【2026年最新】製造業M&Aの動向・相場・進め方|金属加工・機械・食品製造の業種別ガイド

製造業のM&Aは、後継者のいない中小メーカーが、工場と設備、技術、従業員をまとめて次の経営者に引き継ぐ手段として使われています。日本M&Aセンターの2015〜2021年の成約データで、金属・プラスチック関連業のEBITDA(営業利益に減価償却費を足した利益)倍率は平均5.7倍です。
製造業ならではの確認事項は、工場の土地の名義、土壌汚染、許認可、リース設備、取引先との契約、熟練工の技能の6つです。株式譲渡か事業譲渡かで引き継ぎ方が変わるため、売却を考え始めた段階で整理しておくと交渉が進みやすくなります。
製造業M&Aの最新動向(2026年)
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上場企業が適時開示したM&Aは、2025年に1,344件となり、5年連続で過去最多を更新しました。取引金額は約20兆円で、2018年以来7年ぶりに過去最高を更新しています(出典:M&A Online、2026年1月)。
製造業を対象にしたM&Aは、2023年の245件から2024年は256件に増え、4年連続の増加です(出典:ストライク「製造業の市場動向とM&Aの現状」2025年5月時点、M&A Online調べ)。出典のページは集計の基準を示していません。M&A Onlineの年間の集計は上場企業の適時開示をもとにしており、上場企業が関わらないM&Aは含まれない点に注意が必要です。
中小規模の会社が譲り渡す側になった案件も公表されています(事例は後半で紹介)。譲る側では後継者の不在が、買う側では加工工程や製品分野を自前で立ち上げるより早く手に入れたいという事情が、M&Aのきっかけの一つです。
製造業M&Aの売却相場・価格の考え方
製造業のM&A価格は、収益力と設備の状態、取引先の構成で幅が出ます。目安として使われる指標がEBITDA倍率です。EBITDAは営業利益に減価償却費を足して求める利益の指標です。設備投資の大きさに左右されにくいため、設備を多く持つ製造業の比較に向いています。
業種別EBITDA倍率の目安
日本M&Aセンターは、2015年4月から2021年12月までの同社の成約データをもとに倍率を公表しています。金属・プラスチック関連業の平均は5.7倍、全業界の平均は5.4倍で、細かい業種ごとの平均は次のとおりです。
| 業種 | EBITDA倍率(平均) |
|---|---|
| 金型設計・製造 | 6.3倍 |
| 金属切削加工 | 6.0倍 |
| プレス加工 | 5.4倍 |
| 製缶板金 | 4.1倍 |
| プラスチック射出成型 | 7.5倍 |
| 金属・プラスチック関連業 平均 | 5.7倍 |
| 全業界平均(参考) | 5.4倍 |
出典:日本M&Aセンター「EBITDAとは?計算方法、平均や目安、M&Aでの活用についてわかりやすく解説」(2025年12月更新)。同社は、成約案件の最終株価から逆算した倍率で、大まかな傾向として扱うよう注記しています。2021年までの成約をもとにした数字のため、その後の相場の変化は反映されていません。
仮にEBITDAが年3,000万円の金属切削加工の会社なら、6.0倍をかけると1億8,000万円です。ただし、この倍率は成約した株価から逆算した大まかな傾向です。借入金が多い会社は株式の価格が下がり、手元の現金が多い会社は上がるため、実際の価格は財務の中身を見て決まります。実際の価格は、設備の状態や特定の取引先への依存度、技術の代わりの利きにくさで上下します。
M&A手数料(レーマン方式)の概要
M&Aの仲介やアドバイザリーの費用は、多くの場合「レーマン方式」で算定されます。売却価格などの基準額に段階的な料率を掛ける方式で、基準額が大きいほど料率が下がります。基準額を株式の価格とするか、負債を含めた額とするかは会社ごとに違います。最低報酬額を設ける会社もあり、小さな案件では実質の料率が高くなることがあります。費用の詳しい計算例はM&A費用・手数料ガイドをご覧ください。
相場の考え方は、次の記事でも詳しく解説しています。
実際に売りに出ている案件の条件を見ると、相場の感覚をつかみやすくなります。
【業種別】製造業M&Aのポイント
製造業といっても、金属加工と機械、食品、電子機器、化学、繊維では、価格の付き方も買い手が見るところも異なります。
金属加工・金属製品製造
切削、プレス、溶接、製缶板金、金型などの金属加工の会社は、自動車や産業機械、建設機械の部品メーカーに加工品を納める立場にあることが多くあります。同じ工程を持つ同業のほか、加工工程を取り込みたい発注元のメーカーも買い手の候補になります。
前章の表のとおり、同じ金属加工でも、金型設計・製造の6.3倍から製缶板金の4.1倍まで、工程によって倍率に差があります。売上の大半を1社に頼っている会社は評価が下がりやすくなります。取引先が分散している会社や、設計から請け負える会社は評価が上がりやすくなります。
NC旋盤やマシニングセンタ、プレス機などの設備は、年式と稼働状況、修繕の履歴を設備台帳にまとめておくと、買い手の調査(デューデリジェンス)が早く進みます。
産業用機械製造(工作機械、食品機械、包装機械など)
工作機械や産業用ロボット、食品機械、包装機械、ポンプ、計測機器などの産業用機械メーカーには、特定の業界の生産ラインに合わせて機械を設計し、納めた後の保守まで受け持つ会社があります。買い手には、技術を補いたい同業のほか、製品の幅を広げたいメーカーや、事業領域を広げたい商社もいます。
評価では、機械の設計図面とソフトウェアが会社の資産として整理されているかが見られます。納入先の業界の偏りや、保守と部品の売上が毎年どれくらいあるかも確認されます。納めた機械の保守を続けられることが、買い手にとっては納入先との取引を引き継ぐ前提になるためです。
後継者のいない機械装置メーカーが、長年の取引先に株式を譲った例もあります(事例②)。
機械器具製造・機械部品加工
機械器具の製造や機械部品の加工を手がける中小企業では、創業者が設計から製造、顧客対応までを担ってきた例があります。技術がその人に集中していると、企業価値の評価が難しくなります。
売却時には、保有設備の年式と稼働状況、メンテナンスの履歴、技能者の年齢構成と若手への引き継ぎの進み具合、取引先の業種構成が見られます。上場メーカーが、事業領域の拡大を目的に売上高5億円台の部品加工会社を買い取った例もあります(事例①)。
機械器具製造の会社を買う側は、図面や加工プログラムが誰の手元にあるかを確かめます。主要な取引先との契約が経営者の交代後も続くか、設備の更新にいくらかかるかも、買収の前に確認しておきます。
食品製造業
食品製造業のM&Aでは、製造設備の帳簿価額よりも、レシピや製法、ブランド、長く続く取引先との関係が価格に反映されることがあります。自社ブランドの商品や、地域で知られた商品を持つ会社は、その点で評価を受けやすくなります。
買い手は、HACCPに沿った衛生管理の記録と、量販店や外食、OEM先といった取引先の構成を確認します。原材料の調達契約を続けられるか、賞味期限の管理と在庫の評価が妥当かも見られます。
食品の製造業の営業許可は、事業譲渡でも、営業を譲り受けた側が許可を受けた者の地位を承継します。譲り受けた側は、保健所(都道府県知事)に届け出ます(食品衛生法第56条)。ただし、許可を受けた事業の一部だけを譲る場合は承継の対象にならず、新たに許可を取る必要があるとする自治体もあります。譲渡する側が、先に保健所へ相談しておきます。
異業種の上場企業が、健康食品を自社で開発、製造し、ECサイトで販売する会社を買った例もあります(事例③)。
電気電子機器・化学・繊維
電子部品や精密機器、産業用電気機器の分野では、特定の加工技術や設計技術を持つ中小企業が、技術を補いたいメーカーの買収先になります。
化学製品の製造では機能性化学品や樹脂製品、繊維では高機能素材や不織布など、用途を絞った技術を持つ会社が評価の対象になります。化学品を扱う工場は、次の章で取り上げる土壌汚染と許認可の確認に手間がかかります。
製造業M&Aで引き継ぎが問題になる6つの論点
製造業のM&Aでは、決算書に表れにくい工場や許認可、設備の契約、人の技能の引き継ぎで交渉が止まることがあります。株式譲渡なら会社そのものが残るため、会社名義の土地や許可、契約は原則として会社に付いたまま移ります。事業譲渡では、一つずつ移す手続きが要ります。
工場の土地と建物は誰の名義か
中小メーカーでは、工場の土地や建物を会社ではなくオーナー個人が持ち、会社に貸している例があります。株式譲渡で会社の株を譲っても、オーナー個人の不動産は会社の資産に含まれません。買い手に売るのか、会社に貸し続けるのか、その価格や賃料をいくらにするのかを別に決める必要があります。
工場を他人から借りている場合、事業譲渡で賃借権を移すには貸主の承諾が要ります(民法第612条)。株式譲渡でも、賃貸借契約に株主や経営者が変わったときの承諾や通知の条項があれば、それに従います。土地と建物の登記事項証明書と賃貸借契約書で、名義と条件を一覧にしておくと、買い手との話が早く進みます。
土壌汚染の調査義務(土壌汚染対策法)
有害物質使用特定施設とは、水質汚濁防止法の特定施設のうち、特定有害物質を製造、使用、処理する施設です。この施設の使用をやめると、工場の土地の所有者等は、指定調査機関に土壌を調査させて都道府県知事に報告しなければなりません(土壌汚染対策法第3条第1項)。
予定されている土地の利用方法から見て、健康被害のおそれがないと都道府県知事の確認を受けることもできます。確認を受けている間は、調査が猶予されます(同項ただし書)。土地の使い方を変えるときは事前の届出が要り、健康被害のおそれがないと認められなければ確認は取り消され、調査が必要になります(同条第5項、第6項)。確認を受けた土地で掘削などの形質の変更をするときも、事前の届出が要ります(同条第7項)。
土地がオーナー個人の名義なら、都道府県知事から施設の使用廃止の通知を受けた所有者として、個人に調査の義務がかかることがあります(同条第3項、第1項)。株式譲渡などM&Aそのものでは、法律上の調査義務は生じません。ただし、買い手が買収前の調査の一環として土壌の調査を求めることがあります。M&Aの後に買い手が工場を集約して施設を廃止すれば、そのときに調査義務が生じます。
一定の面積以上の土地で掘削などの形質の変更をするときは、着手の30日前までに都道府県知事への届出が要ります(同法第4条第1項)。調査の費用や汚染が見つかったときの負担をどちらが持つかは、価格と契約条件に直結します。過去に使ってきた有害物質と施設の届出の記録は、早めにまとめておきます。
許認可と届出を引き継げるか
製造業で使う許認可や届出は、法律ごとに引き継ぎの扱いが違います。株式譲渡では許可を受けた会社が変わらないため、許可はそのまま残ります。事業譲渡で関わる主なものは次のとおりです。
- 工場立地法の特定工場は、敷地面積9,000㎡以上か、建築物の建築面積の合計が3,000㎡以上の工場です(同法施行令第2条)。譲り受けた者は届出をした者の地位を承継し、遅滞なく市町村長に届け出ます(同法第13条)。
- 消防法の危険物の製造所、貯蔵所、取扱所は、譲渡や引渡しを受けた者が許可を受けた者の地位を承継します。承継した者は、遅滞なく市町村長等に届け出ます(消防法第11条第6項)。
- 食品の製造業の営業許可は、営業を譲り受けた者が許可営業者の地位を承継し、保健所(都道府県知事)に届け出ます(食品衛生法第56条)。
- 毒物劇物の製造業や販売業の登録には、上の3つのような地位の承継を定めた規定がありません。事業譲渡で引き継げるかは、登録先の都道府県の窓口に確認します。
このほか、水質汚濁防止法や大気汚染防止法の特定施設の届出なども、法律ごとに扱いを確かめます。同じ工場でも扱う物質や設備でかかる法律が変わるため、受けている許可と届出を提出先の役所と合わせて一覧にしておくと、買い手の確認が早く終わります。
リース設備はリース会社の承諾が要る
工作機械や検査装置をリースで使っている場合、所有者はリース会社で、会社の持ち物として譲ることはできません。事業譲渡でリース契約を買い手に移すには、契約の相手方であるリース会社の承諾が要ります(民法第539条の2)。株式譲渡では契約は会社に残りますが、株主や経営者の変更を解除の理由とする条項がないかを確認します。
リース契約や借入金にオーナーが個人で保証を付けている場合は、譲渡に合わせて保証を外すのか、買い手側の保証に差し替えるのかも決める必要があります。設備ごとに自社所有かリースかを分け、契約の残りの期間と残額を一覧にしておきます。
取引先との契約(チェンジ・オブ・コントロール条項)
主要な取引先との基本契約に、株主や経営者が変わったときの条項(チェンジ・オブ・コントロール条項)が入っていることがあります。相手方が契約を解除できる、または事前の承諾を求めるといった内容です。株式譲渡でもこの条項は働くため、主要な取引先の契約書を集め、条項の有無と通知の時期を確かめる必要があります。
売上が特定の取引先に集中している会社では、その取引先が経営者の交代をどう受け止めるかで価格が変わります。事業譲渡では契約を一つずつ買い手に移すため、取引先ごとに同意を得る段取りが要ります。
熟練工と社長の技能の引き継ぎ
中小メーカーの価値が、熟練工の加工技術や、社長が一人で担ってきた設計や見積もり、顧客との調整にある場合、その人が抜けると生産や受注が続かないおそれがあります。株式譲渡でも事業譲渡でも、技能そのものは契約で移せません。
図面や加工条件、検査の基準を書面やデータに残し、若手が担当できる工程を増やしておくと、技能が特定の人に付いたままになるのを防げます。社長自身が技術の中心なら、譲渡後に一定期間残って引き継ぐ期間と処遇を、買い手と契約で決めます。
譲渡後の業績などに応じて譲渡代金の一部を後から支払う、アーンアウト条項を組み合わせることもあります。仕組みと注意点はアーンアウト条項とは?M&Aでの仕組み・メリット・デメリットと活用事例で解説しています。
売却前に売り手が準備しておくこと
6つの論点に関わる資料は、売却を決めてから集めると時間がかかるものばかりです。買い手を探し始める前に、次の表の資料をそろえておきます。
| 論点 | 準備しておく資料 | 確認先 |
|---|---|---|
| 工場の土地と建物 | 登記事項証明書、賃貸借契約書、オーナー個人名義の不動産の一覧 | 法務局、貸主 |
| 土壌汚染 | 過去に使った有害物質と施設の届出の記録、過去の調査結果 | 都道府県の土壌汚染の担当部署 |
| 許認可と届出 | 受けている許可と届出の一覧(法律名、届出先、届出日) | 市町村、消防署、保健所、都道府県 |
| リース設備と保証 | 設備台帳(自社所有とリースの区別、年式、修繕履歴)、リース契約書、オーナーの個人保証の一覧 | リース会社、金融機関 |
| 取引先との契約 | 主要な取引先の基本契約書、取引先別の売上の推移 | 取引先 |
| 技能の引き継ぎ | 図面、加工条件、検査基準、従業員の年齢と担当工程の一覧 | 社内 |
このうち土地の名義と許認可は、確かめるのに役所や貸主とのやり取りが要るため時間がかかります。オーナー個人の持ち物と会社の持ち物を分けて一覧にするところから始めてください。
製造業のM&A事例
公表されている事例を3つ紹介します(いずれもM&Aナビが関与した案件ではありません)。内容は各社の開示資料と報道で確認しています。
①ニッキが大島機工の全株式を取得(2025年9月公表)
東証スタンダード上場のニッキは、2025年9月17日、大島機工(神奈川県相模原市、1973年設立)の全株式を取得し、子会社にすると発表しました。大島機工は、建設機械部品などの切削加工と機械加工を手がける産業機械部品の加工会社です。2025年4月期の売上高は5億3,100万円、経常利益は7,200万円です。株式の売り手は個人で、取得価額は開示されていません。ニッキは、脱炭素への対応に向けて事業構造の転換を進めており、事業領域と事業規模の拡大につながると判断したと説明しています。
②四国化工機がセントラル機械商事の全株式を取得(2022年3月公表)
機械事業、包装資材事業、食品事業を営む四国化工機は、2022年3月3日付でセントラル機械商事の全株式を取得し、完全子会社にしました。セントラル機械商事は東京都中央区の会社で、1980年に設立され、社員は22名です。牛乳パックやヨーグルトなどのパッケージに日付などを印字する産業用インクジェットプリンタや、画像検査装置の製造、販売、保守を行っています。公表では、後継者が不在のなか、長年取引のある四国化工機を事業の承継先とする株式譲渡の提案を受けたと説明しています。四国化工機は、シナジー効果が高いと判断して取得を決めました。
③オーイズミがバブルスターの全株式を取得(2022年3月公表)
東京証券取引所に上場するオーイズミは、遊技場向けの設備機器や不動産賃貸、食品などの事業を営んでいます。2022年3月30日の取締役会で、バブルスター(神奈川県大和市)の全株式の取得を決め、4月5日に子会社にしました。バブルスターは、健康食品を自社で開発、製造し、ECサイトで販売する会社です。オーイズミは、開発から製造、販売まで一貫して行う健康食品ブランドのノウハウを、グループ内で共有することを狙いとしています。
参考:M&A Online「オーイズミ、健康食品メーカーのバブルスターを子会社化」(2022年3月30日)、オーイズミ 有価証券報告書(2022年3月期、EDINETで公開)
M&Aの成功事例はM&A成功事例まとめで、失敗の事例と教訓はM&A失敗事例から学ぶで紹介しています。
製造業の事業承継と後継者問題
製造業の事業承継では、経営を任せられる後継者がいるかに加えて、技術とノウハウを引き継げるかが問われます。設備や工場などの固定資産が大きいため、親族に引き継ぐ場合でも相続税や贈与税の負担が重くなりやすく、承継の障壁になることがあります。
M&Aによる事業承継のメリット
M&Aで会社を譲れば、廃業せずに従業員の雇用を続けられます。長年の技術やブランド、取引先との関係も、買い手のもとで残せます。売却後も一定期間は経営者として残り、技術と顧客を引き継ぐ条件を付けることもできます。
事業承継M&Aの進め方
製造業の事業承継M&Aは、一般的に次の順で進みます。
- 財務状況や技術資産、組織体制を把握し、M&Aで何を実現したいかを決める
- EBITDA倍率などを使って、大まかな価格の幅を確かめる
- M&A仲介会社やFA(ファイナンシャル・アドバイザー)に相談し、相手探しを始める
- 秘密保持契約を結んだうえで、候補先と事業内容や希望条件をすり合わせる
- 買い手が財務、法務、技術、環境の面から調査する(デューデリジェンス)
- 株式譲渡契約や事業譲渡契約を結び、経営権を移す
- 技術と人材、取引先の引き継ぎを計画どおりに進める
製造業では、5番目の調査で工場の土地や土壌、許認可、設備の契約が詳しく調べられます。「売却前に売り手が準備しておくこと」の表の資料を先にそろえておくと、この段階で止まりにくくなります。
製造業のM&A・売却案件を探す/相談する
製造業のM&A案件を探す方法や相談先には、次のようなものがあります。
- M&Aマッチングサイトでは、インターネット上に公開された売却案件を、社名を伏せた状態で確認できます。
- 地方銀行や信用金庫は取引先の事業承継を支援しており、公開されていない案件の情報を持っていることがあります。
- M&A仲介会社やアドバイザーには、相手探しから契約までを任せられます。
- 各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターでも、事業承継の相談を受け付けています。
自分で相手を探してやり取りしたいならマッチングサイト、相手探しから任せたいなら仲介会社が向いています。手数料のかかり方はサービスごとに違うため、売り手と買い手それぞれの料金を比べてから選びます。
M&Aナビは、売り手・買い手とも登録・利用料が無料です。売り手は成約時も費用がかからず、買い手は当サービスをきっかけに成約した場合のみ成約手数料が発生します。
製造業のM&Aに関するよくある質問
製造業のM&Aで売却価格の目安はどのくらいですか?
日本M&Aセンターの2015年4月から2021年12月までの成約データでは、金属・プラスチック関連業のEBITDA倍率の平均は5.7倍です。この倍率は成約した株価から逆算した大まかな傾向で、実際の株式の価格は借入金や手元の現金の多さで上下します。金型設計・製造は6.3倍、製缶板金は4.1倍と、工程でも差があります。
後継者がいない製造業でもM&Aで事業承継できますか?
できます。2022年には、後継者のいなかった社員22名の機械装置メーカーが、長年の取引先に全株式を譲った例が公表されています。技術が社長に集中している場合は、譲渡後に一定期間残って引き継ぐ条件を買い手と決めます。
工場の土地がオーナー個人の名義でも売却できますか?
できます。株式譲渡でもオーナー個人の不動産は会社の資産に含まれないため、買い手に売るか会社に貸し続けるかと、その価格や賃料を別に決めます。登記事項証明書で名義を確かめておきます。
工場の許認可は買い手に引き継げますか?
株式譲渡なら許可を受けた会社が変わらないため、許可は残ります。事業譲渡では法律ごとに扱いが違い、工場立地法の届出、消防法の危険物施設の許可、食品の製造業の営業許可は、譲り受けた側が地位を承継して届け出ます。毒物劇物の登録は都道府県に確認します。
製造業のM&Aで土壌汚染の調査は必要ですか?
有害物質使用特定施設の使用をやめたときは、土地の所有者等に調査と報告の義務がかかります(土壌汚染対策法第3条)。株式譲渡などM&Aそのものでは、法律上の調査義務は生じません。ただし、買い手が調査の一環として土壌の調査を求めることがあります。M&Aの後に施設を廃止すれば、そのときに調査義務が生じます。
機械器具製造の会社を買収するとき、何を確認しますか?
図面や加工プログラムが誰の手元にあるか、主要な取引先との契約に経営者の交代で解除できる条項がないかを確認します。設備ごとの年式とリースの有無、熟練工の年齢と担当工程も見ます。社長が技術の中心なら、引き継ぎ期間の条件も決めます。
製造業のM&Aのまとめ
製造業を対象にしたM&Aは2024年に256件と4年連続で増え(M&A Online調べ)、後継者のいない中小メーカーの引き継ぎにも使われています。日本M&Aセンターの2015〜2021年の成約データで、金属・プラスチック関連業のEBITDA倍率は平均5.7倍です。実際の価格は、工程や設備の状態、取引先への依存度で上下します。
売却を考え始めたら、次の6点を確認してください。
- 工場の土地と建物が会社名義か、オーナー個人名義か、賃借か
- 有害物質使用特定施設があるか、過去にどんな有害物質を使ってきたか
- 受けている許可と届出が、株式譲渡と事業譲渡のそれぞれでどう扱われるか
- 設備のうちどれがリースで、契約の残りとオーナーの個人保証がどれくらいあるか
- 主要な取引先との契約に、経営者や株主の変更に関する条項があるか
- 図面や加工条件、検査の基準が、社長や熟練工以外にも引き継がれているか
なかでも土地の名義と土壌の記録は、売り手の手元にしかない情報です。買い手を探し始める前にそろえておくと、調査の段階で交渉が止まりにくくなります。

株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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なお、国内のM&A件数は2024年に4,700件と過去最多を記録するなど(レコフデータ)、後継者不在や人手不足を背景に事業承継型M&Aは活発







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