化粧品業界のM&Aについて解説!市場動向や成功事例をご紹介
コロナによる生活様式の変化やグローバル化の進展により化粧品業界でのM&Aが活発化しています。
ブランドの多様化に加え、素早く変わる流行を捉える必要がある業界であることが背景としてあります。
更に、マスク生活からの移行やメンズメイクの浸透により、更に市場が活性化しているといえるでしょう。
そこで、本記事では、化粧品業界におけるM&Aの最新動向や成功事例、そして今後の展望について詳しく解説していきます。
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目次
化粧品とは?
化粧品は、主に人体を清潔に保ち、美しく見せるために使用される製品の総称です。具体的には、皮膚や毛髪を洗浄・保護・整えたり、色を付けたり香りを付けたりする目的で用いられます。
化粧品にも種類があり、大別すると以下のようになります。
- スキンケア製品:例)洗顔フォーム、乳液、フェイスマスク
- メイクアップ製品:例)ファンデーション、アイシャドウ、マスカラ
- ヘアケア製品:例)シャンプー、トリートメント、ヘアオイル
- UVケア製品:例)日焼け止めクリーム、サンオイル
昨今は男女問わず、コロナ禍の脱マスク化によって「スキンケア」や「口元」などへの意識がより高まっており、これまでマスクで隠れていた部分に対する美容意識の高まりや行動変容が見られました。事実、コロナ化を境に、化粧品市場の需要は少しづつ回復を見せています。
市場規模
コロナパンデミックの2020年度、外出自粛などにより化粧品業界は19年比で約15%縮小しました。
しかしながら、22年度は、消費者の外出機会が徐々に増加したことで、一定の化粧品需要が回復しました。
事実、国内化粧品市場規模は20年度の2超2,350億から、22年度は2兆3,700億円となり、2年連続で拡大推移となりました。
2022年度の化粧品市場を製品カテゴリー別にみると、スキンケア市場が47.3%(1兆1,200億円)と最も高くおよそ半数を占めます。
次にヘアケア市場は同20.3%(4,810億円)、メイクアップ市場が17.6%(4,170億円)と続きました。
市場展望
化粧品業界はこれからも堅調に需要拡大・市場拡大していくことが予想されます。
事実、2021年度から2023年度まで安定して約前年比+3%で市場は拡大していることが考えられます。
しかし昨今の課題としては、少子高齢化による国内市場の縮小、またEC販売の遅れなどが挙げられます。
前者に対しては消費者1人当たりの使用量増加やターゲットの拡大、後者に対しては業界を跨いだM&Aや業務提携によるチャネルのデジタル化が求められていくことが予想されます。
化粧品業界の今後の課題
化粧品ビジネスが直面する課題は、主に以下の2点が考えられます。
少子高齢化による消費者の減少
少子高齢化に直面する日本において、最も大きな業界課題は消費者の減少です。
実際、経済産業省によると、2021年の化粧品市場規模は前年比に比べ微増している一方で、2021年の化粧品出荷数は2020年より低下していることが分かりました。
ここにおいて、将来にかけて一定の市場成長を見込むためには、化粧品を使用するシーンの提案やターゲットの拡大により、1人当たりの化粧品消費量の増加を実現していくことが必要になります。
事実、昨今は特定の悩みにフォーカスしてニッチ市場を開拓する化粧品や、男性化粧品という新たなターゲットを狙った化粧品の登場も相まって、上記の傾向が色濃く見られるようになっています。
以上に加えて、観光客のインバウンド需要に的確に訴求していくこと、越境ECに注力し海外新規市場を開拓・拡大していくことが、化粧品業界には必然的に求められていくでしょう。
参考:新型コロナ禍に影響された化粧品出荷、2021年の状況は?
後継者不足
そしてやはりどの業界にもつき物なのは、後継者不足問題です。
2020 年度 化粧品産業動向調査報告書によると、2018年の計492社ある化粧品会社のうち、449社が中小企業に分類され、約90%が中小企業であることが分かります。
このように、中小企業が後継者不足に直面する可能性が高いことを考慮すると、化粧品業界においても同様、後継者不足問題は根深い課題であることが容易に予想されます。
化粧品業界における最新のM&A動向と事例
この章では、化粧品業界におけるM&A・売却・買収事例を取り上げます。
下記において、いくつかの例をご紹介します。
事例1:アクシージアによるユイット・ラボラトリーズの完全子会社化
2022年4月1日、株式会社アクシージアは株式会社ユイット・ラボラトリーズの全株式の取得(完全子会社化)を実施しました。
アクシージアはエイジングケアといったニッチな化粧品販売やスキンケアブランドの事業展開を行っている企業です。一方、ユイット・ラボラトリーズは通信販売大手・千趣会の子会社であり、化粧品の通信販売などを行う会社です。
製品開発や通信販売のノウハウ獲得といったシナジーを期待し、M&Aが行われました。
参考:株式会社ユイット・ラボラトリーズの株式取得(子会社化)完了及び 当該子会社役員人事に関するお知らせ
事例2:ユーグレナによるLIGUNAの完全子会社化
2021年1月21日、株式会社ユーグレナは株式会社LIGUNAの完全子会社化を実施しました。
ユーグレナは微細藻類ユーグレナの培養技術を用いた化粧品や食品展開を行っています。一方LIGUNAは「Sustainable Wellness」を掲げ、素肌の心地よさを提案するスキンケアブランド「あきゅらいず」などを展開しています。
本案件では、被譲渡企業の後継者問題の解決、そしてサステナビリティを基盤とした事業拡大などを目的にM&Aが実施されました。
参考:簡易株式交換による株式会社 LIGUNA の完全子会社化に関するお知らせ
化粧品業界におけるM&Aのメリット
本章では、化粧品業界のM&Aのメリットを2点ご紹介します。
買い手側のメリット:事業拡大や製品の差別化
最も大きな買い手側のメリットは、【事例1】【事例2】にみられるようなECを用いた販路拡大や独自性の強化による事業拡大です。
特にEC販売が他業界に対して遅れを取る化粧品業界において、前者のようなM&Aを通した既存のECチャネルの獲得には一定の需要があることが予想されます。加えて、マーケットのニッチ化が進む中、後者のような独自性の強化による事業拡大にも大きなポテンシャルが期待できます。
昨今の情勢を俯瞰すると、化粧品業界におけるM&Aには多くのメリットが存在することが考えられます。
売り手側のメリット:将来に対する不安の解消
化粧品業界におけるM&Aの売り手側の最大のメリットは、「不安の解消」であると思われます。前述した通り中小企業がほとんどを占める化粧品業界において、後継者問題は大きな課題でしょう。また、少子高齢化による人口減少で国内需要の減少が予想される中、ニッチ市場を攻めた製品の差別化や強みが一層求められていくことも不安要素の1つでしょう。
そういった将来の不確実性が高まる中、M&Aを通して将来に対する不安を解消することは有効な選択肢の1つであると考えられます。
化粧品業界のM&Aにおける注意点
化粧品業界のM&Aには、勿論注意点も存在します。しかしながら、適切に対処し、解決策を準備することで、より良いM&Aを実現することが可能になっています。
承継に時間がかかる
各企業/事業が持つ技術やノウハウの承継は時間を要する長期プロセスです。M&Aによって事業が統合された場合、技術やノウハウの継承には長期間にわたる努力と調整が必要になります。この過程において、双方の従業員間で摩擦が生じる可能性があり、スムーズな運営への移行を妨げることがあります。
買い手が見つからないリスクがある
買収を検討しても財務的に魅力的な買い手が限られることがあります。また、業界特有のサプライチェーンや倫理性を理解し、継承を望む適切な買い手を見つけることは容易ではありません。このため、適切な買い手が見つからず、事業が存続の危機に瀕することもあります。
化粧品業界におけるM&Aの売却価格相場
化粧品業界のM&Aを実施する場合、どのような価格相場があるのでしょうか。この章では、M&Aにおける売却価格の考え方から、化粧品業界においてM&Aを実施する際の特有の事情まで解説をしていきます。
価格算定方法
M&Aのおいては、以下の3つの手法をもとに売却価格を設定することが一般的です。
- コストアプローチ(純資産に着目)
- インカムアプローチ(収益力やキャッシュフローに着目)
- マーケットアプローチ(市場相場に着目)
詳細な価値算定の手法については、以下の記事で解説していますので気になった方は是非ご確認ください。
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考慮すべき特有の事情
化粧品業界の考慮すべき特有の事情は、その特異なニーズでしょう。EC販売のノウハウや製品の独自性等など、あまり目に見えないところに潜在的な価値が眠っている可能性があります。少しでもご興味をお持ちの方はぜひ一度、弊社にご相談ください。
化粧品業界のM&Aのおすすめ相談先
化粧品業界のM&Aを検討する際には、専門的な知識と経験を持つ相談先が非常に重要です。以下に、M&Aプロセスをスムーズに進めるためのおすすめの相談先を挙げます。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、買い手と売り手のマッチングを支援し、取引の各段階で専門的なサービスを提供します。これらの会社は、市場動向の分析、価格交渉、契約締結のサポートなど、M&Aの複雑なプロセスを導く役割を果たします。
M&Aマッチングサイト
オンラインのM&Aプラットフォームは、国内外の多様な事業者との接点を提供します。これにより、化粧品業界はより広い範囲の潜在的な買い手や売り手を簡単に見つけることができ、効率的に取引先を選定することが可能です。
おすすめのM&Aマッチングサイトを以下の記事で解説していますので気になった方は是非ご確認ください。
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M&A取引における財務評価や税務処理は、その複雑さから専門的な知識を要します。顧問の会計士や税理士は、これらの面で重要なアドバイスを提供し、適切な財務計画と税務戦略を立てるお手伝いをします。
化粧品業界のM&Aのまとめ
皆様、いかがだったでしょうか?
昨今の少子高齢化による後継者不足だけでなく、化粧品のニーズが多様化し様々なニッチな市場が登場する中、化粧品業界は前例のない過渡期に直面しています。
また、EC販売に対するニーズといった特有の事情からも、化粧品業界におけるM&Aのシナジーの可能性というものを感じていただければ幸いでございます。
少しでも化粧品業界のM&Aに興味・関心を抱いていただけましたら、売り手/買い手問わずお気軽に弊社にご連絡ください。
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株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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