個人事業主はM&Aで売却できる?目的や実施できるスキームについて解説!
個人事業主がM&Aを活用して事業を売却するケースが増えています。
M&Aは事業承継や資金化、さらなる成長を目指す強力な手段ですが、成功には適切な準備と戦略が欠かせません。
本記事では、M&Aを進めるための具体的な方法やメリット・デメリット、成功のポイントをわかりやすく解説します。
初めてM&Aを検討する方でも、安心して進められるようにサポートします。
目次
個人事業主はM&Aできるか?
個人事業主はM&Aを通じて事業を売却することが可能です。
一般的に、M&Aは株式会社などの法人が行うものというイメージが強いかもしれませんが、実際には個人事業主もM&Aを活用して事業を譲渡することができます。
ただし、個人事業主がM&Aを行う際の一つの大きな違いは、法人と異なり、事業自体が法人格を持っていない点に注意が必要です。
つまり、個人事業主の場合は「株式譲渡」という手法ではなく「事業譲渡」という形でM&Aが行われることが一般的です。
事業譲渡では、事業に関する資産や負債、契約、顧客リストなどを選別し、これらを買い手に譲渡することが可能です。
これにより、個人事業主は自身の事業を他者に引き継ぐことができます。
個人事業主はM&Aをする目的
個人事業主がM&Aを行う目的は多岐にわたります。
ここでは、主な目的として次の3つについて詳しく解説します。
- 事業承継としての手段
- 事業の資金化
- 事業の更なる発展
それぞれ解説していきます。
事業承継としての手段
個人事業主がM&Aを行う主な目的の一つは、事業承継です。
個人事業主の中には、自身の引退や体調の問題、後継者不足などの理由で事業の継続が難しくなるケースが増えています。
こうした状況下で、M&Aを活用することで、第三者に事業を譲渡し、事業を継続させることができます。
これにより、長年築き上げてきた事業や顧客基盤を守りながら、スムーズに事業を引き継ぐことが可能になります。
事業承継としてのM&Aは、特に親族や従業員に後継者がいない場合に有効です。
また、事業を引き継ぐ相手が経営経験を持つ企業であれば、これまでの運営をさらに強化することが期待されます。
個人事業主が自身の事業を未来にわたって持続させたいという願いを叶える手段として、M&Aは非常に有力な選択肢となります。
事業の資金化
個人事業主がM&Aを検討するもう一つの大きな理由は、事業の資金化です。
長年にわたって経営してきた事業をM&Aによって売却することで、現金を手に入れることができます。
この資金は、引退後の生活費や新しいビジネスへの投資、または個人的な理由での資産形成に役立てることができます。
事業の資金化を目的とするM&Aは、特に事業の成長がピークを迎えた時期や、自分が最も高い価値を見出せるタイミングで行うことが望ましいとされています。
事業の価値が高いうちに売却することで、より大きなリターンを得ることができるからです。
ただし、譲渡益に対して税金がかかることが一般的なので注意しましょう。
個人事業主にとって、事業の資金化は自身の将来設計を考慮した重要な決断となります。
事業の更なる発展
また、個人事業主がM&Aを行うもう一つの目的として、事業の更なる発展があります。
自身の経営リソースや限界を感じたとき、より大きな企業との提携や売却を通じて、事業のスケールアップや新しい市場への参入が可能となります。
これにより、これまでの事業をさらに発展させ、より多くの顧客や収益を得るチャンスが広がります。
M&Aによって新たな技術やノウハウを取り入れることで、事業の競争力を強化し、成長を加速させることができます。
個人事業主が自身の事業を次のステージに進めたいという意欲を持つ場合、M&Aはその実現手段として非常に有効です。
個人事業主が利用できるM&Aスキーム
個人事業主がM&Aを行う際には、いくつかのスキーム(方法)を利用することができます。
主に「事業譲渡」と「法人化後に株式譲渡」の2つが代表的な選択肢です。
これらのスキームは、それぞれ異なる特徴を持ち、個人事業主の状況や目的に応じて使い分けることが求められます。
事業譲渡
事業譲渡は、個人事業主が自分の事業を第三者に売却する最も一般的な方法の一つです。
このスキームでは、事業に関連する資産、負債、顧客リスト、契約、知的財産などを選別し、それらを買い手に譲渡します。
事業譲渡のメリットは、個人事業主が持つ事業の一部または全体を柔軟に売却できる点です。
具体的には、店舗や工場などの不動産、在庫、設備などの有形資産に加えて、ブランド名や商標、特許などの無形資産も譲渡対象となります。
事業譲渡により、買い手はすぐにビジネスを引き継ぐことができるため、スムーズな移行が期待されます。
ただし、事業譲渡には注意点もあります。
例えば、従業員や取引先との契約が引き継がれない場合があり、これにより業務の継続性に影響が出る可能性があります。
また、売却対象となる資産や契約の選別が必要なため、手続きが煩雑になることがあります。
法人化後に株式譲渡
もう一つのスキームとして、個人事業主が事業を法人化し、その法人の株式を譲渡する方法があります。
まず、個人事業を法人化することで、法人として独立した法人格を持つことになります。
その後、法人の株式を第三者に譲渡する形でM&Aを実行します。
法人化後に株式譲渡を行うメリットは、法人としての事業が引き継がれるため、契約や従業員の引き継ぎがスムーズに行える点です。
また、株式譲渡による売却は、事業譲渡に比べて手続きが簡便で、買い手にとってもメリットが多いとされています。
特に、大規模な事業や継続的な取引が重要な場合、法人化後の株式譲渡が適していることが多いです。
ただし、法人化にはコストや手続きが伴うため、M&Aを見据えた長期的な計画が必要です。
また、株式譲渡に際しては、法人の株式価値を正確に評価することが重要であり、専門的なアドバイスを受けることが推奨されます。
個人事業主がM&Aで事業売却を行うメリット
個人事業主がM&Aを通じて事業を売却することには、いくつかの大きなメリットがあります。
ここでは、主なメリットとして以下の3つがあります。
- 事業承継のスムーズな実施
- 事業の継続と発展
- 事業価値の現金化
それぞれについて詳しく説明します。
事業承継のスムーズな実施ができる
個人事業主がM&Aを活用することで、事業承継をスムーズに実施することができます。
特に、親族や従業員に後継者がいない場合、第三者に事業を引き継いでもらうことで、事業が途絶えることなく継続されるというメリットがあります。
M&Aによる事業承継は、事業の存続だけでなく、従業員の雇用や取引先との関係も維持できるため、関係者全員にとってメリットが大きいです。
また、M&Aによる事業承継は、売却前の経営者の経験やノウハウを新たな経営者に引き継ぐことができる点でも優れています。
これにより、事業の強みやブランド価値を維持しながら、新たなステージへと成長させることが可能です。
個人事業主にとって、自分の手で築き上げた事業を未来にわたって存続させることは、非常に重要な意味を持つでしょう。
事業の継続と発展ができる
M&Aを通じて、事業の継続と発展を図ることができます。
買い手が持つ経営資源やネットワークを活用することで、これまで以上に事業を成長させることが可能となります。
例えば、新しい市場への参入や商品ラインの拡充、営業拠点の増設などが考えられます。これにより、事業の競争力が強化され、持続的な成長が期待されます。
さらに、M&Aを通じて、個人事業主自身の負担を軽減しながらも、事業の発展を支えることができます。
新たなパートナーの支援を受けることで、より効率的な経営が可能となり、経営者の時間やエネルギーを他の重要な課題に集中させることができるでしょう。
事業価値の現金化
M&Aによって、事業の価値を現金化することができます。
特に、事業の売却によって得られる資金は、引退後の生活資金や新たな事業への投資に充てることができます。
事業価値の現金化は、個人事業主にとって、これまでの努力や成果を確実に報酬として得る手段となります。
また、事業価値の現金化は、経営者のリスクを軽減するという側面もあります。
例えば、経済環境の変動や競争激化によって事業の将来が不透明な場合、M&Aを通じて早期に事業を売却することで、大きな損失を避けることができます。
これにより、経営者自身のリスクをコントロールし、将来に対する備えを行うことが可能となります。
個人事業主が知るべきM&Aのデメリット
M&Aには多くのメリットがありますが、個人事業主にとっても知っておくべきデメリットも存在します。
M&Aを成功させるためには、これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることが重要です。
- 競業避止義務
- 情報漏洩のリスク
- 仲介手数料などの費用負担
それぞれについて解説します。
競業避止を負う
M&Aにおいて、事業を売却した後、売り手である個人事業主は競業避止義務を負うことが一般的です。
これは、売却後一定期間、売却した事業と同じ業種や地域で新たな事業を開始することを制限されるものです。
競業避止義務は、買い手が売却事業の市場価値を保護するために設けられるものであり、違反すると法的な責任を追及される可能性があります。
この制約は、個人事業主が新しいビジネスを立ち上げたいと考えている場合や、同じ業界での再挑戦を希望する場合に、自由な活動を制限することになります。
そのため、競業避止義務の範囲や期間については、事前に十分に理解し、納得した上で契約を締結することが重要です。
情報漏洩のリスクがある
M&Aプロセスにおいて、事業の詳細な情報や経営に関するデータを第三者に開示する必要があります。
この際、情報漏洩のリスクが伴います。
特に、買い手が複数存在する場合や交渉が長期化する場合、機密情報が漏洩し、競争相手に利用される可能性があります。
情報漏洩のリスクを軽減するためには、秘密保持契約(NDA)を締結し、交渉相手が機密情報を第三者に開示しないことを法律的に義務付けることが一般的です。
また、情報開示の範囲を最小限に抑えることや、機密性の高い情報は慎重に取り扱うことも重要です。
仲介手数料などの費用負担がある
M&Aを進めるためには、専門家や仲介業者のサポートが必要です。
これには、弁護士、税理士、会計士、M&A仲介業者などが含まれますが、これらのサービスには相応の費用が発生します。
特に、M&A仲介業者に支払う仲介手数料は、売却価格の数%に達することが一般的です。
この費用負担は、M&Aプロセス全体で発生する総費用に大きく影響を与える可能性があります。
そのため、M&Aの初期段階で費用見積もりを明確にし、予算をしっかりと管理することが重要です。
また、費用対効果を考慮して、どの専門家や業者に依頼するかを慎重に検討することが求められます。
個人事業主のM&Aの流れ
個人事業主がM&Aを成功させるためには、事前準備から契約締結、譲渡完了までの流れをしっかりと理解し、計画的に進めることが重要です。
- 依頼先の選定
- 事業価値の評価
- 買収候補の選定・交渉
- 契約締結から譲渡完了まで
ここでは、それぞれのステップについて解説します。
依頼先の選定
M&Aプロセスをスムーズに進めるためには、信頼できる専門家や仲介業者を選定することが不可欠です。
M&Aの経験が豊富で、個人事業主のニーズに合ったサービスを提供できる専門家を見つけることが、成功への第一歩となります。
仲介業者や弁護士、税理士などの専門家は、法務・税務・財務などの複雑な問題を適切に処理し、M&Aプロセスを円滑に進めるために必要不可欠な存在です。
依頼先の選定に際しては、過去の実績や信頼性、費用体系などを慎重に評価し、自分に最も適したパートナーを見つけることが重要です。
また、依頼する専門家とは密なコミュニケーションを取り、双方の理解を深めながら進めることが成功のカギとなります。
事業価値の評価
M&Aにおいて、事業価値の評価は非常に重要なステップです。
事業価値を適切に評価することで、売却価格の妥当性を確保し、売り手としての利益を最大化することができます。
事業価値の評価には、財務デューデリジェンスをはじめ、事業の収益性、成長性、資産の評価など、さまざまな要素が考慮されます。
この評価は専門的な知識が必要であり、適切なアドバイザーの助けを借りて行うことが推奨されます。
また、事業価値を最大限に引き出すために、売却前に財務状況を整備し、可能な限り事業の魅力を高める準備を行うことが重要です。
買収候補の選定・交渉
次に、事業を引き継ぐ買収候補を選定し、交渉を行います。
買収候補の選定は、事業の継続性や将来的な発展性を考慮して慎重に行う必要があります。
買い手が事業にどのような価値を見出しているか、またどのような条件で買収を希望しているかを理解し、最適な候補を選定します。
交渉段階では、売却価格や条件の他、従業員や取引先への対応、競業避止義務などの詳細についても取り決める必要があります。
交渉が成功すれば、M&Aの契約締結に向けた具体的な準備に入ります。
契約締結から譲渡完了まで
最終的な契約締結の段階では、M&Aの条件を詳細に確認し、双方が納得できる形で契約書を作成します。
契約書には、売却価格、支払い条件、譲渡される資産や負債の詳細、競業避止義務、秘密保持義務などが含まれます。
契約が締結されると、正式に事業の譲渡が行われます。
この際、法的手続きや税務処理が必要になるため、専門家のサポートを受けながら確実に進めることが重要です。
譲渡完了後も、売り手と買い手の間で一定期間のサポートや引継ぎを行うことが一般的です。
個人事業主のM&Aにおける成功のポイント
個人事業主がM&Aを成功させるためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。
- M&Aの専門家の支援を受ける
- タイミングを適切に見極める
- 買い手と信頼関係を構築する
それぞれについて詳しく解説します。
M&Aの専門家の支援を受ける
M&Aは法務、財務、税務など多岐にわたる専門知識が必要な複雑なプロセスです。
個人事業主がこれらすべてを独自に対応することは非常に困難です。
そのため、M&Aの専門家の支援を受けることが成功の鍵となります。
専門家のアドバイスを受けることで、リスクを最小限に抑え、最適な条件でのM&Aを実現することが可能です。
具体的には、M&A仲介業者や弁護士、税理士、会計士などが専門的な支援を提供してくれます。
彼らのサポートを受けることで、買い手との交渉を有利に進めたり、税務上の優遇措置を最大限に活用したりすることができます。
専門家の知識と経験を活用することで、M&Aの成功率が大幅に向上します。
タイミングを適切に見極める
M&Aを成功させるためには、実施のタイミングが非常に重要です。
事業の成長がピークに達したタイミングや、市場環境が良好な時期にM&Aを行うことで、より高い売却価格や有利な条件を引き出すことが可能です。
また、事業主自身が引退や次のキャリアに向けた計画を立てるタイミングも考慮する必要があります。
一方で、早すぎる売却や遅すぎる売却は、事業価値を最大限に引き出せないリスクがあります。市場動向や事業の状況を慎重に分析し、最適なタイミングを見極めることが重要です。
これには、専門家の意見を参考にすることが効果的です。
買い手と信頼関係を構築する
M&Aを成功させるためには、買い手との信頼関係を築くことが不可欠です。
買い手が事業を引き継いだ後も、円滑に運営を継続できるよう、互いの信頼が重要な役割を果たします。
特に、事業承継型のM&Aでは、従業員や取引先との関係も考慮しながら、買い手と良好なコミュニケーションを取ることが求められます。
信頼関係を構築するためには、情報をオープンに共有し、相手の意見や要求を尊重する姿勢が重要です。
また、買い手が安心して事業を引き継げるよう、引継ぎ後のサポート体制を整えておくことも効果的です。
信頼関係が構築されることで、M&Aの交渉がスムーズに進み、双方にとって満足のいく結果が得られるでしょう。
個人事業主向けM&A仲介会社の選び方
個人事業主がM&Aを成功させるためには、適切な仲介会社を選ぶことが非常に重要です。
仲介会社は、売り手と買い手の間に立ち、M&Aプロセス全体をサポートしてくれる存在です。
仲介業者の役割とは
M&A仲介業者は、個人事業主がM&Aを進める際に欠かせないパートナーです。
彼らの主な役割は、売り手と買い手をマッチングさせ、交渉をサポートすることです。
また、事業価値の評価、適切な買い手候補のリストアップ、交渉戦略の立案、契約書の作成支援など、M&Aの各段階で必要なサポートを提供します。
仲介業者の重要性は、特に複雑な交渉や市場調査、法務・税務の問題を適切に処理する能力にあります。
経験豊富な仲介業者は、売り手にとって最も有利な条件での売却を実現するために、戦略的なアプローチを取ります。
個人事業主にとって、仲介業者の選択はM&Aの成否を左右する重要な決断となります。
料金体系の確認と評価基準
M&A仲介業者を選ぶ際には、料金体系をしっかりと確認することが重要です。
仲介手数料は通常、成功報酬型で設定されており、売却金額の数%が手数料として発生します。
しかし、仲介業者によっては、着手金や月額費用、成功報酬の割合が異なるため、事前に詳細を確認し、予算に合った業者を選ぶことが必要です。
また、料金体系だけでなく、仲介業者の評価基準や過去の実績も重要な選定要素です。
成功率や取引件数、売却金額の実績などをチェックし、自身の事業規模や業種に合った仲介業者を選ぶことが求められます。
料金とサービス内容のバランスを考慮しながら、最適な仲介業者を見つけましょう。
信頼できる仲介会社の特徴
信頼できるM&A仲介会社には、いくつかの共通した特徴があります。
まず、豊富な経験と専門知識を持ち、これまでに多くのM&Aを成功させてきた実績があることです。
さらに、業界に精通しており、個人事業主のニーズや特性を理解していることも重要です。
信頼できる仲介業者を選ぶことで、M&Aプロセスがスムーズに進み、成功率が格段に向上します。
個人事業主にとって、安心して任せられるパートナーを見つけることがM&A成功の鍵となります。
税金面で注意が必要なポイント
個人事業主がM&Aを行う際には、税金面での注意が必要です。
事業を売却することで得られる利益に対して、適切な税務処理を行わないと、予期しない税負担が発生する可能性があります。
ここでは、「譲渡所得税の計算方法」「贈与税と相続税の影響」「消費税に関する留意点」の3つのポイントについて解説します。
譲渡所得税の計算方法
M&Aによって事業を売却した場合、得られた利益に対して譲渡所得税が課されます。
譲渡所得は、売却金額から取得費用や売却にかかった諸経費を差し引いた金額で計算されます。
この所得は、総合課税または分離課税の対象となり、税率は個人の所得状況に応じて異なります。
個人事業主にとって、譲渡所得税の計算は非常に重要です。
特に、取得費用が少ない場合や、長期にわたって事業を保有していた場合、税負担が大きくなる可能性があります。
事前に税務の専門家と相談し、最適な税務対策を講じることが推奨されます。
贈与税と相続税の影響
M&Aにおいて、贈与税や相続税の影響を考慮することも重要です。
例えば、事業の一部を家族や親族に贈与する場合、その価値に応じて贈与税が課される可能性があります。
贈与税は、贈与された財産の評価額に基づいて計算され、基礎控除額を超える部分に税率が適用されます。
また、事業を相続する場合にも相続税が発生します。
相続税は、相続財産の評価額に基づいて計算され、相続人の数や相続財産の種類によって税率が異なります。
これらの税金に対して適切な対策を講じることで、税負担を軽減し、事業承継をスムーズに進めることが可能です。
消費税に関する留意点
M&Aによる事業譲渡において、消費税の扱いにも注意が必要です。
事業の売却が消費税の課税対象となる場合、売却価格に消費税が上乗せされることがあります。
特に、事業に含まれる資産が多い場合や、不動産が含まれる場合には、消費税の額が大きくなる可能性があります。
消費税に関する取り扱いは、M&Aの契約内容によって異なるため、事前に買い手と合意し、契約書に明記しておくことが重要です。
税務の専門家と相談し、消費税の影響を最小限に抑えるための適切な対応を行いましょう。
M&Aを成功させるための事前準備
M&Aを成功させるためには、事前準備が非常に重要です。
事前にしっかりと準備を行うことで、交渉を有利に進めることができ、買い手にとっても魅力的な事業としてアピールすることが可能です。
ここでは、「必要書類の整理と作成」「内部の財務状況の確認」「従業員とのコミュニケーションの方法」の3つのポイントについて解説します。
必要書類の整理と作成
M&Aを進める際には、多くの書類が必要になります。
事業譲渡契約書や、売却対象となる資産のリスト、財務諸表、事業計画書など、買い手が事業の価値を正確に評価できるような書類を事前に整備しておくことが重要です。
これらの書類は、M&Aの過程で交渉材料として使われるため、正確で信頼性のある内容であることが求められます。
また、秘密保持契約書(NDA)など、交渉過程での情報漏洩を防ぐための書類も準備しておく必要があります。
これにより、安心して交渉を進めることができ、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
内部の財務状況の確認
M&Aにおいて、事業の財務状況は買い手にとって最も重要な情報の一つです。
したがって、事前に内部の財務状況を詳細に確認し、必要に応じて改善策を講じることが成功の鍵となります。
特に、売却前に財務状況を整備し、不良債権や過剰在庫の処理、キャッシュフローの改善などを行っておくと、事業の評価が高まり、交渉が有利に進みます。
従業員とのコミュニケーションの方法
M&Aに際して、従業員とのコミュニケーションは非常に重要です。
従業員は事業の重要な資産であり、M&A後も事業の継続と発展に不可欠な存在です。
したがって、M&Aの計画を従業員に適切に伝え、不安や疑問に対して誠実に対応することが求められます。
従業員に対しては、M&Aの目的やメリット、今後の経営方針について明確に説明し、理解と協力を得ることが重要です。
また、買い手との交渉が進む中で、従業員の待遇や雇用条件がどのように変わるのかを事前に確認し、可能な限り従業員にとって有利な条件を維持するよう努めましょう。
これらの準備を行うことで、従業員の不安を軽減し、買い手とのスムーズな引き継ぎが実現します。
従業員との信頼関係を維持することは、M&Aの成功に直結する重要な要素となります。
事業売却後の役割
M&Aが完了し、事業が買い手に引き継がれた後も、売り手である個人事業主には重要な役割が残されています。
事業売却後のスムーズな移行を確保し、買い手が成功裏に事業を運営できるよう支援することが、売り手としての責任です。
ここでは、「新しい経営者との協力体制」「従業員の雇用条件の見直し」「取引先との関係の維持」の3つの役割について解説します。
新しい経営者との協力体制
事業売却後、一定期間、売り手が新しい経営者と協力して事業を運営することが一般的です。
これは、引き継ぎ期間と呼ばれ、買い手が事業の運営に慣れるまでの間、元の経営者がサポートを提供する期間です。
この期間中、売り手は事業の詳細や経営ノウハウを新しい経営者に伝え、スムーズな引き継ぎを行う役割を果たします。
協力体制の構築には、売り手と新しい経営者との間での密なコミュニケーションが不可欠です。
また、買い手の要望や不明点に迅速に対応することで、信頼関係を強化し、事業の安定的な運営を支援することができます。
売り手として、これまで築き上げてきた事業の価値を維持し、さらなる発展を促すための重要な役割を担うことになります。
従業員の雇用条件の見直し
事業売却後、従業員の雇用条件についても見直しが行われることがあります。
買い手が新しい経営方針を導入する際、従業員の待遇や役割が変更される可能性があるため、これに対する対応が求められます。
売り手としては、従業員が不利益を被らないよう、売却前にできるだけ有利な条件での合意を目指すことが重要です。
また、従業員に対しては、売却後の状況や今後の経営方針について透明性を持って説明し、理解を得ることが大切です。
従業員が安心して業務に取り組める環境を整えることで、事業の安定的な運営を確保し、買い手との良好な関係を維持することが可能となります。
取引先との関係の維持
取引先との関係維持も、売り手が果たすべき重要な役割の一つです。
事業売却後、取引先が経営者の変更に不安を抱くことがあるため、売り手として取引先に対して適切なフォローを行うことが求められます。
具体的には、新しい経営者を取引先に紹介し、これまでの信頼関係が引き継がれるようサポートすることが重要です。
また、取引先に対しては、今後の取引がこれまで通り継続されることを保証し、安心感を提供することが大切です。
これにより、取引先との関係を維持し、事業の安定を図ることができます。
売り手として、事業売却後も取引先とのコミュニケーションを継続し、信頼関係を強化する役割を果たすことが、M&Aの成功に寄与します。
個人事業主のM&Aについてのまとめ
個人事業主がM&Aを成功させるためには、事前準備、適切なタイミングの見極め、信頼できる仲介会社の選定が重要です。
売却後も、新しい経営者との協力体制や従業員、取引先との関係維持が求められます。
また、譲渡所得税や贈与税、消費税など税務面での対策も必要です。
M&A専門家の支援を受けながら、これらのポイントを押さえることで、事業承継や資金化、事業の発展を円滑に進めることができます。
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株式会社M&Aナビ 代表取締役社長。
大手ソフトウェアベンダー、M&Aナビの前身となるM&A仲介会社を経て2021年2月より現職。後継者不在による黒字廃業ゼロを目指し、全国の金融機関 を中心にM&A支援機関と提携しながら後継者不在問題の解決に取り組む。著書に『中小企業向け 会社を守る事業承継(アルク)』
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