法も使われます。事例②と③では、DCF法で算出した事業価値をもとに譲受価格を判断したと開示されています。
開示された6件の数字
事例①〜⑥の開示資料に載っている数字は次のとおりです。
| 事例 | 方法 | 対象の売上高 | 対象の利益など | 価格 |
|---|---|---|---|---|
| ①ピアズ(2026年1月) | 事業譲渡 | 1億9,030万円(2025年3月期、ピアズが算定) | 売上総利益5,030万円 | 5,000万円(承継対象従業員の状況等で減額調整の可能性あり) |
| ②fonfun(2025年5月) | 事業譲渡 | 3億4,600万円(2024年8月期) | 営業利益1,400万円 | 6,200万円(DCF法で5,000万〜7,300万円と算定) |
| ③BTM(2025年3月) | 事業譲渡 | 1億1,100万円(直前期) | 経常利益13万5,000円 | 5,000万円(DCF法で算出した事業価値から判断) |
| ④アピリッツ子会社(2025年3月) | 株式譲渡(全株式) | 約2億2,396万円(2024年8月期) | 営業損失48万4,000円、純資産約1,473万円 | 2,500万円+業績に応じた追加の対価(アーンアウト)最大1,500万円 |
| ⑤フーバーブレイン(2024年9月) | 株式譲渡(51.4%) | 5億100万円(2024年2月期) | 営業利益4,900万円、純資産1億6,800万円 | 3億6,000万円(51.4%分) |
| ⑥TWOSTONE&Sons(2024年9月) | 株式譲渡(全株式) | 5億8,900万円(2023年10月期) | 営業損失200万円、純資産2億6,000万円 | 6億2,500万円 |
直近の利益と価格の関係は案件ごとに違い、この6件から倍率の目安は読み取れません。③のように、直前期の経常利益がほとんど出ていない事業にも5,000万円の価格が付いた例があります。ただし、評価の前提には開示されていない部分も多く、自社にそのまま当てはめることはできません。
価格の決め方には、次のような条件が付いた例もあります。④では2025年8月期から2027年8月期の業績の達成度合いに応じて、最大1,500万円のアーンアウトが設定されました。①では、承継対象の従業員の状況等に応じて、譲受価格が減額調整される可能性があると開示されています。①は、技術者が移ってくるかどうかが価格に結びつく条件の例です。
業種を問わない価格の決まり方や算定方法は、M&Aの売却価格の決まり方と相場で解説しています。
株式譲渡と事業譲渡で変わる契約の引き継ぎ
SES会社の売り方は、会社ごと譲る株式譲渡と、SES事業だけを譲る事業譲渡に分かれます。顧客、技術者、協力会社との契約の扱いが大きく違います。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 顧客との基本契約、個別契約 | 会社が変わらないため原則そのまま。チェンジ・オブ・コントロール条項があれば対応する | 契約上の地位を移すには顧客の承諾が必要(民法第539条の2)。新しく結び直すこともある |
| 自社の技術者(雇用契約) | そのまま | 1人ずつ同意を得て、買い手と雇用契約を結ぶ(民法第625条) |
| 協力会社やフリーランスとの契約 | 原則そのまま。契約の条項は確認する | 相手の承諾を得て移すか、結び直す |
| 労働者派遣事業の許可 | 会社に残る。役員などが変われば届出(労働者派遣法第11条) | 労働者派遣法に許可を事業と一緒に移す規定はない。派遣契約を引き継いで派遣を続けるなら、譲り受ける会社自身の許可が必要(同法第5条) |
| 資産と負債 | 帳簿にない負債も含めて会社に残る | 契約で決めた範囲だけ。事例①は資産と負債の引き継ぎなし、②は譲り受けた資産が営業権のみで債権と債務の引き継ぎなし |
事業譲渡は、未払いの残業代のような帳簿に出ていない負担を引き継がずに済むため、買い手には選びやすい方法です。その代わり売り手は、顧客と技術者の1人ずつから同意を集める必要があります。同意しなかった技術者や顧客の分だけ、引き渡せる事業が小さくなります。
株式譲渡は契約をそのまま残せる一方、会社の過去の労務管理や契約の問題もすべて買い手に移ります。偽装請負の状態や未払いの残業代が見つかると、価格の減額や補償の条件として跳ね返ります。
売り手が準備しておくこと
キーマンと営業担当の引き継ぎ
顧客の窓口になっている営業担当と、現場のリーダー格になっている主要なエンジニア(キーマン)を先に整理しておきます。買い手が知りたいのは、この人たちが残るか、残らない場合に誰が引き継ぐかです。社長が営業を兼ねている会社では、売却後に社長が残って顧客を引き継ぐ期間と条件を契約で決めておきます。
技術者への説明と離職防止
SES会社のM&Aで、売り手と買い手がともに気にするのが、技術者が辞めないかどうかです。技術者が辞めれば売上がなくなり、事業譲渡では価格の減額につながることもあります。
説明の時期と順番は、買い手と事前に決めておきます。技術者が最初に知りたいのは、給与や評価の仕組み、いまの案件を続けられるか、働き方が変わるかです。買い手と処遇の方針をすり合わせてから自分の言葉で説明すると、不安からの離職を抑えやすくなります。
契約書と働き方の記録をそろえる
買収前の調査に備えて、次の資料をそろえておきます。
- 顧客ごとの基本契約と個別契約(準委任か、派遣か、請負か)
- 協力会社やフリーランスとの契約と、顧客から再委託の許諾を得ている記録
- 技術者ごとの単価、稼働、粗利の月次表
- 現場での指示の出し方と勤怠の管理方法が分かる資料
- 労働者派遣事業の許可証(派遣も行っている場合)
このうち現場での指示と勤怠の管理は、偽装請負と見られないための土台です。契約書と現場の実態がずれていないかを、売却を考え始めた段階で確かめておきます。
SES業界のM&Aの事例
公表されている事例を6つ紹介します(いずれもM&Aナビが関与した案件ではありません)。内容は各社の開示資料で確認しています。①〜③はSES事業だけを譲り受ける事業譲渡、④〜⑥は会社の株式を取得する例です。売上高や利益は価格の章の表に載せています。
①ピアズがウィズオノウェアのSES事業を譲受(2026年1月公表)
ピアズは、Web開発型の技術者が中心だった既存のSES事業を補うため、ウィズオノウェアのSES事業を5,000万円で譲り受けることを決めました。対象は、関西を主な取引エリアとし、製品や機器向けのソフトウェアを開発する組込み型の技術者を中心とした事業です。資産と負債の引き継ぎはありません。譲受価格は、承継対象の従業員の状況等に応じて減額調整される可能性があります。
②fonfunがインバウンドテクノロジーのSES事業を譲受(2025年5月公表)
fonfunは、インバウンドテクノロジーが手がけるSES事業(ITフリーランスマッチング)を、6,200万円で譲り受けることを決めました。第三者機関がDCF法で算定した事業価値は5,000万〜7,300万円でした。譲り受ける資産は営業権のみで、債権と債務の引き継ぎはありません。稼働エンジニア約30名を迎え入れるとしています。
③BTMがLaniakeaのSES事業を譲受(2025年3月公表)
BTMは、機械学習やデータ分析に強みを持つLaniakeaから、SES事業を5,000万円で譲り受けることを決めました。その事業に従事する技術者も受け入れます。DCF法で算出した事業価値から、適正な価格と判断したとしています。
④アピリッツグループがJUTJOYの全株式を取得(2025年3月公表)
アピリッツの子会社でIT人材派遣を手がけるY’sは、JUTJOYの全株式を株主2名から2,500万円で取得することを決めました。JUTJOYは、SESやエンジニア教育、受託開発を行う会社です。2025年8月期から2027年8月期の業績の達成度合いに応じて、最大1,500万円のアーンアウトを支払う条件が付いています。JUTJOYはJavaとPHPの教育カリキュラムに強みを持ちます。そのカリキュラムを取り入れ、未経験者でも即戦力となる技術者を育てる体制を強めることが目的とされています。
⑤フーバーブレインがイチアールの株式51.4%を取得(2024年9月公表)
セキュリティ事業などを手がけるフーバーブレインは、イチアールの株式の51.4%を、全株式を持つ代表者から3億6,000万円で取得し、子会社にすると公表しました。イチアールはSES事業や受託開発を行う会社で、2020年の創業、従業員は61名(2024年7月末)です。開示では、独自のビジネスパートナーのネットワークを通じた案件情報により、創業から高い稼働率を実現してきたと説明されています。フーバーブレインは「エンジニア集団の構築」をグループの戦略に掲げ、同じ日に別の会社の子会社化も公表しています。
⑥TWOSTONE&SonsがCareconの全株式を取得(2024年9月公表)
ITエンジニアと企業のマッチングサービス「Midworks」を運営するTWOSTONE&Sonsは、同じ形の事業を営むCareconの全株式を取得しました。親会社のインフィックから、6億2,500万円で取得しています。双方の顧客基盤と技術者のデータベースを掛け合わせ、特にジュニア層の技術者の分野でシェアを広げる狙いを示しています。売り手のインフィックは介護総合支援事業を営む会社で、事業会社が子会社を売却した例です。
参考:TWOSTONE&Sons 適時開示(2024年9月30日)
SES企業のM&Aの相談先
相談先は、M&A仲介会社、M&Aマッチングサイト、地域の金融機関、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターが主な選択肢です。
買い手探しから契約まで任せたいなら仲介会社、自分で買い手を探してやり取りしたいならマッチングサイトが向いています。手数料のかかり方はサービスによって違うので、売り手と買い手それぞれの料金を比べてから決めます。事業譲渡では顧客と技術者の同意を集める段取りが要るため、その進め方まで相談できるかも確認点です。
M&Aナビに掲載中のSES・IT人材派遣の案件
M&Aナビでは、SESやIT人材派遣の売却案件を分類ごとの一覧から探せます。買い手として検討している方は、案件の規模や地域を見比べる手がかりになります。
SES企業のM&Aに関するよくある質問
SES企業を売却するとき、買い手はどんな会社ですか?
開示されている事例では、技術者を確保したい上場IT企業やその子会社が、中小のSES会社の株式やSES事業を取得しています。買い手は目的として、技術者の採用と体制の強化、既存事業と異なる分野の技術者の獲得、未経験者の育成体制の強化を挙げています。
SES企業の売却価格はどう決まりますか?
時価純資産に営業権を加える方法や、将来の利益から価値を出すDCF法で考えます。稼働率、単価と粗利、協力会社への依存、商流の深さ、特定顧客への依存、技術者の定着、営業の属人性によって評価が変わります。開示事例の数字から倍率の目安は読み取れません。
SESの事業だけを売却することはできますか?
売却を検討できます。事業譲渡で、SES事業だけを譲る例が開示されています。その場合、顧客との契約を移すには顧客の承諾が、技術者の転籍には1人ずつの同意が必要です。開示された3件の価格は5,000万円から6,200万円で、①と②は債権や債務を引き継がない形でした。
SESの事業承継やM&Aの事例はありますか?
あります。2024年から2026年にかけて、ピアズ、fonfun、BTMがSES事業の譲受を開示しています。アピリッツグループ、フーバーブレイン、TWOSTONE&SonsもSESやIT人材の会社の株式取得を開示しています。対象は売上高が1億円から6億円程度の会社や事業です。
偽装請負の状態だと売却に影響しますか?
影響します。準委任契約でも、実態として顧客が技術者に直接、具体的な指揮命令をしていれば労働者派遣にあたり、労働者派遣法違反になります。顧客にも労働契約の申込みとみなされるリスクがあります。そのため買い手は契約と現場の実態が合っているかを調べ、問題があれば価格や条件に反映させます。
売却で技術者が辞めないようにするには、どうすればよいですか?
説明の時期と順番を買い手と事前に決めます。給与や評価の仕組み、いまの案件を続けられるかといった処遇の方針をすり合わせてから説明します。事業譲渡では、承継する従業員の状況に応じて価格が減額調整される条件が付いた事例もあります。
SES企業のM&Aまとめ
SES会社のM&Aは、技術者を確保したいIT企業と、採用や商流の壁を越えたい中小のSES会社の間で行われています。売却を検討する際は、次の5点を確認してください。
- 契約書の種類と、現場での指示の出し方や勤怠管理の実態が合っているか
- 労働者派遣も行っている場合、許可と有効期間に問題がないか
- 稼働率、単価、粗利を技術者ごとに月次で示せるか
- 協力会社への再委託について、顧客の許諾を得ているか
- 営業の窓口と現場のリーダーが社長以外にもいて、売却後も残る見込みがあるか
契約と現場の実態のずれは、買い手の調査で見つかると価格の減額や補償の条件になります。売却を考え始めた段階で、この5点から確かめておきます。
M&Aナビは、売り手・買い手とも登録・利用料が無料です。売り手は成約時も費用がかからず、買い手は当サービスをきっかけに成約した場合のみ成約手数料が発生します。

株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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