事業承継型M&Aとは?仕組みやメリット、進め方を解説

2024年05月08日

m&a 事業 承継

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昨今の日本では、後継者不在問題が社会問題として取り上げられるようになりました。

そこで注目を浴びているのが事業承継型M&Aです。

この記事では、事業承継型M&Aについて、仕組みやそのメリット、進め方について解説をしていきます。

後継者不在問題の解決策として事業承継型M&Aの選択を検討されている方は必見です。

事業承継型M&Aとは?

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事業承継型M&Aは、主に中小企業や家族経営の企業が直面する後継者不在問題を解決する方法の一つです。
会社や事業の経営権を第三者に譲渡することによって事業承継を行うことをいいます。第三者事業承継といわれることもあります。

事業承継型M&Aは、2025年問題といわれる経営者の後継者不在問題の解決策として注目を集めています。

事業承継型M&Aを実施することにより、後継者のいない中小企業の廃業を防ぐことができます。それにより、従業員の雇用継続や取引関係の維持を実現することができます。

通常のM&A(合併および買収)は、企業の成長戦略や競争力強化を目的としていますが、事業承継型M&Aは、経営者の高齢化や後継者不在といった問題を解決するために行われることが特徴です。

事業承継とM&Aの違い

M&Aは事業承継の一つの手段であり、並列の関係ではありません。

一般的に事業承継は、経営者が家族や内部の信頼できる人物に経営を引き継ぐことを指します。
対してM&Aは、、企業が他の企業を合併、買収することにより、事業の拡大や経営資源の効率的な活用を図る戦略です。

このことからもわかるように、M&Aはあくまでも事業承継の手段の一つであるといえます。
実際、M&Aは企業の成長・新市場への進出・技術取得など事業承継以外の様々な目的で行われます。

事業承継とM&Aの違いについては、以下の記事で詳細に解説していますので気になる方はご覧ください。

M&Aと事業承継の違いとは?それぞれの仕組み...

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事業承継におけるM&Aの現状

事業承継型M&Aの件数は年々増加している傾向にあります。

背景には、2025年問題に代表されるような経営者の高齢化による後継者不在問題があげられます。
また、若年層の都市部への人口流入も大きな要因と考えられています。特に地方の企業では、後継者候補として考えたい有望な親族はいるものの都市部に出てしまっており承継を断念せざるを得ないケースが多くあります。

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事業承継型M&Aの進め方

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この章では、事業承継型M&Aの進め方について解説をしていきます。

①事業承継計画の策定

まずは事業承継の計画を策定しましょう。

計画策定の段階で最も大切なことは、事業承継後の会社がどのような形で成長しているかをイメージすることです。
「企業の永続的な発展」を実現するために、どのような会社像が理想なのかをイメージしていきます。

また、現在の会社の経営状況を正確に把握することも大切です。事業承継における税務面や法務面での手続きを正しく行うためにも現状の把握を行いましょう。
特に、株主状況の把握や会社と個人資産の把握を行うことが重要です。

②事業承継の手法の比較

事業承継計画が策定できたら、いくつかある承継の手法を比較し最適なものを選択しましょう。

主な事業承継の手段には以下のようなものがあります。

  • 親族内承継
  • 従業員承継
  • 外部招聘
  • M&A(第三者承継)

各手法の詳細については、以下の記事を参考にしてみてください。

事業承継の5つの手法を解説!各種ポイントをご紹介

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③M&Aの目的を決める

事業承継の手段としてM&Aを実行することが決まったら、次にM&Aを通して実現したい目的を定めましょう。

事業承継型M&Aの目的としてよくある例には以下のようなものがあります。

  • 経済的対価の最大化
  • 会社名(屋号)の継続
  • 従業員の雇用継続
  • 取引関係の継続

目的によって、買い手候補企業に求める条件が異なってくるため慎重に検討する必要があります。

④M&A仲介会社などに相談

M&Aの目的が定まったら、M&A仲介会社などのM&Aの専門家に相談します。

実績や業種などの相性を基準に仲介会社を選定します。

M&Aの相談先の選び方は注意点については、以下の記事を参考にしてみてください。

M&Aはどこに相談するのが良い?相談先の選び...

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⑤マッチング

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依頼するM&A仲介会社が決まったら、買い手候補企業とのマッチングが開始されます。

自社が定めたM&Aの目的に合う買い手候補と出会えるようにマッチングを進めていきます。

⑥交渉

マッチングを経て具体的な買い手候補企業が見つかったら交渉を開始します。
価格、条件、将来の経営方針など、さまざまな点について話し合います。

マッチングでは、双方にとっての利益を最大化するための交渉スキルが必要となります。

また、交渉が進むとデューデリジェンス(企業調査)が行われます。
財務状況・法的問題・経営状況などを詳細に調査する過程です。

⑦契約

デューデリジェンスを経て、両者が合意に達したら、契約書に署名します。
この契約には、買収の条件、タイムライン、保証などが含まれます。

契約の詳細には、買収後のリスク分配や管理の仕方なども明記されることがあります。

⑧クロージング

契約が締結された後は、クロージング(取引の完了)に移ります。
ここで、買収対象企業の所有権が正式に移転されます。

クロージングは通常、契約書の条件が全て満たされた後に行われます。

⑨統合プロセス

最後に、統合プロセスが行われます。

これは、買収後の両企業をスムーズに統合するための過程であり、従業員の統合、文化の融合、経営方針の統一などが含まれます。

統合プロセスには、従業員のモチベーションを維持し、組織全体のパフォーマンスを最大化するための施策も重要です。

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事業承継型M&Aの5つのメリット

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事業承継型M&Aは中小企業の後継者不在問題の解決につながる他にも複数のメリットが存在します。

この章では、事業承継型M&Aのメリットについて5つ解説していきます。

後継者不在問題の解決

事業承継型M&Aの最大のメリットは、後継者不在の問題を解決できる点です。

特に中小企業では後継者を見つけることが困難な場合が多く、M&Aにより事業の継続が可能となります。

従業員の雇用継続

M&Aにより、企業の廃業を防ぐことができれば従業員の雇用が継続される可能性が高まります。
新しい企業が事業を引き継ぐことで、従業員の解雇やリストラを避けることができます。

特に地方では、その地方での雇用を継続することが地方経済においても非常に重要です。

取引先との関係継続

M&Aにより事業を継続することは、取引先との関係を保つ上でも重要です。

M&Aを通じて事業が安定していれば、取引先との信頼関係も維持されます。
また、M&Aにより倒産を防ぐことで、取引先の連鎖倒産を防ぐことができます。

個人保証の解除

多くの中小企業経営者は、事業資金のために個人保証をしています。
M&Aにおける株式譲渡の手法を用いることで、個人保証の解除を前提とした事業承継を進めることができます。

個人保証を解除することで経営者の引退後の負担を押さえることができます。

企業の永続的な発展につながる

事業承継型M&Aは、単に経営者が変わるだけでなく、新しい経営資源、アイデア、戦略がもたらされ、企業の長期的な成長と発展に寄与します。

企業は、事業承継を経て経営者が交代することにより利益率などの業績が向上することが分かっています。

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事業承継型M&Aの5つのデメリット

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一方で、事業承継型M&Aでは、メリットだけでなくデメリットも存在します。

この章では事業承継型M&Aにおけるデメリットについて解説をしていきます。

文化の異なる企業との統合

企業文化の違いは、M&Aの大きな障害となり得ます。

異なる企業文化を持つ組織を統合する際には、従業員間の摩擦や組織の非効率化が発生するリスクがあります。

相場よりも安い価格での売却

事業承継型M&Aでは、市場価値より低い価格で事業を売却することがあります。

特に、急いで売却する必要がある場合、価格が押し下げられる可能性が高まります。

情報漏洩のリスクを負う

M&Aの過程では、企業の機密情報が漏洩するリスクが伴います。

特にデューデリジェンスの段階では、多くの機密情報が共有されるため、情報管理には細心の注意が必要です。

買い手が見つからない可能性

事業承継型M&Aを考える企業は多いものの、適切な買い手を見つけるのは容易ではありません。

特に特定の業界や地域では、買い手が限られている場合があります。

時間と費用がかかる

M&Aは、交渉や契約、統合プロセスに多くの時間と労力が必要です。

また、専門家への報酬や関連する諸費用も発生し、全体的なコストが高くなることがあります。

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事業承継型M&Aを成功させるための5つのポイント

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次に、事業承継型M&Aを成功させるポイントについて解説をしていきます。

次の5つのポイントを重視して進めることで事業承継型M&Aを成功に導くことができます。

適切なタイミングで実施する

成功への鍵はタイミングです。

市場の状況、企業の成熟度、経営者の年齢などを考慮し、最適な時期を見極めることが重要です。

例えば、市場が拡大している時期や、業界内で合併・買収が活発な時期は、より良い条件でのM&Aが期待できます。

株主の理解を得る

株主や関係者の理解と支持は、スムーズなM&Aの実施には欠かせません。

計画の早い段階で株主に情報を提供し、理解を求めることが大切です。

これには、計画の詳細や期待される利益、リスクについての透明なコミュニケーションが含まれます。

公的な支援を活用する

多くの国や地域では、事業承継をサポートするための公的支援制度が存在します。

これらの支援を活用することで、財政的な負担を軽減し、成功の可能性を高めることができます。

公的な支援には、税制優遇措置や資金調達のサポートなどが含まれることが多いです。

M&Aの専門家に相談する

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専門家の知見は非常に重要です。

経験豊富なアドバイザーは、プロセスの各段階での戦略策定や問題解決に大きな助けとなります。

また、適切な専門家を選ぶことで、特定の業界や地域の市場動向に対する深い理解を得ることも可能です。

企業価値の向上に取り組む

M&Aを成功させるためには、事業承継前に企業価値を最大化することが重要です。

効率的な経営、イノベーションの推進、ブランド価値の向上などを通じて、魅力的な買収対象となるよう努めることが求められます。

これには、製品やサービスの改善、市場での競争力強化、顧客満足度の向上などが含まれます。

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成長戦略型M&Aとの違い

事業承継型M&Aと同じく昨今話題になっているのが、成長戦略型M&Aです。
この章では、事業承継型M&Aと成長戦略型M&Aの違いについて解説します。

成長戦略型M&Aとは?

成長戦略型M&Aは、成長中の企業が更なる成長を実現するために行うM&Aのことを指します。
成長戦略型M&Aを実施することで、企業はスピード感を持った成長戦略の実現を実現することができます。

成長戦略型のM&Aでは、急成長を遂げているベンチャー企業や成長著しい業界の企業が実施することが多いと言えるでしょう。

事業承継型M&Aと成長戦略型M&Aの違い

では、事業承継型M&Aと成長戦略型M&Aにはどのような違いがあるのでしょうか。
両社の違いには主に以下のようなものがあると言われています。

  • 業績の安定性
  • M&Aのスキーム・手法
  • 買い手候補企業の対象

業績の安定性

事業承継型M&Aと成長戦略型M&Aでは、売却の対象となる企業の業績の安定性が異なります。

事業承継型M&Aでは事業の運営歴の長い安定企業が多いのに対して、成長戦略型M&Aでは急成長中の新興企業が多いといえるでしょう。

M&Aのスキーム・手法

事業承継型M&Aでは、100%の株式譲渡の手法が主に選択されます。事業の承継を目的としているためです。

一方で、成長戦略型M&Aでは、第三者割当増資や少数株式の譲渡と言った手法を選択することが多くあります。企業の成長を実現するために売り手と買い手の協力体制を構築するための一つの手段と言えます。

また、事業承継型M&Aでは、現経営者は一定の引継ぎ期間を実施後に勇退するケースが多いですが、成長戦略型M&Aでは現経営者が継続して事業を運営することも多くあります。

買い手候補企業の対象

事業承継型M&Aと成長戦略型M&Aでは、買い手候補企業の対象範囲も大きく異なります。

事業承継型M&Aの場合は、近隣エリアの同業社や関連事業の会社、取引先が対象になることが多いです。
事業承継型M&Aにおいては、従業員の雇用継続や取引関係の継続が最大の目的であるケースが多いことが背景にあります。

一方で成長戦略型M&Aの場合は、成長分野への投資を活発に行っている企業や新規事業の経営力のある会社が対象になることが多いです。
成長戦略型M&Aにおいては、短期的な資金需要や経営力の拡充が最大の目的であるケースが多いことが背景にあります。

事業承継型M&Aについてのまとめ

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事業承継型M&Aは、特に中小企業や家族経営の企業にとって、後継者問題の解決策として有効な手段です。

適切な計画と実行により、企業は安定した事業継続と発展を目指すことができます。

しかし、企業文化の違いや価格交渉、情報漏洩のリスクなど、多くの課題も伴います。

成功するためには、適切なタイミングでの実施、株主や関係者の理解と支持の獲得、公的支援の活用、専門家の助言の活用、そして企業価値の最大化が重要です。

最終的には、これらのポイントを踏まえた上で、丁寧なプロセス管理と適切な戦略が、事業承継型M&Aの成功へと導く鍵となります。

M&Aナビは、買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いことが特徴です。ぜひご活用ください。

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