2020年に注目したいSaaS業界の動向とM&Aについて

2024年03月15日

ベンチャー m&a

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SaaSは、日本でも一般に注目が集まっており、ここ数年でSaaS系と呼ばれるスタートアップ企業もとても増えてきました。M&Aの観点から見ても、SaaSはとても魅力的な業界で、この盛り上がりは、2020年も続きそうです。

今回はそもそもSaaSとは何かという話から、SaaS業界に関するM&Aの事例まで、この記事を読むことでSaaS業界のM&Aについて興味を持っていただけるようまとめております。

SaaSとは?

SaaSは「Software as a Service」の略で、「サーズ」または「サース」と呼ばれています。日本語の直訳は、「サービスとしてのソフトウェア」です。この意味だけだとピンとこないので、もう少しわかりやすく説明すると、インターネットを経由して提供されるサービスのことを表します。

従来、ソフトウェアを活用するには、CD-Rのような形でパッケージをインストールして提供されるものが主流でした。また、ソフトウェアのバージョンが新しくなると、パッケージを買い直す必要がありました。

SaaSの場合は、上記のようなパッケージ購入をする必要はありません。パソコン本体にインストールする必要もなく、すべてのソフトウェアの機能はクラウド上で提供されます。利用ユーザーは、付与されたログインID・パスワードを入力するだけですぐ利用することができ、サービスによってはスマホ・タブレットなどといった、異なる端末間でもシームレスに利用することが可能になります。

SaaS系サービスの一例

SaaSサービスは多岐にわたって様々ありますが、代表的なサービスをいくつか紹介します。

Office365
Microsoftが提供する、Word, Excel, PowerPointなどが利用できる、SaaSサービスです。

G Suite
Googleが提供する、オールインワンパッケージ型のグループウェアです。会社単位で契約し、メールやカレンダー、ファイル共有といった機能を利用できるSaaSサービスです。

Workplace by Facebook
Facebookが提供する、社内SNSです。使い勝手がFacebookと同様であるため、Facebookを利用している方であれば、使いこなしやすいのが特徴です。

Slack
機能と拡張性がとてもすぐれているビジネスチャットツール「Slack」。ビジネスチャットとしての基本機能はもちろん、組織やチームに合わせて細かな設定変更が可能です。

freee
中小企業および個人事業主の会計システムとして導入できる「freee」。クラウド会計ソフトとしてのシェアNo.1を謳っています。なお、会計ソフトとしての機能はもちろん、個人事業主の改行手続きや開業届作成までもサポート(会社設立freee)しています。

Sansan(サンサン)
名刺管理ツールの「Sansan」。ユーザーが写真を撮ってアップロードした名刺データを、オペレータが確認・入力するというフローでデータ化がなされており、その精度は99%を誇ります。

SmartHR
新しい社員を受け入れる際の入社手続きや、年末調整・退職手続きなどの人事労務作業を一元管理できるSaaSサービスです。社会保険・労働保険手続きはもちろん人事マスターや、従業員とのデータ共有にも活用できます。

SaaSサービスを活用するメリット

SaaSサービスを活用することで、サービスを提供している側とサービスを利用しているユーザー側にそれぞれ以下のようなメリットが期待できます。

■ サービスを提供している側のメリット
– ユーザー獲得をオンラインで完結することができる
– サブスクリプション(定額課金)で提供することで、継続的な売上が期待できる
– 半年契約・1年契約で提供することで、継続的に利用してもらう土台が作れる
– サービスに課題があれば契約期間でアップデートし、継続してもらえる可能性がある

■ サービスを利用しているユーザー側のメリット
– インターネットにつながる環境さえあればどこでも利用できる
– 利用者の声がサービスに反映されやすい
– 機能やサービスのアップデートが比較的タイムリーにされ続ける

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国内のSaaS業界の動向

2020年、SaaSの世界市場は約890億ドル規模(約9.7兆円超)にまで拡大する見込みがあるといわれています。(※1) さきほど紹介をした、MicrosoftのOffice365や、AdobeのCreative Cloudなど、もともとパッケージ提供をしていた大手ソフトウェアサービスもSaaSモデルへと転換し、売上を大きく拡大しています。

では国内のSaaS業界はどうなのか、解説いたします。

国内SaaS業界の市場規模

国内もSaaS業界の市場規模は年々拡大しています。2017年度に3,871億円だった市場は、2023年度にはおよそ8,200億円まで拡大すると予想されています。(※2) 平均成長率も高く、1年で12%成長という、とても高い数値になっています。

これにともない、SaaS系スタートアップによる資金調達も活発に行われています。2017年度に390億円にたいして、2018年度には550億円と1年間だけでも1.4倍を超える資金が投資されています。

実際に行われた調達実績は下記になります。

– フロムスクラッチ:100億円
マーケティングプラットフォームの開発や人工知能を用いたマーケティング開発を行っている

– SmartHR:61.5億円
クラウド労務ソフトを提供

– ヤプリ:30億円
スマートフォンアプリを開発できるSaaSサービス

SaaSが世の中に与える影響

SaaSが世の中に普及したことで大きく変化していることは、労働環境です。SaaSサービスを活用することによる仕事の効率化はもちろんのこと、インターネットさえつながっていれば利用できる利点を活かして、リモートワークの促進にもつながっています。

世界を騒がせているコロナの影響で、国内でも、完全リモートワーク体制に切り替える企業が増えてきました。企業規模数千人を超える企業がこういった新しい働き方を実現できている背景には、SaaSサービスが大きく貢献していることは間違いないでしょう。

社内のコミュニケーションはSlackなどのチャットサービスを活用し、社員のタスク進捗管理はTrelloで行い、G Suiteを活用してメール・カレンダー・Googleスプレッドシートでデータ管理・Googleスライドで営業資料を作る。
営業はWeb会議システムを提供してくれるベルフェイスを活用して、オンラインミーティングで日々の提案をこなしていく。顧客管理はSalesforceでステータスを管理し…といったように、様々なSaaSサービスを活用することで、今までの働き方が大きく変わりました。そしてこの流れはこれからもどんどん変化していくことでしょう。

SaaS業界のM&A

市場もどんどん拡大し、世の中に大きな影響を与えているSaaSは、M&Aももちろん活発に行われています。
これからM&Aをご検討されている買手の方々も、自社のSaaSサービス化という観点で一度考えてみてもいいかもしれません。
通常のM&Aとそんなに変わりはしないですが、SaaSサービスをM&Aする際の目的をまとめておきます。

1. テクノロジーに強い会社を買収し、SaaS業界に参入する

事業の拡大に意味合いは近いですが、自社のサービスのアセットを活かしてSaaS業界に参入する際には、テクノロジーにたけた人材が必要になります。そういった場合に、候補として挙げられるのが、欲しいシステムやノウハウを持っている企業のM&Aです。

技術者を一人だけ採用しても、スピーディーに事業を展開することは難しいので、そういった人材を抱えている企業を買収することで、すばやく事業を拡大させることが期待できます。

逆に開発力がある企業が、マーケティングや販売に強みを持つ企業をM&Aし、新規サービスを拡大させていく。といったこともあります。
SaaS業界へ参入するために、すべてを自社のリソースで完結させるのではなく、自社にない強みを持つパートナーを探し、M&Aをすることでスピード感ある成長を期待できるといえます。

2. SaaS企業がSaaS企業をM&Aすることで、シナジー効果を最大限に引き出す

SaaS業界には、似たようなサービスを提供している・技術を開発している企業が数多くあります。なので、同じ領域のSaaSサービスをM&Aすることで、シナジー効果が得やすい傾向があります。

たとえば、自社が提供しているサービスで提供できていない機能を、同じ領域のSaaSサービスがの持っているノウハウで解決できるのであれば、M&Aを行い、価値を高め、さらなる収益を期待することができます。また、異なったサービス領域だったとしても、両輪でサービスを提供し、お互いが持っているSaaSに関する知見をうまく活用することで、さらなる成長を見込むことができます。

SaaS業界のM&A事例

最後に、SaaS業界のM&A事例を3つご紹介いたします。

マネーフォードによる、スマートキャンプ株式会社の子会社化

2019年11月、東京に本社を置くマネーフォワードは、スマートキャンプ株式会社(東京・港区)を11月末に子会社化しました。およそ20億円での取得となります。

スマートキャンプは、比較情報サイトなどを運営しており、その主力となっているSaaS比較サイト「BOXIL」は国内でもトップクラスの規模です。BOXILに掲載している法人ソフトは1,000以上にもなり、それらの口コミやさまざまな情報を記載してあり、資料請求も簡単にできるようになっています。

マネーフォワードはこのM&Aで、自社が開発している会計や経費精算などに関するクラウドソフトの売り上げ拡大を目的としています。スマートキャンプの持つマーケティングのノウハウを活用することで、認知度をアップし、新規顧客の獲得を目指しています。これにより潜在市場規模が現在の1兆円から、1.9兆円ほどまで増加すると見込んでいます。

スマートキャンプとしても、ITインフラを強化したい企業に合うSaaSを開発していくことや、展示会やイベントなどオフライン事業にも力を入れられるようになりました。お互いのノウハウを利用しあうことで、M&Aによるシナジー効果を狙っています。

ヴァル研究所によるVISH株式会社の買収

VISH株式会社は、自社サービスの開発を行うIT企業で、2011年に、バスの位置情報を管理するバスキャッチというクラウド型のSaaSサービスをリリースしました。主にバスの送迎を必要とする施設や企業をターゲットとしており、自動車教習所や幼稚園など、さまざまな企業で導入されました。

順調に売上を伸ばしていましたが、人材不足のため顧客対応ができないこと、経営者自身が新事業に取り組みたいという思いから、M&Aを検討しました。

買手であるヴァル研究所は、「駅すぱあと」をメインのサービスとして提供している老舗のソフトウェア企業です。日本で初めて発売された鉄道の乗り換え案内のサービスです。それをバスなど鉄道以外の交通手段もサービスに組み込み、さまざまな状況に対応できるようなサービスに発展させていくために、資本業務提携できる先を探していました。

自社にはないノウハウや技術を持っている企業同士が、お互いに補完したM&Aの事例になります。

Adobeによるマルケトの買収

アメリカの大手Adobeは、2018年冬に、マーケティング支援ソフトの開発を行う、同じくアメリカのマルケトを買収しました。買収額は約5340億円で、Adobeにとっても過去最大の金額です。これにより、Adobeは、デジタルマーケティング部門の強化を目指しました。

マルケトは、適切なタイミングで顧客の興味のある広告を自動的に送るなど、マーケティング活動を自動で行うソフトを開発しています。BoB(企業間取引)市場に強く、顧客数も5,000社を超えるなど、マーケティングに強みを持っています。

Adobeはコンテンツ作成のソフトウェア開発は進んでいますが、同時にマーケティング部門の強化を積極的に行っており、マルケトの持つノウハウを武器に、さらなる事業拡大を図っています。

このM&Aも、事業発展・相互補完をメインとしたものとなっています。

まとめ

今回は、SaaS業界について、おおざっぱではありますが触れさせていただきましたがいかがでしょうか。

成長市場であるSaaS業界は、変化も激しく、自社だけでのリソースで市場で勝ちきるにはなかなか難しい業界です。他社とのM&Aを通じて、さらに事業を成長させていくという手段はこの記事を読んで有効だと思っていただけたら幸いです。

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