【完全版】新株発行による資金調達「エクイティファイナンス」をわかりやすく解説します

2024年04月16日

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まだまだ名の知られていないスタートアップが、数億円の調達に成功したというニュースを目にしたことがあるかもしれません。
しかし、銀行から融資を受ける調達とは違うことはわかっているものの、具体的にどういった手法で調達しているのかわからない方も多いでしょう。

実際に自社がこの手法で資金調達するかどうかはさておき、経営者として仕組みやメリット・デメリットを理解しておくことは大切です。
また、融資による資金調達のことは「デットファイナンス」、新株発行による資金調達のことは「エクイティファイナンス」と呼ばれており、それぞれ違いがあります。

この記事では、ベンチャー企業にとってメインとなる資金調達手段であるエクイティファイナンスについてご紹介いたします。

資金調達の手段の一つであるエクイティファイナンス

ベンチャー企業が資金を調達する手法は主に2つです。

  • 金融機関から融資を受ける(Debt Finance – デットファイナンス)
  • 新株を買ってもらい投資を受ける(Equity Finance – エクイティファイナンス)

この手法はどんな会社でも選択することができるのですが、特に新株発行による増資をおこなうためには、原則として上場を目指していることが前提となるため、多くの中小企業は金融機関からの融資だけが現実的な選択肢となるでしょう。

デットファイナンスとエクイティファイナンスの違い

それでは、融資と出資を受けることにはどういった違いがあるのでしょうか?特に、エクイティファイナンス側の視点で比較してみます。

 融資出資
返済義務ありなし
対価利息配当金
出し手のリターン金額は一定であり期間も決まっている金額も期間も決まっていない
出し手のリスク低い高い
出し手が求めること安定性将来性
主なお金の出し手金融機関投資家・事業会社
経営への参加なしあり
契約金銭消費貸借契約投資契約
BS上の区分他人資本(負債)自己資本(資産)

調達したお金の返済義務がない

最大の違いは、エクイティファイナンスによって調達したお金は返済する必要がないことです。
新たに発行した株式を購入してもらう、つまりそもそもお金を借りるわけではないので、当然に返済の義務は負いません。

売却時の差益(キャピタルゲイン)で報いる

融資を受ける場合には、原則として利息をつけて返済します。
資金の出し手としては、この利息分が収益となります。

一方でエクイティファイナンスでは、株式の配当か売却時の差益が収益となります。
一般的に未上場のベンチャー企業で配当金を出すことは稀であり、ほとんどのケースで上場時もしくはM&Aによる売却時に自らの保有する株式も売却することで収益化することになります。
よって、上場やM&Aが叶わない限り、その株式を保有していても儲かることはありません。
つまり、出し手としてはそれなりのリスクを取りながら、成長性のある会社を厳選して出資することになります。

自己資本として組み入れることができる

何度もお伝えしているとおり、エクイティファイナンスは新株を買ってもらうこと、つまり増資です。
よって、貸借対照表上では資産(資本金)が増加することになります。
借入金として負債に計上される融資と比べて、自己資本を増やすことができることは大きな違いです。

このとおり、融資と出資には大きな違いがあり、それぞれメリット・デメリットがあることがわかります。
金融機関からの融資に関しては以下の記事でもご紹介していますので、新株発行における資金調達「エクイティファイナンス」について詳しく解説していきましょう。

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エクイティファイナンスの仕組み

エクイティ・ファイナンスとは、新たに発行する株式を購入してもらい、会社が自由に使えるお金を増やすことを指します。
正式には「増資」と呼び、資本金を増加させることで資金調達をおこないます。
そして、増資には下記のとおりいくつかの形態があります。

株主割当増資

創業者など既存の株主が、その持ち分に応じて新たに発行される株式を購入する形態です。
仮に創業者が80%、親族が20%保有している会社が2,000万円の増資をするとした場合に、創業者は1,600万円を会社に払い込む形になります。

しかしながら、現実的に、創業者が追加でお金を出す場合は役員借入をおこなう場合がほとんどであり、一般的に使うことはあまり多くありません。

公募増資

その名のとおり、新たに発行する株式を購入してくれる人を不特定多数の投資家から募る手法です。
公募増資には厳格な要件が定められており、基本的には上場企業が用います。
なお、IPO(新規公開株式)をする会社の株式を、証券会社を通じて購入できることがありますが、この株式を購入することこそが公募増資に応じることを指しています。

第三者割当増資

上場を目指すベンチャー企業がエクイティファイナンスをするといえば、ほぼ100%この手法を選択します。
第三者割当増資とは、新たに発行する株式を特定の第三者に購入してもらう手法です。

公募増資と似ていますが、購入してくれる人を不特定多数(50名以上)の中から募るかどうかという点において違いがあります。
また、特定の第三者になってもらうためには交渉して信頼を得る必要があり、増資後は株主として支援を受けられることが多いことも違いといえます。
ここからは、エクイティファイナンスは第三者割当増資のことを指すとして解説します。

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第三者割当増資を実施するまでの流れ

事業計画の作成

これまでも述べたとおり、エクイティファイナンスは会社の将来性に期待して投資を受けるものです。
当然のことながら投資家は、具体的にいつどの程度成長が見込めるのか、また自分の投資するお金がどういったことに使われるのかについてわからなければ判断ができません。

そこで、投資後に事業がどう成長するのか設計した上で事業計画書としてまとめます。
まれに創業直後などにおいては書面を作る作業を省くこともありますが、ほとんどのケースにおいてはエクセルなどに数値の推移をまとめ、スライド形式でプレゼンテーション資料を作成することが一般的です。

投資家との交渉

エクイティファイナンスでは、主に以下の方たちが投資家の候補となります。

  • ベンチャーキャピタル
  • 事業会社
  • 個人投資家(エンジェル)

投資家は、それぞれ投資基準や好み・サイズなどさまざまな条件を持っており、投資を受ける側としては相性の良い投資家に出会うことが重要です。
そして、あらかじめ作成しておいた事業計画書をもって、投資家に対して出資交渉に臨みます。

非常に魅力的な事業であれば、多くの出資意欲がある投資家の中から選ぶことになりますし、あまり受け入れてもらえない場合は、数少ない候補先と慎重に交渉を重ねることになります。
この段階で、ある程度出資に対する条件が決まってきます。

出資元と条件の確定

投資家の交渉を経て、最終的にどの投資家からどういった条件で出資を受け入れるかを確定させます。
出資を受ける際に、まず大きく2種類のパターンに分かれます。

  • 普通株式
  • 優先株式(種類株式)

金額と会社の規模にもよりますが、ベンチャーキャピタルから出資を受ける場合の多くは優先株式によって実行されます。
優先株式とは、通常の株式とは違い、その名のとおり(投資家に)優先的な権利が付与される株式のことを指します。
優先条項は当事者間である程度自由に決めることができることができ、下記が一般的に議論の対象となる権利です。

  • 残余財産の優先分配権
  • 取得請求権
  • 拒否権条項
  • 取締役選解任権

これら優先権の有無などによって、引き受けてもらう金額が変わってくることもあります。
最終的には、以下の項目について投資先と合意することで、次のステップに進みます。

  • 購入してもらう株式数
  • 購入してもらう株式の金額
  • 購入日
  • その他、購入するにあたっての条件(優先権含む)

増資のための法的手続き

投資家との条件が決まれば、いよいよ増資に向けた手続きをおこないます。
増資をするということは、既存株主の比率が下がることを意味しますので、原則として株主総会の決議が必要となります。
増資の内容および割当先について株主総会または取締役会にて決議した上で、投資家から入金を受けます。
その後、払い込みから2週間以内に法務局に対して資本変更登記をおこなうことで、第三者割当増資は完了します。

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エクイティファイナンスとM&Aの関係性

エクイティファイナンスは、資金を調達するという側面では金融機関からの融資と同様ですが、実態はまったく別の手法といえます。

ルール上はどんな会社でもおこなうことが可能ですが、エクイティファイナンスが向いている会社の条件は以下のとおりです。

  1. 上場を目指している
  2. 事業に高い成長性が見込める
  3. 投資に対する高いリターンが見込める(指数関数的な伸びが期待できる

そして、実はエクイティファイナンスとM&Aは非常に密接な関係性にあります。

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上場を目指していながら、上場前にM&Aによって買収される会社は非常に多いのです。
その理由をご説明します。

内部体制や事業計画が整っており企業評価しやすい

外部から投資を受けているということは、当然自社の現状や将来をしっかり説明できるように常日頃から準備している会社がほとんどです。
また、上場に近づけば近づくほど、社内の制度や体制をしっかりと構築していかなければなりません。
さらに、エクイティファイナンスを受けるときには必ず株価を算出することになるため、過去に投資家からどの程度の評価を受けてきたが一目瞭然ということになります。

そのため、買収する側からすると、イチから独自で企業評価を始める必要もなく、事業への理解も早く進むため、非常に買収しやすいといえるのです。

投資家はなんとしてでもリターンを求める

エクイティファイナンスの交渉時は、将来の事業計画を手元に置きながらIPOへの青写真を経営者と投資家で語り合うものです。
しかしながら、現実的にIPOまでたどり着く会社は非常にわずかであり、多くの会社は上場できないまま約束の期日が迫ってきます。
(一般的に経営者は、投資時に「●●年までに上場する」という努力義務を負います)

特にベンチャーキャピタルの場合は、自らもお金を外部から集めて投資している都合上、ファンドの満期が近づくとなんとしてでも株式を換金化したいと思います。
もちろん投資時よりも高い金額で換金化できることがベストです。

そこで、IPOが現実的に難しいと考えたタイミング以降は、M&Aによる売却も検討し始めます。
買収側としては投資のプロが相手となるため簡単な交渉とはいきませんが、お互いの利害が一致する可能性も高く、実は通常のM&Aよりも早く成約することも少なくありません。

エクイティファイナンスは、積極的に事業成長を考えている会社にとっては有効な資金調達手段の一つであり、将来M&Aを検討している会社にとっても実は使いやすい手段なのです。資本政策を考える上で、参考になれば幸いです。

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