M&Aによる会社売却を従業員・社員に公表する、ベストなタイミングとその方法とは?
M&Aによる会社売却を従業員や社員に公表することにより、信頼関係が崩れたり・不信感を持たれてしまうのでは?
そんな不安を持たれている方も多いのではないでしょうか。
実際、公表するタイミングを少し間違えると、M&A交渉が破談になる可能性があるため、慎重に進める必要があります。
しかし、M&Aにおけるゴールとは、M&Aの契約を締結することではなく、M&Aの後、会社や事業がより良い形で継続・発展することです。
よって、どこかの時点では従業員にはM&Aについて納得してもらう必要があります。
そこでこの記事では、中小企業がM&Aを行う際に起こる問題の一つである「売却後の従業員の離職」を防ぐための従業員・社員にM&Aの情報を公表するタイミングについてお伝えします。
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目次
M&A・会社売却で起こり得る従業員離職という課題
M&Aによる統合後も売却された企業が成長を続けていくには、働き続けてくれる従業員の存在が必要です。
しかし、中小企業のM&Aにおいては、売却後に従業員が辞めてしまう場合が多くあります。
ほとんどが友好的な買収である中小企業のM&Aにおいて、なぜこうした問題が起きてしまうのでしょうか。
中小企業のM&A・会社売却で公表後に従業員離職が発生する要因
まず、中小企業の風土について考えてみましょう。中小企業の場合、企業の価値観や文化が経営者によって形成されてきたのが一般的です。
そのため従業員の中には、売却によって「代表者が変わる」=「風土や文化が崩れる」と感じてしまう方もいます。
また、買収されたことで、待遇や仕事内容が変わってしまうのではないか、と懸念する人も少なくありません。
たとえば、自社より規模も大きくブランド力も強い会社から買収された場合などに、自身の待遇が悪くなることを想像する可能性もあります。
年配の従業員の中には、「M&A=会社の身売り」というネガティブなイメージを持っている場合もあります。
会社のみ売りに関しては以下の記事を参考にしてみてください。
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M&A・会社売却の公表時に従業員離職を防ぐためのポイント
従業員はじめ、取引先やその他第三者にM&Aに関する情報を開示することを、一般的に「ディスクローズ」といいます。ディスクローズ時に、従業員の離職を防ぐために、重要なことが2つあります。
①M&Aでの条件交渉
一つが、M&Aでの条件交渉です。
従業員雇用・処遇の保障や企業文化存続に向けて、細心の注意を払って諸条件設定を行えば、従業員納得の上での円滑な企業統合が進められます。
②M&A情報のディスクローズ方法
そして二つ目が、M&A情報のディスクローズ方法です。
告知の手順を誤ることにより、従業員の誤解を招き、信頼を大きく損なうことがあります。
そのため、M&Aで企業や事業を売却する売手企業オーナーが、自社の従業員たちに対して、M&Aの情報を開示するタイミングやプロセスは非常に重要です。
これらの方法をより詳しく説明していきたいと思います。
従業員に対するM&A・会社売却の公表の方法
従業員を対象としたディスクローズの方法について注意すべきポイントを、大きく2つに絞ってお伝えします。
M&A・会社売却時の公表のプロセス
従業員への告知には、いくつかのステップを踏むことをお勧めします。ここでは、譲渡前と譲渡後に分けて考えてみます。
譲渡前の情報開示対象
譲渡前に告知すべき対象は、会社や事業全体の経営に深く関係している人物です。
例えば、会社全体の経営を左右する立場である、役員陣がこれに当たります。
元々大きな役割を担ってきた彼らとの間に軋轢が生じて離職されてしまうことは、何としても避けたいです。
この人たちの協力無くして、会社を更に発展させていくことは非常に難しいでしょう。
統合後も会社経営に深く関わり続けてもらいたいのであれば、早めの合意形成を行うことが重要です。
またその次に、対象事業の責任者や、現場でキーマンとなっている幹部クラス(通常は部長クラス)の従業員についても、早めの告知することをお勧めします。
その人がいないと事業運営が成立しない場合、譲渡後に告知し「そういうことなら、辞めます」となってしまうと、買手側は『買収してしまったものの事業運営ができない』という最悪の状況を迎えることになります。
譲渡前の告知は、基本合意後がよいでしょう。
(基本合意について詳しく知りたい方は「 基本合意 とは – 事業承継・M&A用語集」を参考にしてみて下さい。)
この際、対象役員や従業員を集めて一度に説明するのではなく、一人ひとり丁寧に話をすることが大切です。
可能であれば、買手側の代表や経営幹部との直接面談や会食などを設定することも効果的です。
他の従業員より早い段階でじっくり説明をして、離職を防ぎましょう。
譲渡後の情報開示対象
上で挙げた以外の人達には、譲渡後の告知で問題ありません。
譲渡後と記載しましたが、実際のタイミングとしては、最終契約直前もしくは直後の開示が一般的です。
例えば、最終契約前日の夕礼や契約当日の朝礼、もしくは契約翌日の朝礼などが良いでしょう。
可能な限り、買手側の経営者も同席の上、「なぜM&Aに至ったのか」「これからどのような経営が行われていくのか」などを丁寧に説明しましょう。
その時、将来的な目標について熱く語ることも大切ですが、まずは従業員の感じる不安を払拭してあげることが何よりも重要です。
従業員告知に段階設定が必要な理由
上のようなを段階設定を行うことを推奨する理由は、主に2つあります。
スムーズな経営統合
1つは、統合後の経営をスムーズに行うためです。
これは、上記のとおり説明をしたので、すでにご理解していただいていると思います。目標意識を統一させ、統合後の経営を成功させるには、会社上層部の納得を得ることが最優先です。
離職を防ぐ効果
もう1つが、末端従業員を始め、中間層以下の従業員の離職を防ぐ効果があるためです。
より現場に近い従業員がM&A告知内容に納得がいかなかった場合、彼らの直接的な相談相手となるのは多くの場合、会社のトップではなく、彼らの上司にあたる従業員です。
そのため、立場の高い人ほど、M&Aについてより早い段階で納得してもらう必要があります。こうすることで、上の人間が部下や後輩の不満を聞き、納得のいく説明をする、という流れを作りあげることができます。
関連する用語として、M&A成立後、買収企業がシナジーを最大限発揮させるために行う経営統合プロセスを意味する”PMI”という言葉があります。
PMIについてもっと詳しく知りたい方は「PMI とは – 事業承継・M&A用語集」からどうぞ。
M&A・会社売却の公表で従業員が知りたがることとは?
では、実際に従業員たちは、どのような情報を欲しているのでしょうか。
経営者側からすると、M&A後の株式(経営権)の移動や今後の経営指針などを優先的に話してしまいがちですが、従業員たちが一番に知りたい情報は、必ずしもこうした情報であるとは限りません。
多くの場合、従業員たちが真っ先に心配することは「仕事内容の変化」や「給与や地位への影響」などです。また、買手企業が自社と離れた場所に拠点を置く場合、「転勤の有無」なども不安要素の一つとなります。
そのため、従業員たちに大々的な告知を行う際には、以下の情報を正確に伝えることが必要です。(※もちろん、買手との交渉の中で事前に各種条件の確認を行っておく必要があります)
公表時に従業員に伝えるべき情報
- 当面の仕事内容や処遇、勤務地はそのままであること
- 将来的に変更があるとしても、次の経営者と従業員自身が十分に話し合ったうえで決めることになる
- 現職の社長自身も、ある一定の期間は会社に残り業務引継ぎと並行して会社経営の補助をするつもりであること
- 自社や対象事業がより大きな企業グループの一員となれること
- またそれにより、会社としても個人としても更なる飛躍を期待できること
これらのことをきちんと伝えたうえで、彼らの生活を脅かす変化は無く、期待を持てるM&Aであることを理解してもらいましょう。
会社売却の基本的な理解
会社売却とは、企業の所有権を他の企業や個人に譲渡することを指します。これは、経営者が引退する際や、事業の再編や資金調達のために行われます。しかし、会社売却は複雑なプロセスであり、多くの要素を考慮する必要があります。
会社売却とは?
会社売却は、企業の所有者がその企業の全てまたは一部の株式を他の企業や個人に売却することを指します。これは、経営者が引退する際や、事業の再編や資金調達のために行われることが多いです。会社売却は、企業の成長戦略の一部として行われることもあります。
会社売却のメリットとデメリット
会社売却には、メリットとデメリットがあります。メリットとしては、資金調達や事業の再編、経営者の引退など、企業の成長や継続的な運営を支えるために必要な手段となることが挙げられます。一方、デメリットとしては、会社売却には時間とコストがかかること、また、売却後の企業の運営に影響を及ぼす可能性があることが挙げられます。
会社売却のプロセスと手続き
会社売却は、複雑なプロセスであり、多くの手続きを必要とします。これには、企業価値の算定、買い手の探索、契約交渉、法的手続きなどが含まれます。
会社売却のプロセスに関する詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
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会社売却の方法・種類
会社売却の方法は、企業の状況や目的により異なります。一部の株式を売却する場合、全株式を売却する場合、企業の一部を分割して売却する場合など、様々な方法があります。
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会社売却の手続き・流れ
会社売却の手続きは、以下のような流れで進められます。まず、企業価値を算定します。次に、買い手を探します。その後、契約を交渉し、最後に法的手続きを行います。
会社売却の価格算出と税金
会社売却の価格は、企業の価値に基づいて算出されます。また、会社売却には税金がかかるため、税金の計算も重要な要素となります。
会社売却の相場・企業価値算定
会社売却の価格は、企業の価値に基づいて算出されます。企業価値は、企業の財務状況、市場状況、業界の動向などを考慮して算定されます。また、企業価値は、企業の将来的な収益性や成長性を反映したものであるため、企業の将来予測も重要な要素となります。
会社売却価格の相場や価値算定の手法については、以下の記事を参考にしてみてください。
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会社売却の際にかかる税金
会社売却には、税金がかかります。売却価格と企業の資産価値との差額に対して課税されます。この税金は、企業売却のコストとなるため、税金の計算は重要な要素となります。
会社売却時の税金に関する詳細は、以下の記事を参考にしてみてください。
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会社売却の成功事例とポイント
会社売却は、成功するためには多くの要素を考慮する必要があります。成功事例を学ぶことで、会社売却のポイントを理解することができます。
会社売却の成功事例20選
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会社売却を成功させる6つのポイント
会社売却を成功させるためには、以下の6つのポイントが重要となります。
1. 企業価値の理解
自社の企業価値を正確に理解することが重要です。企業価値は、財務状況だけでなく、ブランド力、顧客基盤、技術力なども反映されます。企業価値を適切に評価することで、適正な売却価格を設定することができます。
2. 適切な売却タイミング
売却タイミングは、会社売却の成功に大きく影響します。市場環境や業界の動向、自社の業績などを考慮して、最適な売却タイミングを見極めることが重要です。
3. 買い手の選定
適切な買い手を選定することも重要なポイントです。買い手の選定には、買い手の財務状況、業界経験、ビジョンなどを考慮することが求められます。
4. 契約交渉
契約交渉は、会社売却の最も重要なステップの一つです。売却価格だけでなく、引き続き働く従業員の待遇や、売却後の自身の役割など、詳細な条件を交渉することが必要です。
5. 法的手続き
会社売却には、多くの法的手続きが伴います。契約書の作成や税務処理など、専門的な知識を必要とするため、専門家の助けを借りることが推奨されます。
6. 売却後の移行管理
売却後の移行期間の管理も重要なポイントです。従業員のモラールを保つためにも、スムーズな移行が求められます。
これらのポイントを押さえることで、会社売却を成功させることが可能となります。
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会社売却後の影響と対策
会社売却後には、様々な影響が起こります。これらの影響を理解し、適切な対策を講じることが重要です。
会社売却後に起こる周りへの影響
会社売却後には、従業員の士気、ビジネスの継続性、顧客の維持、市場の認識、規制遵守など、様々な影響が起こります。以下の図は、会社売却後の影響を示しています。
会社売却(M&A)後における社長・従業員・会社の処遇
会社売却後の社長、従業員、会社の処遇は、売却契約によります。社長の役割、従業員の待遇、会社の運営方針などは、売却前に詳細に交渉され、契約に記載されます。売却後の処遇については、売却前に明確にすることが重要です。
会社売却のタイミングと相手先の選び方
会社売却のタイミングと相手先の選び方は、会社売却の成功に大きく影響します。
会社売却がベストなタイミング
会社売却のベストなタイミングは、企業の状況、市場環境、業界の動向などによります。一般的には、企業の業績が好調で、市場環境が安定している時がベストなタイミングとされます。
会社売却の相手先を探す方法
会社売却の相手先を探す方法は、自社の業界や規模、売却目的によります。一般的には、業界内の競合他社、業界外の企業、投資ファンドなどが考えられます。以下の図は、会社売却の潜在的な買い手を示しています。
経営側の処遇に関して知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてみて下さい。
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以上が、会社売却についての基本的な知識と手続き、影響と対策、成功事例とポイント、タイミングと相手先の選び方についての説明です。会社売却は大きな決断であり、多くの影響を及ぼします。そのため、十分な情報と知識を持つことが重要です。この記事が、会社売却を考えている方々の参考になれば幸いです。
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株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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