【2024年版】クリニックM&Aの最新動向!事例や譲渡価格の相場を解説
この記事では、最近注目されているクリニックのM&Aについて解説します。
クリニックのM&Aについて、最新動向からメリット・デメリット、事例について解説をしていきますので医療業界でクリニックのM&Aに興味を持つ方は必見です。
この記事を読むことで、クリニックM&Aに関する全体像を把握することができ、実際にM&Aを進める際の不安や疑問点を解消できるでしょう。
記事だけでは解決できない不安や疑問は、経験豊富なアドバイザーがご相談を承っております。
目次
クリニックの市場動向
クリニックのM&Aの動向について見ていく前に、クリニックの市場全体について見ていきます。
クリニックとは
クリニックとは、診療所の通称です。
類似の呼び方として医院という呼び方がありますが、基本的には同じものを指していると考えてよいでしょう。
医療法では「診療所」として定義されており、第1条の5で以下のように定義されています。
「医師又は歯科医師が、公衆又は特定多数人のため医業又は歯科医業を行う場所であつて、患者を入院させるための施設を有しないもの又は十九人以下の患者を入院させるための施設を有するもの」
基本的には、入院するための設備を保有していない医療機関を指しますが、入院施設を保有していても19人以下なら診療所に分類されます。
クリニックの市場動向
厚生労働省によると、令和4年10月1日時点での医療施設総数は 183,364施設あります。
その中で、クリニックに該当する「一般診療所」は105,182施設とされています。
また、一般診療所の開設者は、医療法人が43.7%と多く、次いで個人が38.1%となっています。
参考:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/22/dl/02sisetu04.pdf
2024年のクリニックM&A市場の最新動向
医療業界は、技術革新と経済環境の変化により、常に進化し続ける分野です。
この中で、特に注目されているのがクリニックのM&A(合併・買収)市場の動向です。
2024年現在のクリニックM&A市場の最新動向についていくつかのポイントがあります。
それぞれについて解説をしていきます。
デジタル化の影響
近年、医療業界全体がデジタル化を推進しており、これがM&A市場にも大きな影響を与えています。
例えば、遠隔地診察やAI診断支援ツールの導入が進む中、これらの技術を有するクリニックやスタートアップ企業が買収対象となるケースが増加しています。
これにより、より効率的で革新的な医療サービスの提供が可能になる一方で、これら先進技術を持たないクリニックは市場での競争力を失いつつあります。
多様化する市場プレーヤー
市場に参入するプレーヤーの多様化も顕著なトレンドです。
従来の医療業界のプレーヤーだけでなく、IT企業や投資ファンドなど、異業種からの参入が活発化しています。
これらの企業は、従来のクリニック運営とは異なる視点での経営や、新たなビジネスモデルを提案することが多く、市場に新たな活力をもたらしています。
地域差の拡大
地域による市場の差異がより顕著になっています。
大都市圏では、高度な医療技術や専門性を持つクリニックへの需要が高まっています。
一方で、地域医療の空洞化といった背景から、総合的な医療サービスを提供するクリニックが注目されています。
この地域差は、M&Aの戦略を考える上で重要な要素となっています。
2024年のクリニックM&A市場は、デジタル化の進展、市場プレーヤーの多様化、地域差の拡大によって大きく変化しています。
これらの変化を踏まえ、クリニックM&A市場を理解することが、クリニックの持続可能な成長と、患者に対する質の高い医療サービス提供へと繋がるといえるでしょう。
クリニックM&Aの価格相場
クリニックのM&Aにおいては、通常の営利企業と同様の手法で価格を算出することが一般的です。
通常、中小企業のM&Aでは時価純資産に営業利益の数年分をのれんとして足し合わせた金額を企業価値として算出します。
ただし、クリニックM&Aにおいては、営業利益の1年分をのれんとして考えることが多くなっています。
営利企業のM&Aでは、営業利益の3~5年分が一般的であることを考えると、通常とは異なります。
これは、クリニックの運営が所長1人に依存していることが多く、属人性が高いためです。
これらを鑑みるとクリニックM&Aでは、数千万円~1億円程度になることが多いです。
もちろん資産規模や財務状況によって異なりますので、自社の価値を知りたい方はM&Aナビまでご相談ください。
価格に影響する要因
クリニックM&Aにおける基本の考え方は、「時価純資産に営業利益の数年分」ですが、詳細に価格を算出するにあたっては、ほかにもいくつかの要因があります。
それぞれについて解説をしていきます。
クリニックの特性
診療科目やブランドイメージといったクリニックの特性が価格に影響します。
例えば、特定の専門分野に特化したクリニックや、先進的な医療機器を備えた施設は高価で取引される可能性があります。
また、地域コミュニティに密着したクリニックや長い歴史を持つ施設も、その信頼性とブランド価値により高い評価を受けることがあります。
財務状態の考慮
買収対象となるクリニックの財務状態も重要な要素です。
現時点の財務状況だけでなく、過去や将来の予測など時間軸での考慮が必要です。
安定した収益を上げているクリニックや、優れた経営効率を持つ施設は、より高い価格で取引されます。
一方、財政的に不安定なクリニックや、改善の余地が大きい施設は、低い価格で買収される可能性があります。
地域性による競争環境
地域による価格の差異も顕著です。
大都市圏のクリニックは、地方のクリニックに比べて一般的に高価で取引される傾向にあります。
これは、大都市圏のほうが医療需要が高く、患者層が広いためです。
また、地方では地域に根差した医療を提供するクリニックが高く評価される傾向にありますが、市場規模が小さいため、価格相場は大都市圏よりも一般的に低めです。
クリニックにおけるM&Aのメリット・デメリット
この章ではクリニックにおけるM&Aのメリットとデメリットについて解説していきます。
売り手と買い手のそれぞれの目線で解説しますので、参考にしてみてください。
売り手のメリット
まずは売り手のメリットから解説します。
資金獲得
M&Aを通じて、売り手はクリニックの売却から大きな資金を獲得できます。
これは、他の投資への再投資や、個人的な資金ニーズに応えるのに役立ちます。
リスク軽減
次は、経営リスクや市場変動からの解放です。
特に競争の激しい市場や将来の不確実性が高い状況では、売却によってリスクを軽減できます。
売り手のデメリット
次に売り手のデメリットについて解説します。
事業の喪失
クリニックを売却することは、その事業からの完全な撤退を意味します。
これにより、長年にわたる努力やブランド価値の喪失に繋がる可能性があります。
感情的な影響
特に長年経営してきたクリニックの売却は、感情的な面での影響が大きいです。
経営者にとって、自らの事業を手放すことは、情緒的な決断となることも少なくありません。
このように、クリニックのM&Aは売り手にとっても重要な意思決定です。
資金の獲得やリスク軽減といったメリットがある一方で、事業の喪失や感情的な影響といったデメリットも考慮する必要があります。
買い手のメリット
次に買い手の目線デメリットについて解説します。
市場シェアの拡大
クリニックの買収により、買い手は瞬時に市場シェアを拡大することができます。
これは、新しい地域への進出や特定の医療分野での影響力を強化する絶好の機会です。
経営資源の最適化
買収によって、人的資源、技術、知識などの経営資源を統合し、効率化を図ることが可能です。
コスト削減やサービスの質の向上に直結します。
収益性の向上
既存のクリニックを買収することで、新規開業よりも迅速に収益を上げることが可能です。
また、経営のシナジー効果により、長期的な収益性の向上が期待できます。
買い手のデメリット
最後に買い手のデメリットについて解説します。
高い買収コスト
クリニックの買収は大きな初期投資を必要とし、その費用は時に企業財務に大きな負担をもたらす可能性があります。
統合の難しさ
異なる組織文化を持つクリニックの統合は容易ではありません。
従業員のモチベーションの低下や、サービスの質の低下を引き起こすリスクがあります。
顧客が離れてしまうことも懸念されるため、統合プロセスは慎重に進める必要があります。
市場の変動リスク
医療市場は常に変化しており、買収したクリニックの事業が将来的に想定した通りの成果をもたらさないリスクも存在します。
特に、医療技術の急速な進化や政策の変更は、事業計画に大きな影響を及ぼす可能性があります。
このようにクリニックのM&Aは、買い手にとって多くのメリットをもたらす一方で、考慮すべきデメリットも存在します。
クリニックのM&A成功への3つのポイント
クリニックのM&Aを成功させるためには、いくつかの重要なポイントがあります。
以下の3つのポイントに注意して進めることが成功につながります。
徹底したデューデリジェンス
クリニックのM&Aの成功にはデューデリジェンスが重要なポイントです。
まずは、対象クリニックの詳細な市場分析と財務状況の評価が重要です。
市場のニーズ、競争状況、クリニックの財務健全性などを徹底的に調査し、リスクを把握します。
また、医療業界は厳格な法規制があります。
合法的かつ倫理的な枠組み内で取引が行われることを確認し、将来的な法的問題を避けるためのコンプライアンスを厳守します。
デューデリジェンスに関しては、以下の記事をご確認ください。
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慎重な統合プロセスの実施
従業員のモチベーション維持と効率的な統合を図るために、共有される経営理念や文化を確立し、異なる文化の統合を行う必要があります。
顧客流出や専門人材の退職は大きなリスクとなるため、従業員、患者、その他のステークホルダーとの積極的な対話を通じて、信頼と理解を築く必要があります。
適切な行政の許認可の引継ぎ
クリニックの運営では、その開設主体によって届け出を提出する行政が異なります。
M&Aにより経営主体が変更する場合は、それに伴う引継ぎ手続きが発生します。
これら3つのポイントは、クリニックのM&Aが成功へと導かれるための鍵です。
これらのポイントを意識してクリニックのM&Aを進めていきましょう。
クリニックM&Aの成功事例
クリニックM&Aの成功事例を見ることは、将来のM&A戦略を立てる上で非常に有益です。以下に、具体的な成功事例を紹介します。
徳洲会によるベテル泌尿器科クリニックの事業譲受
2022年3月、徳洲会は札幌市にあるベテル泌尿器科クリニックの事業を譲受しました。
徳洲会グループは病院71施設、診療所・クリニック・介護施設など、総事業所数400施設を展開する医療法人です。
譲受後も、医師、看護師、医療事務のスタッフを維持したまま地域医療に根ざした診療を行鵜としています。
http://www.bethel-uc.jp/news/index.php?id=99
社会医療法人北斗による熊谷総合病院の事業譲受
2016年1月北海道帯広市の社会医療法人北斗はJA埼玉県厚生連から熊谷総合病院の事業を譲受しました。
その後JA埼玉県厚生連は、破産を申請し解散しています。
北斗は、十勝エリアで病院以外にもクリニックや介護施設を運営していますが、熊谷総合病院の譲受により関東への進出を果たしました。
https://www.kumasou.or.jp/about/greeting
これらの事例から、クリニックM&Aの成功の鍵は、買収対象の特性を理解し、それを尊重しつつ自社の強みと統合することにあるといえます。
自社のM&Aを検討する際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
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クリニックM&Aにおける3つの注意点
この章では、クリニックM&Aにおける3つの注意点について解説をします。
クリニックのM&Aを成功させるためには、いくつかの重要な注意点があります。以下に、特に重要な3つのポイントを挙げます。
法規制とコンプライアンスの遵守
医療業界は厳格な法規制のもとで運営をされているため、それらを遵守する必要があります。
法的要件の理解
クリニックM&Aでは、医療業界特有の法規制とコンプライアンスを理解し遵守することが不可欠です。
診療行為、薬品の扱い、患者情報の保護など、特定の法的要件に注意を払う必要があります。
適切な法務サポートの確保
法的な問題を避けるためには、経験豊富な法務チームや専門家のサポートを確保することが重要です。
これにより、合併・買収プロセスをスムーズかつ合法的に進めることができます。
従業員とのコミュニケーション
M&Aにより影響を受ける従業員と適切なコミュニケーションを取ることで、統合によるリスクを最小限に抑える必要があります。
従業員への影響の考慮
M&Aによる変化は従業員に不安をもたらすことがあります。
組織文化の変化、職務の変更、あるいは職を失う可能性など、従業員が直面する問題に対応することが重要です。
透明性のある情報提供
不確実性を最小限に抑えるためには、従業員に対して透明性のある情報提供が必要です。
売却や買収に至った背景や目的を共有することで従業員がプロセスを理解し、変化に適応できるようサポートすることが重要です。
長期的な統合計画の策定
クリニックのM&Aでは、短期的な目線ではなく中長期的な目線で効果を最大化できるように慎重な統合プロセスを実施する必要があります。
統合プロセスの計画策定
M&A後の統合は、単に経営上の統合を超えた複雑なプロセスです。
長期的な視点での統合計画を策定し、段階的に実施することが重要です。
異なる組織文化への理解
組織文化の違いはM&Aの障害となり得ます。
異なるクリニックの組織文化をうまく融合させるためには、互いの価値観を尊重し、共通の目標に向かって努力する必要があります。
これらの注意点を考慮することで、クリニックのM&Aはより円滑に、かつ効果的に進行します。
これらのポイントに注意を払い、慎重にプロセスを進めることで、M&Aは成功へと導かれるでしょう。
クリニックのM&A案件を探すには
クリニックのM&A案件を探すには、どのような手段があるのでしょうか。
一般的には、以下の3つの手段があります。
- M&Aマッチングサイトで探す
- 地元の金融機関に相談する
- M&A仲介会社に相談する
M&Aマッチングサイトで探す
M&Aマッチングサイトは、インターネット上で企業の売却案件を探すことができるサービスです。
特に近年ではM&Aの案件を探すための手段として主流になってきており活用する企業が増えています。
当社では、M&Aマッチングサイトを運営しており常時1,000件の売却案件を掲載しております。
クリニックの案件もありますので、一度見てみてください。
地元の金融機関に相談する
地元の金融機関に相談することも有効な選択肢の一つといえます。
地方銀行や信用金庫は、地元企業の事業承継支援や経営支援に力を入れているためM&Aの売却案件の情報を保有している可能性が高いです。
一度、懇意にしている地域金融機関に相談してみましょう。
M&A仲介会社に相談する
M&A仲介会社に相談することは、最もベーシックな手段の一つだといえるでしょう。
M&A仲介会社は、売却を検討している方を積極的に探索しており、売却案件の情報を豊富に持っていることが考えられます。
M&Aナビでは、プラットフォームに掲載していない非公開の案件を多数保有しておりますので、一度ご相談ください。
M&A仲介会社に相談する際は、手数料や費用など注意すべきことがいくつかあります。
詳しくは以下の記事を参考にしてみてください。
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クリニックM&Aのまとめ
クリニックのM&Aは、医療業界における重要な変化の一環です。この記事を通じて、M&Aの動向、価格相場、メリット・デメリット、成功へのポイント、成功事例、注意点という幅広い側面から、クリニックM&Aの全体像を解説してきました。
この記事が、医療業界の専門家、投資家、あるいは一般の読者にとって、クリニックM&Aの理解を深め、戦略的な意思決定を行うための参考になれば幸いです。
M&Aナビは、買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いことが特徴です。ぜひご活用ください。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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