酒蔵のM&Aについて解説!メリット・デメリットやマッチング手法とは?

2024年09月25日

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酒蔵は、後継者不在型のM&Aを中心に事業の譲渡・譲受が増加傾向にある業界といえます。
また、日本独自の文化である日本酒・酒蔵に対する注目が高まっており、今後も再編が期待される業界と言えるでしょう。

そこで本記事では、酒蔵におけるM&Aのメリット・デメリットや売却価格に関する考え方について解説していきます。

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酒蔵とは?

酒蔵(さかぐら)とは、日本酒を製造するための施設やその運営組織を指します。
特に昨今は日本酒が国際的に人気を博しており、その重要性が国内外問わず再確認されています。

本日はこの酒蔵の現状を俯瞰し、M&Aがどのように活用できるのか、皆様に分かり易くご紹介します。

市場規模

国内の酒類市場は年々縮小傾向にあります。経済産業省による国内販売数量の統計によると、2013年には860万KL販売されていたものが2019年には約800万KLに大幅に減少していることが分かります。この背景として、やはり若年層の「酒離れ」やアルコール消費量の多かった世代の高齢化による需要減少などが考えられるでしょう。

このように日本酒の伝統や重要性は強く認識されている一方で、国内酒類市場は徐々に減少していくことが予想されています。

市場展望

国内の市場に着目すると、やはり若年層の「酒離れ」とアルコール消費の多い世代の高齢化により、市場全体の縮小が続くと考えられます。事実、飲酒習慣のある人の世代間の割合を見ると、60代が26.8%、50代が28.1%、40代が25.2%の中、20代の飲酒週間のある人の割合は7.8となっており、若者の「酒離れ」と、飲酒割合が高いグループの高齢化が見受けられます。

しかしながら、国内市場とは対照的に輸出市場は急拡大している点は印象的です。
日本酒の人気が高まる中、海外市場に注力するなどの戦略の改革が可能かもしれません。

参照:縮小傾向の国内酒類市場;飲酒習慣が市場変化の要因に

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酒蔵の今後の課題

酒蔵ビジネスが直面する課題は、主に以下の2点が考えられます。

酒類の消費量の減少

事実、成人人口は増加する反面、酒類の1人当たり消費量は着実に減少しています。データからみると、1992年の101.8L(1人当たり消費量)をピークに大幅に下落し、2020年には75.0Lとおおよそ25%の減少を見せました。ライフスタイ ルの変化や嗜好の多様化等により、国内市場は全体として中長期的に縮小しているのです。
特に若年層の「酒離れ」は顕著であり、「アルコールハラスメント」という概念の普及や「ノンアルコール飲料」の市場拡大など様々な面でアルコールに対する距離感が感じられるようになりました。
結果的に酒類消費量減少に相まって、日本酒の消費量も減少し、酒蔵はこれまで通りの売上を維持することは容易ではないことが考えられます。

参考:酒レポート 令和4年3月

後継者不足

そしてやはりどの業界にも付き物なのは、後継者不足問題です。特に酒蔵は伝統的な側面も相まって、中小企業の割合が99.6%と脅威の数字です。つまり国内の酒蔵はほとんど全てが中小企業なのです。
そのため言わずもがな、後継者不足に悩まれる企業はかなり多いことが容易に予想されます。事実、酒蔵が後継者不足により廃業に追い込まれたケースも多々あり、伝統を守るという観点でも大きな問題であると考えられます。

参考:清酒製造業の概況 (平成28年度調査分)

酒蔵の最新のM&A動向と事例

この章では、酒蔵のM&A・売却・買収事例を紹介します。下記において、いくつかの例をご紹介します。

事例1:Clearによる川勇商店のM&A

2018年7月5日、株式会社Clearは老舗の酒蔵である有限会社川勇商店を完全子会社化したことを発表しました。Clearは日本酒専門メディアを運営しており、川勇商店は酒類小売業免許を所有する老舗の酒蔵でした。Clearは自身の日本酒の知見と、川勇商店の日本酒製造の伝統技術と酒類小売業免許を用いて新たな日本酒の開発・販売を計画し、川勇商店のM&Aを行いました。

参考:日本酒ベンチャーの株式会社Clearが、創業50年超の老舗酒販店を買収。「高価格日本酒」に特化したEコマースで小売業に参入へ

事例2:伊那食品工業による米澤酒造のM&A

2014年、長野県の寒天メーカーである伊那食品工業が、後継者の不在や設備の老朽化などといった問題から、一時は廃業の危機に立たされた米澤酒造にM&Aを行い、偉業継承を行いました。「地域の文化として酒造を残したい」という想いからM&Aが行われ、米澤酒造の伝統や雇用が守られることになった素敵な事例です。

参考:「引き継ぐのが地元の伊那食品工業さんでよかった」─地元酒販店が語る、新たなスタートを切った米澤酒造(長野県)への想い

酒蔵のM&Aのメリット

本章では、酒蔵のM&Aのメリットを2点ご紹介します。

買い手側のメリット:事業拡大

最も大きな買い手側のメリットは、【事例1】にみられるような旧酒類販売業免許の獲得による事業拡大です。酒蔵が持つような平成元年の免許改訂以前の旧免許は、現在取得することは不可能であり、現行の免許が有する制限もありません。(現行の免許では年間3,000キロリットル以上の酒類について通信販売が出来ませんが、 旧免許の場合はすべての酒類が上記の制限なく取り扱いできます。)
そのため、M&Aにおける免許獲得は一定の需要が存在しており、買い手側の大きなメリットの1つと言えるのです。

売り手側のメリット:将来への不安の解消

やはり酒蔵ビジネスのM&Aの売り手側の最大のメリットは、不安の解消であると思われます。前述した通りほとんどが中小企業が占める酒蔵は、後継者不足は大きな課題でしょう。伝統や雇用を守る必要がある中、後継者不足問題は大きな精神的プレッシャーになると思われます。そういったケースの際には、【事例2】のようにM&Aによって、他社に事業継承を担ってもらうという方法は1つの可能性だと思います。

酒屋のM&Aにおける注意点

酒屋業界のM&Aには、勿論注意点も存在します。しかしながら、適切に対処し、解決策を準備することで、より良いM&Aを実現することが可能になっています。

承継に時間がかかる

各企業/事業が持つ技術やノウハウの承継は時間を要する長期プロセスです。M&Aによって事業が統合された場合、技術やノウハウの継承には長期間にわたる努力と調整が必要になります。この過程において、双方の従業員間で摩擦が生じる可能性があり、スムーズな運営への移行を妨げることがあります。

買い手が見つからないリスクがある

買収を検討しても財務的に魅力的な買い手が限られることがあります。また、業界特有のサプライチェーンや倫理性を理解し、継承を望む適切な買い手を見つけることは容易ではありません。このため、適切な買い手が見つからず、事業が存続の危機に瀕することもあります。

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酒蔵のM&Aの売却価格相場

酒蔵のM&Aを実施する場合、どのような価格相場があるのでしょうか。この章では、M&Aにおける売却価格の考え方から、酒蔵がM&Aする際の特有の事情まで解説をしていきます。

価格算定方法

M&Aのおいては、以下の3つの手法をもとに売却価格を設定することが一般的です。

  • コストアプローチ(純資産に着目)
  • インカムアプローチ(収益力やキャッシュフローに着目)
  • マーケットアプローチ(市場相場に着目)

詳細な価値算定の手法については、以下の記事で解説していますので気になった方は是非ご確認ください。

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考慮すべき特有の事情

酒蔵の考慮すべき特有の事情は、その特異なニーズでしょう。伝統や歴史だけでなく、旧型免許に対するニーズなど、目に見えないところに酒蔵の潜在的な価値が眠っている可能性があります。少しでもご興味をお持ちの方はぜひ一度、弊社にご相談ください。

酒屋のM&Aのおすすめ相談先

酒蔵のM&Aを検討する際には、専門的な知識と経験を持つ相談先が非常に重要です。以下に、M&Aプロセスをスムーズに進めるためのおすすめの相談先を挙げます。

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、買い手と売り手のマッチングを支援し、取引の各段階で専門的なサービスを提供します。これらの会社は、市場動向の分析、価格交渉、契約締結のサポートなど、M&Aの複雑なプロセスを導く役割を果たします。

M&Aマッチングサイト

オンラインのM&Aプラットフォームは、国内外の多様な事業者との接点を提供します。これにより、酒蔵はより広い範囲の潜在的な買い手や売り手を簡単に見つけることができ、効率的に取引先を選定することが可能です。
おすすめのM&Aマッチングサイトを以下の記事で解説していますので気になった方は是非ご確認ください。

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顧問税理士

M&A取引における財務評価や税務処理は、その複雑さから専門的な知識を要します。顧問の会計士や税理士は、これらの面で重要なアドバイスを提供し、適切な財務計画と税務戦略を立てるお手伝いをします。

酒蔵のM&Aのまとめ

皆様いかがだったでしょうか?

昨今の少子高齢化による後継者不足だけでなく、若者の「酒離れ」が進み、酒類の消費量が減少する中、酒蔵は前例のない過渡期に直面しています。
また、酒蔵の免許制と新規事業の可能性といった特有の事情からも、M&Aのシナジーの可能性というものを感じていただければ幸いでございます。

少しでも酒蔵のM&Aに興味・関心を抱いていただけましたら、売り手/買い手問わずお気軽に弊社にご連絡ください。

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