英会話教室・語学学校のM&A動向の解説!メリット・デメリットや事例も解説!

2024年10月24日

英会話教室は、グローバル化の進展により注目されている分野であり、新規参入が活発に行われている業態です。
日常会話からビジネス英語まで、幅広いニーズに応えながら、多くの教室が生徒に実践的な英語力を提供しています。

一方で、競争の激化やオンライン学習の台頭など、業界には課題も増えつつあります。
本コラムでは、英会話教室の市場規模や課題、M&Aがもたらすメリット・デメリットを詳しく解説し、今後の展望についても考察します。

英会話教室とは?

英会話教室は、英語を学びたい人々のための学習施設です。ここでは、日常会話から仕事で使える英語まで、さまざまなレベルの英語スキルを身につけることができます。教室では、経験豊富な講師が生徒たちと直接対話しながら、実践的な英語力を養成します。

英会話教室の特徴は、「話す」ことに重点を置いた学習方法にあります。文法や単語を暗記するだけでなく、実際に英語を使ってコミュニケーションを取ることで、より自然な英語の習得を目指します。多くの教室では、少人数制のクラスや、マンツーマンレッスンを提供し、生徒一人ひとりのニーズに合わせた指導を行っています。

英会話教室の市場規模

日本の英会話教室市場は、長年にわたり安定した成長を続けてきました。グローバル化の進展や、海外旅行の増加、ビジネスでの英語需要の高まりなどを背景に、多くの人々が英語学習に興味を持つようになりました。

最新の調査によると、日本の語学ビジネス市場全体の規模は約7841億円とも言われています。この中には、英会話教室だけでなく、オンライン英会話、英語学習アプリなども含まれますが、依然として対面式の英会話教室が大きな割合を占めています。

特に、ビジネス英語や資格対策のニーズが高まっており、これらに特化した教室やコースの人気が上昇しています。また、子供向けの英会話教室も注目を集めており、早期英語教育の重要性が認識されるにつれ、市場を拡大しています。

英会話教室業界の課題

英会話教室業界は成長を続けていますが、同時にいくつかの課題も抱えています。

競争の激化

多くの企業が英会話教室市場に参入し、競争が激しくなっています。これにより、生徒獲得のための広告費用が増加し、利益率の低下につながっています。

オンライン学習の台頭

インターネットの普及により、オンライン英会話サービスが人気を集めています。時間や場所の制約がなく、比較的安価なオンラインサービスは、従来の対面式英会話教室にとって大きな脅威となっています。

講師の確保

質の高い外国人講師を安定的に確保することが難しくなっています。ビザの問題や、他の業種との人材獲得競争が激しくなっていることが原因です。

生徒の継続率

英語学習は長期的な取り組みが必要ですが、モチベーションの維持が難しく、途中で辞めてしまう生徒も少なくありません。生徒の継続率を高めることが、多くの英会話教室の課題となっています。

新しい学習方法への対応

AIやVR(仮想現実)などの新技術を活用した学習方法が登場しています。従来の教室型の授業スタイルに加え、これらの新しい技術をどのように取り入れていくかが課題となっています。

このような状況の中、多くの英会話教室がサービスの質の向上や、新しい学習プログラムの開発、効率的な運営方法の模索など、さまざまな取り組みを行っています。中には、他の教室との提携やM&A(合併・買収)を通じて、これらの課題に対応しようとする動きも見られます。

英会話教室のM&Aのメリット

M&A(合併・買収)は、英会話教室業界でも重要な戦略の一つとなっています。企業の成長や競争力強化を図る上で、M&Aには多くのメリットがあります。ここでは、売り手と買い手それぞれの立場から、英会話教室のM&Aがもたらす利点について詳しく見ていきましょう。

売り手のメリット

英会話教室のM&Aには以下の利点があります。

まず、経営者の高齢化や後継者不足を解消し、事業の継続と発展を図ることが可能です。長年のブランドやノウハウを引き継いでもらい、創業者の思いを未来に繋げます。

また、買い手の資金力や技術力を活用することで、新しいサービスや技術導入が実現し、魅力的な教育を提供できます。

さらに、M&Aによって従業員の雇用が守られ、地域の雇用維持にも貢献します。財務的にも、売却益を退職金や投資に活用可能です。

買い手のメリット

英会話教室のM&Aには、市場シェアの拡大や新地域への進出、ノウハウやブランドの獲得、優秀な人材の確保など多くのメリットがあります。

また、両社の強みを活かすことでシナジー効果を創出し、管理部門の統合や広告宣伝の一本化によるコスト削減も期待できます。

さらに、買収先の新技術やサービスを導入することで、事業の幅を広げることも可能です。M&Aの成功には、綿密な事前調査と統合後の適切なマネジメントが重要です。

英会話教室のM&Aのデメリット

M&A(合併・買収)には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。英会話教室のM&Aを検討する際には、これらの潜在的な問題点をよく理解し、適切に対処することが重要です。ここでは、売り手と買い手それぞれの立場から、英会話教室のM&Aがもたらす可能性のあるデメリットについて詳しく見ていきましょう。

売り手のデメリット

M&Aにより事業を売却すると、経営権を失い、これまで自由に行っていた意思決定ができなくなり、教育理念や経営方針が変更される可能性があります。

また、従業員に不安や反発が生じ、ブランドイメージも変わる恐れがあります。

さらに、M&Aの過程で秘密情報を開示する必要があり、情報漏洩のリスクが高まります。

加えて、長年愛着を持って経営してきた事業を手放すことによる心理的な負担も、経営者にとって大きな課題です。

買い手のデメリット

M&Aには多額の資金が必要で、経費削減がサービスの質低下を招く財務リスクがあります。

また、デューデリジェンスでは把握できない問題や、企業文化の違いによる運営上の摩擦も生じる可能性があります。M&A後の顧客流出やシナジー効果が期待通りに得られないリスク、管理業務の複雑化も課題です。

さらに、不祥事によるレピュテーションリスクや統合コストの増大にも注意が必要です。これらのリスクは、適切な対策により軽減できます。

英会話教室のM&Aのデメリット

M&A(合併・買収)には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。英会話教室のM&Aを検討する際には、これらの潜在的な問題点をよく理解し、適切に対処することが重要です。ここでは、売り手と買い手それぞれの立場から、英会話教室のM&Aがもたらす可能性のあるデメリットについて詳しく見ていきましょう。

売り手のデメリット

M&Aによる事業売却には、以下のリスクがあります。

まず、経営権の喪失により、これまでの教育理念や経営方針が変更される可能性があります。また、従業員が経営体制の変化に不安や反発を抱き、モチベーション低下や退職に繋がることもあります。

さらに、長年築いてきたブランドイメージが変わるリスクや、交渉過程で秘密情報が漏れる危険も存在します。最後に、事業に愛着を持つ経営者にとって、売却は大きな心理的負担となる可能性があります。

買い手のデメリット

M&Aには、以下のリスクが伴います。

財務リスクとして、資金調達や返済が経営を圧迫する可能性があります。

また、デューデリジェンスでは把握できない問題が後から明らかになることや、企業文化の違いが統合を阻害する場合もあります。既存顧客の流出や、期待通りのシナジー効果が得られないリスク、管理業務の複雑化も課題です。

さらに、統合コストの増大やレピュテーションリスクにも注意が必要です。事前の準備と適切な対策により、リスクを軽減できます。

英会話教室はいくらで売れるのか

英会話教室や語学学校の売却を考えている方にとって、「いくらで売れるのか」というのは最大の関心事でしょう。ここでは、英会話教室の価値がどのように決まるのか、具体的に見ていきましょう。

中小企業における売却価格の考え方

まず、中小企業価値の算出方法について簡単に説明します。一般的に、企業の価値は以下の2つの方法で計算されます:

年倍法

年倍法とは、資産の収益性を基にその価値を評価する手法です。

資産が将来生み出す純収益を一定の利率(還元利率)で割り戻し、その収益を基に資産の現在価値を算出します。この方法は、不動産や設備など、収益を生む資産の評価に広く使われます。コストアプローチの一環として、収益力を反映させた評価を行うため、資産の実際の収益性や将来の収益見通しが重要な要素となります。

マルチプル法

マルチプル法は、企業や資産の価値を市場での取引価格を基に評価する手法です。

具体的には、同業他社の株価や取引価格に基づいて、売上高や利益、EBITDAなどの財務指標に倍率(マルチプル)を適用して評価額を算出します。

例えば、類似企業の株価収益率(PER)やEV/EBITDA倍率を参考に、自社の指標に掛け合わせて企業価値を推定します。市場での取引データを反映するため、客観性が高い評価手法です。

英会話教室に特有の考慮すべき事情

英会話教室の価値評価では、一般的な企業評価に加え、特有の要素も重要です。

まず、生徒数と継続率は収益の安定性を示す指標であり、講師の質や定着率は教室の評判に直結します。

また、地域でのブランド力や独自の教材、カリキュラムは競合との差別化に繋がり、立地条件やオンライン対応力も評価に影響します。

例えば、年間EBITDAが1,000万円の教室で、上記の要素が良好であれば、マルチプル5倍が適用され、5,000万円程度で売却される可能性があります。

しかし、最終的な売却価格は交渉力や経済情勢、買い手のニーズによっても左右されます。価格だけでなく、買収後の経営方針や相乗効果、売却後のサポート体制も重要な要素です。M&Aでは高値での売却だけでなく、教育理念や信頼関係を引き継ぐ買い手を選ぶことが大切です。

英会話教室のM&A事例3選

英会話教室や語学学校のM&Aは、教育業界の中でも注目を集めている分野です。ここでは、実際に行われた代表的なM&A事例を3つ紹介し、それぞれの特徴や背景、そして業界への影響について解説します。

KDDIが英会話のイーオンを買収

2018年、KDDIは約230億円で英会話大手イーオンを買収し、完全子会社化しました。

KDDIは通信事業の多角化を目指し、イーオンは経営基盤の強化が必要でした。

買収後、KDDIの通信技術を活用してオンライン英会話サービスを強化し、新しい学習サービスの開発を推進。通信と教育業界の融合が進み、テクノロジーを活用した新しい学習方法の開発が期待されています。

参考:イーオンホールディングスの株主異動について

2. NOVAホールディングスによるGABAのM&A

2022年、NOVAホールディングスは英会話大手GABAを買収し、全株式を取得しました。

NOVAは事業拡大を目指し、GABAは経営安定化を求めていたための買収です。M&A後、両社はブランドを維持しつつ経営資源を共有し、NOVAの団体向けサービスとGABAのマンツーマン指導を融合させました。

これにより、NOVAは総合語学教育グループとしての地位を確立し、業界内の競争と経営効率化の動きが一層加速すると見られています。

参考:「Gabaマンツーマン英会話」の全株式取得につきまして

レアジョブによるリップル・キッズパークのM&A

2017年、オンライン英会話大手のレアジョブは、子供向け英会話教室チェーンのリップル・キッズパークを約14億円で買収し、全株式を取得しました。

レアジョブは対面式レッスンへの進出を目指し、リップル・キッズパークはコロナ禍での経営難を抱えていました。M&A後、オンラインと対面のハイブリッド型英語教育サービスを展開し、レアジョブの教材やシステムをリップルに導入、両社の顧客基盤を活用した相互送客も実施。この買収は、柔軟な学習スタイルへの需要に応じた新たな教育モデルを示しました。

参考:子ども専門オンライン英会話のリーディングカンパニー 「リップル・キッズパーク」をグループ化

英会話教室業界のM&Aには、いくつかの特徴が見られます。

まず、KDDIの例にあるように、通信やITなど異業種からの参入が増加しています。

次に、NOVAとGABAの統合のように、競合企業の合併による規模拡大や経営効率化が進んでいます。また、レアジョブの買収事例では、オンラインと対面のハイブリッド型サービスが拡大中です。

さらに、AIやIoTを活用した教育サービスの開発も加速しており、これらのトレンドは今後も継続し、業界の成長を促すと予想されます。

英会話教室のM&Aのおすすめ相談先

英会話教室や語学学校のM&Aを検討する際、専門家のアドバイスを受けることは非常に重要です。ここでは、M&Aを成功させるためのおすすめの相談先を紹介し、それぞれの特徴や利用方法について解説します。

1. M&A仲介会社

M&A仲介会社は、企業価値評価、買い手・売り手の発掘、交渉の仲介、デューデリジェンス支援、契約書作成を行い、M&A全体をサポートします。

メリットは、豊富な経験やネットワークを活用でき、守秘義務が徹底される点です。

一方、成功報酬型の場合、取引額の数%の手数料がかかり、小規模案件では対応が難しい場合もあります。利用時は複数社に相談し、自社に合った会社を選び、秘密保持契約を締結後に進めます。

2. M&Aマッチングサイト

インターネット上のM&Aマッチングプラットフォームは、近年中小企業のM&Aでの利用が増えています。

多数の案件情報を匿名で閲覧でき、低コストで全国の企業とコンタクトが可能です。メリットとして、初期費用が低く、小規模案件にも適しており、地理的制約なく自社のペースで検討を進められます。

一方、専門家のサポートが限定的で、信頼性の低い情報や自力での交渉が必要になるデメリットもあります。利用方法は、信頼できるサイト選びから始め、希望条件を設定し、専門家と連携しながら進めます。

3. 顧問税理士

顧問税理士は、自社の財務状況を熟知しているため、M&Aにおける財務デューデリジェンスや税務面でのアドバイス、企業価値評価のサポートが期待できます。

また、長期的な信頼関係を背景にオープンな相談がしやすく、M&A後の税務対策まで対応可能です。

デメリットとして、M&A経験が不足している場合や、買い手・売り手の発掘・交渉支援が限定的なことがあります。

利用方法としては、早い段階での相談や課題整理が重要です。M&Aマッチングサイトや仲介会社と組み合わせて活用することが成功への鍵となります。

また、業界特有の事情に詳しい専門家(教育コンサルタントなど)や、法務面でのアドバイスが必要な場合は弁護士など、必要に応じて他の専門家のサポートも受けることをおすすめします。

M&Aは複雑なプロセスであり、多くの専門知識が必要です。信頼できる相談先を見つけ、オープンなコミュニケーションを心がけることで、成功の可能性を高めることができるでしょう。

英会話教室のM&Aのまとめ

2. 最近のM&A事例から見る業界トレンド

英会話教室業界のM&Aは、異業種からの参入、規模の拡大、オンラインと対面の融合、テクノロジーの活用といった特徴を持ちます。

これらのトレンドは今後のM&A戦略の重要な指針となります。

M&Aを成功させるためのキーポイントとしては、明確な目的設定、適切なタイミングと相手の選定、徹底したデューデリジェンス、シナジー効果の最大化が挙げられます。

さらに、関係者とのコミュニケーション戦略や専門家の活用も重要です。

これらの要素を慎重に検討し、実行することで、企業の成長戦略としてのM&Aの効果を最大化し、競争力を強化することができます。

同時に、教育の質向上と新たな価値創造につながる可能性も高まります。

M&A後の統合プロセスの重要性

M&Aの成功は、取引成立後の統合プロセスに大きく依存します。

このプロセスでは、経営理念やビジョンの共有、組織構造と人事制度の調整、教育メソッドやカリキュラムの統合が重要です。

さらに、システムやオペレーションの一元化、ブランド戦略の検討、そしてシナジー効果実現のための具体的施策の実行も不可欠です。

これらの要素を慎重に管理し、両社の強みを活かしながら、新たな価値を創造することが求められます。統合プロセスを成功させることで、M&Aによる相乗効果を最大化し、企業の持続的な成長と競争力強化につながります。

今後の展望

これらの統合プロセスを通じて、より強固な経営基盤を構築し、市場での地位を強化することが期待されます。

英会話教室業界のM&A活動は今後も活発化すると予測されています。特に注目されているのは、EdTech企業との連携や買収です。教育とテクノロジーの融合により、革新的な学習体験の提供が期待されています。

また、グローバル展開を視野に入れた国際的なM&Aも増加傾向にあります。これにより、世界規模でのブランド力強化や教育リソースの拡充が図られるでしょう。

一方で、地方の小規模教室の統合も進むと考えられます。これは規模の経済を追求し、経営効率の向上を目指す動きです。

さらに、異業種からの新規参入も予想されており、従来の枠にとらわれない新しい教育モデルが生まれる可能性があります。これらの動向により、英会話教育の質と多様性が一層向上することが期待されます。

最後に

英会話教室のM&Aは、単なる事業の売買ではなく、教育の質の向上や新しい価値の創造につながる可能性を秘めています。慎重な検討と準備、そして適切な専門家のサポートを受けることで、成功の可能性を高めることができるでしょう。

M&Aを検討する際は、財務的な側面だけでなく、「より良い教育サービスを提供する」という本質的な目的を見失わないことが重要です。生徒や従業員、そして社会全体にとってプラスとなるM&Aを目指すことで、持続可能な成長と発展を実現できるはずです。

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