資本提携とは?業務提携やM&Aとの違いや手法を分かりやすく解説!
資本提携とは、2社以上の企業がお互いに資金面や業務面で協力関係を築くことを目的として株式の取得や交換を行う経営戦略です。
具体的には、株式の交換や取得といった手法で行われるため、本記事において詳しく解説します。
また、資本提携と近しい概念である業務提携やM&Aとの違いについても解説します。
それぞれの手法・経営戦略のメリット・デメリットを理解し、企業の成長を実現しましょう。
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目次
資本提携とは
資本提携とは、業務提携よりもさらに強固な協力関係を築くためのものです。
具体的には「資本の移動が伴う協力関係を築くこと」を指します。
両社が協力して業務をおこなうという目的は業務提携と同じですが、将来のM&A(合併や統合など)を見据えた準備や、独占した関係の構築などといった、より踏み込むべき理由があることが大きな違いといえるでしょう。
資本提携の種類
資本提携は文字通り、資本つまり株式の移動を伴った提携のことを指しますが、片方だけが資本を移動させる場合と互いに持ち合う場合があります。
支配権をもたない範囲で相互に株式を持ち合う
株式の保有比率が一定の値(1つの基準は20%)を超えると、提携先に支配権を行使できるようになります。
そのため互いの支配権に干渉しないよう会社間で出資比率を調整して株式を持ち合います。
お互いに相手の株主である、という立場になるため、「自社の利益」「(株主として)相手の会社の利益」の双方を考える必要があります。
そうなれば、より一層シナジーが生まれるであろうという考え方に基づいて持ち合うことを選択します。
一方の会社の株式を他方に譲渡する
一方(A社)の株式を他方(B社)に譲渡することで、株主としての立場で協業をおこないます。
特に大企業とベンチャー企業の間でおこなわれる手法です。
ベンチャー企業にとってみれば、「大企業の資本が入ったお墨付きの企業である」という信用を得られますし、事業成長の支援を依頼することもできます。
ちなみに、業務提携の場合ですと、契約を交わしただけの相手にそこまで協力する義理はないと言われることもあるため、効果的に大企業のリソースや技術を活用するためには、出資してもらうことは有効な手段です。
大企業からすると、ベンチャーが持つアイデアや技術を、比較的自由に使うことができることがメリットといえます。
ソフトな業務提携だと、ベンチャー側としても安易にノウハウを出したくないと思われがちです。
しかし、資本が入っているほどの関係性であれば、互いのもつノウハウを共有した方が成長のためには有利であるという考え方となり、ベンチャー企業のアイデアと大企業の営業力などを融合させて、事業成長できる可能性が高まることでしょう。
資本提携のメリットとデメリット
資本提携のメリット・デメリットには、どのようなものがあるでしょうか?
資本提携のメリット
資本提携のメリットは、業務提携のメリットに加えて、より関係性が深くなることにあります。
- 業務提携よりも強固な関係を築けるので、よりシナジー効果の高い商品・サービスを生み出すことが可能に
- 提携先のネームバリュー次第で、自社の認知度が上がりやすくなる
- (契約次第ではあるものの)提携先の技術を独占的に扱うことができる
業務提携よりも強い関係なので、相互で強力な関係を築ければ、これまで自社にはなかった新たな商品・サービスを顧客に提供することも可能です。
資本提携のデメリット
資本提携は業務提携と違い資本(株式)の移動があるので、経営の自由度は低下する恐れがあります。
- 他社の資本が介入することで、経営に口出しされる可能性がある
- お互いのブランドを維持するために、繊細な連携が求められる
- 提携がうまくいかなかったときに、高額な株式買取りを要求される可能性がある
経営権を調整するために株式の保有率を調整したり、互いの会社名を毀損(きそん)したりしないような繊細な対応が求められます。
そのため業務提携よりも難易度は高くなります。
業務提携とは
業務提携とは、「会社間で業務上の協力関係をつくるための手法」のことです。
資本提携と大きく異なる点は、業務提携は資本(株式)の移動を伴わないことです。
業務提携は、会社間の連携で最も多く使われる手法であり、株式の移動がないので、両社でソフトな協力関係を築くことが可能です。
(画像引用:丸井グループ プレスリリースより)
たとえば2020年2月に、「丸井」と「メルカリ」は業務提携契約を締結し、メルカリ初となるリアル店舗「メルカリステーション」を新宿に出店しました。
また、マルイ全店や「マルイウェブチャネル」でメルカリの決済サービス「メルぺイ」を導入し、決済サービスの利便性を向上させています。
このように業務提携はあくまで互いの経営に干渉しない範囲で、業務上の協力関係を築けるのです。
業務提携のメリットとデメリット
それでは、業務提携は自社にとってどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
業務提携のメリット
業務提携では、柔軟で素早い連携を図れるのが大きなメリットとなります。
- 両社の独立性が確保でき、気に入らなければいつでも解消できる
- ソフトな協力関係を築けるので、後の資本提携やM&Aへの足がかりになる
- 比較的容易に提携できるので、共同事業化の第一歩に適している
上記の他にも業務提携には、提携先のノウハウを活かして、自社事業がより発展する可能性を秘めています。
業務提携のデメリット
業務提携はソフトな協力関係となる分、充分にシナジー効果を発揮できないおそれがあります。
- 自社事業が不安定になっても、助けてくれない可能性が高い
- 関係がソフトな分、いつ契約を解除されるかわからない
- 不意に自社のノウハウや機密情報が漏れるおそれがある
業務提携は相互の関係が希薄なので、提携先の会社を見極めることが求められます。
優良な提携先を求めている場合は、専門の仲介会社などを利用するのも手です。
業務提携の進め方
それではいざ業務提携を進めるとなった場合、どのような流れになるのでしょうか。
一般的な業務提携のステップを見てみましょう。
業務提携の目的を明確にする
何を目的として業務提携を目指すのか、またそのために自社でやるべきことと自社ではできないことを明確にする必要があります。
中小企業同士の業務提携の場合、社長同士が知り合いだからとりあえず業務提携を進める、といったことが現実的に少なくありません。
しかしながら、双方それぞれが実現したいことが一致していない限り、その提携が成功につながることはないでしょう。
双方の役割や業務分担を決める
自社、提携先の会社それぞれが担うべき役割と、提携業務の分担を明らかにすることも重要です。
業務分担が曖昧なまま進めてしまうと、思ったようなシナジー効果を生み出せないでしょう。
業務提携のきっかけは経営者同士の合意から始まるケースが多いのですが、実際に提携業務をおこなうのは現場の実務担当者であり、彼らがスムーズに連携して動くことができるどうかが提携成否の鍵を握っています。
提携交渉の場においても、できるだけ実務を理解している人を同席させながら詰めていくことをおすすめします。
知的財産の帰属先を定める
知的財産をはじめとして各種権利関係の帰属先を決めておきましょう。
業務提携において最もトラブルの要因となる一つです。
費用と収益の分配や負担を定める
連携しておこなう事業によって生まれる収益の分配ルール、また実施にかかる費用の負担についても事前に定めておく必要があります。
費用負担が不明瞭だと、思わぬコスト発生の際にどの会社が費用を支払うかで揉める要因となることは間違いありません。
あらかじめルールや業務の進め方を厳格に定めておけば、後のトラブルに対して柔軟に対応できます。
また定量目標や定性目標を会社間で共有し、同じ目標に向かって良好な関係を築いていけば、新たな価値を顧客に提供できることでしょう。
業務提携の契約書を締結する
業務提携を進めるにあたって必要となる事項を決めて合意ができたら、いよいよ契約書の締結に進めます。
業務提携は比較的ソフトな協力関係ではあるものの、企業間における立派な契約です。
当然、損害を与えてしまったり機密情報を漏洩したりすれば責任が発生しますので、自社の権利はしっかり主張しつつ、公正な契約内容となることを意識して締結しましょう。
資本提携とM&Aの違いとは
資本提携をおこなって協業した結果、両社の事業にとってプラスとなれば、もちろんより強固に連携したり一緒に会社を運営したりすることを考えるでしょう。
つまり、資本提携は将来のM&Aにつながる可能性がある足がかりといえます。
資本提携以外にも、M&Aにはさまざまな手法があります。
資本提携は、一般的に支配権の獲得を目的としていませんが、協業してうまくいくかどうかを確かめることができるため、有効に活用すべきでしょう。
M&Aの代表的な手法
ではここで、代表的なM&Aの手法についてご紹介します。
業務提携や資本提携によって関係が強化された両社が、ゆくゆくM&Aによってさらに強く結びつくこともありますので、ぜひ頭の中に入れておくとよいでしょう。
株式譲渡
譲り渡す会社のオーナーが所有する株式を売却する手法。
最も一般的なM&Aの手法であり、日本における事業承継の大半はこの株式譲渡によって引き継がれています。
株主が変わるだけで、従業員や資産負債、許認可などはそのままなので、比較的手続きはスムーズです。
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譲り受ける会社にとっては、必要なものだけを選択して買収することができるため、効率的に自社に取り込むことが可能です。
ただし資産や財産権を個別に切り替えるため、作業が煩雑になることもあります。
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2つ以上の会社を1つの法人に統合する手法。会社の全資産や負債、従業員などをすべて合併先に移転することで、元の会社は消滅します。
包括して承継できるため、自然と両者の関係性は強くなります。
ただし負債の抱えた会社を合併すると、財務状況が悪化する恐れがあるので注意が必要です。
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複数の事業をおこなっている会社が、一部の事業部門を別会社として切り出した上で、売却先に株式譲渡する手法。
譲り受ける会社にとっては特定の事業部門のみを買収することができ、かつ株式譲渡と同様に権利関係や従業員をスムーズに引き継ぐことができます。
ただし、一度会社を分割する作業のあとに売却するため、時間と手間がかかる点は注意が必要です。
会社分割について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
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まとめ:関係の築き方によって提携方法がかわる
業務提携と資本提携の違いは、「資本(株式)の移動があるか、ないか」です。
業務提携は資本の移動がない分、柔軟で素早い連携が可能となります。一方で資本提携には株式の移動があり、より強固な関係を築くことが可能です。
業務提携においても資本提携においても、重要なことは「自社にあった優良な提携先を見つけること」に尽きるのです。
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株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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