【2024年版】IT業界のM&Aトレンド:最新動向、事例分析、売却のメリットとデメリット
IT業界は、競争が激しく多くのM&Aが行われている業界です。
IT業界は、生成AIに代表されるように技術の進歩が目まぐるしく行われており、それに伴った企業の買収が行われています。
一方で、日本のIT業界では後継者不在問題が関係するM&Aも多く行われており、今後も増加するという予測がされています。
この記事では、IT業界のM&Aトレンドについて、最新の動向や事例の分析、実際に売却・買収を検討する方に向けてメリットとデメリットを解説します。
目次
2024年のIT業界M&A市場
まずは、2024年のIT業界のM&A市場について見ていきましょう。
2024年はIT業界にとっては、これまでよりもM&Aに注視する必要がある年になると予測されています。
特に2022年末に登場したChatGPTに代表される生成AIによる業界の動向に注目する必要があります。
そこでこの章では、IT業界の最新動向を深く掘り下げます。
今後のIT業界の新たな機会を見極め、M&Aによって企業の成長を加速させるための知見を提供しますのでチェックしてください。
IT業界とは
IT業界のM&Aについて見ていく前に、かなり広い定義で捉えられることが多いIT業界とは何かについて改めて見ていきたいと思います。
ITは「Information Technology(情報技術)」の略であり、IT業界とは情報技術を活用したサービスを展開する業界のことを指します。
IT技術はかなり生活に必要不可欠な技術となっており、身の回りの多くのものにITの技術が使われています。
スマートフォンやPCはもちろん、最近では家電や公共交通機関にも活用されており、このことからもIT業界の領域の広さがわかります。
IT業界におけるM&Aのこれまで
このように世の中に広く浸透しているIT技術ですので、IT業界が絡むM&Aがこれまで多く行われてきました。
特にIT業界は1960年前後にコンピューターの誕生とともに始まったとされている比較的新しい業界であるため、他の業界とは異なるM&Aの変遷をたどってきました。
これまでのIT業界のM&Aでは、新たな技術の進歩に合わせて大手企業が新興企業を買収するという形が多くありました。
IT業界のM&Aの特徴
IT業界のM&Aにおいては他の業界と異なる特徴がいくつかあります。
それぞれについて解説していきます。
従業員の技術の獲得
IT業界では、所属する人材に紐づいて技術力が担保されているケースが多くあります。
特に優秀なエンジニアが在籍する会社では、そのエンジニアの技術力が会社を支えているといっても過言ではないケースがあります。
IT業界では人材不足にさらされている業界であるため、優秀なエンジニアを確保することができれば競争力につながります。
一方で、買い手側は売り手側が持つ技術力がどの人材のどのような技術に基づくものなのかをしっかりと精査する必要があります。
規模の大きなIT業界におけるM&A案件においては、企業価値を評価するにあたって、エンジニア一人当たりの価格設定を行って売却価格を算定することもあります。
IT業界で事業の売却を検討する経営者にとっては、エンジニアの育成が重要になるといえるでしょう。
成約までの期間の短さ
IT業界のM&Aはほかの業界と比較して成約までの期間が短くなる傾向にあります。
そのため、買収側は案件候補の選定からクロージングの意思決定を行うまでの期間をできるだけスピード感を持って進めていく必要があります。
新しい技術の進展が早いスピードで進むIT業界にでは、多くに会社が買収を検討しているため、素早い意思決定を行うことが重要です。
場所を選ばない
IT業界のM&Aでは、他の業界と比較して遠隔地の企業を買収する例が多くあります。
背景としては、IT業界の業務自体が場所を選ばずにできる仕事であることや、成果をオンラインで推し量ることができる点が挙げられます。
近年では、コロナ禍の影響もあり都心から離れた場所に本社を移転するIT企業も増えおり、今後も遠隔地のM&Aが実施される見込みです。
2024年のIT業界のM&Aの動向
2024年のIT業界のM&Aは増えていくと予測されています。
詳細な背景理由については後ほど解説しますが、主な理由としては後継者不在や事業環境の変化が上げられます。
特にChatGPTに代表される生成AIの台頭はIT業界にとって大きなインパクトを与えました。
今後は日本でも生成AIを軸にしたITサービスの更なる展開が見込まれるため、企業同士の提携や買収が多くなっていくことが考えられます。
IT業界のM&Aメリットとデメリット
ここまで簡単にIT業界の動向やトレンドについて見てきました。
ここからは、実際にIT業界でM&Aを行うにあたってのメリットとデメリットについて見ていきます。
売却側と買収側のそれぞれで解説しますのでチェックしてください。
売却側:IT業界のM&Aのメリット
まずは売却側のメリットです。
事業承継問題の解決
中小企業では、経営者の高齢化に伴い、事業承継の問題が顕在化し始めています。
特に昨今では、親族にも従業員にも有力な後継の候補者がおらず、会社の引き継ぎに苦慮するケースが多くあります。
そこで第三者に事業を譲るというM&Aの選択肢が有力な事業承継の選択肢として実施されている状況です。
IT業界においても同じ状況があり、多くの経営者が事業承継問題を抱えています。
帝国データバンクによる最新の全国「後継者不在率」動向調査によると、IT業界を含む「広告・調査・情報サービス」の後継者不在率は61.4%とされており、M&Aによる事業承継が有効な手段であるという状況といえるでしょう。
https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p231108.pdf
経営の安定化
M&Aによって会社を売却し、大手企業の傘下に入ると、資本投入により安定した経営を行うことが可能になります。
また、大手企業の傘下に入ることにより、安定して人材獲得を行うことができるようになるため、長期的な成長を実現しやすくなります。
従業員の雇用継続と待遇の改善
M&Aによって第三者に事業を譲渡することにより、従業員の雇用継続を実現することができます。
特に後継者不在を理由に廃業を検討するような場合であれば、廃業ではなくM&Aによって事業を第三者に引き継ぐことによる雇用継続の効果は大きいといえます。
また、大手企業の傘下に入る場合においては、従業員の待遇を改善できることがあります。
大手グループに入ることで多重下請けからの脱却や発注先との関係性の改善が期待できるからです。
創業者利益の確保
M&Aによって、自信が運営する会社の株式を売却した場合、創業者利益を享受することができます。
特に安定して経営を行っている会社や成長企業の場合、時に数億円や数十億円の企業価値がつくことがあります。
最近では、若い経営者が創業者利益の獲得を第一の目的としたM&Aも増えている傾向にあります。
売却側:IT業界のM&Aのデメリット
ここでは売却側のデメリットについて見ていきましょう。
統合のリスク
M&Aにより大手企業のグループに入ることで多くのメリットが考えられますが、デメリットとしてそれが統合のリスクが考えられます。
特にIT業界では技術を持つ人材が重要な企業の資産であるため、M&A後の文化や風習の不一致により成長確度が緩やかになるケースがあります。
主に買い手側のデメリットとして語られることが多いですが、売り手側企業から見て際にも思っていた成長戦略を描けないことは大きなデメリットであるといえます。
買収側:IT業界のM&Aのメリット
ここからは買収側のメリットとデメリットについて見ていきます。
まずは買収側のメリットから見ていきます。
人手不足の解消
M&Aにより技術者を抱える企業を傘下に入れることで人手不足の解消ができます。
IT業界は人手不足が大きな課題となっています。
未経験の若手を採用し教育する動きもありますが、教育のコストを考えるとM&Aが有力な選択肢であるといえるでしょう。
技術・ノウハウの獲得
M&Aは、他社の技術やノウハウを取り込むことにより、自社の製品やサービスの質を向上させる機会を提供します。
これにより、市場での競争力を高めることができます。
販路の拡大
他社の買収により、新しい市場へのアクセスや既存顧客との関係を深めることができます。
これにより、売上の増加やブランド価値の向上が期待できます。
買収側:IT業界のM&Aのデメリット
債務引き継ぎのリスク
買収する企業の債務や潜在的なリスクを引き受けることは、財務面での大きな負担となり得ます。
特に、隠れた負債や訴訟リスクは、事前の評価で見落とされがちです。
統合による従業員引継ぎの失敗
異なる企業文化の中で従業員を引き継ぐことは、統合の大きな障害となります。
従業員のモチベーション管理や、新旧の組織文化の調和は、M&Aの成功において重要な要素です。
IT業界のM&Aトレンドの背後にある要因分析
この章ではIT業界におけるM&Aのトレンドの背後にある要因について解説をしていきます。
経営者の高齢化
日本のIT業界における経営者の高齢化は、M&A市場に大きな影響を与えています。
多くの企業では創業者や主要経営者が引退を迎え、事業承継のためのM&Aが活発化しています。
これにより、新たな経営体制への移行が進むと同時に、イノベーションの機会も生まれています。
事業環境の変化への対応
デジタル化や市場環境の変化に迅速に対応するため、IT企業はM&Aを活用しています。
新技術の導入や市場での競争優位を確保するため、他社の技術や顧客基盤を取り込むことが一つの戦略となっています。
慢性的な人手不足
IT業界では、特に専門技術者の不足が顕著です。
この人手不足を解消するため、企業はM&Aを通じて必要な人材を確保し、事業拡大を図っています。
これにより、効率的な事業運営と持続的な成長が可能になります。
投資意欲の活発化
資本市場の変動や投資家の姿勢の変化により、IT業界への投資意欲が高まっています。
これに伴い、M&Aを活用した成長戦略が注目され、新たな市場の開拓や技術革新が進んでいます。
これらの要因を深く理解することで、IT業界のM&Aトレンドをより的確に捉え、将来の動向を予測することができます。
IT業界M&Aの3つの注意点
売却側・買収側双方にメリットが大きいIT業界のM&Aですが、注意点がございます。
ここでは注意点を解説しておりますのでご確認ください。
目的を明確にする
M&Aを成功させるためには、その目的を明確にすることが不可欠です。
売却・買収や合併を行う理由を具体的に定義し、それが企業戦略とどのように連携するかを理解する必要があります。
十分な検討期間を設ける
M&Aは複雑で時間がかかるプロセスです。
成功には、十分な検討と計画が必要です。
市場分析、財務状況の評価、リスク管理など、様々な側面を慎重に調査し、適切な決定を下すための時間を確保することが重要です。
専門家のアドバイスを受ける
M&Aの過程では、法律的、財務的、技術的な複雑な問題が生じることがあります。
これらを適切に処理するためには、法律顧問、財務アドバイザー、業界の専門家などのアドバイスを受けることが重要です。
専門家の助言は、M&Aのリスクを最小限に抑え、成功へと導く鍵となります。
M&Aナビでは、IT業界のM&Aの成約実績が豊富にありますのでお気軽にご相談ください。
国内外のIT業界のM&A事例5選
国内事例:ソニーネットワークコミュニケーションズによるSo-netエンタテインメントの完全子会社化
2019年4月、ソニーネットワークコミュニケーションズは、So-netエンタテインメントを完全子会社化しました。
これにより、ソニーはインターネットサービス事業を強化し、新たなサービスの開発や市場拡大を目指しました。
国内事例:TTデータによるNTTデータ・イントラマートの完全子会社化
2016年10月、NTTデータは、NTTデータ・イントラマートを完全子会社化しました。
この動きにより、NTTデータはビジネスアプリケーション分野におけるサービスと製品ラインナップを強化し、市場での競争力を高めることを目指しました。
国内事例:Yahoo! JAPANとLINE株式会社の合併
2020年11月、Yahoo! JAPANとLINEは合併しました。
この合併により、日本国内におけるデジタル市場での競争力を高め、新しい顧客層を獲得することを目指したものです。
海外事例:マイクロソフトによるLinkedInの買収
2016年6月、マイクロソフトはLinkedInを買収しました。
この買収の目的は、ビジネスプロフェッショナル向けサービスを強化し、クラウドベースの製品とLinkedInのネットワークを組み合わせることでした。
海外事例:グーグルによるFitbitの買収
2019年11月、GoogleはFitbitを買収しました。
この買収は、Googleのウェアラブルデバイスと健康データの分野への進出を目指すものでした。
この動きは、Googleの製品ラインナップの多様化と、ヘルスケアテクノロジー市場での競争力強化を示しています。
M&Aナビに掲載中のアパレルのM&A案件
弊社が運営するM&Aナビには、IT関連の事業者様から売却や買収のご相談をいただくことが増えてきました。
そこでM&Aナビに掲載いただいているIT関連のM&A案件をまとめた特集ページを用意いたしました。
IT関連業のM&Aにご興味がある方はぜひのぞいてみてください。
IT業界のM&Aのまとめ
いかがでしたでしょうか。
IT業界は、新しい技術が日々生み出されておりM&Aが盛んに行われている業界だといえます。特に、昨今話題となっている生成AIの登場により、2024年はさらに大きな動きがあることが予想されています。
是非この記事を参考にして、変化の激しいIT業界においてM&Aを活用する術を身に着けてほしいと思います。
M&Aナビは、買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いことが特徴です。ぜひご活用ください。
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