アクハイヤーとは?人材獲得のためのM&Aの手法について解説!
大手企業グループにおいても、アクハイヤーとしてM&Aを実行する事例が増えてきました。
アクハイヤーとは、人材獲得を目的としたM&Aのことを指します。
日本における少子化の影響により、様々な業界で人手不足が問題となっています。
そんな問題を解決するために注目されているのが、アクハイヤーです。
特に、2024年問題と言われる働き方改革に関する問題を抱える、物流・建設業界で活発な動きがみられます。
本記事では、アクハイヤーの基本的な概要から人材採用と比較したメリットについて解説します。
人手不足を解決するために他社の買収を検討している方は必見です。
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アクハイヤーとは
アクハイヤー(Acqui-hiring)とは、「企業の買収(Acquisition)」と「人材の雇用(Hire)」を組み合わせた造語です。これは、特定の企業を買収することで、その企業に所属する優秀な人材を獲得することを目的としたM&Aの手法を指します。
特に技術系のスタートアップや専門知識を持つチームを持つ企業に対して行われることが多く、企業の成長やイノベーションを加速させるための戦略として利用されています。
例えば、大手企業が新しい技術やサービスを開発したいと考えたとき、既存のチームを一から作り上げるのは時間とコストがかかります。
そのため、既に成功しているスタートアップを買収し、そのチーム全体を自社に取り込むことで、迅速かつ効果的に目標を達成することができるのです。
このように、アクハイヤーは単なる企業の買収以上に、戦略的な人材獲得の手段として重要な役割を果たしています。
アクハイヤーを行うメリット
優秀な人材を一度に多数獲得できる
アクハイヤーを行うことで、個別の採用活動では得られない多くの優秀な人材を一度に獲得することができます。
これにより、採用プロセスの効率が向上し、必要なスキルセットを持った人材を迅速に集めることができます。
特に、特定の分野での専門知識や経験を持つ人材を一度に確保することで、プロジェクトの立ち上げや運営がスムーズに進行します。
また、個々の採用活動に比べて時間とコストの節約にもなります。
通常の採用プロセスでは、求人広告の作成、応募者の選考、面接の実施など多くのステップが必要ですが、アクハイヤーではこれらのプロセスを一度に簡略化することができます。
チーム単位で人材を獲得できる
アクハイヤーでは、単なる個人の採用ではなく、すでに協力関係にあるチーム全体を獲得できるため、即戦力としての活用が期待できます。
チームワークがすでに構築されているため、新たなプロジェクトにスムーズに移行できる点が大きなメリットです。
例えば、開発チームやマーケティングチームなど、すでに高い成果を上げているチームをそのまま取り込むことで、プロジェクトの立ち上げ初期から高いパフォーマンスを発揮することができます。
このように、アクハイヤーは組織の一体感を保ちつつ、新たな戦力を取り込む手法として非常に有効です。
ブランドを維持することができる
アクハイヤーによって買収された企業のブランドや製品を維持しつつ、人材を吸収することが可能です。
これにより、既存の顧客基盤を維持しながら、新たなリソースを取り込むことができます。
例えば、有名なスタートアップを買収することで、その企業のブランド力を維持しつつ、自社の製品ラインナップを強化することができます。これにより、顧客の信頼を損なうことなく、新たな市場や製品の展開が可能となります。
営業基盤を獲得することができる
買収対象企業の営業基盤やマーケットアクセスを活用することで、新たな市場や顧客層に迅速にアプローチできるようになります。これにより、営業活動の効率化と売上の増加が期待できます。
例えば、新しい地域や業界に進出したい場合、その分野で既に確立された営業ネットワークを持つ企業を買収することで、スムーズな市場参入が可能となります。
これにより、競争力を強化し、新たなビジネスチャンスを迅速に掴むことができます。
アクハイヤーと人材採用の違い
獲得できる人材の範囲の違い
アクハイヤーでは、特定の企業全体を買収するため、特定のスキルや専門知識を持ったチームをまるごと獲得することが可能です。
一方、通常の人材採用では、個々の人材を一人ずつ採用するため、特定のスキルセットを持つ複数の人材を同時に獲得することは難しいです。
また、アクハイヤーは既存のチームやプロジェクトをそのまま取り込むことができるため、転職市場に現れない人材の獲得が可能になります。
通常の人材採用の場合は、転職を検討している方に向けて募集を募ります。
そのため、人材採用と比較してアクハイヤーの方が獲得できる人材の幅が広く、市場には出ない優秀な人材を獲得できる可能性が高まります。
このように、アクハイヤーと通常の人材採用では、獲得できる人材の範囲やスピードに大きな違いがあります。
実現までのコストの違い
アクハイヤーは、企業全体を買収するため、一度に多額の資金が必要となります。
しかし、そのコストに見合った多くの優秀な人材や既存のプロジェクトを同時に獲得することができます。
一方、通常の人材採用では、一人一人の採用にかかるコストは比較的低いですが、多くの人材を採用する場合、トータルのコストが高くなることがあります。
また、アクハイヤーでは買収にかかるコストだけでなく、買収後の統合プロセスや文化の融合に関するコストも考慮する必要があります。
これに対し、通常の人材採用では、採用後のトレーニングや育成にかかるコストが中心となります。このように、アクハイヤーと通常の人材採用では、コストの構造にも大きな違いがあります。
人材獲得後のスピード感の違い
アクハイヤーでは、既存のチームやプロジェクトをそのまま取り込むため、新たなプロジェクトの立ち上げや既存のプロジェクトの推進において、即戦力として活躍することができます。これにより、短期間での成果が期待できます。
一方、通常の人材採用では、新たに採用した人材がチームに馴染み、業務に精通するまでに時間がかかることがあります。
特に、専門知識や技術が求められる分野では、アクハイヤーによる即戦力の獲得が大きなメリットとなります。
これにより、競争の激しい市場での迅速な対応や、イノベーションの加速が可能となります。
このように、アクハイヤーと通常の人材採用では、人材獲得後のスピード感に大きな違いが見られます。
アクハイヤーの成功事例
googleがYoutubeを買収した事例
Googleが2006年にYouTubeを買収した事例は、アクハイヤーの成功例としてよく挙げられます。
YouTubeは当時、急速に成長していた動画共有プラットフォームであり、その開発チームも非常に優秀でした。
GoogleはYouTubeを買収することで、動画共有市場への迅速な参入を果たすと同時に、その技術力とノウハウを自社に取り込みました。
この買収により、Googleは動画広告市場での競争力を大幅に強化し、現在もYouTubeは同社の主要な収益源の一つとなっています。
SBSホールディングス株式会社がNSK グループの物流事業を譲受した事例
SBSホールディングス株式会社がNSKグループの物流事業を譲受した事例も、アクハイヤーの成功事例として知られています。2024年7月、SBSホールディングス株式会社はNSKグループの物流事業の譲受を公表しました。
この買収でSBSホールディングス株式会社は、事業ポートフォリオの拡充のほかに、優秀な人材等の確保が目的であるとしています。
SBSホールディングス株式会社が属する物流業界は、「2024年問題」と言われる働き方改革やオンラインショッピングの成長などに伴い、人材不足に陥っています。
大手の物流企業グループもM&Aを積極的に進めており、最も活発に業界の再編が行われているといえるでしょう。
アクハイヤーを実施するには?
アクハイヤーを実施するには、いくつかの重要なステップと準備が必要です。以下に、アクハイヤーを成功させるための主要なプロセスを解説します。
1. ターゲット企業の選定
まず、アクハイヤーの対象となる企業を慎重に選定します。ターゲット企業は、自社が必要とする技術やスキルを持つ人材を抱えていることが重要です。また、企業文化やビジョンが自社と合致していることも考慮する必要があります。これにより、買収後の統合がスムーズに進む可能性が高まります。
2. デューデリジェンスの実施
ターゲット企業の選定後、デューデリジェンス(事前調査)を実施します。これには、財務状況、法務リスク、経営陣の評価などが含まれます。特に重要なのは、人材の評価です。主要な人材が買収後も自社に残り、活躍できるかどうかを確認することが必要です。
3. 買収条件の交渉と合意
デューデリジェンスの結果を基に、買収条件を交渉します。価格だけでなく、買収後の雇用条件や役職、報酬なども重要な交渉ポイントとなります。ターゲット企業の経営陣や主要な人材が買収後もモチベーションを持ち続けるための条件を設定することが重要です。
4. 統合計画の策定
買収が合意に達したら、次に統合計画を策定します。これには、組織構造の再編、人材の配置、文化の統合などが含まれます。統合計画は、買収後の早期に新しいチームが一体となって機能するための重要なステップです。
5. 統合の実施とフォローアップ
統合計画に基づき、具体的な統合作業を実施します。この段階では、コミュニケーションを密に行い、買収された側の社員がスムーズに新しい組織に適応できるよう支援します。また、統合後も定期的にフォローアップを行い、問題が発生した場合には迅速に対応することが重要です。
アクハイヤーは、単なる企業の買収以上に、戦略的な人材獲得の手法として有効です。上記のステップをしっかりと踏むことで、成功率を高めることができます。
アクハイヤーのまとめ
アクハイヤーが人材獲得の有効な手段であることはご理解いただけましたでしょうか。
通常の人材採用と並行して検討すべき手段だといえるでしょう。
アクハイヤーを成功させるためには、獲得したい人材を定義することや定義した人材を保有している会社を選定することが重要です。
M&Aを検討する際は、M&Aのマッチングプラットフォームが主流となっています。
M&Aナビは、買い手となりうる企業が数多く登録されており、成約までの期間が短いことが特徴です。ぜひご活用ください。
株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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