和菓子業界のM&Aを解説!市場動向や成功事例を徹底解説
日本の伝統と美を象徴する和菓子業界では、後継者問題や市場の変動が顕著になっています。
本記事では、これらの課題に対する一つの解決策として、和菓子業界におけるM&Aの動向、成功事例、そして売買戦略を詳細に解説します。
伝統を守りながら新たな可能性を模索する和菓子業界の現状と未来に焦点を当て、M&Aがいかにして業界の持続可能な発展に寄与しているかを掘り下げていきます。
記事だけでは解決できない不安や疑問は、経験豊富なアドバイザーがご相談を承っております。
目次
和菓子業界とは?
和菓子業界は、日本の伝統的な菓子を製造、販売、または提供する企業や職人が活動する産業のことです。
和菓子は、餡子(あんこ)、もち、きな粉(きなこ)、抹茶などを使ったさまざまなスイーツであり、美しい外見と繊細な味わいが特徴です。具体的な商品としては、だんご、饅頭(まんじゅう)、羊羹(ようかん)、桜餅(さくらもち)などがあります。
和菓子業界は、日本国内だけでなく国際的にも注目されており、日本の文化としての価値を持っています。
また、季節に応じた商品の提供や、伝統的な技術を守りつつ新しい味やスタイルの開発を行うことで、多様な消費者の需要に応えています。
和菓子業界の市場規模
和菓子業界の市場規模は推計で約5540億円程度と言えるでしょう(参照資料を基に弊社算出)。市場規模は年々減少傾向にあります。
一方で、和菓子は祭事などの季節柄の需要や法人による贈答品としての需要があります。
減少傾向ではあるものの、底堅い需要があると考えられ、緩やかな減少を経ると予想されています。
参考:
和菓子産業の現状と課題
「和菓子」の支出 -家計調査結果より-
和菓子業界の今後の課題
和菓子業界では主に以下のような課題があるといわれています。
- そのほとんどが小規模事業者である
- 若年層への需要拡大
- 経営者の高齢化
特に、経営者の高齢化に伴う事業承継は大きな課題となっています。
次の章にて詳細を解説していきます。
和菓子業界は事業承継が課題
和菓子業界において、事業承継は大きな課題の一つです。多くの和菓子店が家族経営や小規模事業として運営されているため、後継者が不在となるケースが頻繁に見られます。
この問題は業界全体の持続可能性に影響を与え、伝統技術の維持や地域経済への貢献が困難になっています。
事業承継が課題になっている要因には以下のようなものがあります。
- 和菓子業界は後継者不在率が高い
- 和菓子業界は小規模事業者がほとんどである
それぞれについて解説をしていきます。
和菓子業界は後継者不在率が高い
和菓子業界では、特に地方に位置する店舗で後継者不在の問題が顕著です。多くの現在の店主は高齢化が進んでおり、若い世代の中からは厳しい労働条件や経済的な不安定さを理由に業界への参入を避ける傾向にあります。その結果、多くの伝統的な和菓子店が閉店を余儀なくされており、地域文化の喪失にも繋がっています。
和菓子業界は小規模事業者がほとんどである
和菓子業界の大部分を占めるのは、従業員数10人未満の小規模事業者です。これらの事業者は、資源の限られた環境下で運営されており、大規模な資本や技術革新を行う余裕がありません。
そのため、競争が激化する市場においては、生き残りをかけた戦略の見直しが必須となっています。しかし、経営資源の不足は、そのような戦略の転換を困難にしており、多くの業者が市場から撤退する結果につながっています。
事業承継については、以下の記事で詳細に解説していますので気になる方はチェックしてみてください。
事業承継とは?基礎基本から成功へのポイントまで...
事業承継とは、経営者が自身が運営する会社や事業、株式を後継者に対して引き継ぐことです。 事業承継は、企業の持続的な発展を目指す上で重要なステップです。 ただ、何から始めたらよいのか、適切な継承者の選び方や具体的な進め方な…
和菓子業界のM&Aのメリット
和菓子業界におけるM&A(企業合併・買収)は、多くの利点を提供します。特に、伝統的な技術やブランドを保持しつつ、経営資源の強化と持続可能な発展が期待されます。M&Aによる経営統合は、市場での競争力を高め、事業の安定化に貢献する可能性があります。
従業員の雇用を確保できる
M&Aを行うことで、特に小規模な和菓子店が直面する可能性のある突然の事業閉鎖や解散を防ぎ、従業員の雇用を維持することが可能になります。これは、従業員にとっても安定した職場環境を提供し、技術や知識の連続性を保つ上で重要です。
技術の承継ができる
多くの和菓子店では独自の製法や技術が存在しますが、後継者不足によりこれらの技術が失われる可能性があります。M&Aにより、技術を有する企業との統合が進むことで、これらの貴重な技術が保存され、新たな世代に伝承されるチャンスが生まれます。
ブランドを残すことができる
企業合併や買収によって、長年培われたブランド価値を保持し、さらには拡大することが可能です。特に老舗の和菓子店の場合、その名前と歴史は大きな資産ですが、経営難により失われることがあります。M&Aを通じて他の健全な企業と統合することにより、ブランドの存続と成長が促進されます。
和菓子業界のM&Aのデメリット
和菓子業界でのM&Aには、多くのメリットが存在する一方で、いくつかのデメリットも存在します。これらの課題を理解し、対策を講じることが成功への鍵となります。
承継に時間がかかる
特に伝統を重んじる和菓子業界において、技術や企業文化の承継は時間を要するプロセスです。M&Aによって事業が統合された場合、異なる企業文化の融合や技術の継承には長期間にわたる努力と調整が必要になります。この過程で、双方の従業員間での摩擦が生じる可能性があり、スムーズな運営への移行を妨げることがあります。
買い手が見つからないリスクがある
和菓子業界の多くは小規模事業者で構成されており、買収を検討しても財務的に魅力的な買い手が限られることがあります。また、業界特有の技術や文化を理解し、継承を望む適切な買い手を見つけることは容易ではありません。このため、適切な買い手が見つからず、事業が存続の危機に瀕することもあります。
和菓子業界のM&Aの売却価格相場
和菓子業界でのM&A取引において、売却価格の相場を理解することは重要です。この価格は、多くの要因によって左右され、適切な評価が事業の持続可能性と成長に大きな影響を及ぼします。
M&Aにおける売却価格の考え方
M&Aのおいては、以下の3つの手法をもとに売却価格を設定することが一般的です。
- コストアプローチ(純資産に着目)
- インカムアプローチ(収益力やキャッシュフローに着目)
- マーケットアプローチ(市場相場に着目)
詳細な価値算定の手法については、以下の記事で解説していますので気になった方は是非ご確認ください。
【事業売却の相場について解説】M&Aで会社売...
あなたが「会社を売りたい」と考えたとき、一体いくらで売るのが最適だと思いますか? M&Aにおいて「会社の価値(株価)を正しく算出する」ことは非常に重要です。 特に未上場企業の場合は株価が公開されているわけではあ…
和菓子業界に特有の考慮すべき事情
和菓子業界には、特有の事情が存在します。
例えば、特定の和菓子は地域に根ざした文化的価値を持つため、その地域性を重視した評価が必要になります。
また、手作業による緻密な技術が業界の特徴であるため、その技術を保有する職人の存在や、技術の承継可能性も評価の重要な要素となります。さらに、季節商品やイベント限定商品などの販売戦略が成功しているかも、企業価値を左右する要因です。
和菓子業界のM&A事例
和菓子業界のM&A事例について紹介します。
シャトレーゼが亀屋万年堂を買収した事例
2021年1月、山梨県に本社を置き菓子製造やワイナリー等を展開するシャトレーゼホールディングスは、東京都目黒区の亀屋万年堂を買収したと公表しました。
亀屋万年堂は、1983年に創業された老舗の和菓子店であり東京・神奈川を中心に約30店舗を運営しています。
参考:
会社概要
シャトレーゼ、亀屋万年堂を買収 和菓子FC展開へ
株式会社恵比須堂が有限会社ワークハウスに事業承継
福井県にある和菓子メーカー、株式会社恵比須堂は、障害者就労支援サービスを手掛ける有限会社ワークハウスに事業承継をされました。
和菓子業界のM&A成功への3つのポイント
和菓子業界におけるM&Aの成功は、いくつかの重要な要素に依存します。以下に、成功に導くための3つのキーポイントを紹介します。
十分な検討時間を設けること
M&Aプロセスは、慎重な計画と十分な検討が必要です。特に和菓子業界では、伝統と文化が重視されるため、事業の相性や文化的適合をじっくりと評価する時間を持つことが重要です。慌てて決定を下すことは避け、すべての利害関係者が納得のいく解決策を見つけるための十分な時間を確保することが、予期せぬ問題を避け、結果的に成功へとつながります。
最適なマッチングを模索する
和菓子業界でのM&A成功の鍵は、最適なパートナーとのマッチングにあります。技術的なスキル、製品ライン、市場での位置づけなど、複数の要素を考慮して最良の組み合わせを見つけることが必要です。このプロセスには、業界内外の専門知識を活用し、広範なネットワークを駆使することが求められます。
専門家に相談する
M&Aは複雑なプロセスであり、専門的な知識が必要とされます。法律、財務、文化的な側面を含め、各種の専門家に相談し、詳細なアドバイスを受けることで、適切な戦略を策定し、リスクを最小化することができます。特に和菓子業界のように伝統が重んじられる分野では、その特性を理解している専門家の意見が不可欠です。
売却検討中の方の疑問をいますぐ解決!よくある質問と回答はこちら
M&Aでよくある質問〜売却検討中の方の不安・...
M&Aで会社や事業の売却を検討する中で、不安や疑問点は多くあるのではないでしょうか。 M&Aナビにおいても「いくらで売れるのか知りたい」「売却後の税金が不安」といったご質問をいただいております。 そこ…
和菓子業界のM&Aのおすすめ相談先
和菓子業界のM&Aを検討する際には、適切なアドバイスとサポートを提供できる専門家に相談することが非常に重要です。以下に、M&Aプロセスを円滑に進めるためにおすすめの相談先を挙げます。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、買い手と売り手をマッチングさせる専門的なサービスを提供します。これらの会社は、業界知識と広いネットワークを持っており、適切な買い手や売り手を見つける手助けをしてくれます。和菓子業界の特性を理解している仲介会社を選ぶことで、より効果的な取引が期待できます。
M&Aマッチングサイト
インターネット上で利用できるM&Aマッチングサイトも、和菓子業界の事業者にとって有用です。
これらのサイトは、全国各地の潜在的なM&A候補をリストアップし、簡単にアクセスできるプラットフォームを提供します。ユーザーは自分の条件に合った相手をオンラインで探すことができ、初期の接触も容易になります。
当社では、M&Aマッチングサイトを運営しており常時1,000件の売却案件を掲載しております。
和菓子業界の案件もありますので、一度見てみてください。
おすすめのM&Aマッチングサイトを以下の記事で解説していますので気になった方は是非ご確認ください。
【2024年最新】M&A・事業承継のおすすめマッ...
今回はM&A・事業承継マッチングサイトの中から、弊社社員が本気でおすすめできるマッチングサイト20選をご紹介いたします! 「どのマッチングサイトを選べばいいのかわからない」「それぞれ仕組みが違って難しい」といっ…
顧問税理士
M&A取引には、税務面での考慮が不可欠です。顧問税理士は、M&Aの税務処理や資産評価など、財務面でのアドバイスを行います。和菓子業界の事業者がM&Aを行う際には、税理士の知識が大きな助けとなり、よりスムーズな取引の実現に寄与します。
和菓子業界のM&Aのまとめ
和菓子業界において、M&Aを実行することにより事業の継続、技術の継承、ブランド価値の維持といった重要な役割を果たしています。
十分な準備と検討をもとに適切な相手とマッチングすることができれば、事業承継の良い選択肢としてM&Aを活用することができると考えられます。
M&Aを通して、和菓子業界の伝統を守りつつ、新たな価値を創出することができるでしょう。
M&Aナビは、売り手・買い手ともにM&Aにかかる手数料などを完全無料でご利用いただけます。買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いのも特徴です。ぜひご活用ください。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
関連記事
M&A(エムアンドエー)とは?意味や目的、仕組みや手法などM&Aの基本を簡単に解説!!
M&A(エムアンドエー)とは、”Mergers and Acquisitions”の頭文字を取った略語であり日本語に直すと合併と買収です。 本記事では
【2024年最新】M&A・事業承継のおすすめマッチングサイト20選を徹底比較!
今回はM&A・事業承継マッチングサイトの中から、弊社社員が本気でおすすめできるマッチングサイト20選をご紹介いたします! 「どのマッチングサイトを選べ
会社売却は誰に相談すべき?相談先20選を徹底解説!【無料の相談先あり】
「会社の売却を考え始めたとき、まず誰に相談すればわからなかった」という話をよくお聞きします。 社員は言うまでもなく、取引先や銀行などにも軽々しく相談できません。
会社を廃業すると借金はどうなる!?パターン別の対応方法を徹底解説!
会社の廃業を検討し始めたときに、「会社で借りている借金はどうなるのか?」と心配になるでしょう。 日本の中小企業のうち、どれくらいの企業が融資を受けているかご存知
新着買収案件の情報を受けとる
M&Aナビによる厳選された買収案件をいち早くお届けいたします。