【事例あり】事業買収とは?事業譲渡・株式譲渡との違いや買収の流れ、成功の秘訣を解説!

2024年10月25日

事業買収は、企業が成長を加速させるための一つの手法として、多くの企業で採用されています。
新しい市場への参入や技術の獲得、事業の多角化など、事業買収による成長機会は大きいですが、それに伴うリスクも無視できません。

本記事では、事業買収がどのようなプロセスで行われるのか、そのメリットとデメリットについて詳しく解説し、成功例から学べるポイントも紹介します。
事業買収を検討する企業にとって、成功に導くための知識と視点を提供します。

M&Aの手法の1つである事業買収とは?

M&Aは、企業戦略の中で成長を加速させたり、新しい市場や技術を取り入れるための強力な手法です。
M&Aにはいくつかの種類がありますが、その中でも「事業買収」は、特定の事業部門や資産を対象にした取引を指します。

事業買収とは、企業全体を買収するのではなく、ターゲット企業の特定の事業や部門、またはその関連資産を取得することです。
この方法は、買収者にとってリスクを抑え、特定の領域で効率的に成長できる点が魅力です。
また、売却者にとっても不要な事業を切り離すことで、コアビジネスに集中できるというメリットがあります。

例えば、ある企業が新しい市場に進出するためにその市場に強みを持つ事業を持つ企業の一部を買収することが考えられます。
買収される側も、成長の見込みが少ない事業やリソースを分けることで、より効率的に経営資源を活用できるのです。
事業買収は、合併とは異なり、組織全体を統合する必要がないため、スピーディに行える点が特徴です。

事業買収の流れ

事業買収のプロセスは、以下のようにいくつかのステップに分かれます。
事業買収は単に契約書に署名して終わるものではなく、慎重な計画と分析が必要です。

戦略立案

最初に、買収の目的や戦略を明確に定義します。
企業が事業を買収する理由は、新しい市場の開拓や、既存の事業を強化するため、または技術の導入などさまざまです。
戦略が明確でないと、買収後のシナジーを十分に発揮できない可能性があります。

ターゲット企業の選定

次に、買収対象となる事業や企業を選定します。
市場調査を通じて、ターゲット企業の事業内容、業績、強み・弱みなどを分析し、自社との適合性を確認します。
ターゲットの選定には専門的な知識が必要であり、M&Aアドバイザーやコンサルタントが活躍する場面でもあります。

デューデリジェンス(精査)

デューデリジェンスは、対象事業の詳細な調査を行い、リスクや機会を評価するプロセスです。
財務状況、法務、税務、労務、知的財産などさまざまな観点から、買収対象の事業が健全かどうかを確認します。
ここで隠れたリスクが明らかになれば、取引条件の調整や買収自体を見直すこともあります。

価格交渉と契約締結

デューデリジェンスが完了した後、買収価格やその他の条件について交渉を行います。
価格は企業の将来の成長性やシナジー効果を見込みつつも、適切なリスクを反映させる必要があります。合意に至れば、契約を締結します。

統合プロセス(PMI:Post Merger Integration)

契約が成立した後は、買収した事業をどのように自社に統合するかが課題となります。
統合がうまくいかなければ、期待されたシナジー効果を発揮できず、買収が失敗に終わることもあります。
統合の際には、文化の違いや組織体制の調整なども慎重に行う必要があります。

事業買収の3つのメリット

事業買収は、企業が成長を加速させ、新たなビジネスチャンスを獲得するための重要な手段です。
特に、企業が自社の強みを活かしながら他社のリソースを取り込むことで、従来の方法では得られない成果を迅速に手にすることが可能になります。
以下では、事業買収がもたらす3つの主なメリットについて解説します。

市場シェアの拡大

事業買収によって、企業は迅速に市場シェアを拡大することができます。
特に、同業他社を買収することで、競合関係にあった企業の顧客基盤や販売チャネルを一挙に手に入れることが可能です。
例えば、競争が激しい市場では、買収によって競合他社を取り込むことで、自社の市場ポジションを強化し、さらなる競争力を獲得できます。

加えて、買収により新たな地域や国への進出も容易になります。
現地での営業基盤やブランド力を既に持つ企業を買収することで、海外展開や地域特有の市場への迅速なアクセスが可能となり、ゼロから新市場を開拓するリスクやコストを大幅に削減できる点も大きなメリットです。

技術やノウハウの獲得

事業買収は、単に物理的な資産や市場シェアだけでなく、技術やノウハウを一括して獲得できる絶好の機会でもあります。
特に、技術革新が進む業界では、買収を通じて新しい技術を獲得することで、製品やサービスの差別化を図り、競争力を強化することができます。

例えば、IT業界や製造業などでは、買収を通じて最先端の技術や製品開発のノウハウを手に入れることで、自社の製品ラインやサービスを強化し、顧客に新たな価値を提供できるようになります。
また、技術力だけでなく、優秀な人材を買収企業から受け入れることで、社内のスキルアップやイノベーションの促進にもつながります。

事業の多角化とリスク分散

事業買収のメリットとして、企業の多角化戦略を推進し、リスク分散を図ることが挙げられます。
自社が展開していない分野や業種の企業を買収することで、事業ポートフォリオを多様化し、特定の市場や製品に依存しない安定した経営基盤を築くことができます。

特定の業界に依存している企業は、市場の変動や景気の影響を大きく受けやすいため、収益の安定性に課題があります。
例えば、季節によって需要が変動する業界や、急速な技術革新に晒される業界では、複数の事業を展開することで経営リスクを低減することができます。
買収によって多様な収益源を持つことで、景気変動や市場の変化にも柔軟に対応できる体制を構築できるのです。

事業買収には、市場シェアの拡大、技術やノウハウの獲得、そして事業の多角化とリスク分散という3つの大きなメリットがあります。
これらのメリットを活かすことで、企業は成長を加速させ、持続可能な競争優位性を確立することが可能です。
買収を成功させるためには、戦略的な計画と適切な統合プロセスが欠かせませんが、適切に実行されれば、企業にとって大きな成長の機会となるでしょう。

事業買収の3つのデメリット

事業買収は、企業の成長や市場拡大を目指すための強力な手段ですが、リスクを伴う複雑なプロセスでもあります。戦略的な目的が明確でない場合や、買収後の統合がうまく進まない場合、想定していた効果が得られないこともあります。
以下では、事業買収における3つの主なデメリットについて解説します。

文化の不一致

事業買収の最も大きな課題の一つは、買収後の統合プロセスです。
特に、企業文化や経営スタイルが異なる場合、従業員同士の摩擦やコミュニケーションの不足が生じ、業務効率が低下するリスクがあります。
統合の失敗は、従業員の士気低下や優秀な人材の流出につながり、買収の目的を果たせなくなる可能性があります。

例えば、買収した企業が小規模でアットホームな文化を持つ場合、大企業のような階層的で規則の多い組織文化に突然統合されると、従業員が適応できずにパフォーマンスが低下することがあります。
文化の不一致を解消するためには、従業員間のコミュニケーションを促進し、統合プロセスを慎重に進めることが必要です。

財務リスクの増加

事業買収には莫大なコストがかかります。
買収金額自体はもちろんのこと、デューデリジェンスや法的手続き、買収後の統合に必要な追加投資など、予想以上のコストが発生することが少なくありません。
特に、買収のために借り入れを行う場合、買収後のキャッシュフローが期待通りにいかなければ、財務的な圧迫を招くリスクがあります。

また、買収後に隠れた負債や法的問題が発覚した場合、それに対処するためのコストがかかり、企業全体の財務状況に悪影響を及ぼすこともあります。
こうしたリスクを回避するためには、事前のデューデリジェンスを徹底し、将来的なキャッシュフローの予測を慎重に行うことが重要です。

シナジー効果が得られない可能性

事業買収の目的の一つとして、シナジー効果の追求が挙げられます。
つまり、買収によって得られる資源やノウハウを活用し、業務効率や収益性を高めることが期待されます。
しかし、実際にはこのシナジー効果が得られないことも多く、特に異業種間の買収や過度な期待を持った買収では、そのギャップが顕著になります。

例えば、技術的なシナジーを期待していた場合でも、両社のシステムが統合できなかったり、顧客基盤の違いから売上増加につながらなかったりするケースもあります。
また、シナジー効果を得るまでに時間がかかり、その間に市場環境が変わるリスクもあります。
このため、シナジー効果に過度な期待を持つことなく、現実的な統合プランを持つことが大切です。

事業買収には大きな成長機会がある一方で、統合リスク、コスト負担、そしてシナジー効果が得られない可能性という3つのデメリットも存在します。
これらのリスクを回避し、買収を成功に導くためには、事前の計画と準備が不可欠です。
買収を進める際は、これらのデメリットをしっかりと理解し、適切なリスク管理を行うことが求められます。

事業買収の成功事例

事業買収は、企業の成長戦略として有効な手段の一つです。
新規市場への参入やシナジー効果の実現、事業の多角化など、買収には多くのメリットが存在します。
しかし、買収が成功するためには、事前の綿密な計画と実行が不可欠です。
以下では、具体的な事例を通して、事業買収の成功要因を考察します。

AmazonによるWhole Foodsの買収

2017年にAmazonが実施したWhole Foodsの買収は、事業買収の成功事例としてよく挙げられます。
Amazonは約137億ドルでオーガニックスーパー市場に強みを持つWhole Foodsを買収し、これにより食料品業界に本格的に参入しました。

この買収の成功要因は、次の点にあります。

戦略的シナジーの実現

Amazonは既存のオンラインプラットフォームに加え、Whole Foodsの物理店舗を活用して、消費者とのタッチポイントを拡大しました。
これにより、Amazonは「Amazon Fresh」などの食品配達サービスを強化し、食料品業界でのプレゼンスを大幅に高めました。

ブランド価値の向上

Whole Foodsは、健康志向の高い消費者に人気のあるブランドです。
Amazonはこのブランド力を活かし、信頼性の高い高品質な商品を提供する企業としてのイメージを強化しました。
これにより、Amazonは既存の顧客層に新たな価値を提供し、ブランド価値をさらに高めることに成功しました。

オペレーションの効率化

買収後、AmazonはWhole Foodsの業務プロセスを自社のテクノロジーで効率化しました。
例えば、店舗でのAmazonプライム会員向けの特典や割引を提供することで、顧客ロイヤルティを強化すると同時に、物流効率も向上させています。
このように、買収によるオペレーション面での改善が、長期的なコスト削減と利益拡大に寄与しました。

ディズニーによるピクサーの買収

ディズニーが2006年にピクサーを74億ドルで買収した事例も、成功した事業買収として広く知られています。
ディズニーはアニメーション映画業界での競争力を高めるため、革新的な技術と強力なコンテンツを持つピクサーを買収しました。

この買収の成功要因は次の通りです。

クリエイティブなシナジー

ディズニーは長年アニメーション映画を手掛けてきましたが、ピクサーの先進的なCG技術と独自のストーリーテリング能力を取り入れることで、新たな映画制作の領域を切り開きました。
これにより、買収後も「トイ・ストーリー」「ファインディング・ニモ」など、世界的なヒット作を連発しました。

経営陣の融合

買収後もピクサーの経営陣を尊重し、独立性を保つ形で運営が続けられました。
特に、ピクサーのクリエイティブディレクターであったジョン・ラセターがディズニーのアニメーション部門全体の責任者に就任し、ディズニーとピクサーの文化を調和させることで、両社の強みを最大限に引き出しました。

ブランド強化

ピクサーのキャラクターはディズニーのテーマパークやグッズ事業にも大きな影響を与えました。
これにより、映画以外の事業からも多大な収益を得ることができ、全体の利益向上に貢献しました。

事業買収が成功するかどうかは、単なる財務的な取引以上に、戦略的な適合性や文化の融合、シナジー効果の実現が鍵となります。
Amazonやディズニーの事例に見られるように、買収を通じて企業は新たな市場や技術にアクセスし、競争力を強化しています。
買収後の統合プロセスや長期的な視点での計画が成功の成否を分ける重要な要素となるのです。

事業買収を成功させる3つのポイント

事業買収は、企業が成長し新たな市場に進出するための有効な手段です。
しかし、適切な戦略を持たずに買収を進めると、期待していた効果が得られず失敗するリスクがあります。
そこで、買収を成功させるためには、以下の3つのポイントが重要です。

戦略的適合性を確認する

まず、買収対象の企業が自社の長期的な戦略と合致しているかを確認することが重要です。
新規事業の開拓や既存事業の強化、シナジー効果の追求など、買収には様々な目的がありますが、買収対象がこれらの目的にどのように貢献するかを明確にする必要があります。
例えば、製品やサービスが自社の顧客層に適しているか、技術力やノウハウが自社の競争力を高めるかといった視点で評価を行うことで、買収が戦略的に正しい選択であるかどうかを判断できます。

デューデリジェンスの徹底

次に、デューデリジェンス(DD)を徹底することが重要です。
デューデリジェンスとは、買収対象企業の財務状況や法的リスク、事業の健全性などを詳しく調査するプロセスです。
これにより、買収後に隠れた問題が表面化して損失を被るリスクを低減できます。また、財務面だけでなく、企業文化や従業員のモチベーション、顧客との関係性など、ソフト面の調査も重要です。
これらの要素が自社との統合にどのような影響を与えるかを慎重に評価することで、買収後の統合プロセスがスムーズに進むかどうかが見えてきます。

統合プロセスを計画する

買収後の統合プロセスが成功の鍵を握っています。
統合計画が不十分だと、組織間の摩擦や業務効率の低下、優秀な人材の流出といった問題が発生しやすくなります。
統合プロセスを成功させるためには、経営陣が明確なビジョンを持ち、買収後の新しい組織体制や役割分担を迅速に決定することが必要です。
また、従業員同士のコミュニケーションを促進し、企業文化の融合を図ることで、統合がスムーズに進みやすくなります。
さらに、早期にシナジー効果を実現するための具体的なアクションプランを設定し、着実に実行することが求められます。

事業買収を成功させるためには、戦略的適合性の確認、徹底したデューデリジェンス、そして統合プロセスの計画と実行が重要です。
これらのポイントを押さえることで、買収が企業の成長や競争力強化に寄与する確率を大幅に高めることができます。

まとめ

事業買収は、企業にとって新たな成長機会をもたらす一方で、リスクも伴う複雑なプロセスです。
成功のためには、事前の戦略立案、デューデリジェンス、統合プロセスの計画など、各ステップで慎重な判断が求められます。
事業買収による市場シェア拡大や技術の獲得、多角化によるリスク分散などのメリットは大きいですが、文化の不一致や財務リスク、シナジー効果の欠如といったデメリットも理解することが重要です。
成功事例を参考にしながら、慎重かつ戦略的に進めることで、企業は持続的な成長を実現できるでしょう。

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