M&Aにおけるのれんとは?~算出方法や税務上の処理について解説~

2024年03月08日

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企業間の合併や買収(M&A)は、成長戦略の一環として広く採用されていますが、これに伴い発生する「のれん」の価値減少、すなわち「のれんの減損」は、企業財務に大きなリスクをもたらす可能性があります。

本記事では、「M&Aにおけるのれん」という重要な概念を始めとして、その算出方法、税務上の取り扱い、減損への対策、そして「負ののれん」という特殊なケースまで、M&A取引におけるのれんの理解を深めるための重要な情報を詳細に解説します。

M&Aを検討している企業の経営者や財務担当者にとって、この記事がM&A取引の成功への道しるべとなることを願っています。

M&Aにおけるのれんとは?

企業の合併や買収(M&A)では、多くの場合、「のれん」という会計上の概念が登場します。
のれんとは、企業が他社を買収した際に支払う買収価格と買収された企業の純資産価値との差額のことを指します。

この差額は、買収された企業の無形資産の価値、例えばブランド名、顧客基盤、特許権など、数値化しにくい資産の価値を反映しています。
のれんは、買収を通じて得られる将来の利益の期待値を会計上で表すものです。そのため、M&A取引を分析する際には、のれんの額が重要な指標の一つとなります。
のれんの大きさは、買収対象企業が持つ無形資産の価値が高いことを示し、また、買収によるシナジー効果の期待が大きいことを意味している場合があります。

しかし、のれんには減価償却の概念が適用されることはなく、定期的な減損テストを通じてその価値が適切かどうかを評価する必要があります。
この減損テストにより、のれんの帳簿上の価値が現実の経済的価値を反映しているかどうかを確認します。

もし、のれんの価値が過大に評価されていると判断された場合、減損損失が計上され、それが企業の財務諸表に影響を与えることになります。

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のれんの算出方法

のれんの算出方法は比較的単純です。具体的には、企業が他社を買収する際に支払った総購入価格から、買収された企業の純資産の公正な市場価値を差し引いた額がのれんとなります。

ここでいう純資産の公正な市場価値とは、買収された企業の資産から負債を差し引いたものを、現実の市場価格に基づいて評価した額です。

算出式は以下の通りです:
のれん = 買収総額 – (買収対象企業の純資産の公正な市場価値)

この計算を行う上で、買収対象企業の資産と負債の評価が非常に重要となります。
資産とは、企業が所有する現金、不動産、設備などの有形資産のほか、特許権や商標権といった無形資産も含まれます。

一方、負債には、ローンの残高や支払い予定の経費などがあります。
のれんに加えられる代表的な無形資産としては、企画力、会社の知名度、商品の知名度、ブランド力、信頼性など、会社の事業価値や将来性、技術力、開発力、ノウハウ、特許権、知的財産権など、市場での独占性、顧客リスト、顧客との関係、そして人材などがあります。

無形資産への評価額が高いほど、買収価額の値段も上がっていくことは、M&A取引において非常に重要なポイントです。
正確なのれんの算出には、買収対象企業の資産と負債の詳細な分析と評価が不可欠です。

このプロセスを通じて、M&A取引が公正な価格で行われることを保証し、両企業にとって最良の結果を導き出すことができます。

M&Aにおけるのれんの税務上の取り扱い

企業が他社を買収した際に生じる「のれん」は、財務報告だけでなく税務上の取り扱いにおいても重要な要素です。
のれんの税務上の取り扱いは、その減価償却の可否や方法、減損時の税務効果など、複数の側面を含みます。
これらの側面は、買収を行う企業の税負担に大きな影響を及ぼすため、理解しておくことが非常に重要です。

多くの国では、のれんを資産とみなし、一定期間にわたってその価値を減価償却することが認められています。
しかし、のれんの減価償却が税務上認められるか否かは、各国の税法によって異なります。
減価償却が認められる場合、その期間や方法についても国によって規定が異なり、企業はこれらの規定に従ってのれんの減価償却を行う必要があります。
のれんの減価償却が税務上認められる国では、この償却費を経費として計上することができ、結果として税負担を軽減することが可能です。

このように、のれんの償却を通じて税負担を最適化することは、M&A後の財務戦略において重要な要素の一つです。

のれんの減損への対策

企業が他社を買収する際、のれんは重要な会計上の要素です。
しかし、経済の変化や経営戦略の誤算により、のれんの価値が減少することがあります。
この減少は「のれんの減損」と呼ばれ、企業の財務状態に大きな影響を与える可能性があります。

以下に、のれんの減損を防ぐための三つの主要な戦略を示します。

1.事前の詳細なデューデリジェンス

のれんの減損リスクを最小限に抑える最も効果的な方法の一つは、買収前の詳細なデューデリジェンスを実施することです。
デューデリジェンスにより、買収対象の企業の真の価値を把握し、隠れた負債やリスクを発見することができます。

このプロセスは、買収後の不測のサプライズを避け、より正確な買収価格の設定に寄与します。
デューデリジェンスは、財務状況、事業モデル、市場環境、競合分析、法的リスクなど、多岐にわたる分析を含むことが推奨されます。

これにより、将来性の高い企業を見極め、過剰な価格での買収を避けることが可能になります。

適切な買収価格の設定

適切な買収価格の設定は、のれんの減損リスクを抑える上で極めて重要です。
過大評価による買収は、将来的にのれんの大幅な減損を招く原因となり得ます。

買収価格を決定する際には、デューデリジェンスで得られた情報を基に、買収対象企業の将来の収益性や成長潜在力を慎重に評価する必要があります。
また、買収価格の決定にあたっては、類似の市場取引や業界平均のバリュエーションを参考にすることが推奨されます。

これにより、市場と乖離した価格設定を避け、のれんの減損リスクを最小化できます。

定期的なのれんの評価

買収後も、のれんの価値は定期的に評価し直す必要があります。
市場環境の変化や事業戦略の更新などにより、のれんの価値が減少することがあります。

企業は、財務報告のサイクルごとにのれんの価値を見直し、必要に応じて減損テストを行うべきです。
定期的な評価により、企業はのれんの価値の変動を迅速に把握し、減損のリスクを事前に識別することができます。

これにより、減損が必要な場合には、速やかに財務報告に反映させることができ、ステークホルダーへの透明性を保つことができます。

負ののれんとは?

通常、「のれん」とは、企業が他社を買収する際に、被取得企業の純資産額を上回る金額を支払った場合に生じる差額を指します。

これに対して、負ののれんとは、被取得企業の純資産額よりも少ない金額で買収が行われた場合に発生する特殊なケースを示します。
この現象は、特に業績が悪化している企業や法務リスクを抱える企業の買収において見られます。
「負ののれん」が生じるM&Aは、単に財務的な価値の再配分以上の意味を持ちます。

取得企業は、事業再生の可能性を被取得企業に見出し、自社の経営資源や販売網を活用することで、被取得企業の事業を立て直し、将来的な収益化を目指します。
このようなアプローチは、単純な財務投資を超え、経営戦略的な投資としての性格を持ちます。

例えば、業績が悪化している企業が持つ特許やブランド、市場ポジションなどの潜在的な価値を、新たな経営手法や技術、販売戦略を通じて活性化させることが可能です。
このプロセスを成功させることができれば、「負ののれん」が発生するM&Aは、長期的に企業価値を高め、業績に対する顕著な貢献をもたらす可能性があります。

したがって、「負ののれん」が生じるM&Aは、単に低価格で企業を買収すること以上の意味を持ちます。
それは、見過ごされていた価値を再発見し、再生させることにより、買収した企業だけでなく、被取得企業にとっても新たな成長の機会を創出する戦略的な取り組みと言えます。

【M&Aにおけるのれん】まとめ

のれんの減損は、M&A取引における避けがたいリスクの一つですが、適切な対策と予防策を講じることで、そのリスクを最小限に抑えることが可能です。

事前の徹底したデューデリジェンスによる正確な価値評価、市場との整合性を考慮した買収価格の慎重な設定、そして定期的なのれんの再評価を行うことで、企業はのれんの減損リスクを管理し、長期的な財務健全性を維持することができます。
これらのステップを実行することで、企業はM&Aによる成長戦略を成功に導くための重要な基盤を築くことが可能となります。

この記事が、あなたのM&A取引を成功に導くための有益な情報源となることを願っています。
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