【2024年最新】ベンチャー企業のM&Aの市場動向!バイアウトの事例や3つのポイントを解説
ベンチャー企業のM&A市場は、バイアウト件数の増加や取引金額の高額化といったダイナミックな動きを見せています。
特に、2022年11月の「スタートアップ育成5か年計画」や2023年4月の「オープンイノベーション促進税制M&A型」といった政策が後押しし、スタートアップ企業のM&Aが増加しているといえるでしょう。
日本におけるIPO(新規公開株式)の件数が横ばいであるため、スタートアップの新しい出口戦略の一つとしてM&Aが活用されているという背景もありそうです。
そこでこの記事では、ベンチャー企業のM&Aに関する最新動向や価格相場、戦略のポイントを解説し、ベンチャーM&Aの成功の鍵を解き明かします。
この記事を読むことで、ベンチャー企業のM&Aに関して学ぶことができ、M&Aに対する不安や疑問点を解消できるでしょう。
記事だけでは解決できない不安や疑問は、経験豊富なアドバイザーがご相談を承っております。
まずは無料相談から!ぜひご連絡ください。
目次
ベンチャーのM&A市場の最新動向
ベンチャー企業のM&A市場は近年、顕著な変化を遂げています。
新興企業が次々と登場し、それに伴い、M&Aの形態も多様化しています。
大企業によるベンチャー企業の買収は、イノベーションの促進や市場の拡大、競争力の強化といった目的で行われており、市場全体の活気を示しています。
バイアウト件数とIPOの増加
近年、ベンチャー企業のバイアウト件数が増加傾向にあります。
大企業は、新しい技術やビジネスモデルを有するベンチャー企業を積極的に買収し、自社の成長を促進しています。
一方で、IPO(新規公開株)を選択するベンチャー企業も増えており、市場はより活発になっています。
これは、ベンチャー企業が資金調達やビジネスの拡大、ブランド認知度の向上を図るための戦略としてIPOを利用していることを示しています。
取引金額の高額化
ベンチャー企業への投資が活発になる中、取引金額の高額化が顕著になっています。
かつて数億円規模だったM&Aの取引も、現在では数十億、場合によっては数百億円規模にまで拡大しています。
これは、ベンチャー企業が持つ技術や市場のポテンシャルが高く評価され、その価値を反映した金額が支払われているためです。
さらに、多くの大企業がM&Aにおける方針を転換し、積極的な投資姿勢を示しています。
これにより、ベンチャー企業はより多くの選択肢を持ち、自社の価値を最大限に高めることが可能になっています。
ベンチャーM&Aの価格相場
ベンチャー企業のM&A取引は、その活発性と変動性により、注目を集めています。
取引の性質上、バイアウト件数と取引金額は市場の健全性と企業の将来性を示す重要な指標となります。
ここでは、ベンチャー企業のM&Aにおける価格相場の最新動向について、詳細に解説します。
バイアウト件数の増加に伴う価格相場の動向
先ほども述べたように、近年ベンチャー企業のバイアウト件数は顕著に増加しています。
バイアウト件数の増加は、市場における投資意欲の高まりを示しており、これが価格相場にも影響を与えています。
バイアウトが増加すると、有望なベンチャー企業に対する需要が高まり、結果として、その価格相場も上昇する傾向にあります。
取引金額の高額化による相場の変動
ベンチャー企業のM&Aにおいては、先ほども述べたように、取引金額の高額化も顕著な特徴です。
これは、革新的な技術やビジネスモデルを持つベンチャー企業に対する評価が高まっていることを反映しています。
大企業は、新興企業のポテンシャルを見極め、将来的な成長と利益の獲得を見込んで高額の投資を行っています。
その結果、取引金額が高額化し、市場全体の価格相場に影響を与えています。
この傾向は、ベンチャー企業が技術革新や市場ニーズに応える能力を持っているかどうかによってさらに強化されると考えられます。
ベンチャーにおけるM&Aのメリット3選
ベンチャー企業のM&Aには多くのメリットがあると考えられています。
これらの利点は、企業が直面する困難や成長戦略を大きく左右し、企業の将来像を形成する重要な要素となります。
以下では、ベンチャー企業がM&Aを通じて享受できる主要なメリットを3つ紹介します。
経営戦略の多様化
ベンチャー企業はしばしば、市場の変動や成長段階に応じて柔軟な経営戦略が求められます。
M&Aは、これらの企業にとって、自社の資源を拡大し、新たな市場への進出や技術獲得のチャンスを提供します。
これにより、企業は長期的な成長戦略を多様化し、持続可能な成長への道を築くことができます。
シナジーと迅速な資金調達
ベンチャー企業にとってM&Aは、シナジー効果を生み出し、事業のスケールアップを可能にします。
買収により、製品開発、市場進出、運営の効率化など、さまざまな面で相乗効果を期待できます。
また、資金調達はベンチャー企業にとって永遠の課題ですが、M&Aを通じて必要な資金を迅速に調達し、成長機会をつかむことができます。
買い手売り手双方にメリットがあることが多い
M&Aは、買収する側とされる側の双方にメリットをもたらします。これも大きなメリットと言えるでしょう。
一般的に、買収されるベンチャー企業は、資金繰りの改善や経営リソースの強化といった即時の利益を享受できる一方、買収する側は、新しい市場へのアクセスや重要な技術の獲得、経営資源の最適化など、長期的なビジネス拡大に資するメリットを得られます。
ベンチャーにおけるM&Aのデメリット3選
ベンチャー企業にとってM&Aは多くの機会をもたらしますが、一方でデメリットも存在します。
ここでは、ベンチャー企業がM&Aを進める際に慎重に考慮すべき3つの主要なデメリットについて解説します。
組織文化の融合の困難
M&A後には、異なる企業文化を持つ組織が一つに統合されます。
ベンチャー企業特有の柔軟でイノベーションを重視する文化が、大企業の形式的で階層的な文化と衝突することがあります。
この文化の違いは、社内コミュニケーションの障害、チームワークの低下、最終的にはプロジェクトの遅延やパフォーマンスの低下を招く可能性があります。
経営陣と社員の不安
M&A後は経営陣や社員に多大な不安が生じることがあります。
特にベンチャー企業の場合、創業者やキーメンバーが経営方針に大きな影響を持つため、M&Aによる権力の再配置や将来性への不確かさは不安やモチベーションの低下を引き起こすことがあります。
これは、企業の戦略的な決定過程や日常の業務にも悪影響を及ぼす可能性があります。
イノベーションの減速
ベンチャー企業はしばしば、迅速な意思決定とイノベーションによって市場での競争優位を築きます。
しかし、M&A後には、新しい統合企業の規制やプロセスに適応する必要があり、これがイノベーションの速度を減速させることがあります。
特に大企業に吸収された場合、ベンチャー企業が持つ柔軟性と迅速性が損なわれることがあり、これが市場での優位性の低下につながる可能性があります。
ベンチャーのM&A成功への3つのポイント
ベンチャー企業のM&A成功は、単なる幸運ではなく、戦略的な計画と精緻な実行の結果です。
成長と発展の機会を最大限に活用するためには、市場の動向を正確に理解し、競争の激しい市場で独自の地位を築き、売却の最適なタイミングを見極めることが不可欠です。
以下では、ベンチャー企業がM&Aを成功に導くための3つの重要なポイントを詳しく解説します。
トレンドの捉え方
成功への第一歩は市場のトレンドを正確に捉えることから始まります。
ベンチャー企業は、新興技術や業界の変化を先読みし、これらのトレンドを自社の事業戦略に組み込む必要があります。
例えば、過去にはITバブルやモバイル革命がM&Aの風景を塗り替えました。
現在では、AI、ブロックチェーン、持続可能性に関するイノベーションなどが注目されています。
市場のトレンドを捉え、その波に乗ることで、ベンチャー企業は買収側企業からの価値ある注目を引くことができます。
市場の独占
市場における独自の地位を築くことは、M&A成功のための鍵です。
競合が少ないニッチ市場を見つけ出し、その市場で圧倒的な存在感を示すことが重要です。
これにより、ベンチャー企業は買収企業にとって魅力的な投資対象となります。
独占的な市場地位は、技術革新、顧客基盤の確立、あるいは特許や独自のビジネスモデルによって達成されることが多いです。
競合のいない市場での独占は、ベンチャー企業を独特で価値の高いM&Aの候補にします。
売却のタイミング
最後に、売却のタイミングはM&Aの成功において極めて重要です。
市場がピークに達したときや、企業の成長が加速している段階でM&Aを行うことで、最大限の価値を実現することができます。
逆に、市場が下降傾向にある時や、企業が財務的な困難に直面している時にM&Aを行うと、価値が低下する可能性があります。
売却のタイミングを見極めることで、ベンチャー企業は自社の真の価値を反映した条件でM&Aを成功に導くことができます。
これらのポイントは、ベンチャー企業がM&Aを通じて成功を収めるための重要な要素です。
市場のトレンドを的確に捉え、独自の市場地位を確立し、適切なタイミングでM&Aを実行することで、ベンチャー企業は次の成長段階へと進むことができます。
売却に必要な期間やM&Aを実施するタイミングに関しては、以下の記事をご確認ください。
M&Aに必要な期間とは?はじめる適切なタイミ...
M&Aが成約するにはどの程度の期間が必要なのでしょうか。 M&Aの際に用いる手法によって変わりますが、短くて半年間・長い場合は数年間ほどの期間を要することが一般的です。 必要な期間だけを聞くと、「なぜ…
ベンチャーのM&Aの成功事例3選
事例1. ブルックマンテクノロジによる凸版印刷への株式譲渡
ブルックマンテクノロジは、静岡大学の研究を起点に設立されたベンチャーで、主にCMOSイメージセンサの開発と設計に特化しています。
これらのセンサは、デジタルカメラやスマートフォンに必須で、光を電気信号に変換して画像を生成します。
凸版印刷は、印刷業界のリーダーであり、印刷技術を基盤に多岐にわたる事業を展開しています。
3Dイメージセンサ市場の成長に対応し、凸版印刷は2017年の提携を更に深め、ブルックマンテクノロジを子会社化しました。
2021年3月、凸版印刷はブルックマンテクノロジの発行済株式の大部分を取得し、共同で技術革新と市場拡大を進める体制を強化しました。
事例2.FacePeerによるマイナビへの株式譲渡
FacePeerは、幅広い場面で利用可能なビデオ通話プラットフォーム「FACEHUB」を中心に、業務効率化や働き方改革向けのITサービスを提供するベンチャーです。
マイナビは、人材紹介や情報提供サービスを提供する大手企業です。
2017年の提携後、両社はサービス連携を進めてきました。新型コロナウイルスの影響によりオンラインコミュニケーションの需要が拡大し、「FACEHUB」の普及を目指し、マイナビはFacePeerの株式を取得し、子会社化しました。
事例3. お金のデザインによるSMBC日興証券への会社分割
お金のデザインは、AI搭載ロボアドバイザー「THEO」を提供するFinTechベンチャーです。
このサービスは投資運用と証券取引を統合しています。
SMBC日興証券は、広範な証券サービスを提供する三井住友フィナンシャルグループの一員です。サービスの強化と安定化を目指し、お金のデザインは証券取引関連業務をSMBC日興証券に移譲しました。
このM&Aは、SMBC日興証券が進めるデジタルサービス強化戦略の一環です。
2021年1月、SMBC日興証券はお金のデザインから証券取引業務を継承し、同年8月に効力が発生しました。
参考:株式会社お金のデザインとの会社分割(吸収分割)契約締結に関するお知らせ
売却検討中の方の疑問をいますぐ解決!よくある質問と回答はこちら
M&Aでよくある質問〜売却検討中の方の不安・...
M&Aで会社や事業の売却を検討する中で、不安や疑問点は多くあるのではないでしょうか。 M&Aナビにおいても「いくらで売れるのか知りたい」「売却後の税金が不安」といったご質問をいただいております。 そこ…
ベンチャーのM&Aにおける3つの注意点
ベンチャー企業のM&Aは潜在的な成長機会を提供しますが、成功への道は複雑で障害も伴います。
注意深く戦略を立て、一般的な落とし穴を避けることが重要です。
ここでは、M&Aの過程でベンチャー企業が直面する可能性のある3つの主要な注意点に焦点を当てます。
決断時間の最適化
ベンチャー企業のM&Aにおいては、決断のタイミングが成功に大きく影響します。
適切な時期に正しい決断を下すことで、企業価値を最大化し、市場の機会を逃さずに済みます。
ただし、決断に時間をかけすぎると、市場環境の変化により有利な条件が変わる可能性があります。
迅速かつ情報に基づいた決断が、M&Aの成功への鍵です。
相性
ベンチャー企業のM&Aでは、買収側と売却側の間の相性が極めて重要です。
企業文化、ビジョン、経営方針の不一致は、合併後の統合プロセスを複雑にし、組織内の摩擦や効率の低下を引き起こす可能性があります。
両社の相性をしっかりと評価し、文化的統合に焦点を当てることで、スムーズな統合とシナジーの実現を目指します。
社員流出の防止
ベンチャー企業のM&Aでは、特に人材の流出は大きなリスクです。
優秀な人材が企業を離れることで、知識、スキル、そして事業の継続性が損なわれる可能性があります。
M&Aを進める際には、社員のニーズと懸念を理解し、適切なコミュニケーションとインセンティブを提供することで、重要な人材の維持に努めるべきです。
M&Aによる会社売却を従業員・社員に公表する...
M&Aによる会社売却を従業員や社員に公表することにより、信頼関係が崩れたり・不信感を持たれてしまうのでは? そんな不安を持たれている方も多いのではないでしょうか。 実際、公表するタイミングを少し間違えると、M&…
【ベンチャー M&A】まとめ
ベンチャー企業のM&A市場は、バイアウト件数の増加や取引金額の高額化といった特徴を通じて、その活発性を示しています。
この記事では、市場の活況、価格相場の動向、M&Aの利点とリスク、成功への要点、そして実際の成功事例を深掘りしました。
ベンチャー企業がM&Aを最大限に活用し、潜在的な課題を克服するための戦略的アプローチと、注意すべきポイントを明確にすることで、読者はこの複雑な市場の本質を理解し、有効な戦略を立てるための洞察を得ることができます。
M&Aナビは、買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いことが特徴です。ぜひご活用ください。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
関連記事
M&Aは個人でもできる?個人が中小企業をM&Aで買収する方法とは
個人M&Aが書籍やTVなどのメディアで大きく取り上げられ、「自分もできる!」「個人でM&Aして社長になりたい!」といった意欲のある方が増えて
M&Aはどこに相談するのが良い?相談先の選び方や、選ぶときの3つの注意点を徹底解説!
M&Aを検討しているが、どこに相談すればいいかわからない…。そんな悩みを抱えるは当然です。 家族や従業員に気軽に相談できる内容ではないですし、銀行や税
M&Aの売却価格はどう決まる?~相場・目安や売却価格の算出方法を解説~
M&A取引において、売却価格はどう決まるのでしょうか?また、売却価格に相場はあるのでしょうか。 いざM&Aで会社や事業を売却するとなれば、最
中小企業の事業承継におけるM&Aのメリットと高く売却できる条件とは?
本記事では、事業承継の手段としてM&Aを活用することのメリットや高く売却できる条件について解説します。 近年、親族や従業員への事業承継ではなく、第三者
新着買収案件の情報を受けとる
M&Aナビによる厳選された買収案件をいち早くお届けいたします。