タクシー会社のM&A動向!メリットデメリットや事例なども解説!

2024年10月24日

タクシー業界は人口減少や新しい移動手段の登場により、大きな変革期を迎えています。

収益性の低下やドライバー不足などの課題に直面する中、M&A(合併・買収)は事業拡大や効率化のための重要な戦略として注目されています。

本記事では、タクシー会社の現状、M&Aのメリット・デメリット、そして最新事例をもとに、業界の動向と今後の展望を解説します。

タクシー会社のM&A動向とは?

タクシー業界の現状と市場動向

最近、タクシー業界では大きな変化が起きています。人口減少や高齢化、そして新しい移動手段の登場により、タクシー需要が変わってきています。 例えば、若い人たちの間では、スマホアプリを使って簡単に配車できるサービスが人気です。また、高齢者向けの乗り合いタクシーなど、新しいサービスも増えています。

しかし、課題もあります。運転手の数が足りなくなってきています。若い人があまりタクシードライバーを希望しないので、高齢の運転手さんが多くなっています。これは安全面でも心配なところです。

タクシー会社の課題

タクシー会社が直面している大きな問題は、収益性の低下です。燃料費が上がったり、車両の維持費が高くなったりして、経営が厳しくなっています。また、ウーバーイーツのような配達サービスとの競争も激しくなっています。

こういった状況で、多くのタクシー会社が生き残りをかけて新しい戦略を考えています。その一つが「M&A」、つまり「事業売買」です。大きな会社が小さな会社を買収したり、似たような規模の会社同士が合併したりすることで、経営を強くしようとしています。

タクシー会社M&Aのメリット

売り手のメリット

タクシー会社を売却することには、売り手側にとっていくつかの利点があります。

まず、日々の経営に伴う悩みや責任から解放されることで、精神的な負担が軽減されます。次に、会社の存続によって従業員の雇用が守られるため、働いているスタッフの生活を安定させることができます。

また、長年培ってきた事業を資金化することで、今後の生活や新たな投資資金として活用することが可能です。これにより、事業売却は経営者にとって大きなメリットをもたらします。

買い手のメリット

タクシー会社を買収する側にも多くのメリットがあります。
まず、事業規模の拡大が可能となり、新しい地域への進出や車両数の増加によってサービス提供の範囲が広がります。次に、既存の配車システムや管理部門を統合することで業務効率が向上し、コスト削減が期待できます。

また、買収先の会社が長年培った地域密着型の営業ノウハウや顧客関係を引き継ぐことで、新たな地域での円滑な事業運営が可能になります。これらのメリットにより、買収は事業拡大と効率化を同時に実現する手段となります。

売り手のデメリット

タクシー会社を売却する際には、いくつかの課題も伴います。

まず、経営者にとっては長年育ててきた会社を手放すことで、愛着のある事業との別れに寂しさを感じることがあります。また、売却後の急な変化により、従業員が将来に対して不安を抱く可能性もあります。

特に、新しい経営方針や体制が導入されると、従業員は適応に苦労するかもしれません。さらに、地域密着型の経営方針が変わることで、地元との関係が希薄になるリスクもあり、地域との信頼関係を維持することが難しくなる場合もあります。

買い手のデメリット

タクシー会社を買収する側にもいくつかの注意点があります。

まず、異なる企業文化の統合が難しく、両社の従業員間で摩擦が生じ、融合に時間がかかることがあります。

次に、買収前の調査で見落とした負債や問題が後から発覚するリスクがあり、予期せぬ負担が生じる可能性もあります。さらに、買収後に期待していた投資回収がすぐには実現せず、事業の成果が出るまでに時間がかかる場合があります。

これらの点を考慮し、事前の準備と慎重な計画が重要です。

タクシー会社のM&A事例3選

第一交通サービスによるタカモリタクシーの子会社化

2020年、第一交通サービスはタカモリタクシーを子会社化しました。

タカモリタクシーは後継者問題を抱えており、M&Aにより企業存続と雇用維持を実現した。

一方、第一交通サービスは福岡での事業基盤を強化しました。両社の強みを活かし、地域密着型のサービス向上を目指しています。

参考:【三重地区】三重県津市:タカモリタクシー株式取得について

ライドシェア事業を展開するnewmoが未来都を買収

2024年、東京を中心にライドシェア事業を展開するnewmoが、大阪の老舗タクシー会社である未来都を買収しました。

newmoは、近年日本において注目を浴びているライドシェア事業を展開しており、「2025年度中に、1) 全国主要地域での展開、2) タクシー車両数3,000台、3) ドライバー数1万人を目指す」ことを発表しています。

本買収により、大阪エリアにて更なる事業の拡大が実現でき、今後も積極的な事業拡大を進めるとしています。

参考:newmo、大阪の老舗タクシー会社「未来都」の経営権を取得

第一交通産業株式会社と苫小牧観光ハイヤー株式会社

2022年、第一交通産業は経営難に陥っていた苫小牧観光ハイヤーを買収しました。

この買収により、第一交通産業は北海道での事業を拡大し、苫小牧観光ハイヤーは経営再建と地域交通の維持を図りました。

結果、地域に根ざしたサービスを継続しつつ、大手のノウハウを活用した経営改善が進行中です。

参考:苫小牧観光ハイヤー株式会社(北海道)の株式取得に関するお知らせ

タクシー会社のM&Aの目的

事業拡大が可能

タクシー会社がM&Aを行う主な目的の一つは、事業拡大です。

まず、他の地域で営業しているタクシー会社を買収することで、新しい地域に進出し、新たな市場を開拓することができます。

また、買収によってサービスの多様化も図れます。例えば、介護タクシーや観光タクシーなど、特化したサービスを提供する会社を取得することで、自社のサービスの幅を広げられます。

さらに、買収先の顧客基盤を引き継ぐことで、企業向けの契約や地元の固定客を取り込むことができ、顧客基盤の拡大にもつながります。これらの要素により、M&Aはタクシー会社の成長戦略として有効です。

人材不足を解消できる

タクシー業界全体で問題となっている人材不足の解消も、M&Aの重要な目的の一つです。

まず、買収先のタクシー会社のドライバーを引き継ぐことで、一度に多くの人材を確保でき、人手不足の課題を迅速に解決できます。

また、地域に精通したベテランドライバーや優秀な管理職など、経験豊富な人材を迎え入れることが可能です。さらに、新人を一から育成するよりも、即戦力となる人材を獲得することで、採用や育成にかかるコストを大幅に削減できます。これにより、M&Aは人材不足解消の有効な手段となります。

増車できる

タクシー会社がM&Aを行う目的の一つに、タクシー台数の増加があります。

まず、車両数を増やすことで営業力が強化され、より多くの顧客に対応できるようになります。

また、タクシー営業には自治体の許可が必要ですが、M&Aによって既存の許可証を獲得することが可能で、新たな許可を取得する手間を省けます。

さらに、買収先の古い車両を新しいものに更新することで、サービスの質を向上させ、顧客満足度の向上にもつながります。

タクシー会社のM&Aのプロセス

戦略の策定・準備

タクシー会社のM&A(合併・買収)は、まず戦略を立てることから始まります。

会社の強みや弱み、市場の状況を分析し、M&Aの目的を明確にします。例えば、新しい地域に進出したい、車両を増やしたい、といった具体的な目標を設定します。

そして、自社の財務状況を整理し、必要な書類をまとめます。この段階で、M&Aの専門家に相談するのも良いでしょう。

マッチング・交渉

次に、条件に合う相手企業を探します。M&A仲介会社やマッチングサイトを利用したり、業界内のつながりを活用したりします。

相手が見つかったら、お互いの会社の情報を交換し、条件の交渉を始めます。価格だけでなく、従業員の処遇や今後の経営方針なども話し合います。両社の考えが合えば、基本合意書を作成します。

契約・統合プロセス

合意後は、詳細な調査(デューデリジェンス)を行い、最終的な契約を結びます。

そして、実際に会社を統合していく作業に入ります。システムの統一、営業エリアの調整、従業員への説明など、やるべきことは多岐にわたります。

スムーズな統合のためには、両社の文化や価値観の違いにも配慮が必要です。統合後も、定期的に進捗を確認し、必要に応じて計画を修正していきます。

タクシー会社のM&Aにおける企業価値算定

コストアプローチ

コストアプローチは、会社の資産をベースに価値を算出する方法です。タクシー会社の場合、主な資産は車両です。

例えば、50台のタクシーを持つ会社なら、それぞれの車の市場価値を合計します。

ただし、古い車は価値が低くなるので注意が必要です。他にも、事務所や駐車場なども資産に含めます。負債を引いた純資産額が、おおよその会社の価値となります。この方法は分かりやすいですが、会社の将来性は反映されにくいという欠点があります。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、似たような会社の取引事例を参考に価値を決める方法です。例えば、最近売買された同じくらいの規模のタクシー会社の価格を調べます。

その会社の年間売上や利益と比べて、自社の価値を推測します。

ただ、タクシー会社の場合、個々の会社の状況や地域性が大きく影響するので、単純な比較は難しいかもしれません。それでも、おおよその相場感をつかむには役立ちます。

タクシー会社に特有の考慮すべき事情

タクシー会社の価値を決める時は、一般的な方法だけでなく、業界特有の事情も考える必要があります。例えば、タクシー許可証の価値は地域によって大きく違います。

また、常連客の多さや、地域での評判も重要です。

さらに、ドライバーの質や勤続年数も会社の価値に影響します。最近では、配車アプリの導入状況や、環境に優しい車両(電気自動車など)の導入度合いも評価のポイントになるかもしれません。これらの要素を総合的に判断して、最終的な企業価値を決めていきます。

タクシー会社のM&Aのおすすめ相談先

M&A仲介会社

M&A仲介会社は、M&Aの専門家が揃っている会社です。タクシー会社のM&Aを考えているなら、まずここに相談するのがおすすめです。

仲介会社は、買い手と売り手をつなぐだけでなく、プロセス全体をサポートしてくれます。

例えば、企業価値の算定や、交渉の進め方のアドバイス、必要な書類の準備など、幅広くサポートしてくれます。

特に、タクシー業界に詳しい仲介会社を選ぶと、業界特有の事情を踏まえたアドバイスが得られます。ただし、成功報酬などの費用がかかるので、事前に料金体系を確認しておくことが大切です。

M&Aマッチングサイト

最近では、インターネット上でM&Aの相手を探せるマッチングサイトも増えています。これらのサイトは、売りたい会社と買いたい会社の情報を登録し、条件が合えば引き合わせてくれます。

タクシー会社の場合、「運輸・物流」のカテゴリーで探すことができます。マッチングサイトのメリットは、幅広い選択肢から相手を探せることです。

また、仲介会社と比べると費用が安いケースが多いです。ただし、専門家のサポートは限られるので、ある程度M&Aの知識がある人向けかもしれません。初めてM&Aを行う場合は、マッチングサイトで相手を見つけた後、専門家に相談するのも良いでしょう。

顧問税理士

普段から会社の財務を見てくれている顧問税理士も、M&Aの相談先として適しています。税理士は会社の財務状況を詳しく知っているので、M&Aを行う際の税金の問題や、財務面でのアドバイスをしてくれます。

例えば、M&Aによって生じる税金の計算や、最適な取引構造の提案などです。また、M&Aの専門家ではなくても、M&A経験のある税理士なら、プロセス全体についてもアドバイスをくれるかもしれません。

ただし、タクシー業界特有の事情や、相手探しについては詳しくない可能性もあるので、必要に応じて他の専門家と連携することをおすすめします。

タクシー会社のM&Aのまとめ

タクシー会社のM&Aは、業界の変化に対応し、事業を拡大・効率化するための重要な手段です。まず、M&Aのプロセスとして、「戦略の策定・準備」では、自社の分析、M&Aの目的設定、財務整理が不可欠です。

次に、「マッチング・交渉」で適切な相手を見つけ、条件交渉を進めます。最後に、「契約・統合」では詳細調査の後、契約を結び、実際の統合作業を行います。

企業価値算定のポイントには、車両など資産の価値を基にしたコストアプローチ、類似会社の取引事例を参考にしたマーケットアプローチ、そして許可証や常連客、ドライバーの質などタクシー業界特有の要素を考慮する必要があります。

相談先としては、専門的なサポートが得られるM&A仲介会社、幅広い選択肢が得られるM&Aマッチングサイト、財務・税務面のアドバイスを得られる顧問税理士が挙げられます。成功には業界トレンドにも注意しつつ、専門家の助言を受けて慎重に進めることが重要です。

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