会社売却の際に借入金はどう扱う?M&Aにおける負債について解説!

2024年09月06日

会社売却を行うにあたって、企業がかかえる負債や借入金は売買価格や取引条件に大きな影響を及ぼす重要な要素です。

この記事では、負債の基本的な概念や会社売却のプロセスにおける具体的な取り扱い方を解説し、買収側と売却側の双方が直面するリスクとその対策について詳しく説明します。

負債の取扱いの重要性を理解し、成功するM&Aを目指すためのポイントを確認しましょう。

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会社経営における負債・借入金とは?

会社経営において、負債や借入金は重要な役割を果たしています。

負債は、企業が外部から調達した資金や他社に対する未払いの義務を指し、広義には「負担となる義務」としての意味合いを持ちます。

負債があることで、企業は資金を調達し、事業を拡大するための原資を得ることができます。

その一方で、負債の管理が適切に行われないと、企業の財務状態が悪化し、経営が不安定になるリスクも伴います。

負債とは?

負債とは、企業が将来的に支払うべき義務を負う金額の総称です。

これには、銀行からの借入金、仕入先への未払い金、従業員への給与未払い、その他の未払い費用などが含まれます。

負債は、企業のバランスシート上で「他人資本」として計上されます。

負債の管理は企業にとって重要な課題であり、適切な管理が行われることで企業の資金繰りや財務の健全性を保つことが可能となります。

借入金とは?

借入金は、負債の中でも特に金融機関やその他の貸し手から借り入れた資金を指します。

借入金には、返済期限や利息の支払い義務があり、企業はこれらを計画的に返済する必要があります。

借入金は、企業の事業拡大や設備投資・運転資金の確保などさまざまな目的で利用されます。
一方で、過度な借入金は企業の財務リスクを高める要因ともなり得ます。

短期借入金とは?

短期借入金は、通常1年以内に返済が予定されている借入金のことを指します。

運転資金としての資金繰りを目的としたものや一時的な資金不足を補うために借り入れる資金が含まれます。

短期借入金は、流動性が高く迅速な返済が求められるため、企業のキャッシュフロー管理が非常に重要になります。

長期借入金とは?

長期借入金は、返済期間が1年以上にわたる借入金のことを指します。

設備投資や大型プロジェクトの資金調達など長期的な視点での資金需要に応えるために利用されることが多いです。

長期借入金は、企業の安定した資金繰りを支えます。
一方で長期にわたる利息の支払い義務があるため、借り入れの際には慎重な計画が必要です。

M&Aにおける負債の取り扱いは?

M&A(Mergers and Acquisitions、合併・買収)において、負債の取り扱いは非常に重要な要素です。

企業を売却する際、負債をどう処理するかによって取引の条件や企業価値が大きく影響されることがあります。

負債の処理方法は、M&Aの手法によって異なり売り手と買い手の双方にとって慎重な検討が必要です。

譲渡の手法によって異なる

M&Aでは、企業全体を譲渡する「株式譲渡」と事業の一部または全体を譲渡する「事業譲渡」の二つの主要な手法があります。

各手法において、負債の取り扱いが異なります。

株式譲渡では、企業の株式を売却する方法です。
企業の所有権を譲渡するため、買い手は負債を含む企業のすべての資産と義務を引き継ぐことになります。

対して、事業譲渡では売り手が選定した資産や負債のみが譲渡の対象となります。

株式譲渡の場合

株式譲渡では、買い手が企業の株式を購入します。
買い手は、企業に存在するすべての負債も一緒に引き継ぐことになります。

買い手は企業の財務状況を詳細に調査することにより、引き継ぐ負債の内容を把握することが不可欠です。

負債が大きい場合にはリスクが増加するため、売却価格やその他の条件の交渉において負債の金額やその返済計画が重要な論点となります。

事業譲渡の場合

事業譲渡の場合、売り手と買い手が事前に合意した特定の負債のみが譲渡対象となります。

これにより、買い手は不利な負債を引き継ぐリスクを軽減することができます。

しかし、事業譲渡において商号を引き継いで使用する場合は、買い手が債務を弁済する責任を負うことになります。
商号続用者の責任といい、会社法第22条1項に規定されています。

このため、事業譲渡において商号を引き継ぐ場合には注意が必要です。

役員借入金は交渉の対象になることが多い

M&Aのプロセスにおいて、役員借入金も重要な検討事項です。

役員借入金とは、企業の役員が自らの資金を企業に貸し付けている状態を指します。

これがある場合、M&Aの交渉においては、買い手がこの借入金をどのように処理するかが議論されることが多いです。

特に財務状況が良くない企業がM&Aを行う場合、役員借入金の返済を免除できるか否かが議論となります。

役員借入金の免除ができる場合は、買い手の投資金額が少なくなり意思決定を進めやすくなるでしょう。

負債がM&Aのプロセスにどう影響するか

M&Aのプロセスにおいて、負債は買収側と売却側の両者に大きな影響を与える要素です。
特に負債の大きさや種類、返済条件がM&Aの成否を左右することがあります。

ここでは、負債がM&Aプロセスに与える具体的な影響について見ていきます。

(株式譲渡の場合)企業価値が低下する

株式譲渡において企業が大きな負債を抱えている場合、その負債が企業価値を大きく押し下げる要因となります。

買い手は、企業の負債を含めた総資産価値を評価し、その結果として企業価値が算定されます。

もし負債が過大である場合、買い手が引き継ぐリスクが増大することを考慮して売却価格が低く設定されることが一般的です。

また、負債が多い企業は、経営が不安定であると見なされやすく、買い手の関心を引きにくくなる場合もあります。

買収側の財務リスクが増加する

負債を抱えた企業を買収する場合、買収側の財務リスクが増加することは避けられません。

買い手は、企業の負債を引き継ぐことで、返済義務を負うことになります。

これにより、買い手企業の財務状況が悪化する可能性があり、特に大きな負債を引継ぐ場合、買収後の経営が困難になるリスクがあります。

そのため、買い手はM&Aの交渉段階で、対象企業の負債の詳細な調査(デューデリジェンス)を行いリスクを正確に把握することが重要です。

買収側の資金調達コストを上げる

負債が多い企業を買収する場合、買収側は追加の資金調達が必要となることが多いです。
この資金調達は、通常、借入や社債の発行などによって行われますが、負債が多い企業を買収する際には、金融機関や投資家がリスクを高く見積もるため、資金調達コストが上昇する傾向があります。

これにより、買収後の企業運営における財務負担が増大し、経営効率が低下する可能性があります。

買い手側は資金調達計画を慎重に立て、無理のない返済スケジュールを設けることが求められます。

負債がある状態でM&Aする際に注意するポイント

負債を抱えた企業をM&Aする際には、いくつかの重要なポイントに注意を払う必要があります。
これらのポイントを適切に管理することで、M&Aプロセスをスムーズに進め、買い手と売り手の双方にとって有利な取引を実現することが可能です。

以下では、特に重要な3つの注意点について説明します。

簿外債務がないかを確認する

まず、M&Aにおいて最も重要な確認事項の一つは、簿外債務の存在です。

簿外債務とは、企業の財務諸表に記載されていない負債であり、後になって発覚すると大きな問題になることがあります。

簿外債務があると買収後に予期せぬ財務負担が発生し、買い手の計画に大きな影響を与える可能性があります。

そのため、買収前のデューデリジェンスにおいて、簿外債務の有無を徹底的に調査することが不可欠です。

債務の削減やリスケができないかを検討する

M&Aを実行する前に、可能であれば既存の債務の削減やリスケジューリング(返済計画の見直し)を検討することが重要です。

これにより、買い手に引き継がれる負債の負担を軽減し、取引後の財務リスクを低減させることができます。

特に、大規模な負債が存在する場合、金融機関との交渉を通じて返済条件の緩和や債務の圧縮を実現できる可能性があります。

債権者に対する詐害行為にならないかを確認する

負債を抱えた企業のM&Aにおいては、債権者に対する詐害行為とならないように注意する必要があります。

詐害行為とは、債務者が自らの財産を不当に減少させ、債権者に損害を与える行為を指します。

M&Aの過程で不適切な資産移転や負債処理が行われた場合、債権者から訴訟を起こされるリスクがあります。

このため、売り手と買い手の双方が法的リスクを十分に理解し、適切な法的アドバイスを受けながら取引を進めることが求められます。

会社売却における借金のまとめ

本記事では、M&Aにおける負債・借入金の取り扱いについて見てきました。

譲渡スキームによって取り扱い方法は大きく異なるものの、負債はM&Aにおける重要な論点になるとお分かりいただけたでしょうか。

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