警備業界のM&A動向について解説!メリット・デメリットや成功事例について
日本における警備業界は、安定した需要はあるものの、人手不足や経営者の高齢化といった課題に直面しています。
そうした課題を解決するための有効な手段としてM&Aによる企業の売却・買収が活発に行われるようになりました。
警備業は、労働集約型のビジネスモデルであるため、人口減少が著しい地方において、中小の警備会社のM&Aが増えていると言えるでしょう。
そこで今回の記事では、警備業界の概況から始まり、M&Aのメリット・デメリット、成功のためのポイントについて解説します。
警備会社を経営する皆様にとって見逃せない内容となっていますので是非ご覧下さい。
目次
警備業とは
警備業とは、公共の安全や財産の保護を目的として警備員が警備業務を行う産業のことを指します。
日本において警備業を営むには、「警備業法」に基づき運営する必要があり、警備業務を行うためには各都道府県公安委員会の許可が必要です。
警備業の主な業務には、施設警備や交通誘導警備、貴重品運搬警備などが含まれます。
オフィスビルや工事現場での交通整理等、日常の様々な場所で重要な役割を果たしていることが分かるでしょう。
警備業界の市場規模推移
では警備業界がどれくらいの大きさなのか、その市場規模を見てみましょう。
警備業界の市場規模は、実は着実に成長を続けています。
2010年には約3兆円であった市場規模が、2020年には約3.5兆円まで拡大しました。
これは、私たちの社会が安全・安心により高い価値を置くようになってきたことの表れと言えるでしょう。
この成長の背景には、犯罪の複雑化や災害リスクの増大、そして高齢化社会の進展などが考えられます。
例えば、サイバー犯罪の増加に伴い、オンラインセキュリティの需要が高まっていますし、独り暮らしのお年寄りを見守るサービスなども増えてきています。
警備業のビジネスモデルと特徴
警備業のビジネスモデルは、主に「人」による警備と「機械」による警備の2つに大きく分けられます。
「人による警備」は、警備員が直接現場で活動するものです。
例えば、建物の受付や巡回、イベントの警備などがこれにあたります。
この方式の特徴は、状況に応じて柔軟に対応できることです。
お客様の要望を聞いたり、急な事態にも即座に対処したりできるのが強みです。
一方、「機械による警備」は、センサーやカメラなどの機器を使って行う警備です。
例えば、家庭や店舗に設置する防犯システムがこれにあたります。24時間365日休みなく監視できる上、人件費も抑えられるというメリットがあります。
最近では、AIやIoT技術の発展により、この2つを組み合わせた「ハイブリッド型」の警備も増えてきています。機械で異常を検知し、必要に応じて人が駆けつけるという仕組みです。
警備業の課題
しかし、警備業界も様々な課題に直面しています。
その最大の問題が「人手不足」です。
日本の少子高齢化に伴い、警備員の確保が年々難しくなっています。
特に、夜勤や休日出勤が多い仕事であるため、若い世代の採用に苦戦しています。
また、警備員の高齢化も進んでおり、2025年には警備員の約3分の1が65歳以上になると予測されています。
これが「警備業の2025年問題」と呼ばれるものです。
警備業の2025年問題
「2025年問題」とは、団塊の世代が75歳以上となり、医療費や社会保障費の急増が懸念される問題です。
中小企業経営においては、経営者が高齢化することによる後継者不在の問題として捉えられることが多いです。
警備業では、シニア世代が多く働いており人手不足が深刻な課題として受け止められています。
また単に人手不足というだけでなく、警備の質にも影響を与える可能性があります。
例えば、高齢の警備員が増えることで、緊急時の対応力が低下したり、新しい技術への適応が難しくなったりする恐れがあるのです。
こうした課題に対して、警備業界では、AIやロボットを活用した省人化や、警備員の待遇改善、女性や外国人労働者の積極的な採用といった取り組みが行われています。
また、警備のノウハウを活かした新しいサービス開発にも力を入れています。
こうした状況を背景として、警備業界ではM&A(合併・買収)が活発化しています。
規模を拡大することで経営の効率化を図ったり、新しい技術やサービスを取り入れたりすることで、これらの課題に対応しようとしているのです。
警備業のM&Aの重要性
では、なぜ警備業界でM&Aが重要なのでしょうか?
その背景には、警備業界が直面している様々な課題があります。
人手不足への対応
ここまででお話ししたように、警備業界では深刻な人手不足に悩んでいます。
M&Aを通じて会社の規模を拡大することで、人材の確保や効率的な配置が可能になります。
また、テクノロジー企業との連携で、AIや機械を活用した省人化も進めやすくなります。
技術革新への対応
防犯カメラやセンサー、AIなど、警備に関する技術は日々進化しています。
しかし、すべての会社が最新技術を自社開発するのは難しいです。
そこで、先進的な技術を持つ会社とのM&Aによって、新しい技術を取り入れやすくなります。
総合的なサービス提供
お客様のニーズは多様化しています。単なる警備だけでなく、施設管理や清掃、受付業務なども含めた総合的なサービスを求める声が増えています。
M&Aを通じて異なる専門性を持つ会社と連携することで、こうした幅広いニーズに応えられるようになります。
警備業の市場動向
警備業界の市場動向を見ると、M&Aの重要性がより明確になります。
市場の成熟化
日本の警備業市場は成熟期に入っていると言われています。
つまり、新しいお客様を見つけるのが難しくなってきているのです。
このような状況では、M&Aを通じて既存の顧客基盤を獲得したり、新しい分野に進出したりすることが成長戦略として重要になってきます。
大手企業の寡占化
セコムやALSOKといった大手企業が、中小の警備会社を次々と買収しています。
これにより、業界の寡占化(少数の大企業が市場を支配すること)が進んでいます。中小企業にとっては、独自の強みを活かしつつ、どのように生き残っていくかが課題となっています。
異業種からの参入
最近では、警備業界以外の企業が警備業に参入するケースも増えています。例えば、ITやAI技術を持つ企業が、それらの技術を活かして警備サービスを始めるといったことです。こうした動きも、警備業界でのM&Aを活発化させる要因となっています。
警備業のM&A事例
これまで警備業界のM&Aについて、その概念や重要性を見てきました。
では、実際にどのようなM&Aが行われているのでしょうか?
具体的な3つ事例を通じて、警備業界のM&Aの実態や目的について理解を深めていきましょう。
セコムの日本管財株式会社への出資(2017年)
セコムは2017年に日本管財株式会社の株式33.4%を取得し、筆頭株主となりました。
日本管財はビルメンテナンスを主な事業とする企業で、セコムはこの出資により、セキュリティサービスと建物管理を組み合わせたワンストップサービスを提供可能にしました。
これにより、顧客の利便性が向上し、セコムはビルメンテナンス市場への参入を果たしました。
両社は顧客基盤や技術を活かし、新たなサービス開発にも取り組んでおり、この提携は警備業が総合的な施設管理サービスへと進化する流れを示しています。
ALSOK(綜合警備保障)によるカンソーの買収事例(2024年)
2024年9月、ALSOKは株式会社カンソーを完全子会社化しました。
この買収は、ALSOK社の多角化の推進の一環としての買収であり、ビルメンテナンス事業の強化を目的として行われました。
セコムによるスキャンアラームの買収(2017年)
2017年3月、セコムは英国のグループ会社を通じて、北アイルランドに本社を持つセキュリティ会社であるスキャンアラームLtd. を買収しました。
このM&Aにより、これまで外部に委託していた監視サービス業を内製化することができる体制が構築されました。
報道資料 2017年度版 – 04月07日 – セキュリティ(防犯・警備)のセコム
警備業のM&Aのメリット
警備業界におけるM&A(合併・買収)は、企業の成長戦略として注目を集めています。警備会社にとって、M&Aには多くのメリットがあります。
ここでは、売り手側と買い手側それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
売り手側のメリット
まず、事業の円滑な譲渡が可能となります。
後継者問題を抱える中小企業にとって、M&Aは事業継続の有効な選択肢となります。
また、適切な買収価格での売却により、経営者の長年の努力に対する経済的報酬を得ることができます。
さらに、より大きな企業グループに参画することで、経営資源の拡充や新技術の導入が容易になります。
これにより、サービスの質の向上や事業領域の拡大が期待できます。従業員にとっても、より安定した雇用環境やキャリアアップの機会が提供される可能性があります。
加えて、業界内での競争力強化や市場シェアの拡大につながる可能性があります。特に、地域密着型の中小企業が全国展開する大手企業に買収されることで、営業エリアの拡大や新規顧客の獲得が期待できます。
このように、警備業M&Aは売り手側に多くのメリットをもたらし、事業の発展と価値の最大化を実現する機会となり得ます。
買い手側のメリット
M&Aは事業規模を迅速に拡大し、地理的範囲を広げる効果的な戦略です。
例えば、東京の会社が大阪の会社を買収して関西進出を果たすことができます。
また、異なる専門分野の企業を買収することで、サービスラインナップを拡充し、総合的な警備サービスの提供が可能になります。人材確保の面でも、M&Aは即戦力となる経験豊富な警備員を一度に獲得できる有効な手段です。
さらに、先進的な技術やシステムを持つ企業の買収により、自社の技術力を向上させ、新市場への参入も容易になります。規模拡大によるスケールメリットも重要で、警備機器の調達や保険契約で有利な条件を引き出せる可能性があります。
加えて、知名度の高い会社や特定分野で評価の高い会社の買収は、自社のブランド価値を高め、新規顧客獲得や優秀な人材採用にもプラスの影響を与えます。
以上のように、警備業界におけるM&Aは、売り手・買い手双方にとって多くのメリットがあります。
しかし、これらのメリットを最大限に活かすためには、慎重な検討と戦略的なアプローチが必要です。M&Aを成功させるには、財務面だけでなく、企業文化の融合や従業員のモチベーション維持など、さまざまな要素に配慮する必要があります。
警備業のM&Aのデメリット
買い手側のデメリット
警備業におけるM&Aには多くのメリットがある一方で、買い手側にもいくつかのデメリットが存在します。
まず第一に、警備業は労働集約型のビジネスであるため、買収後の人材管理が非常に重要になります。
警備員は現場での業務が多く、人手不足や高齢化が問題となっているため、買収後に既存のスタッフをどのように維持・管理するかが課題となります。
この問題に対応できない場合、買収後の運営コストが予想以上に増大するリスクがあります。
また、警備業は地域ごとに規制やルールが異なることが多いため、買収後に新しい地域での法規制に対応する必要があります。
特に、現地の許認可や資格要件に適合させるための手続きや調整が必要になる場合、これが時間とコストの負担になる可能性があります。
さらに、買収した会社の評判やブランド力が期待通りでなかった場合、顧客離れが生じ、利益が減少するリスクも考えられます。
最後に、警備業のM&Aは企業文化の統合が難しいことが挙げられます。警備業は現場ごとの独自の文化や管理スタイルが存在するため、買収先との文化の
違いを埋めるのに時間がかかることが多いです。
この点で、早期のシナジー効果を期待する買い手にとっては、M&A後の統合プロセスがスムーズに進まない可能性があります。
これらのデメリットを事前に把握し、適切な対応策を講じることが、M&A成功の鍵となります。
警備業のM&Aの売却相場
中小企業向けの価格算定方法
警備業M&Aにおける売却価格の算定方法には、主に2つのアプローチがあります。
中小企業向け価格算定方法
警備業界におけるM&Aでは、売却価格の算定が重要なプロセスです。価格の算定方法は複数ありますが、一般的には以下の方法が用いられます。
警備業M&Aにおける売却価格の算定方法には、主に2つのアプローチがあります。
年買法
この方法では、まず対象企業の純資産価額を算出します。
次に、その企業の年間利益(通常は税引前利益)を計算し、これに一定の倍率(通常3〜5年分)を乗じます。
そして、純資産価額と年間利益の倍数を合計して企業価値とします。
例えば、純資産が1億円で年間利益が2000万円の場合、3年分を採用すると1億円 + (2000万円 × 3) = 1億6000万円となります。
この手法は、企業の資産価値と収益力の両方を考慮するため、バランスの取れた評価が可能です。ただし、業種や企業の成長性によって適切な倍率は変動するため、個別の状況に応じた調整が必要です。
マルチプル法
この方法では、評価対象企業の財務指標(例:EBITDA、当期純利益、売上高など)に、同業他社や業界平均から導き出された倍率(マルチプル)を乗じて企業価値を算出します。
例えば、EBITDA倍率を用いる場合、対象企業のEBITDAに業界平均のEBITDA倍率を掛けます。仮に企業のEBITDAが1億円で、業界平均の倍率が7倍なら、企業価値は7億円と算定されます。
マルチプル法の利点は、計算が比較的簡単で、市場の評価を反映しやすい点です。ただし、適切な類似企業の選定や、対象企業の特殊性の反映が課題となります。
また、この手法は現在の市場環境や業界動向に大きく影響されるため、他の評価方法と併用することが一般的です。
このように、警備業の売却相場は複数の要因に基づいて算定されるため、正確な価格を算定するには専門家の助言が不可欠です。
売却価格に影響する業界特有の事情
警備業界のM&Aにおいて、売却価格には業界特有の要因が大きく影響します。
特に注目すべきは、「長期契約の割合」と「人材の確保」です。
警備業は多くの企業や施設と契約ベースで運営されているため、長期契約がある企業は、安定的な収益を見込めるとして高く評価されます。
逆に、短期契約や更新頻度が高い場合、将来的な収益が不安定と見なされ、売却価格が低くなる傾向にあります。
次に、警備員の確保状況も重要な要素です。
警備業は労働集約型産業であり、人材不足が大きな課題となっているため、安定した人員確保ができている企業は高く評価されます。
特に、警備員の資格や経験が豊富な企業は、買い手にとっても即戦力として魅力的であるため、売却価格が上昇する可能性があります。
一方で、慢性的な人手不足や、若年層の確保が困難な企業は、人件費の上昇リスクが考慮され、評価が低くなることがあります。
さらに、地域特有の事情も売却価格に影響します。
例えば、大都市圏に拠点を持ち、大企業や官公庁との契約が多い企業は、その地理的優位性と契約先の信頼性から高く評価されます。地方の企業の場合、地域の需要や競合他社の存在などが売却価格に影響を与えるため、売却相場が異なることがあります。
特に、地域特有の規制や警備に関する法律が売却後の運営に影響を及ぼす場合もあります。
このように、警備業界特有の事情を理解した上で、適切な売却価格を設定することが重要です。事前にこれらの要素をしっかりと整理し、戦略的に対応することが、成功するM&Aのカギとなります。
警備業のM&Aの進め方
戦略の策定・準備
警備業のM&Aを成功させるためには、最初に明確な戦略を策定し、十分な準備を行うことが重要です。
まず、売り手側は自社の事業内容や強み、そして今後の目標を明確にし、どのような買い手とM&Aを進めたいかを決定する必要があります。
特に、警備業界の特性に応じて、買収後の経営方針や事業の方向性に合った買い手を見つけることが求められます。
一方、買い手側も、M&Aを通じて何を達成したいのかを明確にしなければなりません。例えば、新しい地域での事業展開を目指すのか、特定の顧客層や契約を獲得するためなのかを整理し、ターゲット企業の選定に役立てます。
また、M&A後の統合プロセスについても事前に計画しておくことで、スムーズな運営が期待できます。
さらに、財務状況や契約内容の整理も欠かせません。
特に警備業界では、顧客との長期契約や設備投資が重要なポイントとなるため、これらの情報をしっかりと整理し、買い手にとって魅力的な企業としてアピールすることが重要です。
また、法務面や労務面のリスクを事前に把握し、必要な対策を講じておくことも重要です。これにより、M&Aの交渉がスムーズに進みやすくなります。
戦略と準備を徹底することで、警備業のM&Aが成功する確率を高めることができるのです。
マッチング
警備業のM&Aにおいて「マッチング」は、売り手と買い手が適切に出会うための重要なステップです。効果的なマッチングが行われることで、双方のニーズや目的が合致し、スムーズな取引が実現します。
まず、売り手側は自社の強みや魅力を適切に伝える必要があります。
これには、安定した顧客基盤、長期契約の有無、優秀な人材の確保状況などが含まれます。警備業界では、特に信頼性が重要視されるため、買い手にとって信頼できる企業であることを示すことが肝心です。
一方で、買い手側も、M&Aを通じてどのような成果を得たいのかを明確にし、それに合った企業を見つけるための基準を設定します。
例えば、地域展開を拡大するために地方の警備会社を買収したいのか、特定の業務や顧客を持つ企業をターゲットにするのか、戦略に沿った基準を設けることで、無駄のないマッチングが可能になります。
マッチングを行う際には、専門のM&A仲介会社やマッチングサイトを利用することが一般的です。これらのサービスを活用することで、売り手と買い手のニーズに合った候補を見つけることができます。
仲介会社は、双方の利益を考慮したマッチングを行うため、初めてM&Aに取り組む企業にとっても大きなサポートとなります。
また、マッチングサイトでは、広範囲にわたる企業情報が提供されているため、独自にリサーチすることも可能です。
適切なマッチングを行うことは、M&Aの成功に直結するため、慎重に進めることが重要です。
交渉
警備業のM&Aにおいて「交渉」は、取引条件を確定し、双方が納得のいく合意に達するための重要なプロセスです。交渉の段階では、売り手側は企業の評価や売却価格、従業員の待遇などの条件を明確にし、買い手に提示する必要があります。
一方、買い手側は、事業の将来性やリスクを見極めながら、適正な価格や取引条件を検討します。
交渉で最も重要な要素の一つが「売却価格」です。売り手側は自社の価値を適切に評価し、それに見合った価格を主張する必要がありますが、過度に高い価格を設定すると、交渉が長引くか、買い手が離れてしまうリスクがあります。
ここで、仲介会社や専門家のアドバイスを受けることで、適切な価格設定を行うことができます。
次に、従業員の処遇や雇用維持に関する交渉も重要です。警備業界は労働集約型産業であり、従業員の確保が企業の成長に直結します。
そのため、買い手は、従業員の雇用をどのように引き継ぎ、どのような待遇を維持するかについても慎重に検討する必要があります。売り手側も、従業員の待遇がどのように変わるかを明示し、安心感を与えることが求められます。
さらに、取引後の統合計画に関する交渉も重要です。特に警備業では、現場運営の効率化やサービス品質の維持が必要とされるため、買収後にどのように統合を進めるかについて、事前に詳細な計画を立てることが求められます。
買い手と売り手が互いに納得できる統合プロセスを描くことが、M&Aの成功に大きく寄与します。
最終的に、双方が納得する条件を確定し、M&A契約へと進むことが、交渉のゴールとなります。信頼できるアドバイザーや弁護士のサポートを得ながら進めることで、交渉がスムーズに進行することが期待されます。
契約・クロージング
警備業のM&Aにおける「契約・クロージング」は、取引の最終段階であり、双方の合意が正式に文書化され、取引が完了するプロセスです。交渉がまとまり、全ての条件に同意が得られた後、最終契約を締結します。
契約書には、売却価格や支払い条件、従業員の処遇、取引後の統合計画など、合意された内容が詳細に記載されます。
契約段階では、法的リスクを最小限にするために、弁護士やアドバイザーのサポートが不可欠です。
特に、警備業界においては、許認可や契約の引き継ぎなど、業界特有の規制や手続きが含まれるため、これらの要件をしっかりと満たしているかを確認することが重要です。
契約書に不備があると、取引後の運営に影響を及ぼす可能性があるため、慎重な確認が求められます。
契約が完了すると、「クロージング」と呼ばれる手続きが行われます。
クロージングは、正式な所有権の移転や、売却金額の支払い、従業員の雇用条件の引き継ぎなど、実際に取引を完了させるための手続きです。この段階で、買い手は警備会社の運営に正式に着手することができ、売り手は退職金や株式譲渡の収益を受け取ります。
警備業界特有の手続きとして、契約先との関係の引き継ぎも重要です。顧客との長期契約が多い警備業では、買い手が新しい経営者として契約を引き継ぎ、信頼関係を維持することが重要です。
このため、契約後も買い手と売り手が協力して、取引先との円滑な引き継ぎを行うケースが一般的です。
また、クロージング後の初期段階では、買い手側が現場運営に慣れるためのサポート体制を整えることも重要です。
最終的に、クロージングが完了すれば、M&Aプロセスは終了し、買い手は警備会社の新しい所有者として事業を引き継ぐことになります。適切な準備と計画が行われていれば、このプロセスはスムーズに進行し、警備業のM&Aは成功裏に完了します。
警備業のM&Aのおすすめ相談先
M&A仲介会社
警備業のM&Aを進める際に、最も一般的な相談先が「M&A仲介会社」です。
M&A仲介会社は、売り手と買い手の間に立ち、交渉や契約手続きの支援を行う専門家集団です。彼らは警備業界の市場動向や売買の相場に精通しており、適切な相手を見つけるだけでなく、取引を円滑に進めるためのアドバイスも提供してくれます。
警備業は地域ごとの規制や法的要件が異なることが多いため、M&A仲介会社の専門的な知識が非常に重要です。
特に、初めてM&Aに取り組む企業にとっては、複雑なプロセスを理解しやすくするために、仲介会社のサポートが欠かせません。
また、売却価格の設定や、交渉時の適切な戦略を提案してくれるため、売り手にとっても買い手にとっても非常に心強い存在です。
仲介会社を選ぶ際には、警備業界に特化した実績のある会社を選ぶことが重要です。実際の取引経験が豊富な仲介会社であれば、警備業界特有の問題や課題にも適切に対応してくれるでしょう。
また、成功報酬型の料金体系を採用している仲介会社も多く、取引が成立するまで初期費用がかからない場合があるため、資金面でのリスクを最小限に抑えることができます。
このように、警備業のM&Aを円滑に進めるためには、信頼できるM&A仲介会社のサポートが非常に有益です。特に、業界特有の事情に詳しい仲介会社を選ぶことで、成功率が高まります。
M&Aマッチングサイト
近年、警備業界でも「M&Aマッチングサイト」を活用するケースが増えています。
M&Aマッチングサイトは、売り手と買い手をオンライン上で結びつけるプラットフォームであり、手軽に相手を探すことができる点が大きな魅力です。
特に、中小企業や個人事業主が気軽にM&Aに参加できる環境を提供しており、警備業界でも多くの企業が利用しています。
マッチングサイトを利用する最大の利点は、登録企業数が多く、多様な買い手や売り手と出会えることです。自社に合った条件の相手を効率よく探すことができ、取引までのスピードも速いです。
警備業界では、地域密着型の中小企業が多いため、地元企業とのM&Aを希望する場合にもマッチングサイトは非常に役立ちます。
また、利用者が自分で企業情報を入力し、売買条件を設定できるため、コストを抑えながらM&Aプロセスを進められる点も魅力の一つです。M&A仲介会社と比べて、手数料が低く抑えられることが一般的で、初期費用をかけずに始められるのも利点です。
ただし、取引の進行や交渉のサポートが仲介会社ほど充実していない場合があるため、慎重な判断が必要です。
警備業のM&Aに特化したマッチングサイトも存在し、業界特有のニーズに応じたサポートが得られる場合があります。警備業界では、特に人材や契約の安定性が重視されるため、これらの情報を正確に記載することで、適切な相手とのマッチングが期待できます。
総じて、M&Aマッチングサイトは、迅速かつ低コストでM&Aを進めたい企業にとって有効な手段であり、警備業界でも今後ますます普及していくことが予想されます。
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