多くのM&Aが失敗に終わる理由とは?背景や注意点について解説
M&Aは企業の成長や事業拡大において強力な手段ですが、成功率は必ずしも高くありません。
特に中小企業では、準備不足や適切な支援の欠如が失敗の原因となりやすいです。
本記事では、多くのM&Aが失敗に終わる理由や、成功させるための対応策について解説し、企業がM&Aを通じて持続的な成長を実現するためのポイントを紹介します。
目次
失敗が多い中小企業のM&A
中小企業のM&Aは、事業承継や成長戦略として注目されていますが、その多くが失敗に終わることがあります。
失敗には様々な要因が絡み合っており、適切な準備やプロセスの実行がなされていない場合、期待していた結果を得ることができないことが少なくありません。
特に中小企業では、大企業と比較してリソースや知識が限られているため、M&Aの過程で生じるリスクに対して十分な対策を講じることが難しいケースが多く見受けられます。
そもそもM&Aにおける失敗とは
M&Aにおける失敗とは、買収や売却の目的が達成されず、経営や財務に悪影響を与える結果を指します。
例えば、買収後にシナジー効果が発揮されず、期待していた業績向上が見られない場合や、売却時に希望していた売却額に達しない場合が典型的な失敗例です。
また、M&Aによって新たな経営課題や人員の問題が発生し、統合プロセスにおいて混乱が生じることも失敗の一因となります。
これらの失敗は、事前の計画不足や交渉の甘さ、統合後の管理不足が原因であることが多く、中小企業にとっては深刻な問題を引き起こします。
中小企業におけるM&Aの成功率はかなり低い
中小企業のM&Aは、成功率が低いと言われています。
統計によると、中小企業のM&Aにおける成功率は20〜30%程度であり、多くの案件が思い描いた通りの成果を得られていません。
上場企業のIRの数字においても、成約件数/支援開始数 を見ると25~30%ほどになることから、概ね正しい数字と言えるでしょう。
成功率が低い理由の一つに、企業側がM&Aの知識や経験が不足していることが挙げられます。
特に初めてM&Aを行う経営者は、プロセスやリスクの把握が不十分であるため、交渉や統合後の運営において失敗を招くことが多いです。
また、デューデリジェンスや統合プロセスに関して適切な支援を受けないことも、失敗率を高める要因となっています。
中小企業におけるM&Aは、限られたリソースの中で行われるため、プロセスのあらゆる段階でリスクを的確に管理することが難しいという特徴があります。
さらに、買収後の経営統合が適切に行われなかったり、組織文化の違いから従業員のモチベーションが低下することも、M&Aの失敗を引き起こす要因です。
そのため、M&Aを成功させるためには、事前の準備や外部機関の支援を受けることが重要となります。
M&Aが失敗する理由
M&Aが失敗する理由には、M&A交渉中の問題と、M&A成立後に生じる問題の両方があります。
どちらも事前の準備不足や、適切な支援を受けなかったことが大きな原因となることが多いです。
M&Aプロセスは複雑で、細心の注意を払いながら進めなければなりませんが、特に中小企業ではリソースや経験の不足から、失敗するケースが少なくありません。
M&A交渉中の失敗理由
M&Aの交渉段階では、いくつかの典型的な失敗理由があります。
交渉が思うように進まず、取引が決裂することも多く、その原因を理解し対策を講じることがM&A成功の鍵となります。
目的が明確になっていない
M&Aの交渉が失敗する大きな要因の一つに、目的が明確になっていないことが挙げられます。
売却側も買収側も、何を達成したいのかが不明確な場合、交渉が進むうちに目標がぼやけてしまい、条件設定や意思決定が迷走することがあります。
目的が明確でなければ、双方のニーズがかみ合わず、結果として取引が破談に至ることが多いです。
適切な支援の提供を受けない
M&Aの交渉には、財務、法務、戦略面での専門知識が必要です。
しかし、多くの中小企業はこのような専門知識を社内に持っていないため、適切な支援を受けずに交渉を進めてしまいます。
その結果、契約書の内容やデューデリジェンスに不備が生じ、交渉が難航したり、取引自体が成立しないケースが発生します。
専門家のアドバイスを受けることで、これらの問題を未然に防ぐことができ、交渉がスムーズに進むことが期待できます。
交渉時の条件が多く柔軟性がない
交渉時に、条件が多すぎたり、譲歩できない条件が多くなると、交渉が行き詰まることがあります。
買収側や売却側がそれぞれの利益を最大化しようとすると、譲れないポイントが増え、柔軟な交渉ができなくなります。
特に、価格や支払い条件、役員の処遇といった問題はデリケートな交渉ポイントであり、双方の妥協が必要です。
交渉が失敗する場合、これらの条件に対する柔軟な対応が欠けていることが多く見られます。
M&A成立後の失敗理由
M&A成立後も、様々な理由で失敗に至ることがあります。
交渉が成功したとしても、統合プロセスが適切に進められない場合、期待していたシナジー効果を得られず、最終的にはM&Aが失敗に終わることがあります。
希望する売却価格で成立しなかった
売却側の希望する売却価格に達しなかった場合、売却側は不満を抱えることが多く、その後の統合プロセスや経営に悪影響を及ぼすことがあります。
売却価格が低すぎると、経営陣や従業員のモチベーションが低下し、最終的に企業の業績に悪影響を与える可能性があります。
十分なデューデリジェンスを実施しなかった
M&Aにおけるデューデリジェンス(DD)は、財務状況やリスクを把握するために重要なプロセスです。
十分なDDを実施しなかった場合、買収側が想定外のリスクを抱えることになり、買収後に財務的な問題や法的なトラブルが発生することがあります。
これにより、買収後の統合がうまく進まず、最終的に失敗に至ることが少なくありません。
統合のプロセスに注力しなかった
M&Aが成立した後の統合プロセスは、M&A成功のために非常に重要です。
しかし、多くの企業がこのプロセスに十分な注力をしておらず、経営方針や組織文化の違いにより統合がうまくいかないケースが見られます。
特に、従業員のモチベーションを維持しつつ、新しい体制に適応するためのサポートが不足すると、パフォーマンスが低下し、M&Aが失敗する原因となります。
想定していた統合シナジー効果を得られなかった
M&Aの目的としてよく挙げられるのが、統合シナジー効果です。
例えば、事業の拡大やコスト削減、技術や人材の融合を通じた価値創出などがシナジー効果に含まれます。
しかし、M&A成立後にこのシナジー効果を十分に得られない場合、買収にかかったコストやリスクが経営を圧迫し、結果として失敗に終わることがあります。
統合の計画が甘かったり、実行に問題がある場合、期待していた成果を上げることが難しくなります。
M&Aを失敗させない対応策
M&Aを成功させるためには、事前の準備と慎重な対応が重要です。
多くのM&Aが失敗に終わる背景には、適切な計画や支援の不足が影響しています。
ここでは、M&Aを失敗させないための対応策として、3つの重要なポイントを解説します。
これらの対応策をしっかりと実行することで、成功率を高め、取引後の統合プロセスをスムーズに進めることができます。
目的・目標の明確な設定
M&Aを成功させるための第一歩は、目的や目標を明確に設定することです。
売り手側も買い手側も、なぜM&Aを実施するのか、どのような成果を目指すのかを明確にしなければなりません。
例えば、事業の拡大を目的としているのか、特定の市場に参入したいのか、または技術やノウハウの獲得を目指しているのかを具体的に示す必要があります。
目的が曖昧なまま進めると、交渉の中で方向性が定まらず、取引後の統合も計画通りに進まない可能性があります。
また、M&Aの目的が明確であれば、買収対象企業の選定や条件交渉がより具体的かつ効果的に進められます。
売却側も、適切な買い手を見つけやすくなり、取引成立後の満足度も高まるでしょう。
目標設定には、短期的な利益の向上だけでなく、長期的な経営ビジョンや成長戦略も反映させることが重要です。
企業の将来像を見据えた上でM&Aを行うことで、取引後の運営や成長がスムーズに進むようになります。
適切な機関へ支援を依頼する
M&Aは非常に複雑で、財務、法務、戦略的な側面からの専門知識が必要です。
そのため、適切な支援を受けることが成功への重要な要素となります。
M&A仲介会社や専門のアドバイザー、弁護士、会計士など、さまざまな専門家の協力を得ることで、リスクを最小限に抑え、プロセスを円滑に進めることが可能です。
特に、中小企業にとってはM&Aの経験が少ないため、信頼できる専門家の支援が欠かせません。
これにより、デューデリジェンスの実施や適切な価格設定、契約書の作成など、M&Aの各段階で生じるリスクを軽減することができます。
また、交渉においても、第三者のアドバイザーが入ることで、公正かつ客観的な視点から問題点を整理し、双方の利益を最大化できるように調整してくれるため、成功率が向上します。
統合プロセスに注力する
M&Aが成立した後の統合プロセスは、取引成功の鍵となります。
多くのM&Aが失敗する理由の一つは、統合プロセスに十分な時間とリソースを割かないことです。
企業の文化や業務プロセスが異なるため、買収後にこれらを円滑に統合することが重要です。
統合プロセスには、人的リソースや技術、経営方針の調整が含まれ、従業員のモチベーション維持やコミュニケーションの促進も大切です。
特に、従業員の不安や反発を防ぐためには、経営陣が統合計画を明確に伝え、サポートを提供することが必要です。
組織の再編成やシステムの統合、新しい経営体制への移行を計画的に進めることで、M&Aの成果を最大化することができます。
統合プロセスを軽視せず、しっかりとしたプランを立てることが、成功への重要な要素となります。
これらの対応策を実行することで、M&Aをスムーズに進め、失敗のリスクを軽減できます。
特に目的設定や専門的な支援、統合プロセスへの注力が成功を左右するため、これらの要素にしっかりと取り組むことが求められます。
まとめ
M&Aは、企業の成長や事業拡大において非常に有効な手段ですが、失敗のリスクも伴います。
特に中小企業にとっては、適切な準備や支援がなければ、期待していた成果を得ることができない可能性が高いです。
失敗の原因には、目的や目標の不明確さ、適切な支援の不足、交渉や統合プロセスにおける柔軟性の欠如が挙げられます。
しかし、成功させるための対応策をしっかりと実行すれば、リスクを最小限に抑え、M&Aを円滑に進めることが可能です。
目的を明確に設定し、適切な専門家の支援を受け、統合プロセスに十分な時間とリソースを割くことが重要です。
これにより、企業はM&Aを通じて持続的な成長を実現し、ビジネスの強化を図ることができるでしょう。
M&Aの成功には、準備と計画が欠かせません。
しっかりとした事前準備と慎重なプロセス管理を行い、専門家の助言を得ながら進めることで、企業はM&Aのリスクを回避し、目指す成果を手にすることができるでしょう。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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