「インカムアプローチ」とは?M&Aの企業評価手段を詳しく解説
インカムアプローチとは、M&Aを行う際に企業や事業の価値を評価するための手法の1つです。
いくつかある企業の価値評価の手法の中でも、特に譲渡対象となる企業や事業が将来的に生み出すと予想されるキャッシュフローや収益に着目した手法です。
他の企業価値評価の手法と比較すると着目しているポイントが異なるのがお分かりいただけるかと思います。
コストアプローチ | インカムアプローチ | マーケットアプローチ | |
---|---|---|---|
着目ポイント | 現在の正味財産 | 将来の収益性 | 類似会社や類似取引 |
主な手法 | ・時価純資産法 ・簿価純資産法 ・清算価値法 | ・DCF法 ・配当還元法 ・残余利益法 | ・類似会社比較法 ・市場株価法 ・類似取引比較法 |
本記事では、M&Aにおいて自社の価値を知るために使われる手法であるインカムアプローチについて解説します。
M&Aでは、からの株価算定によって「客観的な基準」を知ることは、M&Aを成功に導くための近道であることは間違いありません。ぜひ参考にしてみてください。
M&Aナビでは、そもそも「どの手法を使って自社の価値を図るべきかわからない」「価値算定の手法が複雑で依頼したい」と考えられている経営者様の方から、ご相談いただくことが増えてきました。
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もちろん、インカムアプローチを含め、複数の手法を根拠とした企業の価値評価が可能です。
目次
インカムアプローチとは
インカムアプローチは、M&A(合併・買収)において企業や事業の価値を評価する一つの方法です。このアプローチでは、将来予想されるキャッシュフローや収益を現在価値に割り引いて算出します。つまり、企業が将来生み出すであろう利益の現在の価値を基に、その企業の価値を評価するわけです。
この手法は、特に将来的に安定した収益が見込まれる企業に適しています。なぜなら、将来の収益予測に基づくため、現在の財務状況だけではなく、将来的なビジネスの展望も考慮するからです。
インカムアプローチは、その計算方法によって「DCF法(割引キャッシュフロー法)」や「キャピタライゼーション法」など複数の手法が存在しますが、どれも未来の収益を現在価値に割り引くという点で共通しています。
インカムアプローチの3つの種類
インカムアプローチには主に3つの種類があります。それぞれの手法は異なる状況や目的に応じて選ばれます。
DCF法(割引キャッシュフロー法)
DCF法は、事業やプロジェクトから生じる将来のキャッシュフローを予測し、それを適切な割引率で現在価値に割り引く方法です。この手法は、長期的なキャッシュフローを予測する必要があるため、新しい技術や市場に進出するような成長が見込まれる企業に適しています。
キャピタライゼーション法(収益還元法)
キャピタライゼーション法は、一定期間の平均収益を基にして企業価値を評価します。こちらは比較的安定した収益を上げている企業に適用されることが多いです。将来収益が大きく変動しないと見込まれる場合に用いられる方法です。
超過収益法(ER法)
超過収益法は、資産から得られる通常収益とその超過分を分けて考え、超過収益部分を現在価値に割り引いて企業価値を算出します。この方法は、特定の資産が市場平均を超えて利益を生み出している場合に適しています。
これらの手法は、それぞれのビジネスの状況や将来展望により選ばれ、適切な評価を行うためのツールとして活用されます。
インカムアプローチの計算方法
インカムアプローチにおける計算方法は、主に以下のステップで行われます。ここでは特に一般的なDCF法の計算手順を例に説明します。
将来キャッシュフローの予測
まず、事業やプロジェクトから生じるであろう将来のキャッシュフローを詳細に予測します。これには、売上高の予測、経費の予測、税金の計算、必要な投資額などが含まれます。
割引率の決定
次に、適用する割引率を決定します。割引率は、投資のリスクを反映したもので、通常、資本コスト(WACC:加重平均資本コスト)を用いることが多いです。資本コストは、企業の借入金利と株主が期待するリターンの加重平均で計算されます。
現在価値への割引
予測された将来のキャッシュフローを、先ほど決定した割引率を用いて現在価値に割り引きます。これにより、未来の収益を今日の価値に変換することができます。
ターミナルバリュー(永続価値)の計算
予測期間後の収益については、ターミナルバリューとして計算します。ターミナルバリューは、予測期間を超えて無限に続くと見込まれるキャッシュフローの現在価値を表し、通常、成長率を使って計算されます。
企業価値の算出
すべての現在価値を合計することで、事業や企業の総価値が算出されます。これが、インカムアプローチによる企業価値評価の結果です。
以上のステップにより、インカムアプローチは企業の真の価値を現在の金額で表すことを可能にします。この手法は特に、未来のパフォーマンスに大きく依存する企業評価に有効です。
インカムアプローチのメリット・デメリット
インカムアプローチは多くの場面で有用ですが、その利用にはメリットとデメリットが存在します。以下にそれぞれを詳しく解説します。
メリット
未来志向
インカムアプローチは将来のキャッシュフローや利益を考慮するため、成長が見込まれる事業や革新的なプロジェクトの価値を適切に評価できる点が最大の利点です。
柔軟性
予測期間や割引率を調整することで、さまざまなシナリオに基づく評価が可能です。これにより、リスク要因や市場の変動を価値評価に反映させることができます。
戦略的意思決定の支援
未来のキャッシュフローを考慮することで、事業の持続可能性や投資の回収期間を評価しやすくなり、経営戦略の策定に役立ちます。
デメリット
予測の不確実性
将来のキャッシュフローを予測する過程には大きな不確実性が伴います。市場環境の変化や経済状況の悪化など、予期せぬ要因が計算結果に大きく影響を与える可能性があります。
複雑性と専門性
正確な計算を行うには、高度な財務知識と経験が必要です。特に割引率の選定やキャッシュフローの予測には専門的な判断が求められるため、実施には専門家のアドバイスが不可欠です。
過度な楽観的な見積もりのリスク
経営者やプロジェクト管理者が過度に楽観的な将来予測をすることで、企業価値を過大評価するリスクがあります。これにより、不適切な投資判断を招くこともあります。
インカムアプローチを用いる際には、これらのメリットとデメリットを理解し、適切な状況判断と専門的知識をもって進めることが重要です。
インカムアプローチのまとめ
本記事では、インカムアプローチについて解説してきました。
M&Aにおいて売り手と買い手の双方にとって、対象となる会社や事業の価値を理解することは非常に重要です。
いくつかの価値算定の手法の中でインカムアプローチのメリットやデメリットを理解いただけたようでしたらうれしく思います。
M&Aナビでは自社の価値を知りたい方に向けて無料での価値算定を実施しておりますので、お気軽にご連絡ください。
もちろん、インカムアプローチを含め、複数の手法を根拠とした企業の価値評価が可能です。
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