合同会社はM&Aで売却できる?難しい理由や活用できる手法について解説!
合同会社を運営する中で、M&Aにより売却を検討したことはないでしょうか?
合同会社は2006年の会社法が新設されて以来、増加している法人形態です。
それに比例して、合同会社をM&Aで売却することを検討する方も増加傾向にあります。
合同会社であってもM&Aは可能ですが、株式会社などと比較して論点が多く難しいとされています。
本記事では、合同会社と株式会社の違い、合同会社のM&Aが難しい理由について解説します。
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目次
合同会社とは?
合同会社は、日本において2006年に導入された比較的新しい会社形態です。
合同会社の特徴は、柔軟な運営が可能である点や設立手続きが比較的簡単である点にあります。
さらに、株式会社と比べて設立費用が安価であることも魅力の一つです。
合同会社の特徴
合同会社の最大の特徴は、全ての社員が有限責任であることです。
つまり、社員は出資した範囲内でしか責任を負わないため、リスクが限定されます。
また、合同会社では社員自らが業務執行を行うことが一般的であり、外部からの取締役を置く必要がありません。
このため、経営に対する意思決定が迅速に行えるというメリットがあります。
合同会社の数
合同会社の設立は、近年増加しています。
東京商工リサーチの調査によると、2023年の合同会社の設立件数は、40,655社と初めて4万社を突破しました。
個人事業主や中小企業が株式会社のような煩雑な運営形態を避けたい場合やコストを抑えたい場合に適しているためです。
参考:2023年の「新設法人」 過去最多の15万3,405社、宿泊業は1.4倍
合同会社と株式会社の違い
合同会社と株式会社の主な違いは、資本金の払い込み方法、意思決定機関、設立費用などにあります。
株式会社は、株主総会や取締役会などの厳格な意思決定機関が必要ですが、合同会社ではそのような機関が不要です。
また、株式会社は最低資本金制度が廃止されたものの、実際には一定の資本が求められることが多いのに対し、合同会社は設立時の資本金が1円でも可能です。
合同会社はM&Aで売却ができるか?
合同会社であってもM&Aにより売却はできますが、論点が多く難しい傾向にあります
まず、合同会社はその持分を譲渡する際に全社員の同意が必要となります。
これは株式会社とは異なり、意思決定のプロセスが複雑で時間がかかる可能性があります。
また、買収側にとってのメリットが少ないとされることも多いです。
合同会社の買収には、事業の将来性やシナジー効果が明確でなければ、買収側にとっての魅力が薄れることがあります。
しかし、合同会社が全くM&Aの対象にならないわけではありません。
例えば、事業が成長し、明確な収益を上げている場合や、買収側が合同会社の特定の技術や市場を狙っている場合などは、買収が成立する可能性があります。
また、合同会社を株式会社に組織変更することで、買収プロセスを円滑に進めることも可能です。
このように、合同会社はM&Aによる売却が難しいとされるものの、適切な準備と戦略を持つことで売却が実現するケースもあります。
具体的な手法や対策については次の見出しで詳しく解説します。
合同会社のM&Aが難しい理由
持分の譲渡にあたり社員全員の同意が必要
合同会社のM&Aが難しい理由の一つは、持分の譲渡にあたって社員全員の同意が必要であることです。
これは、合同会社が社員の信頼関係を重視するための規定ですが、M&Aの際には大きな障害となることがあります。
全員の同意を得るには、各社員との調整や交渉が必要であり、時間と労力がかかります。
特に、意見の対立や利益の不一致がある場合には、合意に至るまでのプロセスが長引くことが多いです。
事業譲渡の場合でも過半数の社員の同意が必要
事業譲渡を行う場合でも、合同会社では過半数の社員の同意が必要です。
これは持分の譲渡ほど厳しくはないものの、依然として社員の同意を得る必要があり、M&Aのハードルとなります。
事業譲渡は事業全体を引き継ぐため、社員にとっては将来の不安要素となりうるため、慎重な説明と合意形成が求められます。
買収側のメリットが少ない
合同会社のM&Aが難しいもう一つの理由は、買収側にとってのメリットが少ないことです。
株式会社と比べて、合同会社は規模が小さいことが多く、収益性や成長性に限界がある場合があります。
また、合同会社の買収によるシナジー効果が見込みにくい場合、買収側はリスクとコストを考慮して他の選択肢を優先する傾向にあります。
株式会社への変更手続きが煩雑
最後に、合同会社を株式会社に変更する手続きが煩雑である点も、M&Aの障害となります。
株式会社への変更は、定款の変更や新たな登記手続きなど、多くのステップを踏む必要があり、時間と費用がかかります。
さらに、変更手続き中に発生する法的リスクや、社員間での意見の食い違いも考慮しなければなりません。
合同会社のM&Aで活用できる手法
持分譲渡
合同会社のM&Aで活用できる手法の一つに「持分譲渡」があります。
持分譲渡は、合同会社の社員が持っている持分を他の個人や企業に譲渡する方法です。
持分譲渡を行うことで、譲受人が新たな社員となり、会社の経営に参加することができます。
ただし、先述の通り、持分譲渡には全社員の同意が必要となるため、慎重な調整が求められます。
持分譲渡は、特に少数の社員で構成されている合同会社においては効果的な手法です。
持分を譲渡することで、会社の所有権や経営権をスムーズに移行できるため、会社の継続性が保たれます。
さらに、持分譲渡は比較的手続きが簡単であり、コストも低いため、中小企業にとって有利な方法となります。
事業譲渡
もう一つの有効な手法が「事業譲渡」です。事業譲渡は、合同会社が保有する事業全体を他の企業に譲渡する方法です。
この手法では、譲渡する事業に関連する資産、負債、契約、従業員などを一括して移転することが可能です。
事業譲渡は、買収側にとってもメリットが大きく、合同会社の持分譲渡と比べて、承認が容易である点が魅力です。
事業譲渡の場合、過半数の社員の同意があれば手続きが進められるため、全員の同意を得る必要がない点が利点です。
また、事業譲渡を選択することで、買収側は必要な事業資産のみを引き継ぐことができ、不必要な資産や負債を避けることができます。
ただし、事業譲渡には個別の資産や権利を移転させる必要があり、煩雑な手続きを伴うこともあるため、事前の準備と計画が重要です。
これらの手法を適切に活用することで、合同会社のM&Aを円滑に進めることが可能です。
合同会社がM&Aで事業譲渡を選択するメリット
持分譲渡よりも承認が容易
合同会社のM&Aにおいて事業譲渡を選択するメリットの一つは、持分譲渡よりも承認が容易であることです。
持分譲渡の場合、全社員の同意が必要ですが、事業譲渡では過半数の社員の同意があれば手続きを進めることができます。
この違いにより、事業譲渡は迅速に実施することが可能となり、交渉や調整にかかる時間や労力を大幅に削減できます。
従業員の雇用維持
事業譲渡を選択することで、従業員の雇用を維持することができます。
事業譲渡は会社の事業全体を譲渡するため、従業員もそのまま新しい事業主の下で働くことが一般的です。
これにより、従業員の雇用が守られ、業務の継続性が確保されるため、従業員にとっても安心感があります。
また、従業員が引き続き業務に従事することで、事業の円滑な引き継ぎが実現しやすくなります。
会社を残すことができる
事業譲渡を選択することで、合同会社そのものを残すことができます。
持分譲渡の場合、会社の所有権が完全に移転しますが、事業譲渡では事業のみを譲渡し、会社は存続します。
このため、合同会社としての法人格を維持しつつ、新たな事業に転換することが可能です。
また、事業譲渡後に新たな事業を開始する際にも、既存の法人格を利用することで、設立手続きやコストを削減することができます。
以上が合同会社がM&Aで事業譲渡を選択するメリットです。次に、事業譲渡のデメリットについて詳しく解説します。
合同会社のM&Aで事業譲渡を選択するデメリット
資産・権利を個別で移転させる必要がある
合同会社のM&Aで事業譲渡を選択する際のデメリットの一つは、資産や権利を個別に移転させる必要があることです。
事業譲渡では、譲渡対象となる資産や契約、権利義務などを一つ一つ個別に移転手続きを行わなければなりません。
これにより、手続きが煩雑となり、時間やコストがかかる可能性があります。
また、移転手続きが遅れることで、業務に支障をきたすリスクもあります。
会社に負債が残る可能性がある
事業譲渡を行う際には、譲渡対象外となる負債が会社に残る可能性があります。
事業譲渡では、譲渡する資産や権利を選択的に移転することができるため、買収側は不必要な負債を引き継がずに済みます。
しかし、その一方で、譲渡元の合同会社に負債が残る場合があり、これは会社の財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
負債が残った場合、譲渡元の会社がその後の経営を続ける上で大きな課題となります。
以上が合同会社のM&Aで事業譲渡を選択するデメリットです。
次に、合同会社を買収する際の注意点について解説します。
合同会社を買収する際の注意点
上場できない
合同会社は、株式会社と異なり、証券取引所に上場することができません。
このため、合同会社を買収する際には、将来的な上場を視野に入れた計画を立てることが難しくなります。
上場による資金調達を考えている場合には、買収後に株式会社へ組織変更する必要がありますが、この手続きには時間と費用がかかるため、計画的に進める必要があります。
買収する持分割合
合同会社の買収においては、買収する持分の割合が重要なポイントとなります。
合同会社は社員全員の同意がないと持分を譲渡できないため、買収側は全社員との交渉が必要です。
特に、少数株主が存在する場合には、その持分の取得が難航することがあり、買収計画が遅れる可能性があります。
また、持分の割合によっては、経営権や意思決定に影響を及ぼすため、慎重に検討する必要があります。
他の社員との関係性
合同会社を買収する際には、他の社員との関係性も重要な要素となります。
合同会社は少人数で運営されることが多いため、社員同士の信頼関係が経営に大きな影響を与えます。
買収後に新たな社員が加わることで、既存の社員との間に摩擦が生じることがあります。
これにより、業務の円滑な引き継ぎが難しくなる場合があるため、買収前に社員間の関係性や企業文化を十分に理解し、調整することが求められます。
合同会社のM&Aのまとめ
合同会社のM&Aについて、様々な側面から解説してきました。
合同会社は、その柔軟な運営形態や設立の簡便さから、中小企業やスタートアップにとって魅力的な選択肢です。
しかし、M&Aの観点から見ると、持分譲渡や事業譲渡においていくつかの課題があります。
まず、合同会社のM&Aが難しい理由として、持分の譲渡に全社員の同意が必要であること、事業譲渡においても過半数の同意が必要であること、買収側にとってのメリットが少ないこと、そして株式会社への変更手続きの煩雑さが挙げられます。
持分譲渡は比較的手続きが簡単であり、コストも低い一方で、事業譲渡は従業員の雇用維持や会社の存続が可能となる点が利点です。
また、事業譲渡を選択するメリットとして、持分譲渡よりも承認が容易であること、従業員の雇用が維持されること、そして会社を残すことができることが挙げられます。
一方で、資産や権利を個別に移転させる手続きが煩雑であることや、会社に負債が残る可能性があることなどのデメリットも存在します。
合同会社のM&Aは容易ではありませんが、適切な準備と戦略を持つことで成功する可能性があります。
具体的な手法や戦略を慎重に検討し、実行に移すことが重要です。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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